2021年11月、感性AI株式会社が提供するソリューション「感性AIアナリティクス」と「感性AIブレスト」が、総務省が後援する「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021」でAI部門ニュービジネスモデル賞を受賞しました。今回は、この「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」の機能やメリット、背景にあるAIの仕組みについて解説します。
ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021とは
「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021」は、IoTやAI、クラウドサービスなどが社会情報基盤としてさらに発展・確立することを目的として、一般社団法人ASP・SaaS・AI・IoT クラウド産業協会(略称:ASPIC)が総務省の後援のもとで開催しています。
毎年、総理大臣賞として1つのサービスが選ばれるほか、社会業界特化系/基幹業務系/支援業務系/データ活用系ASP・SaaS部門、AI部門、IoT部門、IaaS・PaaS部門、運用部門、ユーザ部門の各部門において、総合グランプリや準グランプリ、審査委員会賞などが選出されます。
(画像出典:一般社団法人ASP・SaaS・AI・IoT クラウド産業協会『ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021』)
「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」は、この「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021」において、AI部門のニュービジネスモデル賞を受賞しました。
「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」の機能やメリット
それでは、「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」の主な機能と活用シーン、またそのメリットについて見てみましょう。
主な機能と活用場面
「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」の主な機能と活用シーンは、以下のとおりです。
感性AIアナリティクス
(画像出典:PR TIMES『「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」が総務省後援「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021」にてAI 部門ニュービジネスモデル賞を受賞』)
感性AIアナリティクスは、ネーミングやキャッチコピー、パッケージの案を入力すると、それらの印象をAIが瞬時に評価するサービスです。
印象評価は「厚いー薄い」「安心なー不安な」「現代風なー古風な」などの印象尺度で表示され、ネーミングはポジショニングマップ(印象尺度を座標軸としたマップ)での表示もできます。キャッチコピーは連想語(消費者が連想するワード)のチェックも可能です。
商品の開発やリニューアルの際、「商品に持たせたい印象とネーミングの音の響き、キャッチコピー、パッケージデザインの色の印象が合っているのか?」などの確認が必要な場面がでてきます。感性AIアナリティクスは、これらを瞬時かつ定量的に評価します。
感性AIブレスト
(画像出典:PR TIMES『「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」が総務省後援「ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2021」にてAI 部門ニュービジネスモデル賞を受賞』)
感性AIブレストは、商品の特徴やイメージを表すコンセプトワードや、商品の世界観を表すコンセプト画像を入力すると、AIがネーミングアイディアとキャッチコピーアイディア、パッケージ色彩アイデア、オノマトペ(ふわふわ、ワクワクなど状態や動きなどを音で表現した言葉)生成を瞬時にブレスト(ブレインストーミング)するサービスです。
商品の開発やリニューアルの際に「商品のイメージに適したネーミング、キャッチコピー、パッケージデザインの配色にはどのようなものがあるのか?」などの確認の際に活用できます。
活用メリット
「感性AIアナリティクス」「感性AIブレスト」の活用メリットとして以下があります。
「感性価値」を創造・改善できる
「感性価値」とは、機能性や信頼性、価格などの従来からの価値とは別の、生活者の感性に直接働きかけ、感動や共感を呼び起こす価値のことです。ブランド研究の結果、製品の価値には機能的価値と感性価値の両方があることがわかっています。
この感性価値の創造はこれまでは、デザイナーやコピーライターの経験や勘に頼ってきました。感性AIの活用により感性価値創造・改善の支援が受けられ、「感性価値マネジメント」が実現できます。
少人数でのアイデア出しが可能となる
ネーミングやキャッチコピーのアイデア出しには、これまではある程度の人数が必要でした。しかし、ネーミングやキャッチコピーのアイデアを出力する感性AIの活用することにより、在宅勤務や一人の場合でもアイデア出しが実施しやすくなります。
市場調査の回数を減らせる
感性価値の評価は従来、消費者の印象調査などの市場調査により行ってきました。感性価値の評価が可能な感性AIの活用により、市場調査の回数が削減でき、コストや開発期間を軽減できます。
部署を超えてコンセプトやイメージが共有できる
商品開発・リニューアルは多くの部署の共同作業で行われます。商品コンセプトやイメージをネーミングやキャッチコピー、パッケージの色彩、オノマトペなどで具体的に示す感性AIを使用すれば、部署を超えたコンセプト・イメージの共有が容易になります。
背景にあるAIの仕組み
感性AIアナリティクス/ブレストの背景にあるのは、国立大学法人電気通信大学 坂本研究室で長年研究されてきた、感性工学をAIと融合させた感性評価AI「Hapina」です。
感性工学とは、顧客の感性イメージを数値化し、それに基づいて製品開発を行う技術のことです。日本で始まり、アジアや欧米に広がって発展しました。
感性イメージを数値化するため、坂本研究室では「ふわふわ」「ワクワク」など748語のオノマトペが、「厚いー薄い」「安心なー不安な」「現代風なー古風な」などの43の印象評価尺度でどのような評価になるかを、大学生を被験者として答えさせる実験を長年にわたって行いました。
その結果を解析することで、子音の種類や濁点の有無、母音の種類など各音韻要素による印象評価を下の図のように数値化しています。
(画像出典:清水祐一郎ほか『オノマトペごとの微細な印象を推定するシステム』人工知能学会論文誌、29巻1号SP1-E(2014年))
Hanapiには、この音韻要素ごとの印象評価の数値が組み込まれています。それにより、音韻要素が任意に並んだ言葉を入力すれば、その言葉の印象評価を出力できるのです。
また、多数の被験者から得られた、文章・テキストや画像、色などを表現するオノマトペをHanapiに学習させることで、色彩の印象評価を行ったり、コンセプトや画像を入力してネーミングやキャッチコピーを出力したりが可能になっていると考えられます。
まとめ
感性AIの活用により、感性価値の創造・改善や少人数でのアイデア出し、市場調査の回数削減、部署を超えてのコンセプトやイメージ共有が可能となります。この技術を利用して、今後さまざまな商品の感性価値マネジメントが行われていくのではないでしょうか。