【人事担当者必見】従業員満足度を上げる人事施策10選と実施方法

更新日:2025-04-14 公開日:2025-04-01 by SEデザイン編集部

目次

人事施策は企業の成長と発展に欠かせない重要な要素です。しかし、中小企業の人事担当者や経営者の中には、「効果的な人事施策を導入したいけれど、何から始めればいいのか分からない」「大企業のような凝った施策は難しそう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、中小企業でも実践できる効果的な人事施策の導入方法と具体的な事例を紹介します。これらを参考に、自社に合った施策を見つけ、社員のモチベーション向上や離職率低下につなげていきましょう。

人事施策とは?その重要性と効果

人事施策の定義と範囲

人事施策とは、企業が従業員の採用、育成、評価、報酬、労務管理などに関して行う取り組みの総称です。具体的には以下のような領域が含まれます。

  • 採用:新卒・中途採用の戦略、採用プロセスの設計
  • 育成:研修制度、キャリア開発支援
  • 評価:人事評価制度、目標管理
  • 報酬:給与体系、賞与、福利厚生
  • 労務管理:勤怠管理、労働時間管理、健康管理

人事施策が企業にもたらす効果

適切な人事施策を導入することで、企業には様々な効果が期待できます。主な効果を以下の表にまとめました。

効果

内容

従業員のモチベーションの向上

公平な評価や成長機会の提供により、従業員の仕事への意欲が高まる

生産性の向上

効率的な業務プロセスや働きやすい環境整備により、業務効率が上がる

離職率の低下

従業員満足度の向上により、優秀な人材の流出を防ぐ

優秀な人材の確保

魅力的な職場環境や評判により、良質な人材の採用につながる

組織の活性化

適材適所の人員配置や部門間連携の促進により、組織全体が活性化する

特に中小企業にとっては、限られた人材を最大限に活かすことが重要です。人事施策の導入により、個々の従業員の能力を引き出し、組織全体の競争力を高めることができます。

中小企業でも実践できる効果的な人事施策10選

中小企業でも導入可能な、10の人事施策を紹介します。概要、メリット、導入のポイント、さらに導入にあたって中小企業ならではの運用方法も併せて記しましたので、参考にしてください。

中小企業でも実践できる効果的な人事施策10選
1. フレックスタイム制度
従業員が一定の範囲内で始業・終業時刻を自由に選択できる勤務制度
2. リモートワーク
自宅やサテライトオフィスなど、会社以外の場所で業務を行うことができる勤務制度
3. ノー残業デーの導入
特定の曜日や日を指定して、残業を禁止または制限する制度
4. 成果主義評価制度
従業員の業績や成果に基づいて評価・処遇を決定する制度
5. 360度評価
上司だけでなく、同僚や部下、時には取引先からも評価を受ける多面的な評価制度
6. 社内研修制度の充実
従業員のスキルアップや知識向上を目的とした、体系的な研修制度
7. 資格取得支援制度
業務に関連する資格の取得を奨励し、その費用を補助する制度
8. メンター制度
経験豊富な社員が若手社員の相談役となり、キャリア形成や業務をサポートする制度
9. カフェテリアプラン
従業員が自身のニーズに合わせて、福利厚生メニューを選択できる制度
10. 健康経営の推進
従業員の健康管理を経営的な視点から戦略的に実践する取り組み

フレックスタイム制度

従業員が一定の範囲内で始業・終業時刻を自由に選択できる勤務制度です。イメージは以下のとおり。

フレックスタイム制度の例 勤務時間帯(例:7:00〜19:00) 7:00 9:00 11:00 13:00 15:00 17:00 19:00 フレキシブル タイム コアタイム (全員が必ず勤務する時間帯) フレキシブル タイム 勤務パターン例: Aさん(8:30-16:30) Bさん(9:00-17:30)

【メリット】

  • ワークライフバランスの向上
  • 生産性の向上
  • 多様な人材の確保(育児・介護中の従業員など)

