DXや働き改革で注目されるCCoE。設立における5つポイント

更新日:2024-02-26 公開日:2022-07-18 by SEデザイン編集部

目次

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DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のため、クラウドの活用を行う企業が増えてきています。全社的なクラウド活用に成功している企業の共通点として、CCoEの存在が挙げられます。

CCoEとは、クラウドを活用した変革に向けて、ガバナンス管理や人材育成などを行う組織横断型チームのことです。本記事では、CCoEの役割や原則、設立のポイントなどを解説します。

CCoEとは

CoEについて紹介します。CoE(Center of Excellence)とは、組織横断の取り組みを推進する組織や体制をいいます。部署や会社の垣根を超え、優秀な人材やノウハウなどの経営リソースを一か所に集約し、集中して推進業務にあたります。

CCoEの前に、まずはCoEについて紹介します。CoE(Center of Excellence)とは、組織横断の取り組みを推進する組織や体制をいいます。部署や会社の垣根を超え、優秀な人材やノウハウなどの経営リソースを一か所に集約し、集中して推進業務にあたります。

CoEに、クラウド(Cloud)のCを追加したのがCCoEです。つまりCCoEとは、クラウドを専門的に扱い、組織全体にクラウドを推進させることに特化した横断型の組織を意味します。DXに成功している非IT企業の多くがCCoEを設置しているため、注目を集めているのです。

CCoEが必要な理由

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クラウド推進をする際、「組織内でのクラウド活用が進まない」や「クラウドに詳しい人材がいない」などさまざまな課題にぶつかることがあるでしょう。そのような課題に、明確に立ち向かう組織として注目を集めたのがCCoEです。

組織的なクラウド活用においては、攻めの活用が求められます。これからは、デジタルによって自社製品やサービスの変革をし、競合と差異化できる付加価値を生み出さなければいけません。

「Fail-fast(早く失敗する)」という攻めの考え方でクラウドを利用すれば、PDCAサイクルを早く回すことができ、確実かつスピーディに成長を遂げられます。しかし、守りのクラウドを重視した場合、社内にクラウド利用が浸透するには時間がかかるでしょう。

クラウド推進における成功とは、クラウドを安全に活用し、自社ビジネスを変革することです。そのためにも、全社を巻き込みクラウド推進を集中的に進めるCCoEが必要となります。

CCoEのおもな2つの役割

CCoEの役割は企業によって異なります。自社の文化やビジネスに応じて、最適な体制を構築しなければいけません。以下では、各企業に共通するCCoEの2つの役割について解説します。

クラウド管理のポリシーとガバナンス整備

クラウド型アプリケーションの普及により、シャドーIT問題が深刻化しています。シャドーITとは、情報システム部門やセキュリティ部門などが把握せず、各部門や従業員が独自導入したクラウドサービスやITシステムを示します。

たとえば、会社に使用を認められていない私用のPCやスマートフォンなどを業務に用いると、シャドーITにあたります。社内に散在するクラウドの適切な管理ができないため、セキュリティリスクとみなされているのです。

CCoEはクラウド活用部門への支援、クラウド管理部門との連携、社外パートナーとの交流の役割を担っています。

CCoEは、全社横断でクラウドの利用状況を可視化し、セキュリティポリシーやITガバナンスの整備をする役割を担います。上図のように、クラウド活用部門やクラウド管理部門と連携することが重要です。

人材育成

DX推進のためには、社内のリテラシー格差をなくし、非IT部門でも当たり前のようにクラウドを活用できる状態にする必要があります。そのためにも、CCoEは人材育成や社外からの情報収集などを行うことで、社内へのクラウド普及に努めなければいけません。

クラウド推進に成功している企業の多くは、CCoE主導による研修を実施しています。クラウドベンダーの多くは、成功事例やノウハウをまとめた資料などを提供していますが、企業によってセキュリティ要件が異なるため、外部研修や他社事例では自社要件に対応することは困難です。

このような課題を解決するためには、CCoE主体のオリジナル研修や社内事例の共有会が有効です。また、最善策を模索するため、社外CCoEとの交流やイベントへの登壇などを行うのもCCoEの役割です。

CCoEの設立・運用ポイント

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CCoEの基礎知識を理解したところで、ここからは実際にCCoEの設立と運用のためのポイントを解説します。

組織横断型のメンバー構成にする

CCoEのメンバーは、部門や社内の垣根を超えた横断型で構成されるべきです。組織横断型のメンバー構成にすることで、潜在的な課題の発見や各部門との円滑なコミュニケーションを実施できるようになります。

