中小企業の人事担当者必見!よくある5つの悩みと具体的な解決策

更新日:2025-03-13 公開日:2025-01-07 by SEデザイン編集部

目次

人事業務は、従業員の満足度や生産性に直結する重要な役割を担っており、企業経営を支える要の一つ。それだけに課題も多く、多くの人事担当者が日々さまざまな悩みに直面しています。特に中小企業や個人経営の企業など、1人で人事・労務を担当する小規模組織にとっては、こうした課題に対処することに難しさを感じる場面も少なくないでしょう。

人事の悩みは多岐にわたりますが、適切な対処法を知り、実践することで解決できます。本記事では、人事担当者が頻繁に直面する5つの代表的な悩みと、それらに対する具体的な解決策を紹介します。

How to solve the problems of human resources personnel

 

人事の悩み①人材採用・確保

適切な人材を探し、採用し、定着を促すことは、企業の成長と競争力維持に不可欠です。しかし、その人材採用・確保にはさまざまな困難があり、多くの企業、特に中小企業にとって最も大きな課題の一つです。

人材不足の現状と原因

 

出典:令和4年版労働経済の分析 厚生労働省令和4年9月─労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題─」

日本の労働市場における人材不足は深刻な問題となっています。厚生労働省の「令和4年版労働経済の分析」によると、2021年の有効求人倍率は1.13倍と、求職者1人に対して1.13人分の求人があることを示しています。この状況は、特に中小企業において顕著です。

人材不足の主な原因としては、以下が挙げられます。

  • 少子高齢化による労働人口の減少
  • 産業構造の変化に伴う特定業種での人材需要の増加
  • 若年層の大企業志向
  • 働き方に対する価値観の変化

これらの要因が複合的に作用し、多くの企業が人材確保に苦心しているのが現状です。

 

人材不足を解消する採用施策

人材不足を解消するためには、従来の採用方法だけでなく、新たな施策を取り入れることが重要です。特に中小企業や個人経営の企業など小規模な組織に適した効果的な採用施策としては、以下のようなものがあります。

  • ソーシャルメディアの活用: LinkedInやX(旧Twitter)などのプラットフォームを使い、企業の魅力や求人情報を発信します。幅広い層にリーチ可能で、費用対効果が高いです。
  • 社員紹介制度の導入: 自社の従業員から知人の紹介を受け、採用候補者とします。従業員のネットワークを活用して優秀な人材を探すことができるうえ、紹介者となる従業員にインセンティブを付与することで、従業員のモチベーション向上にも寄与します。
  • インターンシップの実施: 学生や若手人材に実際の業務を体験してもらい、企業の魅力を直接アピールします。人材の志向と業務内容がマッチしたり、企業の魅力を受け入れてもらうことができれば、将来の採用につながる可能性が高いです。
  • 地域コミュニティとの連携: 地元の学校や商工会議所と連携し、地域に根ざした採用活動を展開します。地域貢献にもつながり、企業イメージの向上にも効果的です。
  • オンライン採用イベントの開催: 企業説明会などの採用活動をオンラインで実施します。地理的制約を超えて幅広い候補者にアプローチすることができる、コストを抑えつつ効率的に採用活動を実施できるといったメリットがあります。

これらの施策を組み合わせることで、限られたリソースでも効果的な採用活動を展開できます。

採用後のフォローアップ

 

優秀な人材を採用できても、定着しなければ意味がありません。採用後は、新入社員の早期戦力化と定着率向上のために、以下に挙げるようなフォローアップ策を実施しましょう。

  • オンボーディングプログラムの充実: 会社の理念や文化、業務内容を体系的に学ぶ機会を提供します。1週間〜1ヶ月程度の集中プログラムを実施するのが効果的です。
  • メンター制度の導入: 先輩社員が新入社員をサポートする体制を構築します。業務面だけでなく、精神面でのサポートも重要です。
  • 定期的なフィードバック面談: 入社1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後など、定期的に面談を実施し、業務の進捗や課題、今後のキャリアプランなどを話し合います。
  • チームビルディング活動: 新入社員を含めたチーム全体での交流イベントを開催することは、職場の雰囲気づくりや人間関係の構築に役立ちます。
  • スキルアップの支援: 業務に必要なスキルを習得するための研修や学習機会を提供します。eラーニングなど、自己学習ツールの活用を検討するのもおすすめです。

