自然言語処理(NLP)はAI活用によって何が実現できるのか?

公開日:2022-08-30 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

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自然言語処理とは、これまでコンピューターが苦手としてきた曖昧性のある情報を処理するための技術を指します。この記事では、自然言語処理の詳しい意味や仕組み、AIとともに用いられているシステムの事例などについて、わかりやすく解説します。

自然言語とは

「自然言語」とは、その言葉の通り人間が会話したり、物を書いたりするときに使う英語や中国語・日本語のような自然な言葉を指します。自然言語は、曖昧な表現を持つ特徴があります。たとえば、日常生活で会話をしている時に「それはどういう意味?」「こういうことで間違いないですか?」と相手に聞き返すことなどがあるでしょう。

一方、自然言語と対極にある言葉が、コンピューターを動かすプログラムを組むために使う言語であるプログラミング言語です。プログラミング言語にはコンピューターに指示をする目的があるため、曖昧な表現はありません。数字や記号などのルールを定め、指示に対して常に一定の解釈をさせることが求められるのです。

AIによる自然言語処理(NLP)とは

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「自然言語処理」とは、曖昧性のある自然言語をコンピューターが認識・処理し、実用的に扱うための処理方法です。自然言語処理は英語で「Natural Language Processing」と呼び、略して「NLP」とも表記されます。

本来、曖昧性のある自然言語の要素を処理することはコンピューターが苦手とする部分です。しかし、自然言語処理の仕組みを使えば、人間の会話の内容といった膨大で曖昧なデータを処理し、システム開発やアプリ開発に活かすことができます。

自然言語処理の仕組み

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ここからは、自然言語処理の仕組みや流れについて、以下6つの流れに分けて解説します。

  • 機械可読目録
  • コーパス
  • 形態素解析
  • 構文解析
  • 意味解析
  • 文脈解析

機械可読目録

機械可読目録(MAchine-Readable Catalog MARC)とは、コンピューターが言葉を理解する際に必要となる辞書・目録のことです。自然言語処理を行うために事前に準備しておくべき要素であり、人間の言葉をコンピューターが読み取れるように変換する意味合いがあります。

コーパス

コーパス(Corpus)とは、言葉の使用法について記録した集合体です。動詞や形容詞などの識別やタグ付けといった役割があり、日本語で表す際に「言語全集」と呼ばれることもあります。コーパスも機械可読目録と同じく、自然言語処理の工程を行うための前準備という位置付けです。

形態素解析

ここからは、自然言語処理を行う際の実際の工程の説明に入っていきます。形態素とは、自然言語の文章において、意味を持つ最小の言語単位のことです。具体例として「大きな赤いカバンを持った女性」という文章で考えてみましょう。

この文章は、以下のように文章を分解できます。

  • 大きな:形容詞
  • 赤い:形容詞
  • カバン:名詞
  • を:助詞
  • 持っ:動詞
  • た:助動詞
  • 女性:名詞

形態素解析とは、このように文章を分割することを指します。

構文解析

構文解析は、前述した形態素解析で分割した単語間の関係性を解析する処理です。

先ほどの「大きな赤いカバンを持った女性」という例で考えてみましょう。この文章では、人間が常識的に考えれば「カバンが赤くて大きい」という意味になりますが、コンピューターが「女性が赤くて大きい」と誤って認識してしまう可能性もあります。構文解析によって単語の繋がりを整理することで、「大きな」「赤い」という単語が「カバン」に対して係っているとコンピューターに認識させます。

意味解析

意味解析は、構文解析で処理した情報を元に、文章の持つ意味を解析する処理です。

これまでの例で言えば、「大きな赤いカバンを持った女性」という文章の意味を、コンピューターが正しく理解した状態にすることを指します。意味解析では、コンピューターが以下のような考え方をすることで、「正しいと思われる文章である」「常識的にありえない文章である」といった判断をすることも可能です。

  • 「カバン」と「大きい」の関連性が高い
  • 「カバン」と「赤い」の関連性が高い
  • 「赤い」と「女性」の関連性が低い

このような判断により、「大きくて赤い女性」という誤った意味ではなく、「大きくて赤いカバン」という本来の意味を解析することができます。

文脈解析

文脈解析は、意味解析の結果をさらに詳細に解析する処理を指す言葉です。具体的には、複数の文章にまたがる文脈を理解したり、省略されている言葉を明らかにしたりするなど、高度な処理を行います。文脈解析によって、最終的に文脈の細かな認識の違いを防ぐことが可能です。