CCoEのメンバーに求められる要素は、おもに以下の3つです。

  • クラウド・アプリケーションへの理解
  • 情報システム・サイバーセキュリティへの理解
  • ビジネス力

これら3つのスキルを高い水準で備えているメンバーで編成されるのが理想です。しかし、こういった人材の発見と確保は難しいのが現実なため、必要に応じて外部サービスやリソースも利用しましょう。

熱意のある人材をリーダーに据える

CCoEのリーダーには、クラウドに関する十分な知識や社内の人脈などさまざまな資質が求められますが、一番大切なのがリーダーシップです。

そして、CCoEにおけるリーダーシップには、熱意と巻き込み力が必要です。全社規模でクラウド推進をする際、数々の課題が立ちはだかります。泥臭い仕事だからこそ、必ず成功へと導くという強烈な熱意を持ったリーダーが不可欠です。

また、リーダーに巻き込み力がなければ、社内の協力は得られません。円滑にクラウド推進ができるよう、経営幹部やステークホルダーを巻き込み、サポートを確保できるリーダーを据えましょう。

ジェネラリストを目指す

CCoEのメンバーは、クラウド・ビジネス・セキュリティなどの様々な知識を持つジェネラリストを目指すべきです。たとえば、ビジネス部門のメンバーがセキュリティに関する知識を持っていると、情報システムやセキュリティ部門の立場を理解したうえで、最適な提案ができます。

CCoEのメンバーが各部門の立場を理解できれば、コミュニケーションの円滑化や課題の発見と解決、利便性と安全性を意識したルール作りが可能となります。

密なコミュニケーションを取る

クラウド推進は特定の部門に偏るのではなく、全社の最適化を図らなければいけません。クラウドが他の部門と連携せずに孤立している「サイロ化」という状態が生じれば、以下のようなデメリットが懸念されます。

  • 組織内での同一システムや機能の重複
  • 無駄なコストの発生
  • データの散在

サイロ化を防ぐためには、CCoEによる密なコミュニケーションが必要です。CCoEのメンバー間は当然ながら、ステークホルダーやエンドユーザーとも丁寧なコミュニケーションを取り、全社最適化を目指しましょう。

正しいゴールを設定する

全社的なクラウド推進で成果を上げるためには、社内からの協力を得られる適切なゴール設定が欠かせません。ただし、各部門のステークホルダーが求める成果を提示する必要があります。

たとえば、営業担当者に対しては、クラウド推進により新規顧客の創出ができるなどと伝えるのがよいでしょう。一方で人事担当者に対しては、クラウド活用により人事作業の効率化や退職率の低下などを見込めることを伝えるべきです。

多くの協力を得るためにも、各部門のステークホルダーに適したゴールを設定しましょう。CCoEの最終ゴールは、CCoEがいなくても全部門がクラウドを活用できる状態にすることです。その実現のため、常にユーザー視点での施策推進が求められます。

CCoEの原則

最後に、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が公開する「CCoEの原則」を紹介します。

  • CCoE の構造は、組織の変化に合わせて進化し、変化する
  • クラウドを製品として、アプリケーションチームのリーダーを顧客として扱う
  • 企業文化をすべての行動に組み入れる
  • 組織変更管理はビジネス変革の中心となるため、意図的で的を射た組織変更管理で、企業文化や規範を変更する
  • チェンジ・アズ・ノーマル(変更は当然)という考え方で、アプリケーション、IT システム、ビジネスの変化を受け入れる
  • 運用モデルの決定により、人々がどのような役割を果たし、ビジネス成果を達成するかが決まる

この原則からは、クラウド・組織・ビジネスは常に変化するため、CCoEも柔軟に変化する必要があるということがわかります。

まとめ

CCoEは、クラウド管理のポリシーとガバナンス整備、そして人材育成の役割を担っています。また、全社的にクラウドを推進するため、組織横断型のメンバーによって構築し、IT以外にもさまざまな知識を持った人材が適しているということを解説しました。

CCoEは発足させて終わりではありません。組織やビジネス環境の変化に合わせて常に変化する必要があります。例えば、小規模でクラウド推進をスタートさせた場合、徐々に推進範囲を拡大する可能性があります。その際、CCoEは新たなガイドラインの作成やアーキテクチャ設計が必要になるでしょう。

柔軟に変化しながら、最終的にはCCoEがいなくとも、社内のすべての人材がクラウドを使いこなせる状態になることを目指しましょう。

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