【導入のポイント】

  • コアタイム(全員が必ず勤務する時間帯)の設定
  • 適切な労働時間管理システムの導入
  • 業務の引き継ぎや連携方法の明確化が必要

◎中小企業ならではの運用方法
部署や職種ごとに試験的に導入し、徐々に拡大していく施策が効果的です。

リモートワーク

自宅やサテライトオフィスなど、会社以外の場所で従業員が業務を行うことができる勤務制度。

【メリット】

  • 通勤時間の削減による生産性の向上
  • オフィスコストが削減可能
  • 地理的制約のない人材採用可能

【導入のポイント】

  • セキュリティ対策の徹底が必要
  • コミュニケーションツールの整備
  • 成果管理の仕組みづくりの構築

◎中小企業ならではの運用方法
全面的な導入が難しい場合、週1~2日のリモートワーク日を設定するなど、段階的な導入も有効です。

ノー残業デーの導入

特定の曜日や日を指定して、残業を禁止または制限する制度。

【メリット】

  • 長時間労働の抑制
  • ワークライフバランスの改善
  • 業務効率化の促進

【導入のポイント】

  • 経営層からの強いメッセージを発信する必要あり
  • 業務の優先順位づけと効率化の推進
  • 部署間の協力体制の構築が必要

◎中小企業ならではの運用方法
月に1回から始め、徐々に頻度を増やすなど、段階的な導入が効果的です。

成果主義評価制度

従業員の業績や成果に基づいて評価・処遇を決定する制度。

成果主義評価制度の例 【評価の流れ】 STEP 1 目標設定 STEP 2 業務遂行 STEP 3 成果測定 STEP 4 評価・反映 評価指標例: 新規開拓数 売上達成率 顧客満足度 品質改善数 チーム貢献度 中小企業向けハイブリッド給与体系 基本給(70%) 成果給(30%)

 

【メリット】

  • 高い成果を上げる従業員のモチベーションが向上
  • 公平性の向上
  • 組織全体の生産性の向上

【導入のポイント】

  • 明確で測定可能な評価基準の設定が必要
  • 定期的なフィードバックの実施
  • 評価者訓練の実施

◎中小企業ならではの運用方法
全面的な成果主義ではなく、基本給と成果給のバランスを取るハイブリッド型の導入も検討する価値があるでしょう。

360度評価

従業員が、上司だけでなく、同僚や部下、時には取引先からも評価を受ける多面的な評価制度。

【メリット】

  • 評価の客観性の向上
  • 従業員の自己認識の向上
  • 組織内コミュニケーションの活性化

【導入のポイント】

  • 評価項目の適切な設定が必要
  • 匿名性の確保
  • 結果のフィードバック方法の確立が必要

以下は評価シートの例です。

360度評価シート例 360度評価シート 評価対象者: 山田 太郎  部署: 営業部 評価者区分: 上司 同僚 部下 自己 取引先 評価項目 評価(5段階) 1. リーダーシップ チームを率いる能力 1 2 3 4 5 2. コミュニケーション 情報共有と対話の質 1 2 3 4 5 3. 問題解決能力 課題に対する解決力 1 2 3 4 5 4. チームワーク 協調性と貢献度 1 2 3 4 5 5. 専門性 業務知識とスキル 1 2 3 4 5 コメント(具体的なフィードバック):

