最近よく目にするようになった言葉「Web3.0」が気になっている人も多いでしょう。ブロックチェーンを活用して構築されるWeb3.0は「次世代のインターネット」と呼ばれます。この記事では、Web3.0の意味やメリット、仮想通貨・NFTなどとの関係を簡単にわかりやすく解説します。
1. Web3.0とは
Web3.0とは、ブロックチェーン技術の活用により構築される「次世代の分散型インターネット」のことを指します。現在の、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)など巨大IT企業による中央集権型のインターネット「Web2.0」から脱却し、インターネットを民主化する動きとして注目を集めています。
1-1. Web1.0~Web3.0の変遷
Web1.0~Web3.0は、以下のように変遷しています。
Web1.0
Web1.0とは1990年代のインターネットを指し、「一方向の情報伝達の時代」と呼ばれます。
1990年代にはGoogle検索やAmazon、Windows95などが登場し、一般の人にもインターネットが広く普及していきました。しかし、その頃のインターネットの利用法は、企業が中心となって作成したウェブサイトの閲覧、およびEメールのやり取りが中心でした。個人がコンテンツを作成・発信することはほとんどなかった時代です。
Web2.0
Web2.0とは、2000年代以降、現在まで続くインターネットの姿を指します。ADSLや光回線など高速なネット回線が普及を始め、それとともにブログや、Twitter・Facebook・YouTubeなどのSNSが登場しました。それにより、画像や動画をふくむさまざまなコンテンツを個人が発信する、「双方向のコミュニケーション」ができるようになったのです。
ただし、この双方向のコミュニケーションは、SNSなどのサービス提供者であるTwitterやFacebook、Googleなどの特定の企業に、行動履歴などの膨大な個人情報を開示することにより成り立ち、「中央集権型のインターネット」と呼ばれます。
企業による個人情報の不適切な利用・漏洩がたびたび起こり、プライバシーやセキュリティの観点から疑問視する声も多くあります。
Web3.0
Web3.0は前述のとおり、ブロックチェーン技術の活用によりWeb2.0の中央集権性を解消し、インターネットを民主化するものとして、分散型プラットフォーム「イーサリアム」の共同創業者Gavin Wood氏により、2014年に提唱されました。ブロックチェーンの急速な進歩・普及とあいまって、近年急速に注目されるようになっています。
1-2. ブロックチェーンとは
ここで、Web3.0の中核技術であるブロックチェーンについて簡単に解説します。
ブロックチェーンとは、インターネット上のさまざまな取引を安全に記録するための技術です。取引記録はこれまでのようにサーバーに保存されるのではなく、取引に参加する人全員が、同一の取引記録を分散して保持します。
同一の取引記録が分散して保持されれば、ある参加者が記録を改ざんすれば、他の参加者が保持する記録との差異が発生し、不正はすぐに検知されます。ブロックチェーンはこのように、参加者が互いの記録をチェックし合うことにより、改ざんが困難で真正制が担保されるシステムを実現しているのです。
2. Web3.0の特徴・メリット
Web3.0にはどのような特徴・メリットがあるのでしょうか。
2-1. 個人情報を自己管理できる
第一の特徴・メリットは、個人情報を自己管理できることです。
ECサイトやSNSの利用に際しては、最初にさまざまな個人情報を入力する必要があります。Googleも、利用者の検索履歴や行動履歴を収集しています。このようにWeb2.0では、IT企業がサービスの対価として、多数の個人情報を自社のサーバーに集め、その情報をもとに広告を配信し、利益を得ています。
それに対してWeb3.0においては、個人情報の登録は基本的に不要です。また、サービスにおいて蓄積される取引記録などのデータは、サービス提供者のサーバーに保存されるのではなく、利用者自らが管理できます。表示される広告を、ユーザー自身が非表示にすることも可能です。
2-2. 情報漏洩リスクの低減
Web2.0においてIT企業のサーバーに集められた個人情報は、ハッキングなどの攻撃による漏洩のリスクにさらされています。実際、2019年にはFacebookから、5億人を超えるユーザーの個人情報が流出しました。
Web3.0においては、個人情報の入力が不要となるため、個人情報の漏洩リスクは大幅に低減します。さらに、蓄積されるデータはブロックチェーン技術により分散管理されるため、攻撃による情報漏洩リスクは極めて低いとされています。
2-3. サーバーなしの直接取引が可能
Web2.0においては、さまざまな取引をサーバーが仲介してきました。たとえば、金融関係の取引は銀行のサーバーが仲介し、それにより銀行は手数料を得ています。
それに対してWeb3.0では、さまざまな取引をサーバーの仲介なしに直接行なえます。金融の分野でも、ブロックチェーン技術により高い信頼性を確保しながら直接取引が可能です。その結果、これまで銀行などに支払っていた手数料が不要になるかも知れません。
3. Web3.0の具体例
Web3.0具体例として、ここでは仮想通貨(暗号資産)、DAO(分散型自律組織)、NFT、メタバースを見ていきましょう。
3-1. 仮想通貨(暗号資産)
仮想通貨(暗号資産)とは、ブロックチェーンによって管理される、電子データでのみやり取りされる通貨です。円やドルなどの法定通貨は、中央銀行の信用が価値を保証しています。それに対して仮想通貨は、通貨としての信用性・安全性がブロックチェーンによって担保されます。
仮想通貨は発行や取引などのすべての記録を、定期的(仮想通貨の一つビットコインの場合は10分ごと)にブロックチェーンに記録します。上述のとおりブロックチェーンは改ざんが困難であることから、仮想通貨の偽造や二重払いは事実上不可能となっています。
3-2. DAO(分散型自立組織)
DAO(Decentralized Autonomous Organization=分散型自立組織)は、簡単に言うと仮想通貨投資家の集まりです。共通の目的を持つ人達が、それぞれのDAOで独自に発行する仮想通貨を購入し、それにより集められた資金を共同で管理しながら、あるプロジェクトに共同で出資するなどの活動を行ないます。
集まった資金の使い方や管理方法の意思決定は、投票により過半数の賛成が得られると、仮想通貨に書き込まれたプログラム「スマートコントラクト」により実行されます。中央で意思決定する管理者が存在せず、参加者同士で意思決定していくことから「分散型自立組織」と呼ばれています。
最近ではZOZOの創業者である前澤友作氏がDAOの設立をツイッターで呼びかけ、話題になっています。
フォロワーの皆さん!
