「メトカーフの法則」についてわかりやすく解説。ネットビジネスの成長原理やビットコインとの関係とは?

公開日:2021-02-04 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

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「メトカーフの法則』-。言葉だけは聞いたことがあっても、この理論の意味や具体的な活用方法について説明できる人は、それほど多くないのではないでしょうか。有線LANの標準規格であるイーサーネットの提唱者であるロバート・M・メトカーフ(Robert M. Metcalfe)が1990年代のはじめに提唱した、ネットワークの価値を評価するための理論である「メトカーフの法則」は現在、ネットビジネスの戦略策定やビットコインの適正価格の算出などに活用できる理論として注目されています。

この記事では、メトカーフの法則の概要、およびビットコインとの関係などについてわかりやすく解説していきます。

メトカーフの法則とは

メトカーフの法則の定義については、「ネットワークの価値は、そのネットワークに接続するユーザー数の2乗に比例する」といった説明が広く知られています。とはいっても、ITの専門家でもないかぎり、これだけでは何の話をしているのかよくわかりません。そこで、以下ではFAXを例にしてメトカーフの法則の本質について考えてみましょう。

FAXは自分一人だけが持っていても、誰とも送受信ができません。したがって、この状況でのFAXによるネットワークの価値は「0」といえます。次に、友達が誰か一人、FAXを購入したとします。すると、その友達とのあいだで送信および受信ができます。このときのネットワークの価値を、送信と受信を別に数えて「2」とします。

さらに、もう一人の友達がFAXを購入します。一人加わったのだから、ネットワークの価値は「3」になると思うかもしれません。しかし、3人がFAXを持っているときは3人が、それぞれ自分以外の2人と送受信できることになります。したがって、送受信の数として評価されるネットワークの価値は、このとき「3人(全ユーザー数)×2人(自分以外のユーザー数)」で計算されて「6」になります。ネットワークに一人が加わると、ネットワークの価値は「23」と人数に比例して増加するのではなく、「26」と飛躍的に増加するというわけです。

同様に4人がFAXを持っているときは、ネットワークの価値は「4人×3人」で計算されて「12」に、5人のときは「5人×4人」で計算されて「20」になります。一般にn人がFAXを持っているときには、ネットワークの価値は「n×(n1)」で計算され、これはnが十分大きいときには「n2乗」と一致するため、これが冒頭で紹介したメトカーフの法則の定義になります。

ここで重要なのは、ユーザー数によるネットワークの価値の増大が、コストの増大をはるかに上回るということです。この例でのコストは「FAXの単価×台数」と考えられますので、おおむねユーザー数に比例して増大します。それに対して、ネットワークの価値の増大はユーザー数の2乗に比例し、指数関数的になるために、コストの増大を大きく上回るというわけです。

メトカーフの法則が注目されている理由

メトカーフの法則が注目されている理由の1つとして、ネットビジネスの特性に合致している点が挙げられます。

一人勝ち現象

ネットビジネスの世界において、私たちはこれまで「一人勝ち」の状況を何度も目にしてきました。それぞれの分野で大きな成功を収めてきたGoogleAmazonFacebook、楽天、クックパッドなどは、まさにその代表例です。この一人勝ち現象は、メトカーフの法則によって説明することができます。

まず、ユーザー数が増えるにつれ、ネットワークの価値はその2乗に比例して指数関数的に増えていきます。次に、ネットワークの価値が高まれば、それが新たなユーザーを呼び込む原動力となり、ユーザー数が加速的に増加します。このサイクルが繰り返されることで、他の企業が追随できない一人勝ちの状況が生まれるわけです。

下のグラフは、NTTデータ経営研究所が発表したネットビジネスのユーザー数と売上高の推移です。

01-1(画像出典:NTTデータ経営研究所『大企業におけるxxTechビジネスの新規事業立案の要諦(上)』

このグラフを見ると、クックパッドやLINEFacebookなどはいずれも、ユーザー数および売上高が、時間とともに指数関数的に増加しています。これは、メトカーフの法則が働いた結果と考えられます。

