X-Tech(クロステック)の基礎知識〜その領域と事例、活用されるテクノロジーを解説

公開日:2020-11-24 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

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X-Tech(クロステック)の基礎知識〜その領域と事例、活用されるテクノロジーを解説

昨今、FinTech(フィンテック)やMedTech(メドテック)など「○○Tech」という言葉をよく耳にするようになりました。それらはテクノロジーを活用した新しいビジネスを指し、総称して「X-Tech(クロステック)」と呼ばれます。今回はX-Techとはどのようなものか、そして実際のビジネスにおけるX-Techの活用事例をご紹介します。

X-Tech(クロステック)とは

X-Techとは、既存の業界のビジネスとAI(Artificial Intelligence=人工知能)、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)、VR(Vertual Reality=仮想現実)などの最新テクノロジー(テック)を掛け合わせて(クロス)、新しいサービスや製品などを創り出すビジネス分野を指します。

例えば、農業(Agriculture)に最新テクノロジーを組み合わせたAgriTechを例にとると、IoTデバイスが農作物の成長状況や気温、湿度をデータ化し、AIが肥料の散布時期や散布量を決め、IoTデバイスが自動で肥料を散布し、さらにAIにより自動化された農業用機械が収穫します。これまで人間の目や経験、労働力に頼っていた部分が、最新テクノロジーがよってより効率的に行えるようになるのです。

このようなX-Techは、すでに多くの業界で活用されるようになっています。以下では、その代表的な例を紹介しましょう。

代表的なX-techビジネス

AgriTech(アグリテック)= Arriculture(農業)×Technology

スマート農業ともよばれ、熟練の技能や蓄積された経験がなくても農産物の育成や収穫が行えるよう、ノウハウのデータ化や可視化、また省力化のためのさまざまなテクノロジー開発が行われ、高齢化と人材不足が課題となっている農業の分野において大きな注目を集めています。

【事例】

・農作物の育成に関する知識や経験のデータ化
・農作物の育成状況、天候などのデータ化による農作物の管理
・自動運転トラクターや自動収穫ロボットなど、農業機械の無人化

CleanTech(クリーンテック)= Clean(環境)×Technology

クリーンテクノロジーと呼ばれるCleanTechは、天然資源を長く持続させ、地球環境の改善をすることを目的とし、再生可能エネルギーや代替エネルギー、クリーンエネルギーの開発や、低炭素社会、循環型社会に向けての開発を行います。

【事例】

・LEDや燃料電池などによるエネルギー効率の向上
・太陽光発電や水力、バイオマス発電、水素エネルギーなど二酸化炭素や窒素酸化物を排出しないクリーンエネルギー開発
・スマート電力網(スマートグリッド、リアルタイムで電力網内の消費電力量を把握し発電と電力供給を行う)
・水からプラスチック原料を製造する「人工光合成技術」やCO2からメタンを製造する「CO2-メタネーション」などの持続可能資源(再生可能資源)の開発

EdTech(エドテック)= Education(教育)×Technology

これまでも、e-ラーニングのようにテクノロジーを活用した教育プログラムはありました。しかし、 e-ラーニングが画面を見て講師の話を聞くという一方通行な学習であるのに対し、EdTechではインターネットを通じたインタラクティブ(双方向)な公開講座や、個別の能力に合わせた学習、VRを使った仮想体験学習を行うことができます。また、教職者の業務を効率化するシステム開発なども行われています。

【事例】

・MOOC(Massive Open Online Course=誰でも無料 で受講できるインターネット上の大規模な開かれた講義)
・アダプティブラーニング(一人ひとりの受講者に合わせた学習方法、適応学習)
・VR体験学習
・LMS(Learning Management System=e-Learningを実施する際の学習管理システム)

FashTech(ファッシュテック)= Fashion(ファッション)×Technology

FashTechは、最新技術を搭載したファッションアイテム(スマートウォッチ、スマートグラスといったウェアラブル端末)の開発や、効率的な生産や流通のための新技術開発、Eコマースでの新しい商品販売手法の開発などにおいて、さまざまなテクノロジーが活用されています。