— 前澤友作┃みんなで会社作りたい (@yousuck2020) May 29, 2022
みんなで会社作りませんか?
社員になってもらう訳ではなく、少額の出資(1万円とか)と、スマホでできる簡単なお手伝いをお願いするかもしれません。みんなでアイデアを出し合ってビジネスを大きくし、利益が出たら山分けです。
夢あるでしょ!?
興味ある人はいいねかRTで!
3-3. NFT
NFT(Non-Fungible Token)は、特定のデジタル資産(デジタルアートなど)の取引記録をブロックチェーンに記録していく技術です。
デジタルデータは無限にコピーできることから、これまでは所有権を明確にできませんでした。しかし、NFTを特定のデジタルデータに紐づければ、ブロックチェーンの取引記録から、そのデジタルデータの所有者が誰かを明確に証明できます。それにより、デジタルデータに資産価値を持たせられるようになりました。
現在ではNFTのマーケットプレイスも複数開設され、デジタルアートやゲームアイテム、音楽作品、アニメ・マンガ作品などが盛んに取引されるようになっています。
3-4. メタバース
メタバースとは、アバターにより相互交流が可能な3次元バーチャル空間です。メタバースにおいても、NFTと仮想通貨が活用されるようになっています。
メタバースではさまざまなグッヅやアイテムが使用され、バーチャル空間上の土地もあります。これらグッヅ・アイテム・土地がNFTにより資産価値を持ち、仮想通貨により売買されるようになっているのです。
メタバースの一つ「The Sandbox」では、15区画の土地が発売開始から1分44秒で完売し、最も高額な土地は7,900万円相当だったという事例もあります。
4. Web3.0を活用したサービス例
Web3.0はすでに実際のサービスとしても展開されています。ここでは、Web3.0を活用したサービス例として、OpenSea、My Crypto Heroes、Braveを紹介します。
4-1. OpenSea
出典:OpenSea
OpenSeaは2017年12月にサービスを開始した、世界最大規模のNFTマーケットプレイス(取引所)です。出品されるNTF作品はデジタルアート、音楽、写真など幅広く、村上隆やせきぐちあいみ、西野亮廣など日本の著名アーティストの作品も出品されています。
OpenSeaでは、誰でも簡単に無料で作品をNFT化して出品できます。販売方法は固定価格とオークション形式の2種類あります。
4-2. Brave
出典:Brave
Braveは2019年にサービスを開始したブラウザです。圧倒的シェアを誇るブラウザGoogle Chromeと同等以上の性能を持ちながら、プライバシーやデータを守ることを目的として開発されています。
2020年の角川アスキー総合研究所が実施した調査では、Braveの表示速度は主要ブラウザの中で最速であるという結果が出います。公式によると、Google Chromeより3倍高速に動作します。
5. まとめ
ブロックチェーン技術の活用により構築される、次世代の分散型インターネットであるWeb3.0。GAFAなどの巨大IT企業による中央集権型のインターネットWeb2.0から脱却し、インターネットを民主化しよう、という動きです。
個人情報を自己管理できる、情報漏洩リスクの低減、サーバーなしの直接取引可能などの特徴・メリットがあるWeb3.0は、仮想通貨(暗号資産)、DAO(分散型自立組織)、NFT、メタバースなどの具体例があり、すでにNFTのマーケットプレイスやゲーム、ブラウザなどの形でサービスが提供されています。
現在では「それなしには生活できない」とすら思う人もいるかもしれないインターネットも、一般に普及しだしてからまだ20数年しか経っていません。これからどのように変化していくのか、目が離せないところです。