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カルビーの成功事例に見る、パッケージデザインにおけるAI活用

SEデザイン編集部
2021-08-18

87802839_lスナック菓子メーカーとして知られるカルビー株式会社は、スナック菓子の王者として、さまざまなDXに取り組む先進的な企業です。その中でも、マーケティングにおいて注目すべき取り組みのひとつが、パッケージデザインにおけるAIの活用です。カルビーがパッケージデザインにAIを取り入れた背景にはどのような技術があり、ビジネスにどのような効果をもたらしたのか。この記事では、カルビーが自社で実践した取り組みをもとに、デザインに活用されるAIのトレンドを紐解きます。

DX化で強さを増すカルビー

まず、カルビーの最近の動向とAIを活用したマーケティング事例についてご紹介します。カルビーはスナック菓子メーカーとして「かっぱえびせん」「ポテトチップス」「じゃがりこ」などの数々のヒットシリーズを持っており、スナック菓子業界では長く首位を誇っています。

2019年5月に発表された5ヶ年の中期経営計画の中で、カルビーが重点課題として挙げているのがDXの推進です。製造・販売・流通のすべてのプロセスにおいてDX化を進め、生産性を向上させることが大きな命題となりました。

DX化を進める上でAIの活用は必然でしたが、マーケティング分野で注目を集めたのは「パッケージデザインAI」というAIサービスの導入が、主力商品のひとつである「クランチポテト」の売上増加につながったことです。

パッケージデザインAIを活用したカルビーの成功例

1-1(画像出典:カルビー株式会社 ニュースリリース)

同社では、2020年9月に中身とパッケージを一新して発売したポテトチップス「クランチポテト ソルト味/サワークリームオニオン味」のパッケージデザインに、AI評価システムを採用しました。クランチポテトは、従来のポテトチップスよりもザクザクした「最堅食感」がセールスポイントで、発売から1年を迎えるにあたって、その食感がより伝わるパッケージデザインと味にリニューアルすることになりました。その際に利用したのが「パッケージデザインAI」です。

AIが学習したデータをもとに消費者が好むデザインを評価する「パッケージデザインAI」の機能を利用して、最適なパッケージデザインを迅速に開発した結果、リニューアル前と比較して1.3倍の売上を達成しました。ちなみに、同社は2019年にパッケージデザインをリニューアルした「とうもりこ」「えだまりこ」から「パッケージデザインAI」を活用しています。

2-1(画像出典:カルビー株式会社 ニュースリリース)

パッケージAIデザインの概要

3-1(画像出典:パッケージデザインAI Webサイト)

「パッケージデザインAI」を提供しているのは、パッケージデザインの開発や市場調査を行う株式会社プラグです。AIが「パッケージデザイン好意度(最大5つ)」「ヒートマップ」「イメージワード(好意度理由)」「好意度のバラツキ」を予測するサービスとして、東京大学との共同研究によって開発されました。

同サービスはこれまで多くの企業で導入されており、793万人(2021年6月時点)の学習データを保有しています。サービスが利用されデータが蓄積されることで、AIの精度はさらに向上します。画像を所定のサーバー上にアップロードするだけで簡単に利用できるため、AI導入の技術的なハードルも決して高くありません。評価結果もPDFやCSVファイルで保存でき、専門的なITのスキルは不要です。


4-1(画像出典:カルビー株式会社 ニュースリリース)

クランチポテトのパッケージデザインでは、「パッケージデザインAI」を利用して5種類のデザイン案の比較分析を実施しました。上の図は新パッケージ(左)と旧パッケージ(右)の比較で、図の左半分で示されている「ヒートマップ」では、パッケージのどの部分に好意を持ったかが示されます。また、右半分の「好意度予測スコア」では、それぞれのパッケージを5点満点で評価しており、新パッケージの方が点数が高いことがわかります。

幅広い業界に導入される「パッケージデザインAI」

「パッケージデザインAI」は現在、食品や飲料品、化粧品など44種類の商品カテゴリーに対応しており、パッケージの形状は瓶、ペットボトルから牛乳パック、ラーメン容器に至るまで、さまざまなパッケージ形態に対応できます。
導入事例も増えており、カルビー以外にもネスレ日本株式会社が、「ネスカフェ ゴールドブレンド 大人のご褒美」シリーズのパッケージデザインにこのサービスを活用したことが公表されています。
なお、利用料金は1つのパッケージ画像あたり15,000円からで、月々の規模に応じた使い放題プランもあり、比較的低価格で利用できます。上限回数10枚までの「無料お試しプラン」も用意されているので、本格導入の前にテストすることも可能です。

デザイン評価を支える最新のAI機能

「パッケージデザインAI」のようなデザインの評価技術には、AIのどのような機能が活用されているのでしょうか。ここでは、AIの特徴がデザインにおいてどのように活かされているのかを見ていくことにします。

画像認識

AIには、画像や動画から物や人、言葉などを認識する画像認識の機能を持つものがあります。カルビーの事例でいうと、パッケージの画像からポテトチップスを判断したり、ポテトチップスの画像が占めている割合などを解析したりすることができます。「パッケージデザインAI」の「パッケージデザイン好意度」の測定においても、好意度が高い画像をデータとして蓄積し学習することで、認識や予測を行います。

自然言語処理

これまではコンピュータに命令する場合、コンピュータが理解できるプログラミング言語を用いる必要がありました。しかしAIは、人間が話す言語(自然言語)を理解し、処理や解析ができるようになっています。
「パッケージデザインAI」では「イメージワード(好意度理由)」の予測ができますが、これは「おいしそう」「かわいい」 「シンプル」などといったパッケージに対して持つ好感度を表す言葉を、過去にパッケージデザインに関して得られた自由回答の蓄積から、AIの自然言語処理能力によって導き出すことで可能にしています。

予測

AIは、状況と結果のパターンを多数学習することで、未来を予想できるようになります。さらに、AIは新しく起こった状態と結果を蓄積し、知識をアップデートし続けることができます。従って、データを蓄積するほどAIの予想精度は高まるのです。
「パッケージデザインAI」では、過去のデータを元に、パッケージデザインにおいて「好まれるか」「どの部分が好まれるか」「どんなイメージを持たれるか」「好き嫌いの差がどれくらいありそうか」といった点を予測します。

意思決定の最適化につながる

最後に、デザインにおけるAI活用のメリットを2つご紹介しましょう。カルビーの事例のように、デザインに対する評価をAIが高速化することによって、デザインの改善プロセスを短縮することができます。
また、デザイナーやマーケッターの嗜好で決めるのではなく、ターゲットに確実に訴求し選ばれる根拠となるデータを活用することで、デザインの生産性を高めます。

デザイナーが本来の仕事へ集中できる

最近では一部のデザインをAIが行うケースもあり、デザイナーの仕事が奪われるのではないかと懸念する声もあります。しかし、AIの多くはデザイナーのクリエイティブな仕事を補助する役割を担っています。

例えば、顧客が求めるデザインの傾向などをAIで調べて提案する、評価などのタスクをAIに任せるなどによって、デザイナーが本来のデザインの仕事に集中しやすくなるといえます。

今回は、カルビーの事例をもとにデザインにおけるAIの活用について解説しました。なお、その他の活用事例についてはこちらの記事でも紹介していますので、ぜひ参照ください。

https://www.sedesign.co.jp/blog/what-is-ai-based-design

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