こうした施策を通じて、新入社員が円滑に職場に馴染み、早期に戦力化できるよう環境を整えていきます。

人事の悩み②従業員のスキル開発・育成

採用した人材に活躍してもらうためには、スキル開発をはじめとする人材育成が必要となります。中小企業や個人経営の企業など小規模な組織の場合、人材育成に多くのリソースを割けないことも多いですが、適切な育成プログラムを選択・実施して効率・効果を高めることが重要です。

研修プログラムの設計

人材育成の研修プログラムにはさまざまな手法があり、それらを適切に組み合わせることによって、効果的な研修プログラムを設計することができます。以下は、複数の要素を組み合わせて設計した研修プログラムの一例です。

  • ニーズアセスメントの実施: 部門長や従業員へのヒアリング、アンケート調査などを実施し、従業員のスキルギャップや業務上の課題を特定します。
  • 明確な学習目標の設定: 短期・中期・長期の3段階に分け、それぞれの期間で達成を目指す学習目標を設定しましょう。具体的で測定可能な目標を設定するのがポイントです(例:「○○のスキルを習得し、△△の業務を独力で遂行できるようになる」)。
  • 学習の実施: オンライン学習とオフライン研修、またはそのハイブリッド形式、座学、ロールプレイング、ケーススタディなど、学習方法は多様です。学習効果を高めることができるよう、これらを適宜組み合わせて実施します。
  • 実践的なワークショップの導入: 実際の業務に即した課題解決型のワークショップを実施するのも有効です。グループワークを通じて、チームワークやコミュニケーション能力の向上も図ることができます。
  • 定期的な効果測定と改善: 研修プログラム実施後に実施するアンケートや、実務での成果を定期的に評価し、研修の効果を測定します。そしてそのフィードバックをもとに、研修プログラムを継続的に改善していきましょう。

 

キャリアパスの明確化

従業員のモチベーション向上と長期的な育成につながるキャリアパスの設計は、人材育成において非常に重要です。
以下のような施策を実施して、従業員がキャリアパスを明確に描くことができるよう、環境を整備します。

  • 職務記述書の作成: 各職位・職種に求められる役割、責任、必要なスキルを明確に定義します。ジョブ型雇用においては、この職務記述書が人事評価のベースとなりますので、昇進・昇格の基準なども含めて透明性を担保することが肝心です。
  • キャリアラダーの構築: 「ラダー」とは、はしごを意味する英語。従業員が入社してから昇進を重ね、キャリアアップしていく過程を可視化したものがキャリアラダーです。各ステップで従業員に必要とされるスキルや経験を明示することで、従業員が自身のキャリアパスをイメージしやすくなります。
  • 定期的なキャリア面談の実施: 年1〜2回程度、従業員とその上長が今後のキャリアについて話し合う機会を設けます。従業員の希望をよく聞いたうえで、会社のニーズとのすり合わせを行いましょう。
  • ジョブローテーションの実施:定期的に異なる部署・職種へ配置転換を行います。従業員が多様な業務を経験することで、幅広いスキルと視野を持つことが期待できます。

 

自己啓発支援制度の導入

以下に挙げるような制度を導入して従業員の自主的なスキル開発を支援することは、従業員の自己啓発意欲を高め、組織全体のスキルアップにつながるなど、個人の成長と組織の発展の両方にメリットがあります。

また、このような支援制度は、従業員満足度や企業の魅力向上にも寄与し、人材の採用や定着にもプラスの効果をもたらします。

  • 資格取得支援: 業務に関連する資格の受験料補助や合格奨励金の支給を行うほか、資格取得後は給与への反映、昇進機会の提供などを実施します。
  • 書籍購入補助: 業務関連書籍の購入費用の一部または全額を補助します。月単位や年単位で上限を設定し、計画的な学習を促進しましょう。
  • オンライン学習プラットフォームの提供:オンライン学習プラットフォームには、限られた時間のなかでも学びやすい、幅広い分野の最新スキルを効率的に学ぶことができるといった利点があります。

