AIでマーケティングの何が変わる? AIを活用したマーケティングのノウハウと事例をご紹介

公開日:2021-06-10 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

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ひと昔前は一部の専門家にしか扱えない高度なテクノロジーだった人工知能(AI)も、最近は身近な家電にも搭載されるようになり、もはや私たちの日常生活において特別な存在ではなくなりつつあります。そんな中、AIはマーケティングの分野においても大きな役割を果たすようになっています。この記事では、AIの価値をマーケティングで活かしてみたいと考えている方のために、AIがマーケティングにもたらすメリットや、その具体的な活用事例をご紹介します。

AIの定義と歴史

まずAIの定義と、その進化の歴史について簡単に整理してみましょう。AIは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」と呼ばれています。その定義については、一般社団法人・人工知能学会による「まるで人間のようにふるまう機械」という説明や、AIという言葉の生みの親であるジョン・マッカーシー教授による「知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」といった説明など、その定義は有識者の間でもさまざまです。しかし、一般的には「人間のような高い知能を持ったコンピュータ」に対して、AIという言葉が広く使われています。

AIは最近になって生まれたものではなく、1956年のダートマス会議で計算機科学者のジョン・マッカーシー教授が提唱したのがはじまりです。その後、いくどとなく注目を集めながら、2013年ごろからは第3次AIブームの到来と言われるようになりました。そして2020年以降、AIの役割は加速度的に高まり、一過性のブームのレベルを超えて、私たちの社会のあらゆる領域に浸透するようになりました。

AIの分類

AIを理解する上でよく用いられるのが、「特化型AI」と「汎用型AI」、「強いAI」と「弱いAI」という分類です。

特化型AIと汎用型AI

特化型AIとは、限定された領域の課題に対して、自動化された学習や処理を行うAIのことです。画像認識や音声認識、自然言語処理など特定の技術に対して自動的に学習・処理をするのが特化型AIにあたり、現在広く使われているAIはほぼこれにあたります。

一方で汎用型AIとは、特定の課題だけでなく、人間の脳と同じようにさまざまな課題を複合的に処理できる人工知能を指します。想定外の事態や複雑な要因を持つ課題に対して応用が可能な汎用型AIは、現時点ではまだ実現されていません。

AIの分類:強いAIと弱いAI

もう1つの分類方法として、「強いAI」と「弱いAI」という分類もあります。強いAIとは、人間のような自意識を持っており、自分で物事を考えて処理するAIのことを指します。一方で弱いAIとは、特定のタスクだけを処理する人工知能で、プログラミングされていない想定外の課題には対応できません。

このような定義から、「強いAI」は「汎用型AI」と近く、「弱いAI」と「特化型AI」は近いと言うことができます。

マーケティングにおけるAI活用の可能性

AIの活用法としては、コンピュータが膨大なデータのパターンを学習し、最適解を導き出す「機械学習」や「ディープラーニング」といった手法が広く知られていますが、近年はデータを収集しやすく、分析によるフィードバックを活かしやすいマーケティング分野での活用が進んでいます。以下では、マーケティングのどのような業務においてAIを活用できるかについて、いくつかの例を挙げて説明します。

データ分析

マーケティングでは、顧客や市場の動向を正しく理解し、戦略立案のヒントを得るためにデータ分析が行われます。顧客アンケートの結果や購買履歴などのデータをダッシュボードに表示するBI(ビジネス・インテリジェンス)は、これまでも頻繁に活用されていました。しかし、ここではデータを可視化することはできても、分析作業は人間が行わなくてはならず、そのための時間と労力が大きな負担となっていました。

この課題解決に一役買ってくれるのがAIです。データの統合や加工の自動化、AI自身が分析や改善提案をしてくれるサービスも提供されています。特に最近ではネットショッピングの拡大に伴って、Webの解析や改善を行うAIが広く利用されるようになっています。

人流分析

画像認識機能を備えたAIを活用して、店舗内の人の流れをデータ化することで、来店客の行動パターンやその要因を分析し、販売を促進するための改善策を導き出すことができます。具体的には、より接客効率の高い人員配置や混雑緩和のための導線づくり、特定の売り場への誘導など、具体的な課題に応じた解決策がAIによってわかるようになっています。

例えば、株式会社トライアルカンパニーが運営するスーパーマーケット「トライアル」では、千葉県内で「スマートショッピングカート」と「AIカメラ」が実装された店舗を展開しています。これらの店舗では、レジを通らなくてもショッピングカートで支払いができるほか、来店客のショッピングカートの中身を分析して、購買行動に合わせた情報提供などにAIが活かされています。

広告運用

Webやデジタルサイネージなどデジタル媒体での広告出稿が増えている現在、AIは広告運用でも広く活用されています。インターネットの検索キーワードに連動して表示される「リスティング広告」では、広告パフォーマンスを踏まえた入札(リスティング広告の出稿は、通常オークション形式で行われます)が必要ですが、これをすべて人の手で行うのは大変な作業です。そこで「どのような条件になったら入札する」といったルールを設定し、運用はAIで行うケースが増えています。

同様に、最近ではWebサイトで掲示される広告運用においてもAIが活用されています。GoogleやFacebookなど複数の広告媒体の管理画面を見ながら、人手で改善を繰り返すのはかなりの手間ですが、こうしたこともAIで自動的に最適化する仕組みが提供されています。

マーケターのためのAI活用のポイント

このように、マーケティングの分野でも広く活用されるようになっているAIですが、それではマーケターがAIを使いこなすためには、どのようにしてその手法を学んでいけばいいのでしょうか。以下では、そのステップをご紹介します。

