あらゆる企業の存続に関わるDX(デジタルトランスフォメーション)とは?

公開日:2020-11-24 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

あらゆる企業の存続に関わるDX(デジタルトランスフォメーション)とは?

業界・業種を問わず、持続的な成長にはDX(デジタルトランスフォーメーション)が必須と言われる現代。DXという言葉を耳にすることがあっても、具体的にどのようなことを指し、DX化によって何が良くなるのかがイメージしにくいという方も多いはずです。

そこで、この記事ではDXの定義や注目されている理由、またすでに報告されている導入事例についてご紹介します。

DXとは何か?改めてその意味を解説

2018年12月に経済産業省が取りまとめた「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」の中で、DXの定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」となっています。

つまり、DXにおいては単にデジタル技術を使って仕事を自動化する、効率化するだけでなく、これまでのビジネスのやり方や会社のあり方を変えたり、ビジネスモデルを見直たりする点が重要です。

そして、そのデジタル技術が顧客体験の向上、ひいては自社の収益向上につながることがDXの最終的なゴールとなります。

DXが注目されている理由

では、なぜ現代においてDXが求められているのでしょうか。経済産業省は20189月にDXレポート ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」というレポートを発行しました。このレポートの中では、老朽化したITシステムを放置すると、2025年に以下のような問題、通称「2025年の崖」と呼ばれる問題が発生すると指摘されています。

・膨大なデータを活用することができず、市場の変化に対応した柔軟・迅速なビジネスモデルを構築できない

・老朽化したシステムの維持管理費が負担となり、IT予算の9割以上が費やされる

・人材不足で保守運用がおろそかになり、サイバーセキュリティや事故・災害などに対応できない

そこで、複雑化・ブラックボックス化した既存のシステムの刷新を通じてDXを実現することで2025年問題を回避し、2030年に実質GDP130兆円の増加を達成するというのが政府のシナリオです。そして、この対象となるのは特定の業種やITベンダーだけではありません。すべての業種・業界がDXに取り組み「デジタル企業」となることが求められているのです。

このように政府自らが旗振りをしながら、「2025年の崖」の問題意識やDX実現に向けたシナリオをあらゆる業界で共有し、日本全体で推し進めていこうという動きから、DXは広く注目されることとなりました。

DX実現のためのポイント

では、DXを実現するためには具体的に何をすれば良いでしょうか。前出の経産省のレポートDXレポート ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」によれば、まず老朽化した既存システムの問題を見える化し、経営者が把握できることが重要です。その上で、どのように刷新していくか、どんな技術を使うかについてのガイドラインを作成し、コストやリスクの削減に取り組む必要があります。保守・運用に多くのコストがかかっているシステムについては、廃棄するという選択肢も考えなくてはいけません。

また、これまでのようにユーザー企業がITベンダーに「丸投げ」するという関係性を見直し、変化に柔軟に対応できる契約関係を結ぶ必要性も出てきます。つまり、DXに強い人材を自社内で育成または採用することも課題となります。あるいは、既存システムの保守・運用の人材をDX人材として再教育する必要も出てくるでしょう。

ちなみに、マッキンゼー・アンド・カンパニー社が2018年に行なった調査によると、組織のDX化によりパフォーマンスが向上し、長期的な変化に対応できるようになったと回答したのは全体の16%でした。そして、DX化に成功した企業の取り組みにおいては、以下の5つの点が共通していると指摘しています。

  1. デジタルに精通した適切なリーダーを各部署に配置している
  2. 未来の労働力の変化を見据えて、組織の能力を向上させている
  3. 働き方改革を行って、従業員の働く力を向上させている
  4. 日常的な業務にデジタルツールを導入し、仕事をアップグレードさせている
  5. 従来の手法とデジタルの手法の両方を使い分けながら、コミュニケーションを行っている

また同調査では、組織がどこに向かっているのか、何が変化しているのか、またなぜ変化への適応が重要なのかを従業員と共有することが必要だとも付け加えています。

これらの共通点を参考に、既存のシステムを見直し、DX化を進めることが大切です。

DXを支える技術とは

DXを実現するにあたっては、具体的にどのような技術が必要なのでしょうか。以下では、DXを支える主な技術や開発方法についてご紹介します。

AI

AIは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では人工知能と呼ばれています。厳密な定義はありませんが、「人間のような知能を持ったコンピューター」という意味で使われ、記憶や学習、推測や判断など人間の脳が行うようなことができるのがAIです。近年では、AIの活用によってビジネスに関する情報を収集し、分析や予測を行い、人間がやるべきことを決定するといった一連のプロセスを進められるようになっており、その仕組みを取り入れることがDXを実現する上での大きな鍵となっています。