 

人事の悩み③労務管理と法令遵守

企業にとって従業員は大切な経営資源であり、企業の存続のためには健全な企業経営が不可欠。労務管理と法令遵守は、従業員の健康や権利を守るばかりでなく企業を守ることにもつながる、現代の企業経営において非常に重要な要素なのです。

採用する人材の雇用形態を決定します。その際、以下の内容に留意して、それぞれの雇用形態のメリット・デメリットを比較・検討し、企業のニーズに合った雇用形態を選択しましょう。

労働時間管理

従業員の労働時間管理は、従業員の健康維持と生産性向上の観点から必須であるのはもちろん、働き方改革関連法の施行により、昨今は一層厳格な管理が求められています。労働時間管理における課題としては主に以下のようなものがありますので、有効な対策を検討・実行していきましょう。

主な課題

  • 残業時間の適切な把握と管理
  • 有給休暇の取得促進
  • 労働時間の柔軟化への対応
  • リモートワーク時の労働時間管理

対策:

  • 勤怠管理システムの導入: クラウド型の勤怠管理システムを活用し、正確な労働時間の記録と管理を実現します。スマートフォンアプリとの連携で、外出先やリモートワーク時の打刻も可能です。
  • 残業時間の可視化と上限設定: 従業員の残業時間は、原則として月45時間、年360時間が上限と法律で定められています。(特別条項のない通常の上限)この上限を厳守すべく、従業員ごとの残業時間を可視化し、管理職が定期的にレポーティングを受けられるようなシステムを構築して、部署全体の状況把握に努めます。
  • 有給休暇取得の促進: 年5日の有給休暇取得義務化に対応し、計画的な取得を推奨するための対策としては、取得状況の可視化、取得率の低い従業員へのフォローなどがあります。
  • フレックスタイム制度の導入: コアタイムと自由時間を設定したフレックスタイム制度を導入し、業務の繁閑に応じた柔軟な勤務を実現します。
  • ノー残業デーの設定: 週1回程度、従業員の定時退社を推奨する日(ノー残業デー)を設定します。管理職が率先して実践し、組織全体の意識改革を促進しましょう。

ハラスメント対策の強化

職場におけるハラスメントは、従業員の心身の健康を害するだけでなく、生産性の低下や企業イメージの悪化を招く深刻な問題です。2020年6月に施行されたハラスメント防止法(中小企業は2022年4月から義務化)により、企業には、以下のような内容をはじめとする積極的な対策が求められています。

  • 明確なハラスメント防止方針の策定と周知: パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントなど、各種ハラスメントの定義と具体例を明示し、それを防止する方針を策定・周知します。その際、経営トップが防止を宣言するなど、経営者自身が率先してハラスメント防止に取り組む姿勢を示し、組織全体の取り組みとして位置付けることが肝心です。
  • ハラスメント相談窓口の設置: 社内にハラスメント相談窓口を設置するほか、外部の専門機関と連携するなど、中立的な相談窓口も併せて設置しましょう。
  • ハラスメント発生時の対応マニュアルの整備: ハラスメント相談から調査、処分までの流れを明確化します。被害者保護と二次被害防止の措置を明記することがポイントです。

小規模組織向けのハラスメント対策としては、以下のような方法も効果的です。

  • 外部専門家(社労士や弁護士)によるハラスメント相談窓口の設置
  • オンラインでのハラスメント防止研修の実施

労働契約と就業規則の適切な管理

企業が就業規則を作成・運用すること、従業員と労働契約を締結することは、労使関係の基盤です。企業がこれらを適切に実施・管理することで、労使間のトラブルを未然に防ぎ、健全な職場環境を維持するための土台が整います。