最初にユーザーを獲得することが重要

こうしたことを見ても、ネットビジネスでは初期段階でどれだけのユーザーを稼得するが極めて重要だということがわかります。コストについては、FAXの例ではたしかにユーザー数に比例して増加しますが、システム開発やデータセンター、あるいは広告費などのネットビジネスのコストは、初期投資は大きいものの、その後はユーザー数に比例して増加するものではありません。逆に、ユーザー数が増えて売上高が増えるにつれて、コストの割合がどんどん減り、利益率は大きく押し上げられることになります。

このようにネットビジネスにおいては、ユーザー数の増加によるネットワーク価値の増大は、コストの増大をはるかに上回ります。すなわち、ネットビジネスの起業や事業戦略策定を行う際には、コストにこだわりすぎることなく、初期段階でどれだけ多くのユーザーを獲得できるかがビジネスの成否を大きく左右するのです。

メトカーフの法則とビットコインの関係

メトカーフの法則は、最近ではビットコインの時価総額の説明において活用されています。

ビットコインとは?

仮想通貨(暗号資産)の1つであるビットコインは現在、仮想通貨の中でも時価総額がもっとも高いことから、仮想通貨の代名詞ともなっています。ビットコインは、国や政府などの管理主体をもたない、インターネット上でのみ流通する通貨です。「ブロックチェーン」の技術によって資産台帳が分散的に管理され、たとえ1つのサーバーに障害などが発生して、そのサーバーに保存されている台帳データが破損した場合でも、ネットワーク全体でデータを維持できるようになっています。

ビットコインなど仮想通貨の時価総額は、「市場価格×発行数量」で決まります。この市場価格は、企業の決済手段としての採用や取引所への上場などにより利便性が高まったり、メディアに紹介されて知名度が高まったりすると上昇する傾向があります。逆に各国での規制が強化されたり、取引所のハッキングなどが発生すると信用は低下し、価値は大きく下落します。

ビットコインの発行は、発行されたビットコインを報酬として得ることを見返りに、有志が自身のコンピューターを使用して膨大な計算を実行することによって行われています。

メトカーフの法則でビットコインの時価総額が説明できる

ビットコインの時価総額がメトカーフの法則に従っていることを明らかにしたのは、20183月に米コーネル大学の研究者が発表した論文です。この論文に掲載されたグラフを見てみましょう。

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(画像出典:Spencer Wheatley, Didier Sornette, Tobias Huber, Max Reppen, Robert N. Gantner “Are Bitcoin Bubbles Predictable? Combining a Generalized Metcalfe's Law and the LPPLS Model”

上のグラフの横軸はビットコインのネットワークに参加するアクティブユーザーの数、縦軸はビットコインの時価総額です。この座標軸上には、2010717日~2018226日までのデータが表示されています。

このグラフで見られるとおり、これらのデータはすべて、ビットコインの時価総額がメトカーフの法則に従っていることを意味する赤い実線に、ほぼ重なるように分布しています。このことから、この論文では調査した期間について、ビットコインの時価総額はメトカーフの法則により高い精度で説明されると結論づけています。

メトカーフの法則によりビットコインの適正価格を算出可能

以上のようにビットコインの時価総額がメトカーフの法則で説明できるのなら、メトカーフの法則により算出されるビットコインの価格を実際の市場価格と比較することにより、市場価格が適正であるかを判断できることになります。算出されたビットコインの価格と実際の市場価格が大幅に異なるときは、市場価格が適正ではない可能性があるわけです。

メトカーフの法則を使用して、20201126日時点のアクティブユーザー数からビットコインの適正価格を計算すると「17,343ドル」となります。この時点での市場価格は17,400ドル近辺でしたので、これはおおむね適正と考えられます。しかし、算出された適正価格を市場価格が大幅に上回るなどの場合は、その後の暴落の可能性に注意が必要といえるでしょう

まとめ

メトカーフの法則は、ネットビジネスの一人勝ち現象を生み出す、ネットワーク価値の指数関数的増大を理解するための基本的な理論です。また、ビットコインの時価総額がメトカーフの法則に従っていることも、最近になって明らかになりました。

ネットビジネスの起業や事業戦略策定を行う際には、メトカーフの法則を考慮し、コストにこだわりすぎない戦略の策定が必要だといえるでしょう。また、ビットコインの取引を行う際にも、メトカーフの法則で「適正価格」が算出できることを知っておくべきでしょう。

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