DX人材に必要なスキルとマインドとは

公開日:2022-09-15 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

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近年、企業規模の大きさにかかわらず、デジタル化やIT技術を用いたDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が増えています。DXを成功させるには、デジタルスキルを持つ「DX人材」が不可欠です。

本記事では、DX人材の職種や求められるスキル、必要なマインドセットを解説します。

DX人材とは

DX人材とは、DXの取り組みに必要なデジタル技術を有する人材のことです。経済産業省が2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」に、DX人材について以下の記述があります。

  • デジタル技術やデータ活用に精通した人材
  • DXの取り組みをリードし、DXの実行を担っていく人材

DX人材は、DXの実現に向けて明確なビジョンを描き、その実現に向けて具体的な取り組みを実行できる人材です。企業変革を進める上で、課題解決に必要な幅広い知識と専門性を備える人材が、DX人材といえるでしょう。

DX人材が担う7つの職種

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DX推進に必要な職種は、主に7つあります。この7つの職種は、情報処理推進機構(IPA)が、DX白書2021で「デジタル事業に対応する人材」として定義している職種です。

(1)プロダクトマネージャー

プロダクトマネージャーは、DXの実現を主導するリーダー的存在です。企業全体のDXを統括する役割を担います。責任が重く重要なポジションのため、CDO(最高デジタル責任者)などの経営層が務める場合もあります。

プロダクトマネージャーは技術トレンドだけでなく、自社を取り巻く経営環境や、自社が実行すべき戦略から戦術まで、広く理解する必要があります。DXは組織横断で取り組むことが多いため、社内の調整力も必要です。

(2)ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、DX実現に向けて具体的な企画立案を担う人材です。プロダクトマネージャーが描いた戦略に沿い、より具体的なビジネスモデルやビジネスプロセスに落とし込みます。

新しいビジネスアイデアやサービスを生み出す企画力・マーケティング力、社内外のさまざまな人を巻き込みプロジェクトを形にする推進力が求められます。

(3)テックリード(エンジニアリングマネージャー/アーキテクト)

テックリードは「自社ビジネスにどのようにデジタル技術を導入し、DXを実現させるか」といったシステム設計の役割を担います。ビジネスデザイナーが企画を立案し、テックリードはその企画を実現するため、要件定義や仕様策定を行います。

また、チームの生産性を高め、品質を担保するチームリーダーの役割でもあります。通常のシステム開発では、システムエンジニアが要件定義や仕様策定を行いますが、テックリードには経営者的視点が求められるのです。自社のビジネス課題に対して、解決策の提案を行うことが欠かせません。

(4)データサイエンティスト/AIエンジニア

データサイエンティストやAIエンジニアは、AIやIoTなどDXに関する技術やデータ分析に詳しい人材です。自社のビジネスを推進する上で、AIやビッグデータを分析・解析する役割を担います。

統計解析や機械学習を扱う知識やスキルに加え、事業部門と共同してビジネスを進めていくための高いビジネススキルも求められます。

(5)先端技術エンジニア

先端技術エンジニアは、AI、ディープラーニング、ブロックチェーンなど、先進的なデジタル技術を扱う役割を担います。

最先端技術の理解と知識が求められるほか、変化の速いIT業界動向を常にキャッチする情報感度の高さも必要です。

(6)UI/UXデザイナー

UI/UXデザイナーは、DXビジネスで使われるシステムやサービスの「ユーザー向けインターフェース(操作画面)」をデザインします。操作画面はユーザーの利用頻度に直結するため、どのようなユーザーでも「使いやすい」と感じるデザイン力が求められます。

DXを全社に浸透させるには、ユーザーに使いやすいシステムを導入することが不可欠でしょう。発案したデザインの実現に向け、エンジニアに正しくイメージを伝える言語化能力も必要なスキルです。

(7)エンジニア/プログラマー

エンジニアやプログラマーは、主にシステムの実装やコーディングを担当する人材です。テックリードが設計した仕様に基づいてプログラミングを行い、システムが意図した通りに動くようにコーディング・テスト・修正を行います。

エンジニアやプログラマーは、システムやソフトウェア開発以外に、社内のインフラ構築やセキュリティの運用を担うこともあります。そのため、ハードウェアやネットワーク、セキュリティなどの知識が必要になる場面も多いでしょう。

DX人材に求められるスキル・知識

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DX人材は、業界やポジションによってさまざまなスキルを求められます。ここでは、DX人材に必要な代表的スキルと知識を紹介します。

(1) プロジェクトマネジメント力

DXは新しいビジネスモデルを確立し、社内体制や社内文化、ビジネスプロセスを変える全社的な変革の取り組みです。必然的に関係者も増えていき、大きなプロジェクトになります。そのため、高いプロジェクトマネジメント力が求められます。

DX関連のプロジェクト経験はなくても、これまでのプロジェクトマネジメント経験で培った戦略策定・問題分析・課題解決・予算管理・スケジュール管理・コミュニケーションスキルなどが役立つでしょう。

(2) 新規事業の企画・構築力

新規事業の企画力とは、自社の方針や戦略に即した具体的な企画を立案するスキルです。目的から逆算し、実現したいことや課題を明確にした上で、やるべきことの優先順位を付けて進めていくスキルが必要になります。

新規事業の企画をもとに、ビジネスモデルやビジネススキームを構築します。プロダクトマネージャーや現場部門と密接に連携を取りながら、現実的なビジネスを作り上げていく構築力が求められます。

