ディープラーニングとは?AI・機械学習との違いや活用事例を紹介

公開日:2022-06-21 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

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近年、AI(人工知能)の技術革新が進み、多くの産業やサービスでAIが利用されています。そのAIの発展を支えた基礎技術が「ディープラーニング(深層学習) 」です。
本記事では、ディープラーニングの概要や注目を集める理由、仕組みや手法、具体的な活用事例を紹介します。

ディープラーニングとは?

ディープラーニング(Deep Learning)は「深層学習」と呼ばれており、人間が行う作業をコンピューターに学習させる「機械学習」の一種を指します。人間が手を加えなくてもコンピューターやシステムが大量のデータを学習し、データ内から特徴を見つけ出す技術手法です。

近年のAIの急速な発展を支える技術で、音声認識や画像認識、文字の識別、需要予測など、さまざまな分野で実用化が進んでいます。

ディープラーニングが注目を集める理由

なぜ、今ディープラーニングが注目されるのでしょうか。その理由は精度の高さです。特に画像認識の分野では、精度・スピードともに人間のレベルをはるかに超えた精度を実現しています。

ディープラーニングの精度を上げるには、膨大なデータ処理による学習が必要です。たとえば、自動運転を開発する際は「数百万の静止画像」と「数千時間の動画」を用いて学習を行います。

これまでは膨大なデータの入手に課題があり、高い認識精度を実現できませんでした。
しかし近年、計算処理するサーバー性能が飛躍的に上がり、膨大なデータの入手や高速処理が可能になりました。高性能なサーバーを並列的に組み合わせることで、数週間ほど要した学習時間を数時間に短縮できるまで進化を遂げています。

このように、高い認識精度が実現可能になり、各産業で活用範囲が広がったことが今ディープラーニングに注目が集まっているおもな理由といえるでしょう。

ディープラーニングとAI(人工知能)・機械学習の違い

deep-learning2「AI(人工知能)」「機械学習」「ディープラーニング (深層学習)」は混同されがちですが、それぞれの意味は異なります。

AI

AIは「Artificial Intelligence」の略称で、人間と同様の知能を実現させる取り組みです。
AIの定義にはさまざまな見解がありますが、東京大学大学院 松尾豊教授によると、「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」と定義されています。

機械学習

一方で機械学習は、AIの定義に含まれる「データ処理の一種」です。ディープラーニングも機械学習の定義に含まれます。

機械学習はデータから反復学習を行い、学習結果を法則化し、規則性や関係性を見極めます。その際、「人間の手作業」でデータの特徴を定義することが必要です。

ディープラーニング

対してディープラーニングは、人間による特徴定義が必要な部分を「コンピューターの判断」に任せます。多くのデータから、自動で特徴を抽出できるのがディープラーニングです。

ディープラーニングの仕組み

ディープラーニングは、人間の脳神経細胞(ニューロン)を模したシステムである「ニューラルネットワーク(Neural Network)」によって支えられています。ニューラルネットワークとは、人間の脳の仕組みから着想を得たもので、脳機能の特性をコンピューター上で再現するためのモデルのことです。

ニューラルネットワークは、階層化された「入力層」「中間層(隠れ層)」「出力層」の3層から成り立ちます。ディープラーニングでは、ニュートラルネットワークを多層化することで、より複雑な対応を可能にしました。

入力されたデータが入力層、中間層、出力層を順に通過することで、出力結果が作られます。その際、中間層を多層構造にすることで、情報伝達と処理量が増加、特徴量の認識精度や汎用性も上がり、予測精度が向上します。

特徴量とは、学習データは「どのような特徴があるか」を数値化したものです。たとえば、性別や年齢、身長や年収など、学習させる内容に応じて特徴量を決定します。そしてニューラルネットワークを使い、入力されたデータのパターンを判断し、学習を繰り返していくのです。

データと施行回数が多いほどパターン学習はより正確になり、識別精度が向上していきます。

ディープラーニングの代表的な手法

deep-learning3続いて、ディープラーニングの代表的な手法を紹介します。

CNN(畳み込みニューラルネットワーク)

「畳み込みニューラルネットワーク」と訳されるCNN(Convolutional Neural Network)は、最も利用頻度の高い手法です。おもに画像認識や、動体検知の画像認識で利用されています。

CNNのネットワーク構造は、「畳み込み層」と「プーリング層」で構成されます。
畳み込み層は、画像データから局所的な特徴を抽出して際立たせる役割を担うものです。一方プーリング層は、局所的な特徴をまとめてフィルタリングし、画像データをより小さくまとめます。プーリング処理によって画像の空間的な解像度を1段階下げることで、画像の位置ズレ精度を向上させます。

CNNは、動画や音声を認識できない点がデメリットです。しかし、画像認識の識別速度が速いため、幅広い分野で応用されています。

RNN(再帰型ニューラルネットワーク)

RNNは時系列データの学習や、自然言語処理(機械翻訳、文章生成、音声認識など)で利用されている手法です。RNNは「Recurrent Neural Network(リカレント・ニューラルネットワーク)」の略称で、「再帰型ニューラルネットワーク」と訳されます。

