現代のビジネスに不可欠なクラウドサービス、SaaS、PaaS、そしてIaaSとは?違いと事例を紹介
更新日:2024-09-27 公開日:2020-11-24 by SEデザイン編集部
昨今、SaaS、PaaS、IaaSといった言葉を耳にすることが多くなりました。ソフトウェアの開発提供技術に関連する用語ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、これらの3つの違いについて解説します。
SaaSとは
SaaSとは、Software as as Serviceの略で、サースまたはサーズと呼ばれます。Webを通じて利用できるソフトウェアサービスのことです。
下図のように、私たちが普段利用しているWebサービスの多くが、実はSaaSとして提供されています。
|
海外 |
日本 |
メール |
Gmail、Hotmail他 |
Yahoo!メール、gooメール他 |
Eコマース |
Amazon、Shopify他 |
楽天市場、カラーミーショップ、Estore、フューチャーショップ他 |
グループウェア |
G suite他 |
サイボウズ.com、Aipo他 |
SNS |
Twitter、Facebook他 |
mixi、GREE他 |
チャット |
Slack他 |
Chatwork他 |
写真共有 |
Googleフォト、Flickr、Instagram他 |
フォト蔵他 |
ブログ |
Blogger、Medium他 |
アメブロ、はてなブログ他 |
SaaSは、利用する側、提供する側それぞれにメリット、デメリットがあります。
SaaSを利用する側(ユーザー)のメリット
SaaSの最大のメリットは、インターネットに接続できる環境であれば、どこからでも利用できることです。
また、SaaSは完成されたソフトウェアとして提供されるため、開発が不要で簡単にサービスを導入・利用できます。サーバーの運用やバグの改修、機能改善やアップデートなども提供企業が行うため、ユーザーは費用を負担することなく最新のサービスを利用することが可能です。
利用料金も従量課金制のモデルが多く、コストパーフォーマンスに優れています。
SaaSを利用するユーザー側のデメリット
SaaSを利用する場合、常にランニングコストが発生します。サービスごとに料金体系は異なりますが、多くの場合、利用ユーザーの人数や利用期間に応じて課金されます。そのため、SaaSサービスを契約する際は、社員数や利用する期間を考慮して正確なコストを試算しておくことが重要です。
また、これまで社内で使用していたサービスをSaaSに移行する場合、データをそのまま移行ができないことが珍しくありません。SaaS側のデータのインポート機能や、インポートデータのフォーマットをあらかじめよく確認しておきましょう。
そのほか、サービスによってはカスタマイズの余地が限られていることがあります。社内の業務フローに沿ったSaaSを採用することが大切です。
さらにSaaSの利用においては、メンテナンスや障害が発生する可能性も考慮する必要があります。メンテナンス期間中はサービスの利用が制限され、また意図しない障害によってサービスが利用できなくなるリスクもあります。
SaaSを提供する側(サービス事業者)のメリット
SaaSは継続的な利用が期待できるため、ユーザーを囲い込みやすく、安定した利益を見込めます。また、オンラインでサービスの導入が可能なので、対面営業の場合と比べて、比較的容易に広範囲なユーザーを獲得することができます。
SaaSを提供するサービス側のデメリット
SaaSを提供する場合、開発コストなどの先行投資が発生します。一定数のユーザーを獲得し、収益化するまでに時間がかかることがあります。
さらに、継続的なサービスのアップデートやバグ対応を行うためのリソースが必要です。個々のユーザーをフォローアップするためのカスタマーサポートのコストも継続的に発生します。
PaaSとは
PaaSは、Platform as a Serviceの略で、パースと呼ばれます。ソフトウェア開発のためのプラットフォームを提供するサービスです。代表的な例として、以下のようなサービスが挙げられます。
- Amazon Web Servise(AWS)
- Google App Engine(GAE)
- Microsoft Azure
PaaSのメリット
PaaSはソフトウェア開発の自由度を保ちながら、サーバーやインフラがサービスとして提供されるため、それらに対して保守を行う必要がないというメリットがあります。
PaaSのデメリット
ソフトウェアの開発自由度があるものの、実際にはPaaSが提供する技術的制約の範囲内での自由度となるため、後述するIaaSに比べると開発の自由度は下がります。
IaaSとは
IaaSは、Infrastructure as a Serviceの略で、アイアースまたはイアースなどと呼ばれます。ソフトウェアの開発提供に必要なサーバーやディスク領域、回線インフラを提供します。自由にOSや開発言語をインストールすることができるため、開発の選択肢はもっとも自由度が高くなります。
代表例としては、以下が挙げられます。
- Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)
- Microsoft Azure
- Google Compute Engine(GCP)
IaaSのメリット
IaaSは、ソフトウェアの開発提供のためのインフラ周りから提供されるため、もっとも開発の自由度が高くなります。開発したいソフトウェアをOSやプログラミング言語から選定できるため、開発者がもっとも開発しやすい環境を用意することができます。
IaaSのデメリット
開発自由度が高い一方、OSや言語、ミドルウェアなどのアップデートや脆弱性対応なども、開発側の責務となります。ソフトウェアの開発だけではなく、インフラ担当者などを配置する必要も出てくるため、その分の人件費も考慮する必要があります。
IaaSとVPSの違い
小規模から中規模の開発の場合、IaaSを選択せず、VPSを使用する場合もあります。VPSとはVirtual Private Serverの略で、仮想的なサーバーを提供するサービスのことを指します。IaaSと技術的に重複する部分もありますが、大きく違うのは料金体系とリソースの確保です。
IaaSは、利用した分だけ支払う従量課金体制のサービスです。データ転送量や、サーバーを立ち上げていた時間で計算されます。一方、VPSは一定のリソースを定額で提供します。転送量や立ち上げていた時間にかかわらず、一定の料金を支払う料金体系です。
ただし、VPSはリソースの確保に難があると言えます。サーバーへのアクセスが集中した場合、IaaSは自動的にサーバーを増強する機能がありますが、VPSでサーバーを増強するには、プラン変更などの契約更改が必要です。
VPSは一般にIaaSよりも安価ですが、IaaSのほうが安定性の面で優れていると言えます。
SaaS、PaaS、IaaSの違いまとめ
以下に、SaaS、PaaS、IaaSの違いについてまとめました。
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SaaS |
PaaS |
IaaS |
アプリケーション |
✔ |
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ミドルウェア |
✔ |
✔ |
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OS |
✔ |
✔ |
✔ |
ハードウェア |
✔ |
✔ |
✔ |
ネットワーク回線 |
✔ |
✔ |
✔ |
✔がついているところは、サービス事業者から提供される項目です。✔のついていないところは、開発側が自由に選択できるものの、メンテナンスの責務を負う箇所です。
例えば、メールサービスを社内に導入する場合、GmailなどのSaaSを使えば、アプリケーション開発やメンテナンスにかかるコストを抑えることができます。一方で、ある程度カスタマイズが必要な場合は、PaaSかIaaSが選択肢になるでしょう。自前でOSやメールサーバーを選択したい場合はIaaSとなります。
このように、技術課題の背景や支出される予算に応じて、SaaS、PaaS、IaaSを使い分けていくことが大切です。
その他の〇aaSを紹介
SaaS、PaaS、IaaS以外にも、◯aaSという用語が最近増えてきました。補足としてそれぞれ説明しておきます。
BaaS
Backend as a Serviceの略で、バースと呼ばれます。スマートフォンやタブレットにインストールされたアプリに対して、例えばデータの管理や会員登録、会員認証、プッシュ通知などの機能を提供するためのバックエンドを受け持つサービスです。
なお、「Mobile」の「m」をつけたmBaaS(エムバース)という言葉もありますが、これは同じ意味です。
DaaS
Desktop as a Serviceの略で、ダースと呼ばれます。遠隔地に存在するサーバーに個人パソコンのデスクトップを構築する技術のことです。テレワークが急速に進む昨今、注目のサービスです。
IDaaS
IDentity as a Serviceの略で、アイダースまたはイダースと呼ばれます。ひとつのID/Passwordの組み合わせで複数のサービスにログインができる、シングルサインオンなどの認証技術をクラウド上で管理するものです。大企業を中心に広まりつつあるサービスです。
XaaS
ザースと呼ばれます。業務に関わるあらゆるデジタル技術をクラウド上で行うという意味の言葉で、特定のサービスを指す用語ではありません。クラウドサービス全体を指す言葉です。
クラウドサービスが普及するにつれて、開発環境もさまざまな進化を遂げています。とりわけ、開発のためのプラットフォームやインフラなどを「サービス」として利用する◯aaSという考え方は、利用形態の柔軟性やコスト、セキュリティなどを考慮しても十分に利用する価値がある方法です。
ただし、その種類も多岐にわたっており、それぞれのメリット、デメリットを踏まえた上で利用を検討する必要があります。今回は、その違いについて紹介しました。この機会に御社でも◯aaSの導入を検討されてはいかがでしょうか。