DAO(分散型自律組織)が注目される理由と特徴とは

公開日:2022-10-19 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

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ブロックチェーンやメタバースといった最新技術に関連して、新しい組織作りを促すとして関心を集めているのがDAO(分散型自立組織)です。従来の組織とはどのような点で異なり、ブロックチェーン技術とどのように関わっているのでしょうか。

本記事ではDAOとは何か、なぜDAOが注目されているのかについて、特徴や活用事例とともに詳しく紹介します。

DAOとは

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DAOについての理解を深めるために、DAOの考え方や仕組みについて見ていきましょう。

そもそもDAOとは

DAOは「Decentralized Autonomous Organization」の略称で、「ダオ」と読みます。日本語では「分散型自立組織」と訳されており、日本国内でも活用事例が増えつつあります。

DAOは、代表者の存在しない組織運営のあり方を指します。同じ目的を持つメンバーが組織を共同管理し、平等な立場で運営に携わることで、民主的な組織活動を実現できることが期待されています。

これまでの組織、たとえば株式会社などは、複数の人間で構築され、最低一人は代表者が必要とされてきました。こういった中央集権的な組織構造は、文明社会において最も基本的かつ合理的な組織運営のあり方とされてきましたが、DAOはそのような組織とは正反対の運営方針を採用しています。

経営層や内閣によって組織や国の意思決定が行われるのではなく、組織に参加するすべての人が意見を持ち、直接選挙制のような形で組織運営が行われる点が最大の特徴です。

DAOはWeb3.0における重要な考え方

DAOの普及とともに注目されるようになったのが、Web3.0という概念です。Web3.0とは、特定の管理者が存在しないインターネット社会を指す言葉で、分散型インターネットとも呼ばれます。

テック企業のサービスに頼ることなく、ユーザー同士が直接データやコンテンツの取引を行うことで、特定の企業へ過度に個人情報が集約したり、生活そのものがテック企業のさじ加減に左右されることのない世界を実現することが期待されています。

DAOはそんなWeb3.0の実現において重要な役割を果たす概念と考えられており、民主的な制度設計を促進する技術をもってWeb3.0実現を後押しすることが期待されています。

DAOの仕組み

DAOによる分散型組織を支えているのは、

  • ブロックチェーン
  • スマートコントラクト
  • ガバナンストークン

という3つの技術です。それぞれの役割について、確認しておきましょう。

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、ユーザー同士がデータを分散して保持し、取引内容を改ざんできないよう履歴を保存する暗号化技術です。

仮想通貨取引を経て一躍有名になったブロックチェーン技術は、DAOにおいては組織運営に関わる取引や契約を、第三者の目がなくとも改ざん不可能なものとし、透明性を確保するために採用されています。

ブロックチェーンはその名の通り、すべての取引履歴を一連の鎖のように連ねて管理しているため、個人の都合で改変を行うことは事実上不可能な仕組みとなっています。そのため、監視の目や責任者がいなくとも、改ざんや取引履歴の透明性が失われる心配をすることなく、組織運営が行えるというわけです。

スマートコントラクト

スマートコントラクトは、取引や契約の処理を履歴に基づいて自動で実行するプログラムで、ブロックチェーン技術の発達により誕生しました。契約をあらかじめ定義しておくことで、契約の執行から決済までを人の手を介さずに行えるため、特定の人間の意図に左右されることのない意思決定や組織運営を実現できます。

契約の履行や決済手続きは、これまで第三者の介入やサポートがあって初めて公平性と信憑性を担保することができていました。しかしスマートコントラクトは、第三者の介入なく契約が履行できるため、第三者にマージンを支払う必要もないことからコスト削減の面でも効果が期待されています。

もちろん契約の履行にかかる時間も自動化によって短縮されるため、スケジュール通りの迅速な業務の遂行も促進します。

ガバナンストークン

ガバナンストークンは、DAO参加者が組織に対して何らかの提案を行なったり、意思決定において投票を行なったりするのに用いられるトークンで、チケットのようなものです。

分散型組織であるDAOは、ガバナンストークンを保有している組織メンバーの投票によって、あらゆる意思決定が行われます。ガバナンストークンの保有数に応じて自身の意志が反映されやすくなるため、株式に近い存在であるともいえます。

