AI初心者のマーケティング担当者が知っておきたい基礎知識

公開日:2022-12-01 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

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AIによってマーケティングの常識が変わりつつあります。野村総合研究所の調査によれば、AIアプリケーション別の市場規模は、マーケティング分野が全体の2割を占めるといわれています。

この記事では、AI初心者のマーケティング担当者が知っておきたい基礎知識を解説します。覚えておきたいキーワードも紹介しますので、AIに関心があるマーケティング担当者の方はぜひ参考にしてください。

AIによってマーケティングの常識が変わりつつある

「AI」という言葉を聞いて、マーケターの皆さんはどう感じるでしょうか?AIに関連するテクノロジーは急速に進化しており、さまざまな分野で活用が進められています。それはマーケティング分野も例外ではありません。

AI活用には大量のデータが必要なため、データが収集しやすい分野でAIの活用が進んでいます。なかでも多くの業務をデジタルで行うことが前提のマーケティング分野は、まさにデータが収集しやすい分野に当たるのです。

野村総合研究所の調査によれば、2015年のAIアプリケーション別市場規模は、スマートフォンやカーナビなどの情報機器分野の約8割に次いで、マーケティング分野が約2割を占めています。具体的には、検索連動広告やECサイトのレコメンデーション、デザイン、チャットボット、マーケティングオートメーションなどと、マーケティング分野におけるさまざまな用途でAI活用が進んでいます。

マーケティング分野におけるAIは今後も大きく活用が進む可能性が高く、いまのうちにAIを学んでおかなければ、取り残されてしまうかもしれません。そこで以下では、マーケターが最低限知っておくべきAIの基礎知識を紹介します。

そもそもAIとは何か?

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最初に、そもそもAIとはどういうものなのかを見ていきましょう。

AIとは「機械を賢くする科学」である

AIの専門家で英DeepMind社の共同創業者あるDemis Hassabis氏は、「AIとは機械を賢くする科学である」と述べています。賢くなった機械は、膨大な量のデータを選別し、指数関数的に増加する情報を人間が理解するのをサポートします。病気やヘルスケアなどから、気候変動や物理学などの科学まで、問題の解決に大きな力を発揮します。

通常のソフトウェアとAIの違い

最近ではさまざまなソフトウェアが、物事を人間より高速かつ正確に行うことで、私たちの生活を楽にしてくれています。このソフトウェアとAIは何が違うのでしょうか?

典型的なソフトウェアは静的で、プログラムで指定されたことをただ繰り返すものです。改善が行われるのは、人間のプログラマーがプログラムを変更したときだけです。つまり、ソフトウェアだけではデータや環境のリアルタイムな変化に適応できず、急速に変化する状況や市場には適していません。

それに対してAIは、機械がより人間らしくなるよう、教えることが可能です。見る・聞く・話す・動かす・書くなどの能力を与え、理解や予測すらさせられます。そのため、何をすべきかを人間が明示的に指示しなくても、リアルタイムで応答・反応し、推奨できます。

AIはテクノロジーの集合体

AIは単一のテクノロジーではなく、テクノロジーの集合体です。そのテクノロジーには、自然言語生成 (NLG)、自然言語処理 (NLP)、機械学習、深層学習、ニューラル ネットワークなどが含まれます。

ロボティクスはAIではない

ロボットはAIによって動かされている客体であり、AIではありません。ロボティクスは画像認識、顔認識、コンピュータービジョンを組み合わせ、ロボットの身体を動かします。また、会話をする場合には、自然言語生成と自然言語処理を使用する場合もあります。

すなわち、ロボット自体はAIではないものの、AIソフトウェアに大きく依存して機能します。これらのコアAI機能を使用して、歩行や会話から倉庫での商品の荷降ろしなどまで、さまざまなタスクを実行します。

AI初心者のマーケティング担当者が覚えておくべきキーワード

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ここで、AI初心者のマーケティング担当者が覚えておくべきキーワードを紹介します。

機械学習

機械学習とは、学習する能力を機械に持たせることにより、明示的なルールを与えなくても機械自らの判断を可能とする、AIの中核的な技術です。機械学習には大きく分けて、教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3種類があります。

教師あり学習

教師あり学習とは、コンピューターに正解(ラベル)とともにデータを与えて学習させる方法です。たとえば「馬」と「牛」のラベルを付けた多数の画像を学習したコンピューターは、ラベルのない画像を入力しても、馬か牛かを判別できます。

教師なし学習

教師ナシ学習とは、ラベルのないデータを与え、データをグループ分け(クラスタリング)できるよう訓練する方法です。マーケティング分野では、顧客データのクラスタリングなどに活用されます。