  • 労働契約書の適切な作成と締結: 労働契約書には、労働条件(勤務時間、賃金、休日・休暇など)をはじめ、雇用形態(正社員、契約社員、パートタイムなど)に応じた適切な内容を明確に記載しましょう。入社時に必ず書面で交付し、双方で保管します。

  • 就業規則の定期的な見直しと更新: 作成した就業規則は、最低でも年1回内容を見直し、法改正や社内制度の変更を反映します。従業員の意見も聴取し、実態に即した内容に更新する必要があります。

  • 労使協定の適切な締結と更新: 36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)など、必要な労使協定を適切に締結します。締結後は協定の有効期間を把握し、期限が切れる前に更新手続きを行うのを忘れずに。

  • 労働条件変更時の適切な手続き: 就業規則や労働契約書に定めた内容は、必要に応じて変更することがあります。就業規則の変更に際しては、従業員の過半数代表の意見聴取を行うなど、従業員に不利益となる変更が従業員の合意なく生じることのないよう留意します。従業員との労働契約(労働条件)を変更する場合も、従業員との合意形成を慎重に行いましょう。

  • 専門家のサポート活用: 人事業務の遂行において必要なときは、社会保険労務士や弁護士など専門家の助言を受けることができます。就業規則や労働条件について特に重要な変更や複雑な状況が生じる場合など、専門家に相談してその適切性を確認することは、従業員保護の観点でも企業のリスク管理の観点でも重視すべき姿勢といえます。
橋本朋美
労働契約の管理、就業規則の法令遵守等は、企業が抱える問題の中でも特に解決に専門的な知識・経験を要する問題であり、また何かあった場合に発生する社会的なリスクの高い項目です。これらの管理・運用を行う上では、専門家のサポートを受けて適切に運用されることが必要になります。

特に、労使関係の基盤となる労働契約や就業規則の整備については、専門家を通して正しい知見で運用されることで、労務トラブルの防止のみならず、従業員満足度の増加・定着率の改善等、様々な側面での効果が期待できます。
橋本 朋美
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント

 人事の悩み④従業員のモチベーション向上と定着率改善


従業員のモチベーションを高め定着を促すことは、企業の生産性向上、ひいては安定的な事業の運営に不可欠です。

特に中小企業や個人経営の企業など小規模の組織において、その施策にかけられるコストに限界があるなかで、従業員のエンゲージメントを効果的に高めるためにおさえておきたいポイントは、「適切な評価・フィードバック制度の構築」「働きやすい職場環境の整備、福利厚生の充実」「社内コミュニケーションの活性化」です。

適切な評価・フィードバック制度の構築

従業員の実績やスキルを企業が適切に評価し、その評価を従業員に納得感のあるかたちできちんとフィードバックすることは、従業員のモチベーションを向上させ、成長を促進します。前述の「キャリアパスの明確化」と合わせて、適切な評価・フィードバック制度を構築しましょう。

  • 目標管理制度(MBO)の導入: 従業員と上長が協議して個人目標を設定し、四半期や半期ごとに進捗を確認、必要に応じて目標を調整する制度です。期末にその達成度を評価し、次期の目標設定に反映します。

  • 360度評価の活用: 上長からだけでなく、同僚や部下からも評価を受けるのが360度評価。これによって多角的な視点で個人の強みと改善点を把握することができます。小規模な組織では、上長と同僚からの評価に絞るかたちで360度評価を行うことが可能です。

  • 定期的な1on1ミーティングの実施: 月1回程度、上長と部下で15〜30分程度の面談を実施します。業務の進捗確認だけでなく、キャリアや悩みについても話し合えるような雰囲気づくりを心がけ、オープンな対話を通じて信頼関係の構築を図りましょう。

  • スキルマップの活用:
    前述のキャリアパスやキャリアラダーとも関連しますが、職種ごとに必要なスキルを明確化し、その習熟度を可視化します。定期的に自己評価と上長の評価を行い、成長度合いを確認することで、従業員自身がさらなる成長に向けてモチベーションを高める機会に。

