ニューノーマル時代のビジネスを支える人材の「リスキリング」とは?

公開日:2020-11-24 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

importance-of-talent-reskilling_1コロナ禍の影響が長期化する中、企業の間ではニューノーマルを前提とした新たなビジネスのあり方を探る動きが活性化しています。なかでも喫緊の課題の1つとなっているのが「リスキリング」です。まだ耳慣れないこの言葉ですが、ネットワークを介したコミュニケーションが前提となる社会では、ビジネスとIT(デジタル)の双方に精通し、これまでにないアプローチで業務課題を解決するスキルが不可欠です。それだけに、既存の人材の再教育を通じて新たな価値を引き出す「リスキリング」は、すべての企業に共通する経営課題となりつつあります。

リモートワークの中で注目が集まる「リスキリング」

「リスキリング(Re-skilling)」という言葉自体は、以前からHRM(ヒューマンリソースマネジメント)の世界で用いられてきたものです。もともとはビジネス環境に応じた職能の刷新、またそのための人材の再教育・育成の意味で使われてきました。
それがにわかに注目されるようになったきっかけは他でもありません、新型コロナウイルス感染症の拡大です。中国の地方都市が発生源とされるこの新たな感染症は瞬く間に世界中に拡がり、すべての国の社会や経済に過去に例のないほどのインパクトを与えることになったのはご存知の通りです。
しかし、なぜ目下のコロナ禍の中でリスキリングが注目を集めているのでしょうか。その理由は、突如として目の前に現れたリモートワーク社会にあります。新型コロナウイルスの感染防止が大きな社会課題となったことで、人と人との対面のコミュニケーションは大きな制約を受けることになりました。企業は相次いで社員の働き方を在宅勤務に切り替え、取引先や社外の関係者ともリモートで仕事をすることが、すでに当たり前になっています。
また、小売業などでは顧客が実店舗に来店できなくなった結果、これまでeコマースを手がけてこなかった企業でも、否応なしにネットショップやネット取引のチャネルの開設を余儀なくされました。飲食業もテイクアウトに重点を移し、その集客や受注のためのネットワークやシステムを次々と導入しつつあります。
このように、これまでの仕事のスキルやノウハウが通用しない状況に直面したことで、さまざまな業種・業態の企業はニューノーマルのための新しいビジネススキルを習得する必要に迫られています。そのための人材の再教育が「リスキリング」なのです。

ビジネスとデジタルを仲立ちする新たな人材像

では、ニューノーマルの世界では、実際にどのようなスキルが求められるのでしょうか。もっとも重要な能力として挙げられるのが、「ビジネスとIT(デジタル)を仲立ちする横断的なスキル」です。
リモートワークを例に見てみましょう。オフィスに出勤することなく、自宅や職場から離れた場所で仕事をするリモートワークの浸透に向けて、どの企業も新たなコミュニケーション基盤の導入を進めています。こうした環境では、マネージャーなら自分の部下の働きぶりを目で見て評価する、現場なら同僚同士でちょっとした質問をやりとりするといったことが難しくなります。
また、小売りや飲食などのビジネスでは、これまで店舗で行っていた顧客対応がeコマースサイトなどにシフトします。リピーターからのクチコミも、対面ではなくネットワークの中でどう拡げていくかとなると、まったく勝手が違ってきます。
これらの課題を解決には、ビジネスとデジタルの両方に精通した人材が不可欠です。これまでのように実務の現場は経験豊富な人材に任せて、一方でネットワークやシステムはIT担当者が受け持つという構造は通用しなくなります。そこでは業務課題を的確に把握し、それをデジタルのアプローチで解決するスキルを持った人材が求められてくるのです。
こうしてみると、リスキリングの課題はかねてから指摘されてきたDX(デジタルトランスフォーメーション)の課題と重なる部分が多いことに気がつくはずです。その意味では、コロナ禍は日本企業が本気でDX推進に取り組むための、格好の起爆剤になったと言えなくもありません。人類が経験したことがないような感染症が発端とはいえ、ここはあえてポジティブに捉えたいものです。

