マーケティングオートメーションを新たな次元に導くAI活用

公開日:2021-12-28 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

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マーケティングオートメーションを新たな次元に導くAI活用最近は「MA」という略称で呼ばれることも多い「マーケティングオートメーション」。MAは、企業が利益を拡大していく上で不可欠なマーケティング活動を自動化する手法として注目を集め、すでに多くのベンダーからMAに特化した豊富な機能を備えたツールが提供されています。このMAの世界が現在、人口知能(AI)の急速な普及によって新たな段階へと移行しようとしています。本ブログでは、最先端のAIを活用することで従来のマーケティング活動にどのような変化が生まれ、またそこからどのような成果がもたらされるのかについて整理してみたいと思います。

MAに対する誤解が招く、マーケティング活動の悪循環 

広範なマーケティング活動を自動化する「マーケティングオートメーション(MA)」の概念について、一度も耳にしたことがないという人はほとんどいないのではないでしょうか。しかし、2000年ごろに米国で原型が開発され、日本では約10年前からさまざまなツールが提供されるようになったMAについては、言葉自体は広く知られている反面、意外な誤解もあります。 

オートメーション=自動化」という言葉のイメージから、MAによってマーケティング活動からは一切の人的作業が排除されると受け止めている人もいるようですが、実際にはそうではありません。MAツールの運用では、施策の要件や具体的な内容は人間が手作業で設定する必要があり、キャンペーンなどの施策を立案するのは人間、それを実行するのがМAツールという役割分担が前提となっています。具体的には、見込み客のペルソナに基づくジャーニーの仮説立案、ナーチャリングのためのシナリオ作成、またMAツール上でのワークフローの設定などはすべて手動で行う必要があります。 

MAツールの導入に際して、「オートメーション」という言葉に過度に期待するあまり、こうした人間とМAツールの役割分担を理解できていなかった場合、その先には大きな試練が待ち受けています。いざ運用を始めてみると、十分な人的リソースが確保できない、機能が複雑で使いこなせないといった状況が発生し、キャンペーンの成果が一向に上がらない悪循環に陥ることになります。こうなれば、MAツールの導入そのものが失敗に終わるだけでなく、データの扱いに不慣れなマーケティング担当者のオペレーションによって、個人情報の漏洩リスクさえ生まれかねません。 

加速度的な進化を遂げる第三世代のAI 

しかし、こうした状況はAIの登場によって劇的に変わろうとしています。AIは一般的に、「コンピュータを用いて人間の知能を人工的に再現したもの」と定義されています。高度な分析アルゴリズムでデータに隠されたパターンや特徴を学習することで、人間の行動や知能を模倣するように設計されているのがAIだということです。 

AIの歴史について簡単に振り返ってみると、AIの概念が最初に提唱されたのは1950年代の米国でした。しかし、最先端のコンピューターテクノロジーの活用によって当時は大きな注目を集めた第一世代のAIも、ビジネス上の複雑な課題にまでは対応できなかったことから、ブームはいったん終焉を迎えることになります。 

次にAIが脚光を浴びたのは1980年代です。この第二世代のAIは、第一世代とは比較にならないほどの膨大な情報を処理できるようになりましたが、自動化と呼べる域には達しておらず、情報の入力や手順の設定などは人間が手作業で行わなければならなかったため、その活用は一部の領域に限定されていました。 

そして、現在につながる第三世代のAIが登場したのが2000年以降です。この段階のAIは、「機械学習」の手法をベースにビッグデータから必要な知識を自ら収集する能力などによって加速度的な進化を遂げ、その後も「ディープラーニング」といった高度な手法が誕生したことにより、自動運転車に代表されるX-Tech(クロステック)と呼ばれるビジネスのあらゆる領域で活用されるようになっていきました。 

ディープラーニングは、人間の脳の仕組みに近い人工的な思考回路のネットワークを構築することで、膨大なデータの特徴を学習し、これまでは人間が行っていた推論や認識を自ら行う機械学習の手法の1つです。こうして、これまで人間が行っていた多くの作業を代行できるAIには、既存のビジネスに変革をもたらす大きな期待がかけられています。 

AIによって実現するマーケティング活動の変革

では、ディープラーニングなど手法によって現在も進化を続けるAIは、これまでのマーケティング活動にどのような変化やメリットをもたらしてくれるのでしょうか。マーケティングの領域でAIが注目されるようになった背景にはさまざまな理由がありますが、代表的なものとしては以下の2つが挙げられます。