働きやすい職場環境の整備、福利厚生の充実

従業員が自社で働くことに満足度を感じ「この会社で長く働こう」と思えるかどうかは、働きやすい職場環境があるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。加えて、福利厚生の充実も、従業員の満足度・定着率向上に影響する要素です。

  • フレックスタイム制度、リモートワーク制度の導入:育児や介護との両立を必要とする従業員などさまざまな事情を抱える従業員も少なくないなか、多様な働き方が可能となるよう、フレックスタイム制度やリモートワーク制度を導入します。通勤ラッシュの回避も可能になり、生産性向上も期待できます。

  • 健康経営の推進: 事業者に対しては、従業員の定期的な健康診断の実施が法律で義務付けられています。これを適切に実施するほか、メンタルヘルスケア(ストレスチェック、カウンセリング窓口の設置など)を導入するなど、従業員の健康増進に配慮しましょう。

  • オフィス環境の改善: フリーアドレス制やコワーキングスペースの導入、休憩スペースの充実(カフェスペース、仮眠室など)といった施策で、より働きやすいオフィス環境の構築を目指します。

  • 福利厚生サービスの外部委託: 従業員の福利厚生に関する業務を代行する有料サービスを利用することで、企業はリソース負担を軽減でき、従業員は多様なメニューを利用できるようになります。

これらの施策は、あくまで一例です。重要なのは、自社の状況と従業員のニーズに合わせて適切な施策を選択し、継続的に改善していくことです。

社内コミュニケーションの活性化

社内でのコミュニケーションの活性化は、チームワークの向上や情報共有の円滑化、さらには従業員の帰属意識の強化にもつながります。オンラインサービスの進化もあり、コミュニケーションを活性化する施策も多様化していますので、企業の規模やリソースに合わせて適切な施策を選んで実施しましょう。

  • 定期的な全体ミーティングの開催: 月1回程度、全従業員参加のミーティングを実施し、会社の方針や業績、各部署の取り組みなどを共有します。オンラインツールを活用することで、リモートワーク中でも参加可能に。

  • 社内SNSの活用: SlackやMicrosoft Teamsなどのツールを導入し、オンラインでのコミュニケーションを手軽にとれる体制をつくります。業務連絡用のチャンネルだけでなく雑談チャンネルも設置することで、気軽な交流が促進されるでしょう。

  • ランチミーティングの奨励:ランチミーティングは、時間的にも心理的にも参加しやすく、リラックスした雰囲気で業務以外の話題も含めて交流を図りやすくなります。週1回程度、チームや部署でランチを一緒にとる機会を設けてみては。

  • オンラインコーヒーブレイクの導入:オンラインで気軽に雑談できる時間を設定するオンラインコーヒーブレイクなら、リモートワーク中の従業員も参加できます。15〜20分程度の短時間とし、参加は任意とするのがおすすめです。

  • 社内イベントの企画・運営: 忘年会や社員旅行だけでなく、スポーツ大会や文化祭など、多様なイベントを企画します。企画・運営を従業員主導で行い、主体性とチームワークを育む場に。

人事の悩み⑤人事データの分析・活用

業員に関するデータ(人事データ)は、人事担当者にとって強力な“武器”。人事データの分析・活用は、現代の人事施策の立案・意思決定・実行に不可欠といえます。

中小企業や個人経営の企業など小規模の組織でも、データに基づいた意思決定を行うことで限られたリソースを最大限に活用し、より効果的な人事施策を実行することが可能になります。

人事データの分析

人事データを収集・分析することには、いろいろなメリットがあります。データ分析と聞くと難しそうと思われるかもしれませんが、まずは最小限のデータを用いて可能なところから着手してみましょう。

分析可能な主な人事データ例

  • 採用データ: 応募者数、内定承諾率、採用チャネルの効果など
  • 勤怠データ: 出勤率、残業時間、有給休暇取得率など
  • 評価データ: 業績評価結果、スキル評価、360度評価結果など
  • 離職データ: 離職率、離職理由、勤続年数など
  • 従業員満足度データ: エンゲージメントスコア、職場環境満足度など