◎中小企業ならではの運用方法
まずは管理職を対象に試験的に導入し、効果を確認しながら対象を広げていくことができます。

社内研修制度の充実

従業員のスキルアップや知識向上を目的とした、体系的な研修制度。

【メリット】

  • 従業員の能力の向上
  • モチベーションの向上
  • 組織全体の競争力の強化

【導入のポイント】

  • ニーズに基づいた研修内容の設計が必要
  • 外部講師の活用と内部講師の育成
  • 研修効果の測定と改善が必要

◎中小企業ならではの運用方法
外部研修の活用や、従業員同士の学び合いセッションの実施など、コストを抑えた方法から始めることができます。

資格取得支援制度

業務に関連する資格の取得を奨励し、その費用を補助する制度。

資格取得支援制度 支援対象となる資格例 IT系資格 業界専門資格 語学資格 マネジメント資格 支援内容 受験料補助 参考書籍購入費補助 合格報奨金 資格手当の支給 STEP 1: 申請 STEP 2: 学習・受験 STEP 3: 結果報告 STEP 4: 処遇反映 支援申請書の提出 対象資格の確認 支援内容の決定 学習計画の実行 学習時間の確保 資格試験の受験 合否結果の報告 証明書の提出 費用精算手続き 報奨金の支給 資格手当の反映 キャリアパスへの反映 メリット 従業員 スキルアップ キャリア形成 企業 人材の質の向上 事業競争力の強化 導入ポイント 業務に直結する資格を優先的に支援する 資格の難易度に応じた支援レベルを設定する 取得後のスキル活用方法を明確にする 資格取得者の社内での活躍の場を用意する

 

【メリット】

  • 従業員のスキルアップ
  • モチベーションの向上
  • 事業内容の深化

【導入のポイント】

  • 対象資格の明確化が必要
  • 支援内容(費用補助、報奨金など)の設定
  • 取得後の処遇反映方法の明確化が必要

メンター制度

経験豊富な社員が若手社員の相談役となり、キャリア形成や業務をサポートする制度。

【メリット】

  • 若手社員の早期戦力化
  • 組織の知識・技能の継承
  • 社内コミュニケーションの活性化

【導入のポイント】

  • 適切なメンターとメンティーのマッチングを考慮
  • メンターへのトレーニング実施
  • 定期的な面談機会の設定

◎中小企業ならではの運用方法
経営者自身がメンターとなるなどの方法があります。

カフェテリアプラン

従業員が自身のニーズに合わせて、福利厚生メニューを選択できる制度。なお、中小企業の場合は、自社で運営する例は少なく、福利厚生代行企業が提供するサービスを利用するケースが多い。

【メリット】

  • 従業員満足度の向上
  • 多様なニーズへの対応
  • 福利厚生費用の効率的な活用

【導入のポイント】

  • 多様なメニューの用意
  • ポイント制などの分かりやすい仕組み
  • 定期的なニーズ調査と見直し

◎中小企業ならではの運用方法
予算に合わせて、選択できる項目を絞り込んだ方法・サービスから始めることも可能です。

健康経営の推進

従業員の健康管理を経営的な視点から戦略的に実践する取り組み。

【メリット】

  • 従業員の健康増進
  • 生産性の向上
  • 医療費や休職者の減少

【導入のポイント】

  • 健康診断の充実と受診率の向上
  • メンタルヘルスケアの強化
  • 運動促進プログラムの実施

◎中小企業ならではの運用方法
ウォーキングイベントの開催や健康アプリの活用など、低コストで始められます。

以上紹介した10の人事施策は、中小企業でも十分に導入可能なものです。しかし、すべてを一度に導入する必要はありません。自社の状況や課題に応じて、優先順位をつけて段階的に導入していくといいでしょう。

橋本朋美
中小企業における人事施策の導入には、柔軟な対応と社員との密なコミュニケーションが鍵となります。本記事は、実践的かつ段階的な導入方法を示しており、非常に参考になる内容です。下記、導入における注意点を是非参考にしていただき、よりよい職場環境の構築、そして従業員満足度向上に繋がればと存じます。
橋本 朋美
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント

社会保険労務士法人HALZへ相談

中小企業ならではの強みを活かした人事施策の導入

中小企業には、大企業にはない強みがあります。これらを活かして人事施策を導入することで、より効果的な結果を得ることができる可能性があります。

  1. 意思決定の速さ
    組織の規模が小さいため、新しい施策の導入や変更を迅速に行えるでしょう。
  2. 密なコミュニケーション
    経営層と従業員の距離が近いためコミュニケーションが取りやすく、施策の浸透や改善がスムーズな場合があるでしょう。
  3. 組織の一体感
    施策の導入を通じて、組織全体の一体感や帰属意識を高めやすい環境があります。

これらの強みを活かしながら、上記10個の人事施策を自社の状況に合わせてカスタマイズし、導入していくことで、従業員満足度の向上や組織の活性化、ひいては企業の成長につなげることができるでしょう。