強化学習

強化学習とは、コンピューターの出力に点数を付けることにより、より点数の高い出力を学習させる方法で、教師あり学習の一種です。ゲームAIなどでよく使われます。

ディープラーニング

ディープラーニングは機械学習の一種で、画像認識や音声認識などに大きな威力を発揮します。機械学習の手法のひとつである「ニューラルネットワーク」は、入力層、隠れ層、出力層の3階層で構成されます。かつては1層のみだった隠れ層を複数にしたものがディープラーニングです。

人の顔の画像から誰の顔かを認識させる場合に、機械学習では「目」や「鼻」「口」などの特徴量を人間が指定する必要がありました。ところが、ディープラーニングでは、入力データが複数の隠れ層を経由していくうちに、特徴量が自動的に抽出されます。そのため、画像や音声、文章など特徴量の指定が難しいデータでも、容易に扱えるようになりました。

特化型人工知能 (ANI)と汎用人工知能 (AGI)

特化型人工知能(ANI: Artificial Narrow Intelligence)とは、限定された課題に特化して処理を行う人工知能を意味します。画像認識や音声認識、自然言語処理を行う人工知能は、それぞれ別の特化型人工知能です。現在広く用いられている人工知能はすべて、特化型人工知能です。

それに対して汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)とは、人間と同様にさまざまな課題の処理が可能な人工知能を意味します。現段階ではSFの世界にのみ存在し、実際には存在しません。それが実現可能かどうかについても、専門家の間で意見が分かれています。

パターン認識

人間が当たり前のようにやっている、画像や音声などから一定の特徴・規則性を抽出するパターン認識は、現在では機械学習によってコンピューターが行えるようになっています。以前は数式や記号など論理的な情報しか取り扱えなかったコンピューターは、パターン認識が可能とったことにより、性能が飛躍的に向上しました。

また、パターン認識は、コンピューターによる総合的な予測・識別を可能としています。たとえば、機械の異常を予測する場合、以前は論理的な情報をもとに判断するしかありませんでした。しかし現在では機械が発する音などによる予測もできるようになり、より正確な予測ができるようになっているのです。

自然言語生成(NLG)と自然言語処理 (NLP)

自然言語生成(NLG)とは、AIが言葉を書いたり、話したりすることです。スマートホームアシスタントやチャットボットなどで広く活用されています。以前はテンプレートを組み合わせてテキストを生成していましたが、現在ではAI技術の進化により、リアルタイムでの、より動的なテキスト生成が可能となっています。

自然言語処理(NLP)は、AIが話し言葉や書き言葉を理解できるようにすることです。こちらも同様にスマートホームアシスタントやチャットボットなどで活用されています。Googleなどの機械翻訳でも、まず自然言語処理でAIが言葉の意味を理解し、次に特定の言語への翻訳が生成されます。

画像認識・動画認識

画像認識とは、画像に写っている物体をAIが識別することです。膨大な量のデータにラベルを付け、AIに学習させることで実現します。適切に学習させれば、AIはこれまで見たことがない画像でも、写っているものを正確に識別できるようになります。

画像認識のひとつの応用例として、医療画像があります。医療画像のAIによる解析で、腫瘍などを人間より高速に、高い精度で識別できます。

動画認識は画像認識の発展形で、動画をコマ送りのような形で時系列に認識します。動画認識により、たとえば監視カメラの動画から「交通事故」や「機械の故障」などを抜き出したり、スポーツ中継の動画から「得点シーン」「重要シーン」を抜き出したりすることが可能です。

感情分析

感情分析とは、音声やテキスト、表情などから感情を分析することです。コールセンターでの顧客満足度向上や従業員のストレス軽減、SNSの投稿からの潜在的なニーズ発掘、店舗来店者の反応の調査などを目的に行われます。

以前は「感情辞書」と呼ばれる、感情の種類や度合いを単語と対応させたリストを使用して感情分析を行ってきました。しかし、近年では機械学習・ディープラーニングを用いて、より深く、複雑な分析ができるようになったため、市場規模は年々拡大しています。

まとめ

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マーケティング分野でもさまざまな用途で活用が広がるAIは「機械を賢くする科学」です。従来のソフトウェアがプログラムで指定されたことをただ繰り返すのに対し、AIは人間が明示的に指示しなくても、リアルタイムで応答・反応し、最適な解を推奨できます。

AIはテクノロジーの集合体です。機械学習やディープラーニングなどさまざまな技術により構成されます。

それらのAIテクノロジーで、マーケティング分野でもWebや広告のデザイン最適化、ユーザーの反応計測、SNSの投稿調査など、さまざまな施策が行われるようになっています。マーケターはこれから、「自分の仕事をAIでどう改善できるか」に留意しながら仕事を進める必要があるでしょう。

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