1.人間の処理能力を超えたデータの爆発的な増加

まず、ビジネスで利用されるデータ量が爆発的に増加していることです。これからの10年間において、インターネットのトラフィックとそこで発生するデータは、これまでの10倍の速度で増加すると言われています。さらにIoTやエッジコンピューティングといった産業用途で用いられるセンサーが生成するデータなども含めると、今後のデータ量の増加は予測がつかないほどです。

マーケティングの領域だけで見ても、スマートフォンやタブレットなどのデバイスから生成されるインターネットの閲覧履歴や行動履歴といったデータを、人手で処理することはもはや不可能です。ここでは、自らデータの特徴を学習することができる第三世代のAIが大きな役割を果たします。

2.ますます高度化するパーソナライゼーション

もう1つの理由は、これからのマーケティング活動では、さまざまな属性や過去の購買履歴などに基づいて顧客をセグメントし、一人ひとりの顧客に最適化されたメッセージを届けるパーソナライゼーションの重要性がますます高まっていくことです。

現在の消費者は、スマートフォンやタブレットといった複数のデバイスを使って商品やサービスの購入を行うほか、SNSなどの多彩なチャネルを通じた情報発信にも積極的です。これにより個々の消費者単位のパーソナライゼーションはますます複雑化しており、ここでも膨大なデータの分析によって見込み客のニーズや嗜好を特定するAIが大きな価値を発揮します。

音声情報も読み解き、人間との境界がなくなるAIの可能性

では、AIはこれまで人手で行っていたどのようなマーケティング業務を代行してくれるのかについて、いくつかの例で見ていくことにします。

1.顧客生涯価値(LTV)を向上する高度なデータ分析

自社のシステムに蓄積された膨大なデータの管理や分析にAIを利用することで、マーケティングは新たな次元に移行することができます。顧客の属性、行動履歴などに基づいて、購買確率が高い見込み客におすすめ商品をレコメンドすることはもちろん、その後の行動を予測することで高度にパーソナライズされたメッセージを届けて、エンゲージメントを高めることも可能です。

従来のMAツールでは、こうした作業は主に人間が行ってきましたが、AIはこれを代行してくれるだけでなく、顧客の購買ジャーニーを踏まえた精度の高いデータ分析を通じて、顧客生涯価値(LTV)の向上に貢献します。

2.キャンペーン施策の立案と継続的な改善

データに基づく新たな施策の立案においても、AIの高い価値を発揮します。AIによって成果につながらなかったキャンペーンの要因を分析し、新たな仮説と検証のサイクルを繰り返すことで、キャンペーンのシナリオは回数を重ねるごとに改善されていきます。

例えば、季節やトレンドに応じた商品入れ替えのタイミングや、パーソナライズされたメッセージの最適化など、これまでは一定の経験値が必要だったシナリオの改善をAIが代行し、キャンペーンの成果を高めてくれます。

3.チャットボットによる無人の顧客対応

最近は、商品やサービスに関する顧客からの問い合わせ対応にもAIが活用されるケースが増えています。チャットボットは、人手を介さずに見込み客、あるいは既存顧客とコミュニケーションをするための手段として、急速に普及が進んでいます。ここでは問い合わせメールのテキスト情報をAIによる自然言語処理(NLP)で解析することで、対応の優先順位や見込み客の質を明らかにすることができます。

NLPの技術は、Siri、Alexaといったリスニングデバイス、音声検索システムにも応用されています。音声情報の文脈も読み解くことができるNLPは今後、マーケティングに大きな成果をもたしてくれることは間違いありません。

AIへの積極的な投資と人材のリスキル

一部では、マーケティングオートメーションとAIがほぼ同じ意味で捉えられているようですが、AIが実現するのは単なるプロセスの合理化だけではありません。AI膨大なデータに隠された文脈から新たなインサイトを導き出し、リアルタイムで改善のサイクルを繰り返すことでマーケティング活動を継続的に進化させます。

しかし、AIに潜在するこうした可能性を意識しながら活用できているマーケティング担当者は、まだ少数だと言われています。コロナ禍がもたらしたパンデミックの中で消費者の需要は急速にECにシフトし、この新たな日常、ニューリアリティを前提としたマーケティング活動においては、データをいかにして有効活用するかが最優先のテーマとなります。

最近はAIが搭載されたMAツールも提供されてようになっていますが、ビジネスの持続的な成長を目指す上では、自社のマーケティング活動の現状を再度見直し、マーケティングオートメーション、AI、そして人間が果たすべき役割をあらためて明確化しなければなりません。それにより、AIに対してどのような投資を行い、またどのような人材の再教育(リスキル)が必要であるかといった、新たなマーケティング戦略の輪郭が見えてくるはずです。 

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