人事施策の導入は、一朝一夕には成果が出ないかもしれません。しかし、継続的な取り組みと改善を重ねることで、必ず組織に良い変化をもたらします。これらの施策を参考に、自社に最適な人事戦略を構築してはいかがでしょうか。

人事施策導入のメリットと注意点

 人事施策導入のメリット

人事施策を適切に導入することで、企業には以下のようなメリットがあります。

  1. 従業員エンゲージメントの向上
    適切な評価や成長機会の提供により、従業員の会社に対する帰属意識や仕事への熱意が高まります。
  2. 生産性の向上
    働きやすい環境や効率的な業務プロセスにより、個人および組織全体の生産性が向上します。
  3. 優秀な人材の確保と定着
    魅力的な職場環境や評判により、新たな人材の獲得と既存社員の定着率向上につながります。
  4. 組織の柔軟性と適応力の向上
    多様な働き方や人材育成により、環境変化に強い組織づくりが可能になります。
  5. コンプライアンスの強化
    適切な労務管理や公平な評価制度により、法令遵守と健全な職場環境が維持できます。

これらのメリットは、中小企業にとって特に重要です。限られたリソースを最大限に活用し、競争力を高めることができるからです。

人事施策導入時の注意点

一方で、人事施策を導入する際には以下の点に注意が必要です。

  1. 社員のニーズとのミスマッチ
    施策が従業員のニーズや期待に合致していない場合、効果が限定的になったり、逆効果になったりする可能性があります。
  2. コストと効果のバランス
    施策の導入・運用コストと得られる効果のバランスを慎重に検討する必要があります。
  3. 既存の制度との整合性
    新しい施策が既存の制度や企業文化と矛盾しないよう、全体的な整合性を確保することが重要です。
  4. 運用上の課題
    制度を導入しても、適切に運用されなければ効果は限定的です。特に管理職の理解と協力が不可欠です。
  5. 公平性の確保
    評価や報酬に関する施策では、公平性と透明性の確保が極めて重要です。

これらの課題に対処するため、以下のような対策が有効です。

  • 従業員アンケートや面談を通じて、ニーズを的確に把握する
  • パイロット導入やトライアル期間を設けて、効果を検証する
  • 経営層や管理職への十分な説明と研修を行う
  • 定期的な見直しと改善のサイクルを確立する

まとめ

本記事では、中小企業における効果的な人事施策の導入方法と具体的な事例を紹介してきました。人事施策は、従業員の満足度向上や生産性の向上、ひいては企業の競争力強化につながる重要な取り組みです。

中小企業にとって、大企業のような大規模な施策を一度に導入することは難しいかもしれません。しかし、自社の現状と課題を正確に把握し、優先順位をつけて段階的に施策を導入することで、着実に効果を上げることができます。

人材は企業の最大の資産です。効果的な人事施策を通じて、従業員一人ひとりが持つ潜在能力を最大限に引き出し、組織全体の成長を実現していきましょう。

橋本朋美
監修者プロフィール
橋本 朋美(はしもと ともみ)
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
監修者からのメッセージ
中小企業にとって、人事施策の導入は従業員の定着・活躍に直結する重要な経営課題です。施策を効果的に進めるには、自社の規模や業種、成長段階に合わせた制度設計が不可欠です。たとえば、評価制度や賃金体系の見直しは、モチベーション向上に大きく寄与します。また、キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金など、公的支援を活用することで、研修制度や制度構築のコストを抑えることも可能です。人事施策は「制度設計+運用+改善」の継続が成功の鍵です。 社会保険労務士は、法令遵守はもちろん、実効性の高い制度設計と助成金の活用提案を通じて、持続的な人材戦略を支援いたします。

 

 

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hashimoto
監修者
2009年お茶の水女子大学大学院卒業後、株式会社HALZ入社。2020年より代表取締役社長就任。大手アパレル業界、IT業界、医療法人など、100名から3000名規模の様々な業界・規模の人事制度設計、業務改善コンサルティング等を担当。人事基幹システム会社への常駐を経て、人事システム導入支援、システムリプレイスコンサルティングも得意とする。HR基幹システムに精通したITに強い人事実務家集団を強みにお客様の業務効率化に貢献するサービスをご提供。