IoTを加速させるインダストリー4.0

公開日:2016-03-01 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

IoT、「モノのインタネット」を語る上で、今、世界で「インダストリー4.0」が注目されている。

インダストリー4.0とは第4次産業革命を意味する。4度目の産業革命と言われるのはどういうことか、産業革命の歴史を探るとともに、「インダストリー4.0」で盛り上がるドイツの取り組みの紹介をすることで、IoTがどのように社会を変えていくかを追っていきたい。

第4次産業革命

IoTが生み出す社会変革を第4次産業革命と呼ぶことがある。そもそも第1次産業革命というのは18世紀に起きたイギリスでの産業革命を指す。18世紀末、それまで手動で製造が行われていた工場に蒸気機関を利用した機械が導入された。それによって、大量生産が可能となった。

次に起こったのは20世紀初頭、主にアメリカで起こった第2次産業革命である。動力が蒸気機関から電力に変わり、ベルトコンベアによるライン作業で、同一の品質のものを大量生産するという、少品種大量生産による産業が活発になった。このころの工場生産の代表的なものとしてフォード社が行った方式があげられる。これをフォード生産方式と呼ばれる。フォード生産方式は、製品の標準化、部品の規格化、製造工程の細分化を行い、徹底的に最適化を行って少品種大量生産を行ったのだ。

第3次産業革命は20世紀後半のITによる自動化である。ロボットの導入や機械の自動制御により、機械が人間にとって代わっていった時代でもある。 そして、現在第4次産業革命を迎えていると言われる。ポイントはインタネットである。インタネットが整備され、すべての機械設備、製品及び人との間で、いつでも、どこでもインタネットに接続され、コミュニケーションできる状態になる。これがこれまでの産業構造を変えていくのだ。

インダストリー画像1

ドイツから火がついた「インダストリー4.0」

IoTにまつわる最初の大きな動きとして、最初にスタートを切っていたのはドイツであった。ドイツはものづくり大国でもある。ドイツでは台頭する他の国に対抗するために、製造業の高度化が必須であった。製造業にICT、インタネットを導入することで、製造業自身を変えようとしたのだ。

実際、モノや人、製造設備、すべてがインタネットにつなげることによる産業構造、社会構造の変革を目指し、2013年4月から政府、企業、大学が合同で「インダストリー4.0」構想をスタートしている。参加企業としては、シーメンス、ボッシュ、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラー、ルフトハンザ、ドイツポストなどドイツの錚々たる企業が参加している。

一方、アメリカでは2014年3月、アメリカのシリコンバレーのトップ企業中心となって、インダストリアル・インタネット・コンソーシアムが設立された。主な参加企業はGE、IBM、インテル、シスコシステム、AT&Tなどである。さらに2015年には、ドイツの「インダストリー4.0」メンバーのトップ企業がインダストリアル・インタネット・コンソーシアムに参加をし、広くIoTを基盤とした社会を目指すことを表明している。

このように、現在、ドイツとアメリカを中心として、IoTによる製造業や、その他の産業の高度化を目指す活動が活発になってきている。

「インダストリー4.0」のコアは「スマート化」

そもそも「インダストリー4.0」は、世界中の工場内の機械設備、製品をスマート化し、それらをインタネットに接続し、 すべてのモノの間で、いつでも、どこでもコミュニケーションできる技術の実現を目的としている。スマート化というのは、モノの中にCPU、OS、メモリなどが組み込まれて、データ処理ができるようになることを指す。つまり、「インダストリー4.0」は、スマート化がキーとなっており、スマート化はIoT環境が実現された先の工業の姿だ。

工場のスマート化、スマートファクトリーも重要なキーワードとなっている。スマートファクトリーとはインタネットにつながった工場であり、「サイバーフィジカルシステム(CPS)」に基づく、新たなモノづくりを実現する。

サイバーとはICT環境を指し、フィジカルとは現実世界を指す。これらを結びつけるのがサイバーフィジカルシステムである。具体的には、工場内のあらゆる機器をインタネットに接続し、品質や状況などの現場のデータを保持、見える化することで効率化、さらにはラインの動的な組み替えを行うものだ。

このようなスマートファクトリーは新たなダイナミックセル生産という新たな生産方式を確立した。

ダイナミックセル生産とは、工場内の工程を担当する機械が、サイバー上のデータにリアルタイムにアクセスし、そのデータに応じて、生産する方式や生産する製品を組み替えていく生産方式である。これまでの大量生産の固定されたラインでの生産ではなく、データによってラインを動的に変え、生産する製品さえも変えていく画期的な生産方式だ。

これによって、同じ工場で違う形やデザインの製品を作ることが可能となり、デザインや構成が違っても、大量生産と同じ速度とコストで対応していくことが可能となる。

スマートファクトリーが実現するマスカスタマイゼーション

ダイナミックセル生産により、オーダーメードだけど工場の生産ラインで製造できる、つまりマスカスタマイゼーションが実現できる。 例えば、デジタル発注を受けて工場が動的に生産方式などを組み替えながら、個々の発注にあった製品を作り、顧客に届けることも可能だ。顧客ごと、製品ごとに異なるデザインや構成、注文、計画、生産、配送を、無駄なく円滑に実現する。これによって、究極的にはそれぞれの消費者の好みにあったオーダーメイドビジネスが実現できるのだ。

これはこれまでの少品種大量生産とは全くことなるビジネスとなる。顧客は、店で出来上がった製品のデザインを選ぶのではなく、自分の好みのデザインをデジタル発注し、その個性的なデザインのものを工場で作られ、顧客の元へ届けられるようになる。

ここまでIoTに関わる動きの一つ「インダストリー4.0」について追ってきた。IoTは単なる技術の変化ではなく、ビジネス構造を変えるだけのポテンシャルを持った環境変化である。IoTは、個々の顧客満足度の最大化をすべく、マスカスタマイゼーションという新たなビジネスをドライブするための基盤となっていく。

それを実現するのが、スマート化された工場、スマートファクトリーである。「インダストリー4.0」は、世界の工場をスマート化していくだろう。最終的には、様々な工場が垂直、水平にインタネットでつながり、顧客の要望に応じて、組み替えながら製品を作りあげていくだろう。これは製造業の究極の効率の最適化であり、顧客満足度の最大化なのである。

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