AI に「できること」と「できないこと」は?

公開日:2022-12-09 更新日:2024-02-22 by SEデザイン編集部

目次

人工知能(AI)技術は、ロボティクスなどと合わせて今最も注目されているハイテクの一種です。優れた汎用性の高さが注目されている近年のAIは、人間の能力を超える瞬間、いわゆるシンギュラリティを迎える日も近いとされています。しかし実際のところはまだ人間ほど柔軟性のあるプログラムではないとの指摘もあります。

この記事では、一般的に普及しているAIの能力に注目し、ビジネスの現場で導入する場合に備えて知っておくべきAIの得意なこと・苦手なことや、導入事例について解説します。

AIとは

AIは、コンピュータの高度な演算能力を活用し、取得したデータに基づいて未来の予測を立てることのできる技術です。

従来のコンピュータは、人間が入力した通り計算することや、あらかじめ定義されたプログラムに従って出力することなど、できることが限定されていました。AIのアルゴリズムはそんな前提を覆し、入力されたデータを基に法則性を独自に発見し、自らの分析や予測を自発的に出力できる点で、高く評価されています。

分析や予測、意思決定などを行うのは人間の仕事とされてきましたが、AIの登場はこれらの業務を自動化できる可能性をもたらしています。

AIを支える技術

AI技術を可能にしてきたのが「機械学習」と呼ばれる手法です。機械学習は近年のハードウェアの進化に伴い、「ディープラーニング」のような新しい手法にも発展を遂げ、最先端のAI開発をサポートしています。

機械学習

機械学習は、AIを理解するうえで欠かせない学習手法です。機械学習とは、コンピュータにアルゴリズムを組み込み、読み込ませた大量のデータから法則性を発見し、自発的な意思決定ができるよう促す方法です。

機械学習にはいくつかのアプローチがありますが、最もスタンダードな手法として普及しているのが「教師あり学習」です。教師あり学習とは、あらかじめAIに読み込ませる学習データにタグ付けを行い、AIがデータを高い精度で読み込めるように促しながら運用する方法です。

教師あり学習は、電子メールのスパム判定や機械の故障予測など、シンプルなタスクに対応できるAI開発に多用されています。学習の精度や学習スピードに優れていることから、ビジネスアプリなどの開発にも採用されています。

ディープラーニング

教師あり学習は便利な一方で、汎用性に優れた学習結果を得づらいという課題があります。学習データを加工する過程で行われるタグ付けは、あくまで人間のさじ加減によって行われるため、人間の尺度や精度を超えることは困難だからです。

このようなAIの限界値を超えるために確立されたのが、「ディープラーニング」という手法です。ディープラーニングは深層学習とも呼ばれ、データの読み込みの際に複数の層を通過させ、層の間を行き来させることで、AIが自発的にデータの特徴を発見できる点が特徴です。

教師あり学習ではデータの特徴を人間がタグ付けによって提供しますが、ディープラーニングでは自ら特徴を発見します。この手法を「教師なし学習」と読んでおり、より高度な問題解決や、クリエイティブなタスクの実行に役立てられています。

AIができること

AIが実行できることは非常に多様で、おもに以下の4つのカテゴリに分類できます。ここではそれぞれのタスクの内容について、理解を深めましょう。

識別

>識別は、画像認識や顔認識といったデータ間の違いや特定のデータを発見する技術を指します。男女を見分けたり、果物の種類を画像データから判別したりと、さまざまなタスクに適用することができます。

最近では空港の検査場のような高度な認識能力が求められる現場でも活躍しており、税関での本人確認には識別機能を有したAIが導入されています。

会話

会話は、人間の言語的なコミュニケーションを実践するAI技術を指します。質疑応答を自動で行うチャットボットや翻訳機能などがこれに当てはまります。

自然言語の理解はコンピュータには難しいとされてきた領域ですが、ディープラーニングの発展により、近年は非常に流暢なコミュニケーションが可能となりつつあります。

現在は人間のペースでリアルタイムの会話を実現することは困難です。しかし近い将来、翻訳や会話の理解力が向上し、生の会話に近い体験が可能になるでしょう。

検知・予測

検知・予測は、過去のデータと現在の事象を照らし合わせ、何らかの変化を特定したり、これから何が起こるかを予測したりする技術です。

たとえば、工場の生産ラインに紛れ込んでいる不良品を発見したり、小売店の過去の売上データから、今後の売上や需要の予測を算出したりするといったシーンで活用されています。

検知や予測はこれまで人間が担ってきたタスクですが、過去のデータを徹底して読み込み、検知の基準や公式を丁寧に定義付けることで、自動で実行することも可能になりました。

制御・実行

制御・実行は、ハードウェアが適切に動作するための判断を行ったり、適切なコントロールで円滑な業務遂行を促したりする技術を指します。代表的なのは自動車の自動運転で、繊細な意思決定を実現し、無人での運転を可能にしています。