ニューノーマルで変化する雇用形態と評価の手法

ビジネスとデジタルを結びつける新たなスキルを持った人材を育てる=リスキリングの方法を考える前に、ニューノーマルにおけるビジネスでは、どのような働き方が求められてくるのかについて考えてみたいと思います。
まず、ニューノーマルの世界では雇用形態が大きく変わります。リモートワークが中心となり、勤務場所や勤務時間といった制約がなくなる結果、正社員だけではなく、パートタイムワーカーやフリーランスなど、さまざまな人材を使い分けていかなくてはなりません。
もう1つの大きな変化が、「ジョブディスクリプション型雇用(ジョブ型雇用)」への移行です。日本語で「職務記述書」と訳されることが多いジョブディスクリプション(Job Description)型雇用は、仕事の内容や達成目標、責任の範囲、給与や福利厚生といった条件などをすべて明文化し、その内容に基づく契約の下で仕事をする雇用スタイルです。リモートワークでは、「○○さんに任せておけば大丈夫」といった属人化した雇用関係が通用しません。それだけに最初に仕事内容を明確に定義した上で、雇用関係を結ぶことがお互いにとって重要になります。
また、人材の評価にも大きな変化が生まれます。リモートワークでは、同じオフィスで毎日一緒に仕事をすることができません。この結果、どうしても目に見える成果=業務の達成度や売上・利益などで評価する傾向になりがちです。そうなると、特に難しい仕事を任されている部下は、「上司は本当に自分の努力を評価してくれているのだろうか?」といった不安を感じるケースが出てきます。ここでも、ニューノーマルに対応した新しい評価のスキルが必要になってきます。
さらに、エンゲージメントという観点での変化も見逃せません。ジョブ型雇用が主流になってくると、「できる人材」ほど会社との関係が対等になってきます。自信のある人なら転職の道を選んだり、独立したりするケースも珍しくなくなるはずです。それだけに、こらからの企業には社員との共感や信頼関係を常に高めながら、「この会社で長く働きたい」と思ってもらうための努力が求められてきます。

人材の「見える化」こそが、リスキリングの第一歩

このように激変する働き方と、それに伴う個々の人材との関係に対応していくために、企業はどのような取り組みを行っていくべきなのでしょうか。具体的には、すでにご紹介したような変化に個別に対応していくことになりますが、その前段階として「リスキリングを前提とした人材のポートフォリオ化」は非常に有効な手段です。
そもそも自社内にどのような人材がいて、彼らがどのような適性を備え、リスキリングを通じて何をさせるのかが明確になっていなければ、有効な対策も立てようがありません。ここでは、ポートフォリオの作成方法の概略をご紹介します。
まず必要なのは、たとえばジョブ型への移行など自社の目標を設定した上で、そこに必要となる人材像を類型化したマップの作成です。それができたら、実際に管理職から現場の社員まで、すべての人材を該当するポジションにマッピングしていきます。つまり、自社の人材とスキルの「見える化」を行うのです。
ここで完成したマップをもとに、配置転換で十分な人材、再教育で伸びる人材、これまで通りの既存業務なら対応できる人材、それ以外の社外から登用しなければならない人材を明確化します。ここまでできれば、次の教育プログラムの導入や配置転換、外部からの人材採用といったステップに進んでいけるようになります。
こうした取り組みは国内でまだ始まったばかりの段階で、具体的な成果を上げている企業も現時点では少数です。しかし、セールスの手法や顧客との接点、またそこで必要とされるスキルが一変するニューノーマルにおいて、リスキリングは避けて通れない課題です。未来の向けた成長を止めないためには、海外の事例なども参考にしながら、すべての企業がこの課題をあらためて認識し、早い段階で着手することが求められています。

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