WACUL Marketing DX Award 2021に見るAIの活用事例を解説

公開日:2022-05-30 更新日:2024-02-22 by SEデザイン編集部

目次

109801529_presentationデータ分析ツール「AIアナリスト」でマーケティングDX(※)の自動化を支援する株式会社WACUL(ワカル、以下WACUL)は1月、マーケティングDXに積極的に取り組む企業と担当者を称える『WACUL Marketing DX Award 2021』の受賞企業を発表しました。今回は、このWACUL Marketing DX Award 2021に見るAI(人工知能)の活用事例を紹介します。

※マーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いることでマーケティング業務のあり方をアップデートすること。

WACUL Marketing DX Award 2021とは

最初に、WACULが提供するサービス「AIアナリスト」について紹介しながら、WACUL Marketing DX Award 2021の概要について見てみましょう。

WACULとは

WACULは、ビッグデータと独自の知見により、企業のマーケティング領域におけるDXを支援しています。2010年にデジタルマーケティングのコンサルティング事業を開始した同社は、2015年にAIを活用したデータ分析と独自のコンサルティングの知見を融合したマーケティングDXツール「AIアナリスト」をリリースしました。

WACULの事業内容は、このAIアナリストを活用したコンサルティングや、フリーランスなどのマーケティングDX人材と企業のマッチング、マーケティングDXの人材育成・研修など。「機械(ツール)が得意なことは機械にまかせ、人はより高い価値を生み出す施策に集中する」ことを可能とするサービスにより、企業・マーケターの生産性を最大化することを目指しています。

WACUL が提供する「AIアナリスト」とは?

WACUL が提供する「AIアナリスト」は、クラウド上で利用可能なAIマーケティングDXツールです。Googleが提供するWebサイト分析ツール「Google Analytics」のデータをもとに、企業サイトの分析から改善ポイントの提案、施策の管理、成果の検証を行ってデジタルマーケティングのPDCAを支えます。

AIアナリストに連携された3.6万超のサイトのアクセス解析データと、約400万個の改善提案実績から導き出した1.2万超の独自の改善PDCAデータをベースとし、データを根拠に成果を伸ばすための改善施策を提案。それにより、マーケターはデータ分析や施策管理、効果検証などの煩雑な作業をAIアナリストにまかせ、本来行うべき戦略的なタスクに集中することができます。

WACUL Marketing DX Award 2021の概要

WACULが開催するWACUL Marketing DX Awardは、より多くの企業の経営におけるDXの浸透に向けて、「マーケティングDX」の啓発を目的としています。初開催となる2022年1月は、WACULが支援した企業の2021年のマーケティング実績をもとに、以下の4つの賞の選考が行われました。

  • DX大賞…マーケティングDXの最も大きな成果を創出した企業
  • DX大賞 2nd Prize…マーケティングDXの多大なる成果を創出した企業
  • 地域活性DX賞…地域に根ざした活動をしつつ、マーケティングDXを推進した企業
  • DXアクセラレーター賞…クライアント企業の支援を通じて、多大なマーケティングDXの成果を創出した企業

受賞企業が創出したマーケティングDXの成果

WACUL Marketing DX Award 2021の受賞企業は、以下の4社です。

  • DX大賞…イーベイ・ジャパン株式会社
  • DX大賞 2nd Prize…ソースネクスト株式会社
  • 地域活性DX賞…鈴廣かまぼこ株式会社
  • DXアクセラレーター賞…株式会社これから

以下では、各賞の受賞企業の事業内容、および受賞の理由となったマーケティングDXの成果をご紹介します。

イーベイ・ジャパン株式会社

イーベイ・ジャパン株式会社は、世界最大級の越境EC(国や地域をまたいだオンラインショッピング)プラットフォーム「eBay」を運営する企業の日本法人です。同社のマーケティングチームは、越境EC事業を行う法人・個人にたいするeBayの利用促進、およびeBay内での販売促進のサポートを行っています。

イーベイ・ジャパンでは、AIアナリストの導入によってWebサイトの運用実績が以下のように大幅に改善しました。

  • 訪問数……最大3倍
  • CV数……最大12倍
  • CVR(コンバージョンレート:訪問数のうちCVに至った割合)……最大2倍

この実績とともに、これまでは社内でタブーだった「転売(限定品などを定価で購入し、利益を上乗せして販売すること)」や「せどり(定価より安く仕入れ、利益を上乗せして販売すること)」に関する情報発信を決断したことが評価され、DX大賞を受賞しました。