【事例】

・ウェアラブル端末
・Bodygram(スマートフォンでの全身採寸)
・バーチャル試着
・サブスクリプション型レンタル

FemTech(フェムテック)= Female(女性)×Technology

生理、妊活、不妊治療、産後、子育て、更年期といった女性特有の健康課題を解決するためのテクノロジーです。2015年頃から社会での女性のタブーをなくそうという動きとともに活発化しています。国内においても、2020年1月に大丸梅田店に専門店がオープンするなど注目を集めています。

【事例】

・基礎体温管理
・ウェアラブル搾乳機
・更年期ホットフラッシュ対策グッズ
・生理グッズのサブスクリプション

FinTech(フィンテック)= Finance(金融)×Technology

FinTechは、2000年代前半から使われはじめた言葉です。リーマンショックや金融危機を経て、AIやビッグデータ、あるいはインターネット、スマートフォンを活用した新しい金融サービスが、ベンチャー企業を中心に開発されました。FinTechには、送金や決済のシステム、融資作業の効率化、手軽な投資、仮想(暗号)通貨など多くのビジネス分野があります。

【事例】

・スマートペイメント(スマートフォンやウェアラブルデバイスを利用した支払い)
・クラウドファンディング
・投資、資産運用ロボアドバイザー
・仮想(暗号)通貨

FoodTech(フードテック)= Food(食)×Technology

FoodTechは、食品ロス問題、人口増加による食料不足、肉や魚の代替食品、食の安全、人材不足などをテーマに、テクノロジーの力で問題解決を目指す分野です。

【事例】

・特殊冷凍
・代用ミート
・スマートタグ
(保存期間や賞味期限をスマートフォンアプリから読み取ることができるタグ)
・調理ロボット

Govtech(ガブテック)= Government(政府)×Technology

主に中央省庁や地方自治体などが、行政サービスの効率化を目指して企業と連携して開発する技術です。国内では、神戸市が2018年に「アーバンイノベーション神戸」と名づけ、神戸市職員とスタートアップ企業が協働で行政サービスの開発、実証実験の取り組みを開始し、その後、他の自治体でも取り入れるようになりました。よく似た分野に「CivicTech=Civic(市民)×Technology」があります。

【事例】

・e-TAX
・給付金オンライン申請
・登記事項証明オンライン申請
・スマートシティ

HealthTech(ヘルステック)= Health(健康)×Technology

健康管理や病気の予防、あるいは病後のケアなど個人の健康状態のモニタリングや、IoTデバイスによる遠隔診療などを行います。団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題を抱える日本では、医療費の抑制に向けた対策として、HealthTechに期待が寄せられています。後述するMedTechとも一部重なる部分があります。

【事例】

・健康情報測定デバイス
・服薬管理アプリ
・ニコチン依存症対策アプリ
・軽度認知症アプリ

HRTech(エイチアールテック)= Human Resorce(人材)×Technology

企業の人事部門は少子高齢化による人材不足のほか、働き方の多様化といった課題に対応する必要があります。人事の業務は、例えば採用活動ひとつをとっても、応募者とのやり取りやエントリーシートの確認、面接などの作業が発生しますが、HR Techはそれをテクノロジーの力で高レベルかつ効率的に実現します。

【事例】

・採用者管理システム
・タレントマネジメントシステム
・労務管理システム
・勤怠管理システム

LegalTech(リーガルテック)= Legal(法律)×Technology

LegalTechは、アナログな作業や紙ベースの資産が多い法曹界の業務をデジタル化し、生産的で効率的な業務改善を目指す分野です。例えば、判例や法文などの資料が閲覧できるサービスや、契約関係の課題を解決するサービス、出願・登録申請など行政手続きを効率化するサービス、訴訟などへの対処を効率的にサポートするサービス、法律事務所の業務を効率化するサービスなど多岐にわたっています。

【事例】

・法務文書作成支援システム
・登記支援システム
・オンライン法律相談
・デジタルフォレンジック(デジタルデバイスに記録された法的証拠の鑑識調査や情報解析)

MarTech(マーテック)= Marketing(マーケティング)×Technology

個々の顧客のニーズに合わせた商品やサービスを提供するOne to Oneマーケティングにおいては、膨大な顧客データの管理や購買データの分析などでテクノロジーの活用が不可欠です。MarTechは、そうしたマーケティング業務の効率化を図る分野です。

【事例】

・MA(Marketeing Automation):主にマーケティング業務の効率化とマーケティングデータを一元管理するシステム
・SFA(Sales Force Automation):主に営業活動業務の効率化と見込み客データを一元管理するシステム
・CRM(Customer Relationship Management):主に既存顧客管理業務の効率化と顧客データを一元管理するシステム

