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ネット広告市場はバザールか(2)取引所を挟んだ売り手と買い手の非対称性

ネット広告市場はバザールか(2)取引所を挟んだ売り手と買い手の非対称性前回話したとおり、デジタル広告取引システムは金融取引システムをベースに作られたが、金融市場と広告市場で大きく違う点はどこだろうか?
広告市場は「今のところ、現物市場である」という点である。

「今のところ」、と書いたのは現時点で先物市場取引が成立していないだけであって、アメリカのテレビ広告市場には、秋からの新シーズンの番組提供の販売を春過ぎから始める「アップフロント」という先物的取引がある。1秒1,000万円ともいわれるスーパーボウルの広告枠といった、取引にふさわしい商品もあるので、広告枠の先物市場が今後出現することは容易に推測される。

少し話がずれたが、「現物取引」のデジタル広告市場での商流は、一方向の取引であると理解できる。証券市場のように買った株を売るという、1人の人が買い手になったり売り手になったりすることはない。

広告スペースを提供する媒体社から見ると、そのスペースはSSP→Ad Exchenge→DSPを経由して広告主に流れ、逆方向に金が流れていく。そこでの取引は一般消費財のように生産者と消費者の戦いであり、生産者(媒体社)はより高く、消費者(広告主)はより安く取引するというインセンティブが働く。

そういった市場状況の中で「取引システム」というテクノロジーが関与するとどういったことが起こるだろうか。そこには、「テクノロジーを使いこなした方が勝つ」という現代的経済原理が成り立つと、私は考える。(大阪のおばちゃんが“言葉で値切る”というテクノロジーを駆使してより安く物を買うことを思い浮かべてほしい。)

たとえば、広告主が媒体社に比べて取引システムの運用に長けていたらどうなるだろう。媒体社が提供する広告スペースは、寄ってたかって安値で買い叩かれ、媒体社がPV向上の努力をしても、広告収入は思ったように増加しないだろう。逆に、媒体社が広告主より賢く取引システムを使いこなせれば、「働けど儲からず」という今のWebメディアの経営環境を改善するかもしれない。

今のところ、日本の広告市場においては広告主側のアドテクノロジー利用に対するスキルが高く、媒体社、とりわけ情報ソースを生成している新聞社などのいわゆるプレミアム・パブリッシャーはこのテクノロジーを十分に使いこなしていないように思える。

もう1つ、Ad Exchangeを挟んだ非対称性を指摘したい。本記事の冒頭で述べた「メディア主体からオーディエンス主体」への移行にかかわるものだ。 オーディエンスデータはだれが持っているのだろう?

現在、広告の掲載されるWebページを閲覧するオーディエンスの行動データは多くのアドネットワークやDSPの側に貯められている。さらに、広告主自体も自社のサイトにやってくるオーディエンスの行動データを持つ。ECサイトにおいては、サイト閲覧情報だけでなく購買履歴も紐づけて管理している。
一方で、媒体社側は自サイト内での接触者行動データを分析するために、オーディエンスデータを貯めているが、その情報(一時Cookie)を広告取引に利用するサービスは一般化していない。
オーディエンス・ターゲティングが主体になるデジタル広告市場において、取引の基礎データであるオーディエンスデータそのものがDSPを含めた広告主側に偏在しているのである。

以上みてきたように、デジタル広告市場は売り手と買い手は直接取引をする、まるで中世イスタンブールのバザールのような場所なのである。買い手が賢ければ安い買い物ができる。売り側がやり手なら巨万の富をつかめる。そして、成功のカギを握っているのは“テクノロジーを操れる才覚”なのだ。

【コラム】

今見ているWebページでどこからCookieが送り込まれているのかわかるサービス「Ghostery」

Ghosteryは、「見えない」Web – Cookieやタグ、ウェブバグ、ピクセル、そしてビーコンなど — を表示し、1,900以上の広告ネットワーク、行動データプロバイダ、Webパブリッシャー、そしてあなたの行動様式に関心のあるその他の企業の情報を提供するブラウザプラグインだ。(サイトの説明より)

このプラグインを導入すると、今開けているWebページのドメイン以外から埋め込まれたり繰られたりするさまざまなトラッキングデータをドメインごとに一覧表示してくれる。

画像はあるニュースサイトの記事を表示したときに埋め込まれたトラッキングデータ。実際多くのドメインからトラッキングされているのがわかる。
図1

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