ソースネクスト株式会社

ソースネクスト株式会社は、パソコン用ソフトウェアやAI通訳機の企画・開発からデザイン、販売、サポートまでを一気通貫で行う企業です。

商品点数の多い大規模なECサイトの日々の改善やリニューアルにおいて、素早い改善PDCAを遂行して数多くの施策を行ったこと、および大規模なメルマガ・広告配信による集客体制を実現していることが評価され、DX大賞 2nd Prizeを受賞しました。

鈴廣かまぼこ株式会社

神奈川県小田原市でかまぼこなどの食品を製造・販売している鈴廣かまぼこ株式会社は、創業150年を超える老舗でありながら、新商品の開発やデジタル技術の活用に積極的に取り組んでいる企業です。

一般的にマーケティングDXの取り組みが遅れがちな老舗企業でありながら、同社はデジタル活用を率先して推進。Google検索などからの自社ECサイトへの訪問数が、AIアナリストを活用したSEOサービスの導入により、年間で約30倍という驚異的な成果を達成したことが評価され、地域活性DX賞を受賞しました。

 株式会社これから

株式会社これからは、顧客企業のネットショップの売上アップに向けて、制作からコンサルティング、Webマーケティングまでを支援する企業です。

同社はAIアナリストを活用にすることで、顧客企業のマーケティングDXの推進を支援。AIアナリストではカバーされない領域についても積極的にアプローチし、得られた知見をWACULにフィードバックしたことが評価され、DXアクセラレーター賞を受賞しました。

AIアナリストの背景にあるAIの仕組みは?

ここからは、Webサイトの改善を支援し、大きな成果を生み出すAIアナリストの背景にあるAIの仕組みについて解説します。一言でいえば、AIアナリストは熟練コンサルタントの知見を学習させた「ルールベース型AI」です。

 AIの3つの種類

AIには大きく分けて、以下の3種類があるといわれています。

ルールベース型AI

「こういう場合はこうする」というルールを、一つ一つ人間が教え込んでいくタイプのAIです。たとえば、多数の動物の写真から猫の写真を判別させる場合には、「耳はここで目はここ、口はここ、ひげはここについているものを猫と判別せよ」などのルールをAIに学習させます。

 機械学習型AI

答えを出すための特徴のみを人間が指定して、その特徴に関するルールは機械が自分で見つけ出すタイプのAIです。上の例なら、「耳と目、口、ひげに着目せよ」とだけ指定して、あとは多数の動物の写真を、猫かそうでないかの情報とともに学習させれば、判別のためのルールはAIが見つけ出します。

ディープラーニング型AI

答えを出すための特徴とルールの両方を自分で見つけ出すタイプのAIです。上の例なら、多数の動物の写真を猫かそうでないかの情報とともに学習させれば、AIは特徴とルールの両方を見つけ出し、猫を判別できるようになります。

熟練コンサルタントの知見をルールベース型AIが学習

これらの3種類のAIのうち、AIアナリストはルールベース型AIに該当します。学習させるルールは、熟練コンサルタントの知見です。

Webサイトの成果を改善するためには、サイトユーザーの属性や訪問ページなどを分析するツール「Google Analytics」の分析結果から、ユーザーの行動を詳細に把握したうえで、より成果を上げるための改善点を検討します。

元々はWebコンサル事業が中心だったWACULでは、最初はこの作業をコンサルタントが5日ほどの時間をかけて行っていたといいます。これをAIによって自動化したことが、AIアナリスト開発の最初の取り組みとなりました。

自動化にあたっては、熟練コンサルタントがWebコンサル事業で培ったノウハウをもとに、「自分なら、こういう場合にこのような改善案をお客様に提案する、提案しない」をAIに教え込んでいきました。それにより、Google Analyticsの分析結果を自動的に分析し、改善点を提案してくれるAIが誕生したのです。

AIアナリストを顧客のWebサイトで実際に使用することで、顧客サイトの膨大な分析データや改善後の結果を取得することができます。その膨大なデータを使ってさらに学習させることで、AIアナリストの成功率は人間がコンサルティングしていたときの約50%から、約75%にまで大幅に上がったとのことです。

まとめ

企業サイトのデータ分析から改善ポイントの特定、施策の管理、成果の検証までを行い、従来はマーケターが人力で行っていた作業を自動化するマーケティングDXツールであるAIアナリストは、すでに多くの企業で導入され、訪問者数やCV数などが目に見えて改善されています。

「マーケターの仕事が自動化される」と聞くと、「自分の仕事がなくなるのでは」と不安に思う人もいるかもしれません。しかし、機械が得意な煩雑な作業は機械にまかせ、人間はより戦略的なタスクに集中できることで、マーケターがこれまで以上に生き生きと仕事ができる環境が生み出されるのではないでしょうか。

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