ガバナンストークンは、組織から直接配布されたり、組織内の取引所で売買したりすることで取得できます。株式と異なるのは、ガバナンストークンは組織の意思によって売買が制限されることがなく、流動性と分散性が高いという点です。

DAOの特徴

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直接民主的な組織を実現するDAOは、従来型の組織と比べてどのような違いがあるのでしょうか。ここでDAOが持つユニークな特徴を、まとめて確認しておきましょう。

単一の管理者が存在しない民主性を備えている

ここまでも紹介してきた通り、DAOの最大の特徴は単一の管理者が存在しない点です。DAOは参加メンバーが所有するガバナンストークンの直接投票によってマネジメントが行われるため、一人の意思によって組織を動かすことはできません。

組織の運営側の一存によって決定が左右されづらい分、従来の組織のよりも健全な運営が行われやすいと期待されています。

オープンソースで透明性が確保されている

DAOはブロックチェーン技術を活用することで、すべての取引が透明性をもって遂行されます。組織に集中する資金や人的リソースの内訳は、ブロックチェーンにすべて記録されるため、秘密裏に物事を遂行することは不可能です。

従来の組織運営においては公にされない資金のやり取りや密約によって、大掛かりなプロジェクトが遂行される可能性もありました。DAOにおいてはそのような取引を実行することはできず、極めてクリーンな組織運営が可能であるとともに、組織や組織内のリソースを悪用されるリスクも抑えられます。

実際に履行される契約はスマートコントラクトによって自動的に実施されるだけでなく、その内容もオープンソースであるため、誰でも自由に閲覧できます。とにかく組織の透明性を高め、効率性を追求した一つの答えがDAOといえるでしょう。

土地や組織・性別などの制限なくだれでも参加できる

DAOはインターネット上で構築される組織であるとともに、誰でも自由に参加が可能であることを保証しています。土地や自身が現在所属している組織、性別などによって参加の可否が決まることはありません。

インターネット環境があれば誰でもDAOに参加できます。ガバナンストークンを取得すれば、参加年数や貢献度にかかわらず意思決定に携わることができます。

従来、組織に参加するには、試験や面接を受けたり、雇用契約を締結したりすることが一般的です。また、組織で意思決定権があるのは、役職に就いている人や長年勤めている人である場合が多いでしょう。

DAOの登場により、主体的に組織運営へ携われる環境を提供することで、民主的な組織形成を促すことが期待されています。

DAOが注目を集める背景

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DAOはここ数年で一気に注目を集めていますが、その背景には以下の3つが挙げられます。

NFTや仮想通貨などを軸としたブロックチェーン技術の普及

1つ目は、ブロックチェーン技術の普及です。仮想通貨ブームをきっかけに、高度な暗号化技術といわれていたブロックチェーンは一般人にも広く知られることとなりました。

また、近年は仮想通貨に代わって、NFTブームが到来しています。NFTは「Non-Fungible Token」の略称で、非代替性トークンを意味しています。デジタルコンテンツに対してコピーや交換ができないような暗号化を実施する技術です。

このようなNFTの登場を支えているのもブロックチェーン技術であり、最新のデジタルテクノロジーの陰には常にブロックチェーンが存在していることから、これに関連する暗号化技術に対する理解も広く迅速に進んでいくようになっています。

誰でも立ち上げられる運用ハードルの低さ

DAOが優れている点として、誰でも組織を立ち上げることができるハードルの低さが挙げられます。DAOを構成しているのは高度なデジタルテクノロジーですが、DAOの立ち上げにあたってはそれらの技術に対する深い理解は必要ありません。

DAOのメリットを理解し、組織の立ち上げによって達成したい目的さえあれば、誰でも民主的な組織を生み出すことができます。

メタバース空間との融合という将来性

DAOは実在の組織や第三者の介入を必要としないことから、メタバースの普及によってさらにその価値が大きくなると期待されています。

もう一つの現実空間になると期待されているメタバースのマーケットは、近年拡大傾向にありますが、これにはNFT投資や仮想通貨投資の高まりも背景にあります。

ブロックチェーン技術と関わりの深いメタバースとDAOが融合することで、デジタル空間に民主的な社会が誕生するという期待も高まっています。DAO運用を早い段階から進めたいと考える人も少なくないでしょう。