IoT

IoTとは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」とも言われます。PCや携帯電話などに限らず、さまざまな「モノ」がインターネットにつながることで、世界のあらゆるモノからのデータをより速く、正確に、大量に収集し、予測や最適化などが行えるようになります。代表的な例としては、自動車がインターネットに繋がり渋滞の制御や自動運転に活用する、生体情報がインターネットに繋がり医療に役立てる、農作物にセンサーをつけてインターネットに繋ぐことで作物を効率的に育てる、などのメリットが挙げられます。

5G

5Gとは「5th Generation」の略で、「第5世代移動通信システム」のことを指します。通信回線の「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」を実現し、2020年から国内での商用化がスタートしています。5Gの通信環境が一般に普及することで、これまで以上に臨場感のあるライブ配信や、VR/AR(バーチャルリアリティ/アーティフィシャルリアリティ)などの体験、遠隔操作での医療やモノづくりなどが現実的になります。

マイクロサービス/アジャイル開発

「マイクロサービス」とは、独立して動作する小さなサービスの集合体として構築されたシステムのことです。これまでのシステム開発では、特定のベンダーが全体のシステムを構築し、属人的に保守運用を行うことが多かったため、時間の経過とともにブラックボックス化し、担当者やベンダーが変わるとシステム全体の保守や改修が困難になるという問題が発生していました。そこで、保守運用に機敏に対応できるマイクロサービスが注目されるようになりました。

マイクロサービスの開発においては「アジャイル開発」と呼ばれる手法が採用されています。アジャイル開発は短期間で開発やテストを繰り返すため、従来の開発フローに比べて、変化に対応しやすいという特長があります。

DX銘柄2020にも注目!企業の活用事例

ここからは、実際にDXを通じて一定の成果を上げた企業の事例を見ていきましょう。経済産業省では東京証券取引所と共同で、デジタル技術を前提としたビジネスモデルや経営変革に取り組んでいる上場会社をDX銘柄2020」の35社、「DX注目企業2020」の21として選定しています。

DX銘柄は、東京証券取引所に上場している企業に対して「デジタルトランスフォーメーション調査2020」を実施し、以下の6つの項目と財務指標に関するスコアリングや最終選考を経て選定されています。また、DX銘柄には選定されなかったものの総合的評価が高かった企業や、注目されるべき取り組みをしている企業を「DX注目企業」として選定しています。

「デジタルトランスフォーメーション調査2020において評価された項目」

Ⅰ.ビジョン・ビジネスモデル

Ⅱ.戦略

Ⅱ-.組織・制度等

Ⅱ-.デジタル技術の活用・情報システム

Ⅲ.成果と重要な成果指標の共有

Ⅳ.ガバナンス

この中で、「DXグランプリ2020」として選定されたのが株式会社小松製作所(コマツ)トラスコ中山株式会社2社です。

株式会社小松製作所ウェブサイト(画像出典:株式会社小松製作所ウェブサイト

コマツでは建設業界全体の人手不足への対策として、生産性を高める「スマートコンストラクション」が評価されました。IoTなどを駆使し、測量ドローンや建設機械自体の自動化などによる「モノ」の高度化と、施工の各工程間においてデータの受け渡しを行い、施工オペレーションを最適化する「コト」の最適化という両面のアプローチでDX化を進めています。

トラスコ中山株式会社ウェブサイト(画像出典:トラスコ中山株式会社ウェブサイト

トラスコ中山は機械工具や生産加工用品、作業用品などの専門商社です。取引先とのデータの連携手段を多様な形で用意し、サプライチェーンの高度化をはかった新基幹システム「パラダイス」や、必要なときに必要な商品を利用できる調達サービス「MROストッカー」、多彩な物流機器を駆使した最先端の物流倉庫「ロジスティクスワンダーランド」などが評価されました。

最後に

DXは、すべての業界・業種の企業に共通する経営課題です。これまでのITシステムを見直し、変化に強い形に組み替えることで、保守・運用のコストを下げ、DX人材を育成していくことが求められています。そして、これを機会に今までのビジネスのやり方を見直し、すべてのプロセスを最適化することが、顧客により大きな満足を提供することにも繋がります。DXの意味を正しく理解して、次のステップへ進む機会になれば幸いです。

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