広告におけるAI活用~動画広告編~

公開日:2023-03-29 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

近年、動画広告市場は勢いを増しており、多くの方が日常的に動画広告を目にしているでしょう。マーケティング分野へのAI(人工知能)導入が進むなか、動画広告にもAIを活用する動きが活発になっています。

本記事では、動画マーケティングの重要性や課題に言及するとともに、動画広告制作に役立つAIツールや、AIツール活用時の注意点を解説します。AIについて関心があるマーケターの方はぜひ参考にしてください。

動画マーケティングの重要性と課題

はじめに、動画マーケティングの重要性や今後の動向、課題について解説します。

動画マーケティングの優れた効果

動画マーケティングでは、文字などの静的コンテンツに比べて、聴覚情報や視覚情報など多くの情報を視聴者に提供することが可能です。記憶の定着率においても文字よりも動画のほうが優れていることが分かっており、動画を視聴した場合の記憶の定着率は、文字の場合の約2倍といわれています。

そのため、企業が自社商品やサービスをより強く訴求するには、動画を使った広告や商品説明などが効果的であるといえます。

動画マーケティングの今後の動向

今後5Gの普及などインターネット環境の進化に伴い、動画コンテンツがますます普及していくことが想定されるでしょう。動画コンテンツの普及促進に伴い、企業の広告配信手段のなかで動画が占める重要性も増していきます。

サイバーエージェントの調査によると、動画広告市場は年々増大し、2025年には2022年時点の約2倍にあたる1兆円規模になる見込みです。

動画マーケティングにおける課題

動画マーケティングにおける大きな課題のひとつが、作成に時間と費用がかかることです。ひとつの動画を作成するのに相応の時間と費用がかかるため、費用対効果を見極めながら作成する必要があります。

しかし、広告動画は文字や画像だけの広告と比較して情報量が多いため、成果が出たとしても具体的にどの部分がうまくいったのかを測定することが難しいでしょう。広告動画の測定・分析が複雑であるため、再現性高く成果を出すことは難しく、広告動画の企画・作成を一部の担当者に依存している企業も少なくありません。

広告動画の制作会社にとっても、広告動画の成果や費用対効果を論理的に説明することは困難であり、顧客企業への営業面でも課題であるといえます。

動画広告の制作PDCAを支援する「Adaup(アダップ)」

前述した動画マーケティングの課題を解決するうえで、AIツールの活用が有効です。ここからは、動画広告の製作や運用に役立つAIツールを紹介していきます。はじめに、動画広告の制作PDCAを支援する「Adaup(アダップ)」を紹介します。

Adaupの仕組み

Adaupは、アルファアーキテクト株式会社がKISSAKO合同会社との協業事業で企画・開発した、AIで広告の運用を支援するクラウドサービスです。

広告動画の属人性をなくすためには、データをもとに広告動画の効果を分析し、ほかのヒット動画などと比較して評価を可視化できるツールが必要です。Adaupによって、広告動画内の人物やロゴ、キャッチコピー、文字などの構成要素を分析・比較し、広告動画を配信した後の効果予測を行えるようになります。

Adaupによる分析を行うことで、動画広告内にある各構成要素がどの程度インプレッションやCPC (クリック単価)などの効果に貢献しているのかを客観的に把握できるのです。

Adaupの活用効果

Adaupの活用によって広告動画の効果や各種要因をデータとしてAIツールに蓄積していくことで、属人化を解消するとともに、広告動画のクオリティを平準化できます。次の広告動画を作成する際にも、どの部分にどの構成要素を加えれば効果的であるか予測しやすく、企画や構成のヒントにつながるでしょう。

顧客への営業面でも効果的です。動画マーケティングに興味を持つ顧客に対して、定量的なデータに基づいた納得感のある効果訴求を行えます。

動画広告の作成には時間と費用がかかるため、最初の一歩をなかなか踏み出せない企業も少なくありません。一方、Adaupを活用して事前に効果予測ができれば、より多くの企業が動画広告の企画・作成に取り組みやすくなるでしょう。

Adaupのそのほかの機能

Adaupには、前述した動画広告内の構成要素の分析・定量化以外にも機能を有しています。たとえば、動画広告を含む出稿メディアのアロケーションをAIシミュレーションによって最適化し、広告効果の最大化を図ることも可能です。

また、Web行動データやユーザー属性情報、購買履歴などからターゲットとなるユーザーリストをAIが自動で作成し、顧客アプローチの最適化にも貢献します。

さらには、各種広告媒体のAPIを活用して広告配信データをダッシュボードで一元管理することもできます。ダッシュボード上で時系列や媒体別などの切り口で分析できるため、広告戦略の立案・改善に活かせるでしょう。

人の注視箇所を予測・可視化する「H-AI EYE TRACKER(エイチ・エーアイ・アイ・トラッカー)」

続いては、株式会社アイレップが開発した、人の注視箇所を予測・可視化する「H-AI EYE TRACKER(エイチ・エーアイ・アイ・トラッカー)」について紹介します。