世界の代表的なDAOの事例

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具体的に、DAOはどのような形で世の中に影響しているのでしょうか。ここでは代表的なDAOについて紹介します。

Bitcoin(ビットコイン)

仮想通貨として広く知られているBitcoinは、世界で最も知名度のあるDAOといえます。組織というよりも貨幣としての認識が広まっていますが、厳密にいえばBitcoinもDAOの一種です。

特定の個人や組織によって仮想通貨の価値が意図的に上下することはなく、ブロックチェーンの生成に必要なマイニングに参加する対価として、Bitcoinと呼ばれる仮想通貨をメンバーへ配布しています。

ARAGON

DAO運営を簡潔に行えるサービスの代表例として、ARAGONが挙げられます。ARAGONはDAO運営に必要な機能をユーザーに提供する組織で、ガバナンストークンの発行やそれを使った意思決定を可能にします。

ユーザーはゼロからブロックチェーンの実装やスマートコントラクトの実装を行う必要がないため、いつでも誰でもネット環境さえあれば理想のDAO構築が行えます。

Flamingo DAO

Flamingo DAOはNFTに特化したDAOとして名高い組織です。メンバー同士でのNFTの貸し借りや、アートギャラリーへの展示、保有などを実現します。

NFTの活用方法はメンバー内の投票によって決められ、その活用方法や今後購入するNFTを決定します。高額なNFTを扱うということもあり、Flamingo DAOでは収入や身元の確認が参加前に求められ、メンバー数に上限があるなどの成約がある点も特徴です。

MakerDAO

MakerはガバナンストークンであるMKRを保有するメンバーによって構成されているDAOで、分散型金融(DeFi)アプリケーションである「Makerプロトコル」を管理しています。

Makerプロトコルを活用することで、暗号資産を担保としてステーブルコイン、つまり法定通貨と連動する仮想通貨を誰でも発行できるようになるのが特徴です。

DAOのおもなカテゴリ

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上述の通り、DAOはさまざまな機能や目的を持って活動しており、以下の8つのカテゴリに分けることができます。

DAO Operating System

DAO Operating Systemは、DAOを運営しやすくするための機能を提供するDAOです。本来なら高度な技術を必要とするDAOを、ほんの数クリックで構築できるよう促します。

上に挙げたものの中ではARAGONそれに当てはまります。

Investment DAOs

Investment DAOsは、DAOそのものやどこかの組織に投資するためのDAOです。参加メンバーが組織内に供託金をプールし、投票によって投資先を決定するような仕組みを有しています。

上に挙げたDAOの中では、Komorebi CollectiveがInvestment DAOsにカテゴライズされます。

Grants DAOs

GrantS DAOsは、Web3.0に不可欠なオープンソースのコード開発を進めているプロジェクトに対して助成金を提供するためのDAOです。通常であればボランティアとなる開発に対して、DAOが支援することにより、特定の組織に依拠することなくデベロッパーが開発に専念できる環境を構築できます。

Aaveが提供するAaveプロトコルはその代表例です。

Collector DAOs

Collector DAOsは、NFTの購入や共同保有を目的としたDAOです。上の事例でいうと、Flamingo DAOはポピュラーなCollector DAOsの一種として知られています。

Protocol DAOs

Protocol DAOsは、プロトコルの維持や運営を行うためのDAOを指します。Protocol DAOsが存在するおかげで、ユーザーはさまざまなサービスを利用できます。

代表的なDAOとしては、Makerプロトコルを管理するMakerが挙げられます。

Service DAOs

Service DAOsは、Protocol DAOsよりもさらに広範なDAOサービスを提供するものです。どのカテゴリにも当てはまらないDAOが内包されており、上で紹介したRaid Guildなどがここに分類されます。

Social DAOs

Social DAOsは、公共の利益を目的としたコミュニティベースの活動を主体とするDAOです。特定領域で活躍するメンバー同士が交流する目的で運営されるなど、ユーザー間の交流を活性化させる役割を持ちます。

