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オーディエンスは誰のもの?~オーディエンスは広告主の掌に。行動ターゲティングとアドネットワーク~

オーディエンスは誰のもの?~オーディエンスは広告主の掌に。行動ターゲティングとアドネットワーク~ ~ネット広告にとってターゲットは、生身の人でなく、ブラウザに保存されたその人の行動データを記録した小さなファイルになろうとしている。その記録をCookie(クッキー)と呼ぶ。

そもそもCookieは、Webサイトの提供者がWebブラウザを通じて訪問者のコンピューターに一時的にデータを書き込んで保存させる仕組みである。一般的な使い方としては、会員制サイトにログインする時のID、パスワードをサーバの側で一定数値に変換して(変換しなくてもいいけど)、それをCookie値として、ユーザーのパソコンに記録しておく。

2回目からはログインの手間がなくなるといった使い方や、通販サイトで利用すると、気になった商品を「お気に入りリスト」に登録したり、かかわりのある商品を「お勧め商品」として提示したりといったことができる。基本的には、サイトと訪問者の間でやり取りする仕組みである。

Cookieを使ったWeb広告の手法

Web広告でも、Cookieを利用することは古くから行われていた。たとえば、1人の人に見せる広告の回数に制限をかけるといったことだ。

10万インプレッション、フリケンシー3回だと、3万3千人(正確にはブラウザ単位になるので、3万3千ブラウザ)に広告を掲載するという風に利用できる。これが進化して、たとえば新聞社のWebサイトの場合、訪問した読者がどのジャンルのニュースを見たか、どのコンテンツに多く触れたかを把握してその結果をCookieという形でその来訪者のパソコンに記録して、後でそのCookie値に応じた広告を出すというように使われる。

たとえば、自動車の情報を集めたコーナーに良く来ている人には、自動車メーカーの広告を多く出していく。こういった、読者のサイト内での閲覧履歴=行動を元に絞られた(ターゲットした)広告を出していく仕組みを「行動ターゲティング広告」と呼び、Cookieとは切っても切れない関係にある。広告メディアはこういう仕組みを使って広告主の望むターゲットに広告を表示することで、そのメディアにおける広告効果の最大化を目指すことができたのである。

アドネットワークの登場

ところが、アドネットワークというものが一般化してきて状況は変化する。

アドネットワークは、その運用会社から広告の配信を得ることによって、広告媒体社(上の例で言うと新聞社)が自ら広告主から広告出稿の注文を取ることなく広告収入を得ることができる。

従来から広告販売は広告代理店に任せてきたわけだから、ネット広告の仕組みもそれほど構造が変わるものではない、という媒体社の判断があったのかもしれない。いずれにしても、媒体社にとっては効率面で好都合な仕組みである。アドネットワークの運用会社はGoogleがその代表格と言えるが、今では日本国内でも数種類のアドネットワークが、さまざまなWebサイトへ広告の配信を請け負っている。

状況の変化は、アドネットワークと行動ターゲティング広告が結びつくことで表れた。アドネットワーク運用会社からオーディエンスに対して独自のCookieを発行することで、特定のWebサイトに限らずアドネットワークにぶら下がったすべてのサイト上の行動データをもとにしたターゲティング広告ができるようになったのである。

上の例を当てはめると、単に新聞社サイトの自動車コンテンツを見ただけでなく、アドネットワーク上の自動車専門サイトや、自動車のことが書かれているブログなどによく接触しているといったさらに「濃い」ターゲットに対して、自動車メーカーは広告を出すことができるようになったのである。

その上、自動車メーカーが自社サイトでの来訪者の行動とアドネットワークの行動データとを連結することで、さらに進んだターゲティング広告を掲載することができるようになった。(たとえば、一度来訪してくれた人を他のサイトで追いかけるように広告を表示する。)

さて、このことによって、広告主と広告メディアとオーディエンスの関係が大きく変わることになる。

変わる媒体社の役割

アドネットワーク以前は、媒体社が広告主に成り代わって広告メッセージを読者に伝える、という関係があった。あくまで読者は媒体社のものだったし、より効果の高い広告表示方法を広告主に提供するために、媒体社は主体的に広告に関わっていた。

ところが、アドネットワークに広告表示を任せることで、媒体社は広告に対する主体性を捨て、読者と広告の関係を気にすることもなくなり、訪れてくれたどんな読者に対してどんな広告が出ているのかさえわからなくなってしまった。

かくして、本来媒体社のものであった読者が、生身の実態からCookieというデータに形を変えることによって、媒体社の元から、広告主の手のひらに移ってきたのである。そして、媒体社はそのコンテンツによってのみ、読者からも広告主からも評価されるのである。


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