AIチャットボット「InfoCraft」が少人数運営のBtoCビジネスを効率化|東京ロリィタの業務改革

更新日:2025-08-22 公開日:2025-08-22 by SEデザイン編集部

目次

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テクノブレイブ株式会社が運営するロリィタファッション専門の宅配レンタルサービス、「東京ロリィタ」。華やかで独自の世界観を大切にしながら、限られた人数で運営を続けてきた同サービスでは、お客様一人ひとりに寄り添った対応を行う一方で、少人数ならではの業務負荷という課題も抱えていました。

そうした背景の中で導入されたのが、テクノブレイブ社のAIチャットボットサービス「InfoCraft」です。ロリィタらしい柔らかな口調や世界観を活かしながらも、日々の問い合わせ対応をサポートする心強い存在となっています。

今回は、東京ロリィタ製作委員会 委員長の松本奈菜子氏と、同委員会の部長を務めながらテクノブレイブ社のビジネスグロース事業部 部長としてInfoCraftの開発も担当した香川弘行氏に、導入の経緯から具体的な効果、今後の展望までを伺いました。

「ロリィタをもっと気軽に」想いから生まれた宅配レンタルサービス

――まずは「東京ロリィタ」のサービスについて聞かせてください。

松本氏:東京ロリィタは、ロリィタファッション専門の宅配レンタルサービスです。私自身も普段からロリィタ服を着ていることもあり、もっと多くの方にこのファッションを気軽に楽しんでいただきたいという思いから、2019年に立ち上げました。レンタルを通してロリィタファッションの魅力を体験できるサービスとなっています。

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▲東京ロリィタ製作委員会 委員長 松本奈菜子氏

――サービスはどのような体制で運営されているのですか?

松本氏:基本的には私を含めて2名が中心で運営していますが、他に部分的にサポートしてくれるメンバーがおり、日々2~4名ほどで運営しています。少人数での運営体制のため、業務分担も細かく決めているわけではなく、みんなで全ての作業にあたっています。

――サービス運営の中で、お客様対応に関してどのような課題があったのか聞かせてください。

松本氏:お客様対応では、ロリィタファッションの世界観を大切にしながら、柔らかく丁寧な表現を心がけています。ただ、お客様からの問い合わせはイレギュラーな内容も多く、都度どのように返答すべきかを考える必要がありました。

また、少人数体制ということもあり、お客様対応専任のメンバーがいるわけではなく、他の業務と並行する必要があり、どうしても返答が遅れてしまうことがありました。

――返信対応で苦労された具体的なエピソードはありますか?

松本氏:問い合わせに対する返答が遅れてしまい、お客様から「メール届いてますか?」と何度も確認が来たことがあります。クレームとまではいかなくても、不安にさせてしまうことがあって、申し訳ない気持ちになりましたね。

抽象的なオーダーから理想のキャラクターへ AIによるロリィタ世界観の再現術

――InfoCraft導入を検討した背景について教えてください。

香川氏:東京ロリィタは、InfoCraftを開発するテクノブレイブ社の傘下ということもあり、何か役立てられないかと思い声をかけさせてもらいました。私はInfoCraftの開発を担当する傍ら、東京ロリィタの運営にも携わっていたので、お客様対応の効率化の必要性を感じていたのです。

松本氏:テクノブレイブ社としても、BtoCのサービスを運営するのが初めてだったので、問い合わせ対応のルールや仕組みも社内にノウハウがなく、全て手探り状態でした。そのような状態であったため、InfoCraftが問い合わせ対応の効率化に役立つのではないかと考え、導入してみることにしました。

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▲テクノブレイブ株式会社 ビジネスグロース事業部 部長 香川弘行氏(右記)
▲東京ロリィタ製作委員会 委員長 松本奈菜子氏(左記)

――導入にあたり、どのようなことを実施しましたか?

香川氏:準備としては主に3つのことを行いました。1つ目は、東京ロリィタらしい回答ができるようキャラクター設定を決めました。2つ目は、実際の問い合わせ内容を分析して回答パターンを準備すること。3つ目は、サイトの世界観に合った言葉遣いや表現を設定することです。これらを実装するために、松本さんにヒアリングシートの記入を依頼したうえで、情報が不足している箇所は直接ヒアリングを実施し、要件を固めました。これをもとに約4回の調整を経て、チャットボットの運用を開始しました。

――キャラクター設定にあたり、こだわった点があれば聞かせてください。

松本氏:実は私も、どこにこだわればよいかわからず、最初は「可愛らしく、やわらかい雰囲気で」としか伝えられませんでした。どうすればロリィタの世界観を表現できるかわからなかったのです。

そんな抽象的なオーダーでしたが、香川さんがイメージを補完しながら調整してくれて、最初から理想的なキャラクターを作ってくれました。キャラクター設定に関しては、最初の提案でほぼ完成しており、残りの調整は応答内容について、どう学習するか詰めるだけでした。

