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人工知能(AI)のマーケティング活用で 期待が高まる自然言語処理(NLP)の進化

SEデザイン編集部
2021-08-25

135680216_l人工知能AI)がさまざまなビジネス領域で活用されるようになった現在、その波はマーケティングの領域にも確実に及んでいます。AIは、画像認識による消費者のセンチメント分析やディープラーニングの手法に基づく仮説の立案、また広告のデザインやコピーの作成など、これまでマーケティングの領域で人間が担ってきた高度な業務を代行できるレベルにまで進化しています。なかでも今後の精度向上に大きな期待がかけられているのが、大量のテキストデータをAIが解析する自然言語処理NLP)です。この記事では、多くのマーケティング活動に変革をもたらしつつあるNLPのユースケースについて取り上げてみたいと思います。

消費者の心理や行動原理を解析し
マーケティングの意思決定を支援

人的な作業に依存したマーケティングは、すでに限界に達しています。優れた成果を創出するマーケティング施策においては、ターゲットとなるオーディエンスに向けてオファーを提供し、ただ反応を待つだけではもはや十分ではありません。ビジネスの持続的な成長を支える真の成果を生み出すためには、データに基づくパーソナライズされたマーケティングによって高度な価値提案を行い、新たなオーディエンスを生み出さなければなりません。

リソースの限られた小規模なチームでこれを実現するためには、インテリジェントな自動化ツールやAIテクノロジーが欠かせません。なかでも自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)は、長くAIと進化を共にしてきた重要なテクノロジーです。すでに私たちの生活の一部となっているインターネット空間には、さまざまな粒度のテキスト情報や音声情報があふれており、これらはすべてマーケティング戦略を立案する上での重要な資産です。そして、人間が書く言葉や話す言葉に潜在する意味をAIで解析し、言葉だけからは見えにくい消費者の心理や行動原理を明らかにしてくれるのがNLPです。

以下では、刻々と変化する市場、マーケティング環境の中で「いつ」「誰に向けて」「何を」提案すべかを定量的に把握し、マーケティングの意思決定を支援するNLP活用の代表的なユースケースについて見ていきたいと思います。

オーディエンスに共通する関心事、トピックの抽出

オーディエンスに共通する関心事やトピックの抽出は、NLPが大きな効果を発揮する領域です。たとえば、SNSやECサイトでオーディエンスがどんな意見を発信しているかを分析することで、共通の関心事を特定し、ターゲットとなるオーディエンスに向けた最適な提案に生かすことができます。
また、競合する製品やサービスに対するオーディエンスの評価は、企業が情報を公開していない限りなかなか入手しにくいのが現状です。それだけに、さまざまな口コミ情報があふれるSNSからは、NLPによって高い価値を引き出すことができます。

SEO対策のためのキーワード検出

SEO対策のためのキーワード検出では、インターネット上の膨大なテキストデータや、既存顧客とのやりとりで発生するテキストデータから関心の高いキーワードリストを生成し、それを自社のSEOキーワードと照合することで、新たな施策の立案や改善に利用します。たとえば、カスタマーサポートのメールを分析した結果、特定の機能に関する質問が多いことがわかった場合、それに基づいてSEOキーワードリストを更新することで、クリック率を向上させ、トラフィックを増加させることができます。

センチメント分析から短時間で高度なインサイトを獲得

センチメント分析は、サーベイを通じて消費者がある質問に対してポジティブな感情を持っているか、それともネガティブな感情を持っているかを明らかにするマーケティング手法です。マーケティング担当者は、ここから多くのインサイトを獲得することができますが、自由回答のアンケート集計、分析には多くの時間を要することが1つのネックです。

また、自由回答で用いられる言葉の表現や粒度は、回答者によってまちまちであることに加えて、分析も担当者の主観的な判断に依存しやすい傾向があります。こうした課題に対してNLPを活用することで、明確な判断基準に基づく精度の高いインサイトを短時間で獲得することができるようになります。

チャットボットのデータ分析によって、リードの質を向上

チャットボットは、人手を介さずに見込み客、あるいは既存顧客とコミュニケーションをするための手段として、急速に普及が進んでいます。ここで集約されるテキスト情報をNLPで解析することで、質問の優先順位や見込み客の

質(リードの質)を明らかにすることができます。
現在のチャットボットは、一定の範囲に限定された学習済みのタスクにしか対応することができませんが、チャットボットに寄せられる問い合わせは、Eメールからの問い合わせよりも緊急度が高いことが多く、こうした傾向が明らかになることで、顧客満足度につながる多くの回答パターンの準備や、製品の改善点の特定にもつながるだけに、その解析結果には高い価値があります。

音声検索の解析も可能にする高度な文脈理解

以上はテキストデータのAI解析によるNLPの代表的なユースケースですが、組織内に蓄積されたデータをより深く理解し、新たな製品やサービスの開発、顧客満足度の向上につなげるためのNLPのユースケースは他にもたくさんあります。

またNLPの技術は、Siri、Alexaなど急速に普及しつつあるリスニングデバイス、音声検索システムにも応用されています。NLPは今後、単語によるインターネット検索よりもさらに高度な、話し言葉の文脈理解にも対応した進化を遂げながら、マーケティングの領域にますます大きな成果をもたしてくれることは間違いありません。

NLPの進化を支える「汎用言語モデル」の研究という観点においても、2018年にGoogleが公開し、現在はGoogle検索でも用いられている汎用言語モデル「BERT」は、複雑な単語の組み合わせ、文章に対応し、かつてない精度でユーザーが求める検索結果を返すことができるようになっています。

また、米国の非営利団体「OpenAI」が2019年に発表した「GPT-2(Generative Pre-trained Transformer-2)」は、1000万ページにも及ぶWebページをAIが学習することで、文章を自動生成する画期的な汎用言語モデルとして、世界に衝撃を与えました。これに続いて、OpenAIが2020年に発表した「GPT-3」は、さらに膨大なテキストデータを学習することで、人間が書いた文章と区別ができないほどの精度を実現すると言われています。

こうした進化は、現状でルールやシナリオに基づいたタスクしか実行できないチャットボットのような仕組みを、さらに高い次元に押し上げるNLPの大きな可能性を示しています。マーケティング以外の用途に目を向けてみると、出口の見えないコロナ禍によって、フェースツーフェースのコミュニケーションに制約がある現在のビジネス環境において、多くのコミュニケーションは社内SNSなどのプラットフォーム上で行われるようになり、ここでも膨大なテキストデータが蓄積されています。

これらのデータを解析することで、かつてない業務変革を推進することも可能であるだけに、NLPはマーケティング領域にとどまらず、あらゆるビジネス領域にイノベーションをもたらす、まさに未来のテクノロジーなのです。あらゆる場所で人々が発する言葉に込められた意味を読み取り、その先にあるニーズを予測するNLPのこれからの進化には大きな注目が集まります。


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