SEデザインでは、メディア全体の更新期を予感させる大きな転換点を背景に、「コミュニケーション デザイン」の領域やその情報伝達の技術に着目している。これまで我々が培ってきた編集やデザインの方法と現在の激変するマーケットとを有効に繋ぎ留め、より本質的なコミュニケーション技術の活用を促して行くことを目的として、この『コミュニケーション デザイン時評』を連載する。

株式会社SEデザイン
代表取締役 篠﨑 晃一


蒼穹の心

2011/02/02

今年の冬は日本海側が豪雪となり、関東平野は抜けるような青空が続いている。その空の青色を英語では「Azure」と言う。ただのBlueではなく、多分に抒情的な意味を湛えるのだが、和英辞書には、碧空(へきくう)、蒼穹(そうきゅう)と載っている。アズーア、アズール、アジュールなのか、発音は少しばかり日本語に馴染みが薄い。マイクロソフト社は自分たちの新しいサービスの体系を指し示すネーミングとして、この空の色としての「青」を意味する「Azure」という言葉を採用している。その体系がクラウドコンピューティングであるところが、ブランドの命名法から見てたいへん興味深い。


これからのモバイル情報環境は、iPhoneやiPadで先行するAppleに加えて、Googleが公開したAndroid OSに拠る陣営の参画により、スマートフォンやタブレットPCだけでなくTVやカーナビにまで拡張してくる。競合する環境の中でネットワークにつながる多種多様なガジェットが登場し、その領域は広がっていくのだが、ではどのようなコンテンツがこの環境に載るのにふさわしいのだろうか。これまでの音楽コンテンツの流通の進化を振り返るなかに、今後の情報環境におけるテキスト、画像、映像コンテンツの進化を占う何かを見つけることが出来るかもしれない。


ビル・ゲイツ氏は2008年6月末でマイクロソフト常任会長を退任し、現在は世界最大の慈善基金団体ビル&メリンダ・ゲイツ財団の活動に専念している。世界中にパーソナルコンピューティングを広めた、その情報技術の革新を見抜いた慧眼こそが注目されるのだが、改めて時代を振り返ると、ここでデザインやブランディングが負っていた重要性も再確認できる。


タッチパネルをインタフェースにしたタブレットPCやスマートフォンが多数登場し、そのコンテンツとしての電子書籍の市場がにぎわってきたように映る。だが、未だ実際のコンテンツ流通がブレイクしたとは言い難い。今後の市場の展開に対する期待と、これまでの紙メディアやマス広告などの既存システムへの危機感の裏返しとして、業界発の話題が先行せざるを得ないのだが、ここでは市場における実際のニーズを発見すること、その需要を喚起することこそが肝要である。


「クラウド」はバズワードとなった。「Web2.0」と同様に、指し示す領域や定義自体が曖昧なまま言葉だけが流布している。ゆえにその具体的未来像は未だ明確ではないものの、新しいソリューションの可能性に業界の眼が集まる。それがバズワードなのだ。「Web2.0」がもはやメディアに載らなくなったこの時期に、この言葉が啓発したソーシャルな価値やCGMは当たり前のものとなっているのだが...。では「クラウド」は単なる流行としてではなく、ここに重要な時代の潮流を読むことができる言葉なのだろうか。


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