スマート工場とは?特徴やメリット、課題、実現ステップなどを解説

公開日:2023-01-06 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

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人手不足や「第4次産業革命」の流れを受け、製造業をはじめ多くの企業がAIやIoT技術を活用した「スマート工場」に着目しています。しかしながら、「スマート工場についてよくわかっていない」という企業担当者も多いのではないでしょうか。そこで今回は、スマート工場の概要や実現メリット、課題、実現ステップなどを解説します。

「スマート工場」とは

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はじめに、スマート工場の概要や注目されている背景、諸外国の動向について解説します。

スマート工場の概要

スマート工場とは「スマートファクトリー」とも呼ばれ、工場内の機器や生産設備、生産管理システムがネットワークでつながり、工場内のオペレーションが最適化されている工場を指します。

スマート工場を実現するうえでは、IoTやAIなどの技術が不可欠です。「モノのインターネット」であるIoTによって、工場内の機器や生産設備からデータを収集します。そして、IoTで収集したデータをAIが分析することで、生産工程の効率化や省エネルギー化などに役立つ付加価値を創出できます。

スマート工場が注目されている背景

スマート工場の概念は、ドイツで提唱された「インダストリー4.0」が起源です。インダストリー4.0は、総務省の「平成30年版 情報通信白書」では以下のとおり定義されています。

「インダストリー4.0」とは「第4次産業革命」という意味合いを持つ名称であり、水力・蒸気機関を活用した機械製造設備が導入された第1次産業革命、石油と電力を活用した大量生産が始まった第2次産業革命、IT技術を活用し出した第3次産業革命に続く歴史的な変化として位置付けられている。

引用元:総務省「平成30年版 情報通信白書

上記のとおり、インダストリー4.0はIT技術の革新に次ぐ画期的な産業革命と位置づけられており、日本では「第4次産業革命」として注目を集めています。

スマート工場によって生産効率化や省エネルギー化を実現することで、人口減少や少子高齢化、感染症対策、カーボンニュートラル対策などへの活用が期待できるでしょう。

スマート工場に関する諸外国の動向

スマート工場は日本国内だけでなく、海外でも注目されています。ここでは、中国とインドの動向について紹介します。

中国

中国では、2015年に「中国製造2025」という産業政策が発表されました。中国は2025年までに世界の製造強国の一つになることを目標に、半導体や5Gなどの次世代情報技術を中心に製造業の競争力強化に取り組んでいます。

インド

インドでは、2014年に「Make in India」というプロジェクトが開始されました。本プロジェクトのおもな計画は、インドが世界のなかで研究開発や製造業の中心拠点となることを目指し、海外からの出資を集めてインドの製造業を発展させることです。

スマート工場化に向けて、製造インフラの整備など製造業を高度化する取り組みが推進されています。

スマート工場を実現するメリット


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本章では、スマート工場を実現することで得られるメリットについて、以下の5点を解説します。

  • 人手不足解消に貢献する
  • 技術継承につながる
  • 品質向上が図れる
  • トラブルへ柔軟に対応でき、事業継続力が高まる
  • SDGsに対応できる

 人手不足解消に貢献する

スマート工場は、人手不足の問題解決に貢献します。スマート工場を実現することで、工場内の生産設備や人員配置の最適化が図れ、これまでよりも少ない人数でオペレーションを回せるようになるためです。

工場内の各作業の生産性が向上することで、日本国内の人口減少や少子高齢化への対策にもつながるでしょう。

技術継承につながる

スマート工場によって、ベテラン技術者から若手技術者への技術継承も促進されます。これまでベテラン層が属人的に保有していたスキルやノウハウをビッグデータとして収集することで、技術者間での情報共有が可能になるのです。

技術継承の促進によって、後継となる若手人材の効率的な育成が期待できます。

品質向上が図れる

製品の品質向上もスマート工場のメリットの一つです。スマート工場ではIoTセンサーや通信機能などを通じて不良品を早期に検出できるようになるため、品質不良率が低下し、全体的な品質向上につながるでしょう。

トラブルへ柔軟に対応でき、事業継続力が高まる

スマート工場を実現することで、不測時の事業継続力が向上します。IoTを通じて工場の稼働状況を常にモニタリングできるため、トラブルが生じる前の予兆の段階で不具合を検知可能です。

また、稼働状況のモニタリングを通じて柔軟に生産計画を変更できるため、トラブル発生時のBCP対策にもなります。

SDGsに対応できる

スマート工場は環境面にも好影響をもたらします。スマート工場でオペレーションの最適化を実現することで、無駄な稼働を抑制し、工場全体の省エネルギー化を図れるでしょう。必要最低限のエネルギー消費にとどめることで、SDGsに対応できます。

スマート工場を実現するうえでの課題


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スマート工場は前述のとおり多くのメリットがある一方、実現するうえでの課題も存在します。おもな課題としては、以下の3点が挙げられます。