――抽象的なオーダーから、どのようにしてキャラクター設計したのでしょうか。

香川氏:AIとやりとりしながら、どうすればロリィタの世界観を表現できるか考えてきました。その中で「ゴシック調で」「中世ヨーロッパっぽく」など、様々なプロンプトを試してみました。

東京ロリィタらしい回答になるよう、プロンプトを調整することで、試行錯誤を重ねながら最適な口調や表現を見つけていきました。

――特に難しかった調整や工夫された点があれば聞かせてください。

香川氏:キャラクターの雰囲気作りもそうですが、いちばん気を遣ったのは「ハルシネーション(AIによる誤答)」の防止です。たとえば、法人向けのサービス内容を一般のお客様向けに案内してしまったり、実際には選べない配送日を答えてしまったり。そうした誤りが出ないよう、学習元となるデータの調整や、不要な情報の除外も行いました。

松本氏:回答内容の正確性ももちろんですが、AIが勝手に断定してしまう口調も調整していただきました「変更できます」と言い切ってしまうと、お客様が誤認してしまう場合がありますので、詳細はお問い合わせいただくよう誘導する表現にしています。

AIが月40件の問い合わせを自動対応 少人数運営を支える効率化の鍵

――InfoCraft導入後、対応業務にはどのような変化があったのか聞かせてください。

松本氏:問い合わせの初期対応の多くをInfoCraftが担ってくれるようになりました。導入前は月に40件ほどあった問い合わせに1件あたり10〜20分かかっていたので、全体で6〜7時間分くらいの業務時間がかかっていたんです。

今ではAIが基本的な問い合わせに対応してくれるので、私たちは複雑な内容や例外的なケースに集中できるようになりました。

――AIで対応できない内容にはどのようなものがありますか?

松本氏:たとえば「このスカートにパニエを合わせたら、どんなシルエットになりますか?」のような、実際に試してみないとわからないような質問は、自分たちで対応しています。実際にマネキンに着せて写真を撮って送るので、私たちが対応しなければなりません。

香川氏: InfoCraftは基本的な問い合わせに対応し、コーディネートのような専門的な相談は東京ロリィタのサポートフォームへ誘導するという、効果的な役割分担ができるよう設計しています。

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▲テクノブレイブ株式会社 ビジネスグロース事業部 部長 香川弘行氏

――業務時間の削減によって、サービス運営にどのようなメリットがあったのか聞かせてください

松本氏:空いた時間でLPの製作や商品の出品作業、キャンペーンの準備などに時間を使えるようになりました。すべての業務を少人数で回しているので、お客様対応にかけていた時間を他の業務に充てられるのは非常に大きいです。

また、数字の集計作業など、今まで後回しになっていた作業にも余裕を持って取り組めるようになったのも大きな効果ですね。

――InfoCraftがどのような対応をしているのか、実際にログを確認できるのでしょうか。

松本氏:はい。月に一度、どんな質問に対して、どんな返答をしたのかログを提出してもらっています。各回答にはお客様からのフィードバック機能があり、「役に立った/立たなかった」の評価から、効果的な対応方法を分析できます。

私たちもログを確認しながら「こういう質問に対しては、こう返せばいいのか」と参考になることもあります。お客様の要望に対して、世界観を壊さず、かつ角が立たないように断る言い方などは勉強になりますね。

また、お客様からの質問の中に「双子コーデはありますか」という問い合わせが多くあり、そこから双子コーデのニーズがあることに気づけました。問い合わせの中には、お客様のニーズが眠っているので、今後もサービス運営の参考にしたいと思っています。

――InfoCraftは、どのような企業に勧めたいか聞かせてください。

松本氏:キャラクター性や世界観を大切にしているブランドにおすすめしたいです。ロリィタファッションのように、言葉の選び方ひとつで印象が大きく変わってしまうようなサービスでも、しっかりとトーンや雰囲気を合わせた返答ができるので、安心して任せられます。

香川氏:少人数でカスタマー対応を行っている事業者にもおすすめしたいですね。人手が限られている中で、問い合わせ対応に追われてしまうと、どうしても他の業務に手が回らなくなってしまいます。InfoCraftを導入することで、その負担を大きく減らすことができ、結果的に全体の業務効率が上げられるはずです。

また、InfoCraftはタグを埋め込む以外に、お客様に設定してもらう必要がないため、AIやITツールに不慣れな方でも簡単に導入できます。要望さえ言ってもらえれば、私たちが調整して提案させてもらうので、これまでITツールに縁がなかった方にも興味をもってもらえればと思います。

――最後にInfoCraftにこれから期待していることも聞かせてください。

松本氏:より複雑な問い合わせに対しても、対応できるようになると嬉しいです。たとえば、お客様の希望に沿って、在庫の中からおすすめのコーディネートを回答できるようになれば助かります。

香川氏:InfoCraftは定期的にサイトをチェックしているので、在庫の内容も把握できます。あとは、どのような要望に対して、どのような服を提案すればいいか学習させれば、コーディネートの提案も決して無理ではありません。これから松本さんとすり合わせながら実現していきたいと思います。

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