2020年から開催されている「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト」。今回は、このイベントの概要を紹介しながら、ソリューションコンテストで予選を通過したアイデアと、そこで活用されているAI技術について解説します。
AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテストとは
(画像出典:沖電気工業ウェブサイト)
「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト」は、OKI(沖電気工業株式会社)の主催によって2020年にスタートしたAIとテーマとしたイベントです。カンファレンスとソリューションコンテストの2部構成となっており、第1部のカンファレンスでは、AIとエッジコンピューティングに関する講演とパネルディスカッションが行われます。
第2部のソリューションコンテストでは、同社の「AIエッジコンピューティング戦略」における中核商品であるエッジコンピューター「AE2100」を活用した、社会課題を解決するためのアイデアや技術を「Smart City」「Manufacturing」「Technology」の3分野で競います。
2020年に続いて2回目となる2021年9月3日に開催された予選では、この3分野で計10件のソリューションが本選進出を決めました。以下で挙げているのが、12月15日の本選に進出する企業です。
Smart City:4件
- Intelligence Design株式会社「人物特徴量マッチングを用いたOD調査システム」
- 東亜無線電機株式会社「非喫煙エリアでの喫煙者・ポイ捨て監視」
- 株式会社ウォンツ「ユーティリティ供給設備の予知保全」
- 株式会社コンピュータマインド「AIによる屋内人物の服装解析」
Manufacturing:3件
- 株式会社ソルティスター(OKINAWA R&D)「エッジコンピューティング向けIoTミドルウェア"SpeeDBee Hive"」
- 株式会社メトロ「複数アナログメーター一括データ化によるAI異常予測」
- Hmcomm株式会社「異音検知ソリューション
Technology:3件
- 株式会社ウサギィ「視線シミュレーションAI」
- 東海エレクトロニクス株式会社「"におい"の見える化による予防保全・見守り」
- 株式会社BFビジネス・コンサルティング「スイングセンサーと姿勢推定技術を活用したAIコーチング」
予選通過企業のAIの活用アイデア
以下では、予選通過企業の中から分野ごとに1社のアイデアを紹介します。
Smart City:東亜無線電機株式会社「非喫煙エリアでの喫煙者・ポイ捨て監視」
喫煙者の監視映像をAIエッジコンピューターでリアルタイム解析し、喫煙エリアを検出するアイデアです。誰かが非喫煙エリアで喫煙している場合は、スピーカーや表示板などで注意を喚起してルールの徹底を支援します。
Manufacturing:Hmcomm株式会社「異音検知ソリューション」
機器の検査の省力化、品質の安定、迅速な異常対応を支援するアイデアで、マイクで集音した機器が発する音声データをAIエッジコンピューターによってリアルタイム分析します。予め学習させた正常音とは異なる特定の異音を検出すると、ユーザや業務アプリケーションに通知される仕組みです。また機器の異音検知にとどまらず、人間や動物の遠隔聴診への活用も期待されています。
Technology:東海エレクトロニクス株式会社「"におい"の見える化による予防保全・見守り」
視覚や聴覚では捉えることが出来ない「におい」を数値化するアイデアです。数値をAIが判定してアラートを出すことで、異常事象を最小限に抑えることなどが可能になります。
たとえば工場などのプラント設備では、摩擦等の熱、焼き付きによる焦げ臭からの異常検知が可能です。また、介護での排泄場面では、おむつ交換のタイミングを「におい」で検知することができます。
背景にあるAIの仕組みを解説
ここまでで紹介したアイデアが、具体的にどのようなAI技術により成り立っているのか、その仕組みを解説します。
AIエッジ(エッジAI)
AIエッジとは、AIとエッジコンピューティングを組み合わせた造語で、コンピューター上で動作するAIデータ処理システムのことです。AIエッジは、リアルタイム性、信頼性、セキュリティ性に優れていて、コンパクトなコンピューターにも搭載できる点が特長です。
従来、AIによるデータ処理は、インターネットを通じてクラウド上の大規模なコンピューターで行われていました(クラウドコンピューティング)。しかし、クラウドコンピューティングは複雑なインターネット網を介してデータ処理が行われるため、遅延の発生や回線トラブルによる通信障害、サイバー攻撃による情報の漏洩などの課題があります。また、クラウドコンピューティングは高度なデータ処理を行うため装置が大規模になります。
一方、エッジコンピューティングではインターネットを経由せずにAIを扱うため、クラウドコンピューティングの課題を解消できます。前述の予選通過企業のアイデアは、「AE2100」上にAIを組み込んだAIエッジを活用することによって、カメラで撮影した画像データ、マイクで集音した音声データ、におい・温度・湿度センサーで集めたデータをAIによる処理で識別し、予測しています。
機械学習(マシンラーニング)
予選を通過した3社のアイデアには、それぞれ機械学習の仕組みが活用されています。機械学習とは、機械が膨大なデータを学習しながら特徴や法則を見出し、それに基づいて予測や判断を行うことです。
たとえば、東亜無線電機株式会社の「非喫煙エリアでの喫煙者・ポイ捨て監視」では、喫煙者と非喫煙者、喫煙エリアと非喫煙エリアの画像データを予め学習させることで、カメラに映る画像から喫煙者を特定し、喫煙エリアを判別します。
Hmcomm株式会社の「異音検知ソリューション」では、予めマイクで集音した音データから「正常音」と「特定の異音」を学習させています。さらに、判別できない異音を検知した際は人間に通知して判別させ、その結果をさらに学習します。
東海エレクトロニクス株式会社の「"におい"の見える化による予防保全・見守り」は、におい、温度、湿度のデータを集めて正常値の範囲を学習させています。範囲を超えた場合に管理者のパソコンまたはスマートフォンに通知される仕組みです。
まとめ
AIとIoTは近年、進化と普及が目覚ましく、私たちの社会をより便利で豊かなものとする手段として多くの可能性を秘めています。今回紹介した「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト」は、実用段階にあるAIを活用したIoTを知る絶好の機会です。本戦の結果を楽しみに待ちましょう。
AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト2021イベント概要
日時
- 予選:2021年9月3日(金) 13時30分~17時00分
- 本選:2021年12月15日(水) 13時30分~18時00分
場所
- 予選:オンライン
- 本選:東京ポートシティ竹芝 ポートホール(オンライン:YouTubeライブ配信)
選考方法
- 予選:応募書類と予選当日のプレゼンテーションによる審査
- 本選:実機によるデモンストレーションとプレゼンテーションを参加者が審査(投票)
賞金
- 副賞:1位 200万円、2位 100万円、3位 50万円
- 専門メディアによる取材と記事掲載、その他プロモーション協力