自然言語処理を活用してできることと活用事例

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ここからは、自然言語処理の活用で可能になることや、実際の活用事例などについて解説します。

機械翻訳

自然言語処理を使った機械翻訳は、Googleなどさまざまな企業が開発しています。

なかでも高い精度で翻訳してくれると有名な機械翻訳サービスが「DeepL翻訳」です。DeepL翻訳は、ディープラーニングを使った人工知能システムを開発する企業であるDeepL社が提供しています。

2020年3月に日本語と中国語に対応した際には、その翻訳後の文章精度の高さが、インターネット上で大きな話題となりました。また、翻訳を必要とする個人だけではなく、IT系の情報を扱う世界の各種メディアなども、DeepL翻訳の精度を多く取り上げています。

対話型システム・チャットボット

「Googleアシスタント」「Siri」など、端末に搭載されている対話システムにも自然言語処理が用いられています。このような対話型システムでは、自然言語である人間の言葉をコンピューターが理解しユーザーと対話することで、問題を解決したり、希望の操作を行ったりすることを可能にします。

また、企業のホームページなどで多く使われているチャットボット(対話型AI)も、同じく自然言語処理を活用したシステムです。チャットを通じてユーザーの疑問を解決することで、問い合わせ業務の負担軽減や効率化に繋がるでしょう。さらに、社外向けではなく社内向けにチャットボットを導入した事例もあり、社員の疑問答えるなど、業務の効率化も実現しています。

予測変換

スマホなどの電子端末で文字を打つと、入力したい単語の候補が変換された状態で表示されるでしょう。、このような機能を予測変換機能と呼びます。予測変換は入力履歴などを参考に表示されるものであり、候補の表示には自然言語処理の技術を使用していることが一般的です。

近年では、長い文章でも文脈に沿った予測変換を表示することが可能です。「MicrosoftIME」「Google日本語入力」などのシステムで予測変換機能が使われています。

AI検索システム

AI検索システムとは、ユーザーが行う検索をスムーズにするための機能です。少ない情報を入力するだけで、必要な情報を見つけやすくなるといったメリットがあります。

AI検索システムの導入事例として、多くの企業に導入されている検索システム「Knowledge Explorer」が一般的です。Knowledge Explorerは、作成中のドキュメントに近いテーマの資料をデータベースから探し出すなどの機能を提供しています。

蓄積された膨大なデータベースのなかから探し出せず、十分に活用できてないといった課題を解決することが可能です。このような仕組みにより、ユーザーが提供する情報が少なく曖昧でも目的のデータを探し出すことのできる可能性が高まるでしょう。

テキストマイニング

テキストマイニングとは、テキストデータのなかから必要とする情報を抽出する技術です。アンケートやSNSなどのコメントから顧客の声をピックアップし、ニーズを分析するなどのマーケティングの分野でよく使われています。

多くの文章の羅列から必要な情報を抽出するのは手間がかかってしまいます。自然言語処理を用いたテキストマイニングを行うことで、重要な情報を効率的に抽出することできます。具体的には、アンケートの自由回答欄に書かれた文章など、構造化されていない情報から顧客の声を拾う際に必要な情報を抽出することです。

この方法はコールセンターや医療現場などでも広く応用され、顧客および患者といった対象から、より有益な情報を得るために用いられています。

ビッグデータの活用

ビッグデータの活用にも自然言語処理が使われています。たとえば、アパレルブランドを展開する企業においては、店舗ごとの売上や購買履歴など、膨大なデータを扱うことになります。データが膨大なあまり、戦略の立案などにうまく活かせないというケースも多いでしょう。

また、近年ではビッグデータの加工や処理が簡単に行えるサービスも増えつつあります。たとえば、日本ソフト開発社が提供する「SOFIT Super REALISM」がその一例です。顧客の購買履歴や売上などに関するデータを構造的に把握することで、将来的には、より綿密にデータに基づいた的確な戦略を打ち出せるようになるでしょう。

まとめ

自然言語学習は情報の検索や予測変換・対話システムなど、さまざまな場面で使われています。
自然言語処理の技術を使えば、今までコンピューターが苦手としていた曖昧性のある情報についても、処理をすることが可能です。

コンピューターでできる業務を増やすことにより、業務の効率化や人材不足の解消につながります。
自然言語処理の理解を深めたり、実務と関連づけて考える習慣づけをすることで、導入を検討する際に役立てていきましょう。

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