データ分析のメリット

  • 客観的な現状把握: 感覚や経験則だけでなく、客観的な数値に基づいて現状を理解することができます。
  • 問題点の早期発見: データの変化を観察することで、潜在的な問題の早期発見につながります。
  • 的確な施策の立案: データに基づいた現状認識をもとに施策を立案することにより、的確な対応が実行可能に。
  • 施策の効果測定: 施策実施前後のデータを比較することによって、施策の効果を定量的に把握できます。
  • 将来予測: 過去のデータトレンドを踏まえ、将来の傾向を予測するといった活用も。

小規模組織向けのデータ分析開始ステップ

 

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①最小限のデータから始める
 まずは勤怠データや評価データなど、すぐに収集可能なものから着手しましょう。

②ExcelやGoogleスプレッドシートを活用
 データ分析の専用ツールがなくても、表計算ソフトで基本的な分析は可能です。

③定期的なレポーティングを習慣化
 月次や四半期ごとに、主要な指標をレポートにまとめるようにすると、レポーティングを習慣化できます。

④データの可視化を工夫
 グラフや図表を活用し、直感的に理解しやすい形で表現することで、理解が深まります。

分析データを活用した人事施策の立案


人事データの分析ができたら、人事施策の立案に活用してみましょう。よく見られる人事課題について、その課題解決に用いることができる分析データと、データを活用した人事施策の例をご紹介しますので、参考にしてください。

課題:従業員の離職率低減
分析するデータ:
• 部署別・年代別の離職率
• 退職理由のトレンド
施策例:
• 離職率の高い部署への重点的なフォロー
• 若手社員向けのキャリア支援プログラムの導入
• 退職理由に対応する職場環境改善策の実施
課題:従業員の生産性向上
分析するデータ:
• 従業員の業績評価と労働時間の相関関係
施策例:
• 高パフォーマーの働き方の汎用化と全社への展開
• 業務プロセスの見直しと効率化
• 集中タイムの設定や会議時間の短縮
課題:採用効率の改善
分析するデータ:
• 採用チャネル別の応募者数
• 内定承諾率
• 入社後のパフォーマンス
施策例:
• 効果の高い採用チャネルへの集中投資
• 選考プロセスの最適化
• 内定者フォローの強化
課題:従業員のエンゲージメント向上
分析するデータ:
• 従業員満足度調査結果
• 1on1ミーティングの実施状況
施策例:
• 低スコア項目に対する重点的な改善策の実施
• 管理職向けのコミュニケーション研修の実施

まとめ

本記事では、人事担当者が直面する5つの主要な悩みと、それぞれに対する具体的な解決策を紹介しました。特に中小企業や個人経営の企業など小規模な組織の場合、人事管理に割けるリソースが限られたものになりがちですが、企業にとって人材は必要不可欠であり、課題に対しては何らかの対応が求められます。そこで最大限の効果を得られるよう、状況に応じて適切な施策を選択し実行することが重要です。

 

橋本朋美
監修者プロフィール
橋本 朋美(はしもと ともみ)
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
監修者からのメッセージ
中小企業の人事担当者は、多岐にわたる課題に直面しがちですが、それらを適切に乗り越えることで、従業員満足度や生産性の向上につなげることができます。特に労働時間の管理や法令遵守、人材の定着などは、企業の持続的な成長に直結する重要なテーマです。一人で抱え込まず、外部の専門家やツールを活用しながら、自社に合った方法を模索することが成功の鍵となります。日々の取り組みを通じて、従業員が働きやすい環境を整備し、組織全体の成長を支える基盤を築いていきましょう。

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監修者
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
2009年お茶の水女子大学大学院卒業後、株式会社HALZ入社。2020年より代表取締役社長就任。大手アパレル業界、IT業界、医療法人など、100名から3000名規模の様々な業界・規模の人事制度設計、業務改善コンサルティング等を担当。人事基幹システム会社への常駐を経て、人事システム導入支援、システムリプレイスコンサルティングも得意とする。HR基幹システムに精通したITに強い人事実務家集団を強みにお客様の業務効率化に貢献するサービスをご提供。