(3) IT関連の基礎知識

DX人材は、高いITリテラシーが必要です。プロダクトマネージャーやUXデザイナーなどの職種でも、技術関係者と共通言語で会話するために、基礎知識は必要不可欠です。

また技術的な知識だけでなく、業界全体の知識も重要です。例えば、導入予定のIT技術は国内外でどのように活用されていて、どのような課題があるのか。今後のトレンドはどうなっていくのか。時間とともに最新技術や顧客ニーズは変化するため、知識を常にアップデートしていくことが重要です。

(4) データサイエンス領域の知識

DXを推進するには、データ分析結果をもとに、課題に対する意思決定や判断を行うことが必要です。機械学習やビッグデータを活用した「データ分析精度」は年々向上しており、ビジネスに与える影響や重要性が増しています。

そのため、データサイエンティストやAIエンジニアなどの職種は、データサイエンス領域の知識が必須です。データサイエンス領域の知識とは、統計学や基礎数学の他に、PythonやRなどのプログラミング言語を活用した、専門的な知見が求められます。

関連して、収集したデータの活用方法を決定する「データマネジメントスキル」も求められるでしょう。

(5) UI/UXなどシステムやサービス設計の知識

UI/UXデザイナーをはじめとするDX人材には、使いやすいシステムを構築するため、どのようなデザインやユーザーインターフェースが適しているか、判断するスキルが必要です。

最先端技術を取り入れたサービスやシステムを構築しても、ユーザーにとって使いづらいものでは意味がありません。ユーザーとの接点やユーザーが得られる体験をもとに、サービスを提供する必要があります。

ユーザー目線に立ち、ユーザーニーズを正しく理解するスキルが求められます。

DX人材に必要な3つのマインドセット

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DX人材はスキルや知識だけでなく、マインドセットも重要な要素です。DX人材に必要な3つのマインドセットを紹介します。

(1) 課題設定力

DX人材には、これまでの知識や経験にこだわらず「顧客にとって何が最良か」を一から考え、業務課題を自ら発見する姿勢が求められます。

課題発見は、DXの本質である「ビジネスモデル変革」の第一歩です。業務課題を解決するには何が原因なのかを分析し、仮説を立案して検証するプロセスが必要です。

設定した課題に誤りがあった場合、どれだけ最先端のデジタル技術を駆使したところで、新たな価値は生まれません。課題を正しく定義した上で仮説検証を行う必要があります。

(2)リーダーシップ

DX人材は、周囲を巻き込みプロジェクトを主導する「リーダーシップ」が求められます。DXは企業全体を巻き込み変革を推進するため、プロジェクトを牽引するリーダーシップ力は不可欠な要素といえます。

DXを成功させるには、経営層や一部の社員だけで取り組むのではなく、全社での取り組みが必要です。現場の意見をしっかり取り入れ、現場に真剣に取り組んでもらうことで、DXの成功確率が高まります。

そのため、リーダーには「現場の意見に耳を傾ける」「論理的な視点で適切な判断を行う」「周囲に正しく伝達する」などの姿勢や取り組みが必要です。


(3)好奇心・主体性

デジタル技術は進歩が速く、次々と新しい技術が登場しています。強い好奇心がなければ、新たな技術をキャッチアップし続けるのは難しいでしょう。

そのためDX人材には、AIやIoTといった先進的なテクノロジーを活用するための、さまざまな技術や情報を収集する探究心が求められます。

またデジタル技術を活用して「新しいビジネスを生み出したい」「課題解決したい」と思える主体性も、重要なマインドです。

DX人材の不足と確保

ここでは、DX人材不足の課題と、人材確保の方法について見ていきます。

「DX人材不足」は各社共通の課題

DX推進の課題として、各企業の共通の悩みが「人材確保」です。総務省の「令和3年版 情報白書」によると「DXを進める上での課題」のなかで、日本企業の53.1%が「人材不足」を課題に挙げています。また、各企業で不足している人材は以下の通りです。

  • DXの主導者、新たなビジネスの企画立案者
  • デジタル技術に精通している者
  • UI/UXに係るシステムデザインの担当者
  • AI/データ解析の専門家

DX人材不足は、各企業にとって深刻な課題といえます。DX人材は確保が難しいため、多様な獲得手段や育成方法を用いる必要があるでしょう。

DX人材を確保するには

企業が自社のDX人材を増やすには、次のような方法があります。

  • 新卒以外に、中途採用を積極的に行う
  • 社外研修やOJTを強化し、DX人材育成の環境を整える
  • 業務の配置転換により、有望な人材をDX関連業務へ配属する
  • DX推進に役立つ資格取得を推奨する

高いスキルを持つ「DX人材」が世界中で争奪戦となる中、終身雇用に捉われない「柔軟な雇用制度」や「魅力的な報酬体系」を用意し、中途採用を積極的に進める企業が増えています。

また、DX人材獲得のもう一つの手段が、社内で人材育成する方法です。DX人材の7つの職種に応じて、求められるスキルやキャリアを持つ人材を選び、育成を図りましょう。該当する人材が見つからない場合、社内公募で希望者を募り、必要なスキルや知識を一から身につけてもらう方法もあります。その場合は資格試験の補助や資格取得者への優遇などの仕組みを整えるとよいでしょう。

まとめ

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DX人材は、企業変革をリードし、企業のDXを推進する重要な役割を担います。高いスキルが求められるため、労働人口が減少する日本において、DX人材を確保するのは容易ではありません。外部からの人材獲得と併せ、社内でDX人材を育成する取り組みや環境整備を進めましょう。

また、DX人材には、知識やスキルに加えて「課題設定力」「リーダーシップ」「知的探究心」といったマインドも重要な要素です。社内でDX人材を育成・選抜する際は、これらのマインドを持った人材に注目すると良いでしょう。

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