上記で紹介した、GITCOINなどはSocial DAOsに含まれます。

Media DAOs

Media DAOsは、これまでメディアが担ってきた情報発信や執筆活動のプラットフォームとして機能するDAOです。特定の広告主や利権団体に左右されることなく、コミュニティの有志によって翻訳などが行われ、世界中に向けた情報発信を行います。

上で挙げたGCRは、Media DAOsの一種といえます。

DAOの運用事例

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DAOは、すでに国内でも運用事例が登場しています。どのようにDAOの技術が活躍しているのかに注目しながら、それぞれのケースを確認しましょう。

新潟県旧山古志村・岩手県紫波町の地域活性化

新潟県旧山古志村や岩手県紫波町では、地域活性化のためのDAO活用を進めています。

人口減少が課題である山古志村の地域団体は、村の特産であるニシキゴイのデジタルアート作品を地域の「電子住民票」として世界で初めて販売しました。その結果、販売からわずか半年で住民の数上回る965人が購入し「デジタル村民」として登録されました。

岩手県紫波町では、ふるさと納税の返礼品として、NFT付のデジタルアート作品の提供を進めています。ふるさと納税の返礼品としてNFTを扱う例は北海道などの他の地域でも見られつつあります。。

ガイアックスのシェアハウス運営

ソーシャルメディア事業を手掛けるガイアックスは、シェアハウス運営にDAOを導入しています。物件の運営管理をオーナーだけでなく入居者や出資者にも託すことで、シェアリングビジネスをユニークな方法で展開させようとしています。

DAOをシェアハウス事業に採用することで、運営会社も住人も等しい立場からルール策定を進められ、快適な住環境を実現することが狙いです。

NFTの購入者には入居権利が与えられ、一人24トークンまで購入できる仕組みになっており、最大2年間住むことができます。さらにトークンを転売することで、入居権利を他人に譲渡することもできます。従来の不動産事業ではあり得なかったライフスタイルの実現も可能です。

DAO運用に伴う課題

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DAOには多くの導入効果が期待される一方、運用に当たってはまだまだ課題も山積しています。ここでは3つの課題を解説します。

DAO組織を守れる仕組みづくりが追いついていない

DAOの非中央集権的な仕組みや考え方は新しい概念であるため、各国でその仕組みを守れる法整備が進んでいないのが現状です。そのため、DAO組織の安全性や公共性を担保したり組織運営に伴うトラブルを解決できたりするルールがなく、全てを自己責任で進めなければならないという課題があります。

単一のリーダーが存在しないので前進が難しいケースもある

単一のリーダーが存在しない民主的なシステムは公平性が評価される一方、意見の相違がある場合、前進が困難になりかねません。

中央集権的な組織であれば、議論が暗礁に乗り上げてもリーダーの一声で最終決定が行える場合があります。DAOにはそのような救済措置がないため、議論に決着がつくまで前に進むことはできない危険性があるのです。

未知の潜在脅威が多く潜んでいる

DAOはまだまだ新しい概念ということもあり、組織参加者が思いもしていなかった脅威にさらされる危険性や、詐欺やサイバー犯罪の被害者あるいは意図せず加害者になるといった可能性もはらんでいます。

DAO運営に関する刑罰や法が整備されていない以上、万が一の脅威に備えて自分なりのセーフティネットや線引きを設けておくことが重要です。

DAOへの理解を深めて組織運営の可能性を探ろう

DAOは、ブロックチェーン技術によって支えられている次世代の非中央集権的な組織の在り方です。すでに多くの分野でDAOが立ち上げられており、出身地や性別、身分を問わず活発な活動が行われています。

最近では国内でも、地方創生や新規ビジネスの創出のきっかけとして導入が進んでおり、その可能性には多くの人が注目しています。一方、DAOは組織運営が平行線をたどり前進できなくなったり、トークンを多く所有する人物が組織運営に対して力を持ったりしてしまうリスクも伴います。

DAOの可能性について理解を深め、リスクや課題点も踏まえたうえで、DAOの活用を検討することが大切です。

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