「H-AI EYE TRACKER」の仕組み

「H-AI EYE TRACKER」は、アイトラッキングデータから人の注視傾向をAIが学習し、広告動画における注視箇所をヒートマップで予測・可視化できるツールです。従来は、動画の注視点調査はユーザー調査による手法が主流であり、調査を行うためには多くの時間と費用がかかっていました。

それに対し「H-AI EYE TRACKER」では、アイトラックAIを活用することで、数分で注視傾向を予測可能です。動画を作成するプロセスで簡単に注視傾向を確認できるため、広告動画を出す前に成果の最大化を図れるでしょう。

「H-AI EYE TRACKER」の特徴

「H-AI EYE TRACKER」の大きな特徴は、ツール開発会社であるアイレップが独自の技術で開発したアイトラックAIを使い、数分で広告動画の注視点を予測できることです。

それにより、予測した注視点をもとに、広告動画のどの部分に価格や検索窓、商品リンクなどを設定すれば効果的かを判断できるようになります。仮に商品リンクなどへの誘導がうまくいっていない場合、動画を修正して再度アイトラックAIで判定することで、広告配信の効果をスピーディーに改善することも可能です。

「H-AI EYE TRACKER」は、独自のアイトラックAIツールと動画作成におけるUI・UXノウハウを組み合わせた新しい動画制作手法であるといえます。

AIを用いて本編内に広告を合成する「iCADs」システム

iCADsのイメージ

iCADsのイメージ

本章では、AIを用いて本編内に広告を合成する「iCADs」システムについて紹介します。

「iCADs」とは

「iCADs」とは「in Contents Ads」の略称であり、動画コンテンツの本編内に広告情報を付与する手法を指します。「iCADs」は、フジテレビが英国ロンドンのデジタル・プレイスメント企業MIRRIADと共同開発した広告情報サービスです。

AVOD(広告情報付き無料動画配信)の新しい手法であり、短期間でコンテンツ内に広告情報や商品情報を合成・再構築することで、元の動画とは異なる動画コンテンツとして配信することができます。

フジテレビは、2022年2月にSDGs関連ドラマである「木のストロー」の無料見逃し配信で「iCADs」の実証実験を行いました。そして、FODなどで配信しているドラマ「30禁 それは30歳未満お断りの恋。」から本格的に「iCADs」を導入していく方針です。

「iCADs」の仕組み

「iCADs」は、視聴者が見ているドラマ番組などの背景に、交通広告やポスターといった形で広告を合成して掲載する仕組みです。たとえば、YouTube動画などの場合、動画の冒頭や途中、最後に広告が入りますが、「iCADs」では本編内に融合する形で広告や商品情報が合成されます。

従来も、商品情報などを映像内に含め、商品の認知度向上などを図る広告手法は存在していました。しかし、収録の際に物理的に商品を設置する方法が主流であり、露出チェックや後から削除する難しさ、費用面などの課題がありました。

それに対し「iCADs」では、AI技術の活用によってスピーディーに広告情報を付与できます。加えて、AIによってカメラの動きや背景などを自動的に解析することで、最適な広告配置の提案も可能です。今後は、視聴者の属性に応じて動画内の広告の出し分けも検討される予定です。

動画広告でAIを活用する際の注意点

動画広告においてはさまざまAIツールが役立つことがわかりましたが、AIを活用する際には注意点も存在します。まず、AIはある程度のデータが蓄積されないと精度の高い解析ができません。AIを活用して広告動画を運用する際は、はじめのうちは効果を追い求めすぎずにデータ蓄積を行うことも重要です。

また、AIの得意な領域は、膨大なデータをもとにした合理的な解析であるといえます。反対に、ユーザーの関心や時代の流れを汲み取って、新たな企画を考えたり、キャッチフレーズを考えたりする創造的な仕事は人間が取り組むべき領域であるといえます。

AIは基本的に既存データから最適解を導き出すため、画期的なイノベーションを生み出すという点では発展途上です。非連続的なイノベーションを創発するためには、やはり人間ならではの斬新な発想力や観察力が必要であり、これからのビジネスマンに求められる重要なスキルとなるでしょう。

まとめ

これまでは動画広告の企画や作成に多くの時間や費用がかかっていましたが、AIツールを活用することで大幅に業務効率化やコンテンツの精度向上を図れます。

ただし、AIツールを活用する際は、データ蓄積期間の考慮が必要です。また、これまでの延長線上にないアイデアや企画を生み出すには、やはり人間ならではの創造力が求められるでしょう。

AIを有効活用するための「活用力」と、新しいアイデアや企画を生み出すための「発想力」を兼ね備えたマーケターを目指していきましょう。

AI技術はこれからさらに発展していくと予測されているので、早い段階で基本的な活用方法を取り入れておくことが大切です。SEデザインでは、IT分野におけるBtoBマーケティング&セールス支援を行っており、30年以上の実績がございます。業務の効率化や顧客へのアプローチでお困りの際は、お気軽にSEデザインへご相談ください。

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