また、工業機械の冷却やメンテナンスなどもAIで管理されるケースが増えていますが、いずれもAIの適切な制御機能が働かなければ実現しない技術です。

AIができない・苦手なこと

このように、AIには実に多くのタスクを任せることができる反面、実際にはAIが苦手とする分野も存在します。

AIで実行しづらいタスクへの理解を深め、有効活用につなげましょう。


非構造化データのようなノイズの多い情報の処理

AIは、「非構造化データ」と呼ばれるノイズの多い情報の処理が得意ではありません。

データには大きく分けて、構造化データと非構造化データとよばれる2つの形式が存在します。

構造化データはエクセルデータのように、規則正しく整理されたデータを指します。一方で非構造化データは、人間の都合に合わせて不規則に並んでいるデータを指します。電子メールは送り手によってさまざまなフォーマットがありますが、電子メールも非構造化データの代表例です。

AIは構造化されたデータの読み込みに特化しているため、非構造化データをそのまま読み込ませることは難しく、あらかじめ構造化データに変換してからの運用が必要です。

人間のような汎用性の獲得

近年のAIは多用途に使える印象が強いのですが、実は一つのAIにつき一つの能力、というのが一般的です。

AI技術はさまざまな用途に使うことこそできるものの、一つのAIを全ての用途に使えるわけではありません。画像検知なら画像検知AI、翻訳なら翻訳AIと、タスクごとのAI開発が必要なのです。

過去のデータにないタスクへの対処

ディープラーニングの登場によって、画像の生成のようなクリエイティブなタスクに対応できるようにはなってきたものの、過去に事例のないタスクには、まだ弱い部分があります

AIは万能のように見えますが、いずれの行動も過去のデータに基づく意思決定でしかありません。未知のケースには対処できない場合も多く、過度な期待を持つべきではないでしょう。

国内企業におけるAIの導入事例

最後に、国内企業におけるAIの導入事例を分野別に確認し、どのようにAIを活用しているかに注目してみましょう。

【金融】AI導入で年間約5,000時間の業務削減に成功したスルガ銀行

スルガ銀行では、AIを使った自動読み取り機能(AI-OCR)の導入により、年間およそ5,000時間にものぼる業務削減に成功しています。

同社で長らく問題となっていたのが、手書き回答が記載された「お客さま情報確認書」の処理手続きでした。手書きのため人間の手で対応する必要がありましたが、AIの導入によって手書き文字をデジタル化し、自動で転記できるようになったのです。

手書き回答のデータ化に割り振る人的リソースも、当初見込みの2分の1程度に抑えられており、現場負担の軽減と人員不足の解消に役立っています。

参考:ZDNet Japan

【飲食・小売】ケーキの需要予測にAIを導入した不二家

洋菓子販売を手掛ける不二家は、2021年度に洋菓子事業の黒字転換を達成していますが、その立役者となったのがAIによる需要予測です。

不二家の主力商品は洋菓子ですが、洋菓子は賞味期限が短く、商品需要を正確に把握しなければ利益を出すことは難しいものです。

その期限の短さから、人間でも需要予測が難しいといわれてきましたが、不二家ではAIを使って膨大なデータを基に正確な需要を把握し、欠品による機会損失をAIで防ぐことに成功しました。

欠品リスクを解消しつつも、正確な需要予測で売れ残りを抑え、多様なバリエーションの商品を提供し、顧客体験の改善も実現しています。

参考:BUSINESS INSIDER

【IT】誹謗中傷コメントをAIで自動検知するYahoo!ニュース

ポータルニュースサイトのYahoo!ニュースを運営するZホールディングスは、同サービスに書き込まれるコメント欄をAIが自動で監視するシステムを導入しています。

コメント欄の利用は同サービスの主要な機能ですが、誹謗中傷やフェイクニュースの温床となり得る点が懸念されてきました。

そこで同社では、ディープラーニングを用いたAIをコメントモニタリングに適用し、1日平均約2万件の不適切な投稿を自動削除するシステムを導入しました。また未然に不適切な投稿を検知し、投稿者に対して警告を出す機能も備わっており、健全なコメント欄の運営と業務負担軽減を実現しています。

参考:Yahoo!Japan

まとめ

この記事では、AIの仕組みや学習方法について解説しながら、AIが得意なこと、不得意なことについて紹介しました。AIをフル活用するためには、まずAIという技術への理解を深め、最大限に有効活用するためのアプローチを考えることが大切です。

すでに国内企業でもAIの起用が積極的に行われており、確かな導入効果を発揮しています。AIにできることとできないことを把握したうえで、自社の課題解決につながるAI活用を実現しましょう。


AI技術はこれからさらに発展していくと予測されているので、早い段階で基本的な活用方法を取り入れておくことが大切です。SEデザインでは、IT分野におけるBtoBマーケティング&セールス支援を行っており、30年以上の実績がございます。業務の効率化や顧客へのアプローチでお困りの際は、お気軽にSEデザインへご相談ください。

 

関連記事

コンテンツマーケティングで、
ビジネスの効果を最大化しませんか?

もっと詳しく知りたい方

ご質問・ご相談したい方