マーケターがAIを使いこなすための4つのステップ

マーケター、特に文系出身の人材がAIを学ぶためのステップについては、ZOZOグループでAIプロジェクトを手がけているZOZOテクノロジーズの野口竜司氏が登壇した「Web担当者Forum ミーティング 2020 春」での講演内容が役立ちます。野口氏は自身がAIを学んだ経験から、以下のステップを踏むことがマーケターにとって効果的だと話しています。

  • AIの基礎を学ぶ
  • AIの構築を体感する
  • AIの事例を学習する
  • AIのプランニング力を磨く

まず、マーケターがAIについて知っておくべき最大のポイントは、AIは「特徴づかみの名人」だということです。例えば、出世する人の多くに「挨拶を欠かさない、性格が明るい、人の悪口を言わない、勉強家である、営業上手」という特徴があるとすると、AIはそれを特定して、新入社員の特徴を分析することで将来の可能性を予測できるというようなことです。

また、現在普及しているAIの機能は、「識別系」「予測系」「会話系」「実行系」の4つタイプの中で、それぞれ「人間代行型」「人間拡張型」に該当する計8種類のユースケースがあると言われています。AIのマーケティング活用においても、それぞれの用途、構築法が異なることを前提に、自社で導入しようとしているAIはどのタイプなのかを理解して、仕事を進めることが重要です。

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(画像出典:AI活用でマーケティングはどう変化する? AIを学ぶ4ステップと8種類の活用例

マーケターにとってAIは「選ぶ」「使う」の時代

GoogleやAmazonといったネット業界のジャイアント企業は、この8種類のAIをほぼ網羅してサービスとして提供しています。もちろん、専門家に依頼して独自のAIを開発する選択肢もありますが、多くの企業がAIをプラットフォームとして提供している現在にあっては、その中から自社に最適なものを選ぶことが賢明です。

そして、マーケターはAIを「ハードルが高い」と遠ざけるのではなく、マーケティングの効果を高めるための手法として、プロとしての視点でAIと向き合わなければいけません。このことを踏まえた上で、野口氏はマーケターがAIを活用する上では「予測系AI」から始めることを推奨しています。Webサイトから生まれる需要予測や売上予測、新たな施策を通じた改善などがこれに該当します。

マーケティングのAI活用事例

最後に、マーケティングにおけるAI活用の具体的な事例をいくつかご紹介します。AIを導入する際のヒントになるかもしれません。

はるやま商事:アパレル業界注目の「SENSY」を導入

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(画像出典:PR TIMES「パーソナル人工知能SENSYが洋服の似合う度合いを判定 アパレル業界で初リリース」

現在、アパレル業界で注目を集めているのが、カラフル・ボード株式会社が提供する「SENSY」です。SENSYは、一人ひとりの感性を個別に解析するパーソナル人工知能で、ユーザーの嗜好を学習し、最適な商品をレコメンドしてくれるツールです。

紳士服大手のはるやま商事株式会社では、2016年からSENSYを活用して、顧客一人ひとりにパーソナライズされたDMを使ったマーケティング戦略を展開しています。その結果、通常のDMと比較して来店率159%(2016年11月実施時)という高い成果が生み出されました。

また、はるやま商事は就職活動中の学生を対象とした「就活着こなしセミナー」を実施していましたが、そこで得たノウハウとSENSYの技術を活用して「似合うアルゴリズム」を開発し、LINEサービスの「はるやま就活LINE」に「就活似合う度チェック」を導入しました。

このサービスでは、志望業界、見せたいイメージ、顔の形や体型といったパーソナルデータを登録し、さらに自分のスーツ姿の画像を投稿することで、AIがスーツの似合う度を100点満点で判定し、おすすめのコーディネートを提案してもらうことができます。

ニトリ:Googleのシステムでディスプレイ広告入札を自動化

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(画像出典:ニトリ Webサイト

家具や日用品雑貨の店舗「ニトリ」を全国展開する株式会社ニトリホールディングスでは、オンライン広告を活用して実店舗への来店者を増やすO2Oマーケティング(Online to Offline)に注力しており、その中で広告運用にAIを活用しています。

同社では、広告運用にGoogleが開発した自動入札単価調整システムを導入し、AIが来店の可能性が高いユーザーを予測して広告の入札単価調整をリアルタイムに行うことで、広告費の削減につなげることができました。AIによる広告入札の自動化を行うようになってから、手動で運用していたときに比べて来店者数が36%増加し、広告運用の工数削減にもつながりました。

中古車販売IDOM、「ABEJA Dashboard」で店舗レイアウトや接客を改善

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(画像出典:HUNT常滑 Webページ

最後に、リアル店舗におけるAIのマーケティング活用事例をご紹介しましょう。

中古車販売の株式会社IDOM(旧社名:株式会社ガリバーインターナショナル)では、ショッピングセンターに出店する業態「HUNT」の常滑店で、株式会社ABEJAが提供する「ABEJA Dashboard」を導入しました。ABEJA Dashboardは、店舗にカメラを設置し、来店者数や属性、行動パターンをAIで解析することで、店舗のレイアウト変更や品揃えの改善などをサポートします。

IDOMでは、ABEJA Dashboardを使って来店者の行動を可視化することで、店舗のレイアウトや接客の改善につなげています。結果として、常滑店では他の店舗より1割程度展示車の販売が多くなっており、AIによる改善が結果に結びついていると評価されています。

このようにAIはさまざまな形態であらゆるビジネスシーンに活用されており、これからのマーケティングにおいて、ますます欠かせない武器となっています。AIを活用したマーケティングソリューションは、さらに進化することが予想されます。自社のマーケティングのどのフェーズに、どのタイプのAIが有効なのか、よく検討して導入することをお勧めします。

参考サイト
AI開発支援コンシェルジュサービス|AI Market

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