  • 導入コストが大きい
  • 強固なセキュリティ対策が求められる
  • スマート工場をうまく活用しきれない可能性がある

導入コストが大きい

スマート工場を実現するうえで大きな課題の一つとなるのが導入コストです。AIやIoTセンサー、ロボット、システムなどの最新技術を導入する際には、多額の導入コストがかかります。

スマート工場化を検討する場合は、必要な予算を準備するとともに、事前に費用対効果を十分に見極めることが重要です。

強固なセキュリティ対策が求められる

スマート工場ではセキュリティ面にも注意しましょう。工場内の生産設備や製品に関するデータは、自社の競争力に大きく関わる機密情報です。

そのため、マルウェア対策や不正アクセス防止など、十分なセキュリティ対策を行うことが欠かせません。

スマート工場をうまく活用しきれない可能性がある

スマート工場は、導入して完結ではなく、導入後にうまく活用してこそ価値を発揮します。スマート工場を実現しても活用できなければ無駄な投資に終わってしまうため、導入後の活用までしっかりと考えることが大切です。

たとえば、生産工程における改善目標を事前に数値化しておくことで、導入後にやるべきことが明確になるでしょう。また、導入後の活用促進を図るために、工場現場の担当者に対して十分な研修や教育を行うこともポイントです。

スマート工場の実現に向けた3つのステップ

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スマート工場を一気に実現することは難しいため、少しずつ推進していくことが現実的です。ここでは、スマート工場の実現に向けたステップを以下の3つに分けて解説します。

1.    工場内の状態の「見える化」
2.    収集したデータを活用し、工場内の機械を「制御」
3.    工場の生産ラインの「自動化」

1. 工場内の状態の「見える化」

工場内の生産設備の状態や稼働状況がブラックボックス化している企業も少なくないでしょう。その場合、まずは工場内の状態を「見える化」することから始めます。

センサーやデバイスを導入し、工場内の生産設備の状態や稼働状況のデータを収集・蓄積することで、工場内の状態を可視化できます。また、生産管理システムやERPシステムを導入してもよいでしょう。

2. 収集したデータを活用し、工場内の機械を「制御」

工場内の生産設備の状態や稼働状況を収集して見える化できたら、それらのデータを分析・活用していきます。データの分析結果を基に、より効率的な生産体制の構築や機械の制御を行っていきましょう。

たとえば、データを基に不良品の発生兆候を分析し、あらかじめ不良要因を除去する取り組みなどが考えられます。

3. 工場の生産ラインの「自動化」

スマート工場の目指す形として、生産ラインの「自動化」が挙げられます。これまでのステップで行ったデータ収集や分析、機械の制御を組み合わせて、最終的には工場の生産ラインの自動化を目指していきましょう。

AIやロボットを使って工場の生産ラインを自動化することで、人手が必要な作業が大幅に減少し、人手不足の解消に大きく貢献します。

スマート工場の成功事例の紹介

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最後に、スマート工場の成功事例を2つ紹介します。

成功事例1. トヨタ自動車株式会社 :工場IoT、トヨタIoT

トヨタ自動車株式会社は、従来から情報のデジタル化を行ってきました。しかし、実際の製造データや顧客データをタイムリーに技術開発へフィードバックする仕組み構築が課題の一つでした。

そこで「工場IoT」実現に向けて段階的に投資し、横断的に工場や現場間の情報共有ができるプラットフォーム構築を実施しました。費用対効果を十分に見極めたうえで投資判断をするとともに、セキュリティ対策にも十分に注意を払っています。

また、工場IoT実現後に各社員がしっかりと活用できるよう、社内各部署による組織的な教育支援を行っている点なども参考になるでしょう。

成功事例2. ダイキン工業株式会社 :工場IoTプラットフォーム 

ダイキン工業株式会社は、生産コスト削減などによる競争力強化を課題とし、IoTによってサプライチェーン上のあらゆる情報をネットワークでつないだ「工場IoTプラットフォーム」を構築しました。

工場内の各設備などをネットワークでつなぐことで、生産状態を見える化し、生産計画の最適化や生産ロスの低減を実現しています。

また、工場IoTプラットフォームは国内だけでなく各海外拠点とも連携し、生産データのリアルタイム共有やアプリ開発などグローバルでの利活用も進んでいます。

スマート工場で工場内のオペレーションの最適化を図りましょう

工場内の生産設備などをネットワーク上でつなぎ、生産データの見える化やオペレーション最適化を実現するスマート工場は、日本やドイツ、中国、インドなど世界中で注目されている重要なテーマです。

スマート工場によって、人手不足解消や品質向上、トラブル対応力の向上、環境負荷軽減などのメリットを享受できます。一方、スマート工場の実現に向けては、導入コストやセキュリティ対策、導入後の活用促進などが課題となるでしょう。

自社の工場をスマート工場化するためには、まずはIoT技術などを活用して工場内の各種データを「見える化」していくことが重要です。他社の成功事例なども参考にしながら、自社の競争力強化に向けたスマート工場化を進めていきましょう。

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