Medtech(メドテック)= Medical(医療)×Technology

MedTechは、電子カルテや処方箋管理などの医療プロセスの効率化、AI診断や手術支援ロボット開発、遠隔地診療の実現、低コストで効率的な新薬や治療法の開発など、医師の負担や医師不足を解消するソリューションにおいてテクノロジーを活用しています。

【事例】

・電子カルテ
・診察予約システム
・手術支援ロボット
・AIによる画像での病気診断

RetailTech(リテールテック)= Retail(小売り)×Technology

Retail Techは、小売店における商品販売をテクノロジーで支援する領域です。キャッシュレス決済に代表される消費者の利便性の追及や、POSシステム(商品の販売・支払い時点で売り上げを把握し在庫管理をするシステム)による購買情報の分析などを通じて、人材不足の解消、人件費の削減、在庫ロスの削減といった効果を生んでいます。

【事例】

・キャッシュレス決済
・無人コンビニ
・RFI
Dタグ(スキャナをかざし、複数のタグを一括で読み取るタグ)
・OMO(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインを融合させたマーケティング)

X-Tech(クロステック)を支える技術

X-Techは、最新のデジタルテクノロジーによって支えられています。ここではX-Techに使われる主なテクノロジーについてご紹介します。

AI(artficial intelligence)

人工知能(AI)とは、一般的にコンピューターが物事の特徴やルールを理解し、過去に蓄積された膨大なデータに基づいて高い精度で分析や分類、または予測を行うためのテクノロジーを指します。

X-Techを支えるAIは特化型AIに分類され、膨大な量のデータから最適解を自動的に抽出あるいは分析し、処理を行います。

例えば、AgriTechにおける肥料の散布では、天候や季節のほか、過去のデータに基づいて散布する場所や量をAIが計算します。

また、MedTechにおける病気の診断でも、過去の膨大な画像データベースからAIが類似データを精査して診断を下します。

AIはX-Techのあらゆる領域を支える中核的な技術であり、今後もさらなる進化が期待されています。

IoT(Internet of Things)

IoTは、IoTデバイスと呼ばれるモノに通信機能(センサーなど)を搭載し、インターネットを介してデータ収集や遠隔操作を可能にする技術です。

例えば、AgriTech ではIoTデバイスのドローンで農薬を散布します。ドローン以外にも、温室や冷蔵庫の温度、湿度、日照時間の管理にもIoTの技術が活用されています。

IoTはMedTechやHealthTechの分野においても、高齢者宅の電化製品の使用電力量を測定し、異常利用を察知すれば家族に連絡があるサービスなどで利用されています。

5G通信

第5世代移動通信システム5Gは、より高速で大容量の通信を実現します。これによりIoTデバイスから遅延なくデータを収集することが可能となります。また、AIの判断結果などのクラウド上のビッグデータの送受信も高速化できるため、今後のX-Techの進化が期待されています。(※ただし現在はまだ、ごく一部の地域での運用となっています)

セキュリティ技術

個人情報を含め、多種多様なデータがインターネットを介して利用されるX-Techにおいて、セキュリティ技術は非常に重要です。とりわけ仮想(暗号)通貨で利用されているブロックチェーンは、データ履歴が保存される点、暗号化によるセキュリティの高さとデータの改ざんがほぼ不可能という点で安全性に優れています。さまざまな事業領域でX-Techのセキュリティ技術として利用されはじめており、今後ますますその需要が高まることが予想されます。

AR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)/MR(Mixed Reality)技術

拡張現実(AR)では、実際の画像や映像にCG画像を合成し、現実感のある仮想世界を創り出します。仮想現実(VR)は、仮想の世界を現実のように体感させる技術です。また、複合現実(MR)は、CGで作り上げた仮想の世界と現実の世界を融合させる技術です。すでにEdTechのVR体験学習、FashTechのバーチャル試着など、多くの分野で利用されています。

今回はX-Techについて解説しました。新型コロナウィルスの影響により、多くの業界でリモートワークが取り入れられるなど、働き方から学び方、ひいては生活様式も変容しようとしています。X-Techは、そんなこれからの新しい社会に貢献する技術として、その領域を大きく拡張することは確実です。今後のX-Techの動向に注目していきましょう。

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