ネイティブ広告をネット広告の基本構造から考える

公開日:2016-02-23 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

ネット広告とは、「インターネット上のスペースを使い、広告主の広告を掲載し、対価を得るサービス」のことである。

しかし、メディアに広告クリエイティブを表示しただけでは、ネット広告として意味をなさず、必ずそれをクリックした先のwebページが用意されて初めてネット広告として成り立つといえる。 (リンク先のないネット広告も初期にはあったが、現在は存在しないだろう。)広告クリエイティブから、クリックして遷移した誘導先を一般にLanding Pageと呼んでいる。

また、ニュースメディアなどが、スポンサータイアップコンテンツをサイト内に展開する際に、そのコンテンツへのリンクのことを一般に誘導枠と呼んでいる。この場合の誘導先(Landing Page)は媒体社が対価を得て作ったページ、すなわちネット広告そのものとなる。したがって、誘導枠と誘導先がともに「広告」という定義でくくられることになる。
ここでは、Landing Pageという言葉に呼応するように誘導枠をTakeOff Elementと呼ぶよぶことにする。

ネット広告は下のような構造で理解することができる。

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【定義】二つのネイティブ広告

TakeOff Elementとしてのネイティブ広告は、iab分類 にあるように「媒体社の通常のコンテンツ・記事の中にある」か、広告枠にあっても「コンテンツに関連性のある」ものとされている。これらのネイティブ広告は、あるものは外部ページへリンクされる一般のディスプレイ広告と同じふるまいを取るものもあり、あるものは、掲載サイト内の特設ページへリンクするものもあると定義されており、リンク先の内容ではなく、広告表示の形式について分類されたものである。

一方で、コンテンツの形式という側面から見て、その内容にパブリッシャーがコミットし、パブリッシャーが作るないし、援助したものをネイティブ広告とする考えがある。一口にネイティブ広告と言っても、形式とコンテンツという二つの要素があると理解できる。

BI Intelligenceは、ネイティブ広告の市場規模を推定するために、これを「Social」「Native-Style」「Sponsorship」と3つに分けている。
以下コンテンツへのTakeOff Elementとしてのネイティブ広告をネイティブ・スタイル広告、と呼び、Landing Pageとしてのネイティブ広告をネイティブ・コンテンツ広告と呼ぶ。

 

ネイティブ・スタイル広告

ネイティブ・スタイル広告は、Interactive Advertising Bureau (iab)では6つのスタイルに分類している。

①インフィード型
②プロモートリスティング型
③ペイドサーチ型
④レコメンドウィジェット型
⑤ネイティブ要素を持つインアド型
⑥カスタム型

①から⑥の詳細な説明は、 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム社の『IAB ネイティブアド・プレイブック (日本語訳)』 にゆずり、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が2015年3月に発表したネイティブ広告の定義と比較し、理解を深めよう。

JIAAはiabの分類に準拠しながらも、ネイティブ広告の特徴的な①と④について定義している。

①インフィード広告
JIAAが定義するインフィード広告は下位区分として、媒体内誘導型、外部コンテンツ誘導型、フィード内表示型を提示しiabと同様に、媒体社が用意するコンテンツへ誘導するものと、一般的なLanding Pageへのものとに分類している。

④レコメンドウィジェット
iab分類では、サイト外へのページへのリンクとし、リンク先のコンテンツの内容に言及はない。JIAAはリンク先の定義はなく、「誘導枠」の一形式として扱われている。

Spending on native advertising is soaring as marketers and digital media publishers realize the benefits, Business Insider , 2015/5/20,

http://www.businessinsider.com/spending-on-native-ads-will-soar-as-publishers-and-advertisers-take-notice-2014-11?ref=techtout(現在はリンク切れ)

http://www.dac.co.jp/press/2014/iab-1.html(現在はリンク切れ)

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ネイティブ・コンテンツ広告

「ネイティブ広告って、記事体広告の事でしょ?」という指摘が多くなされているが、日本ではいまだはっきりとした決着のついていない議論の一つである。
米国のオンラインマーケティング情報に特化したメディア『DIGIDAY』の記事では、Natividad(のうちのネイティブ・コンテンツ広告)と従来のAdvertorial:アドバトリアル(記事体広告)との違いについて、下記のように記述している。

"ネイティブ広告とアドバトリアルの違いはまさにコンテンツにある。(ネイティブ広告は)発行人が制作サービス部署(アトランティックで15、バズフィードで20近くのチームがある)を作り、ブランド広告主がメディアの口調(the voice of the outlet,)に合わせたコンテンツを作るのを助けるが、アドバトリアルは必ずしもそうではない。 (筆者翻訳)"

アドバトリアルは、日本では、記事体広告という言葉を当てて「記事のような形の広告」全般を指している。
ネイティブ・コンテンツ広告は、その制作にパブリッシャーがコミットして、パブリッシャー内の制作チームや記者がかかわるので、「記事の体を成した」といった表現はもはや不適切で「記事でもあり広告でもある」という意味で「記事広告」といった、最近の言葉遣いが適当であろうと、考えられる。

パブリッシャーの制作チームが広告制作に参加する意味・価値は、なによりメディアとオーディエンスとの関係性を理解しているからである。メディアは、パブリッシャーとオーディエンスとのエンゲージメントで成り立つ。その関係性の中に、ブランドをうまく置くことで、パブリッシャーとブランドとオーディエンスに共通のエンゲージメントを成立させるのが、ネイティブ広告の価値である、と言える。

http://digiday.com/publishers/native-ads-or-advertorials/

パブリッシャーとオーディエンスとのエンゲージメントを崩さないからこそ、ネイティブ・コンテンツ広告へのTakeOff Elementは、インフィードなり、リコメンドウィジェットなりの「記事へのリンクと同じスタイル」を取ることが許されるとし、それ以外はネイティブ広告とは呼ばないと主張する向きもある。JIAAのインフィード広告の下位区分である媒体内誘導型の定義における、「媒体社が制作したコンテンツへ誘導する形式」という定義にこの発想が反映されていると考えられる。ここが、ネイティブ広告のメインストリームなのだ。

記事体広告の発展形で、パブリッシャーの持つCMSの利用権を販売して、編集記事と同じスタイルのページを広告主の意のままに制作できるというサービスもある(Fobes Brand Voice)。

一方、パブリッシャーの記事を丸ごと提供する「スポンサード・コンテンツ」というものもある。これは、提供する広告主が、自社のブランドイメージや、商品が実現する世界観と合致する編集記事の制作費を賄うことで、パブリッシャーとオーディエンスのエンゲージメントの中に広告主のブランドイメージや製品の提供する利便性を練りこんでいくといったものである。

以上をまとめると、ネイティブ・コンテンツ広告は、記事体広告、記事広告、スポンサードに3分類できる。
ネイティブ・コンテンツ広告への誘導枠は、ネイティブ・スタイル広告に加えて、ディスプレイ広告などの、一般広告枠に設定されることもある。さらに、他のメディアからのリンク(referral)、検索結果から、ソーシャルメディアのシェアからのもの、といった広告以外のTakeOff Elementからの誘導もある。
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ネイティブ広告に一般広告を含めた、ネット広告におけるオーディエンスの流れを図示すると、下記のようにまとめることができる。
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※JIAAのネイティブ広告に関する推奨規定では、広告のリンク先(誘導先)の設置場所として、編集記事(純記事、他社の著作物)を想定している。

※参考資料
JIAA(一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会)
●ネイティブ広告の定義と用語解説(2015年3月18日発表)
http://www.jiaa.org/native_ad/index.html

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