「再帰」の言葉が示すように、RNNは「隠れ層」で繰り返し処理が行われます。音声データのような「可変長の時系列データ」をニューラルネットワークで扱うため、隠れ層の値を「再び隠れ層に入力する」というネットワーク構造を持つのが特徴です。

RNNは、長い系列データを学習させると勾配消失(ある段階から技術的に学習が進まなくなる事象)が発生します。そのため、短時間のデータしか処理できない課題があります。

LSTM法(長・短期記憶)

LSTM(Long Short Term Memory)はRNNのデメリットを解消した、長期の時系列データが学習可能な手法です。RNNで対応できなかった「長いデータ」を読み込めるよう設計されており、RNNが抱えていた「勾配消失問題」を解消しています。

長期の時系列データを考慮できる特徴を活かし、文章生成などの自然言語処理や1時間ごとの株価予測など、おもに時系列データ予測の分野で利用されています。

ディープラーニングが活用できる代表例

deep-learning4ディープラーニングはさまざまなビジネス分野で利用されています。ここでは、ディープラーニングの具体的な活用事例について見ていきましょう。

音声認識

エレクトロニクス領域を中心に、音声認識にディープラーニング技術が活用されています。音声認識の身近な例が、Google社やAmazon社が生産している「スマートスピーカー」です。「アレクサ、〇〇して。」とスマートスピーカーに話しかけると、音楽を再生したりAmazonで商品を注文したりできます。

また、iPhoneに搭載されている「Siri」もディープラーニングの音声認識を利用している製品の一例です。Siriは声紋で人を判別し、誰の声なのかを特定します。音声を認識してテキスト化することができるほか、最近ではWeb会議を録音し、議事録を自動作成することも可能になりました。

画像認識

画像認識は、画像や動画から文字や顔などを認識する技術です。特に、医療分野での活用が進んでいます。

AIが過去に蓄積した診断画像や健康診断の数値、各種論文などの医療データを解析し、病気の早期発見や適切な治療方法の決定をサポートします。人間では取り扱うことが不可能な量のデータを解析することで、今まで見過ごしていたさまざまな問題を発見できるようになりました。

たとえば、国立がん研究センターではAIを使い、大腸の内視鏡画像から早期の大腸がんや、がんの手前の段階のポリープを見つけることに成功しています。
また、判断しやすいタイプの病変の約95%を正しく検出するなど、熟練医と同等といえる実力を備えていることを実証しています。

自然言語処理

自然言語処理は、人が日常的に使う「書き言葉・話し言葉(自然言語)」をAIに理解させる技術です。普段、私たちが日常的に使う書き言葉や話し言葉は、非常に複雑な文脈から成り立っています。そのため、AIが言葉の曖昧さを判断し、的確に処理することは非常に難易度が高いといえるでしょう。

近年、自然言語のディープラーニング技術が進化し、さまざまな分野で利用されています。
スマートフォンやパソコン文字入力時の文字変換や、GoogleやYahooの検索エンジンの検索精度向上などがその例です。長文の文や文章に対して、AIが的確な処理が可能になってきました。

また、自動翻訳にもディープラーニング技術が応用されています。その代表的なサービスの一つが「DeepL翻訳」です。
DeepL翻訳は、2017年8月に開始された機械翻訳サービスで、既存の翻訳ツールより高い精度の翻訳文を生成することができます。その訳文精度の高さに、世界の著名なIT系メディアなどからも称賛の声が多く上がっています。

レコメンデーションシステム

ディープラーニングは、レコメンデーションシステムでも利用されています。たとえばAmazonやZOZOTOWNなどのECサイトでは、顧客の「年齢」「性別」「購⼊履歴」「閲覧・離脱状況」「購⼊頻度」などを解析し、顧客の嗜好に合わせて商品をレコメンドしています。

具体的には、ECサイト上で同じ商品ページを繰り返し見ていたり、商品レビューを長く読んでいたりする顧客を判定し、顧客情報をもとにレコメンドを実施します。顧客に合わせたおすすめの商品紹介やクーポン提供を行うことで、離脱防止や購入率向上などに役立てているのです。

在庫管理の分野においては、AIが顧客データを解析し、商品の購入パターンや傾向を見つけます。天候や季節、曜日による商品の購買傾向を導き出し、最適な発注数を決定し、需要に合わせて無駄なく仕入れを行うことで、廃棄量を抑えることが可能です。

従業員の経験則で行っていた仕入れを、AIがデータに基づいて正しく判断することで、在庫管理を最適化します。

ディープラーニングの今後

ディープラーニングの応用例は幅広く、今やさまざまな業界で利用されています。従来はAIが導き出したデータに対して最終的に人間が判断し、時には修正する必要がありました。

人間が曖昧な基準で判断していたデータや、人手では解析しきれなかった大量のデータをAIが処理できるようになったことで、より正確かつ多角的な応用が可能となっています。

今後もディープラーニングは進化を続け、人間が行っていた業務の一部がAIに置き換わり、その必要性が増していくことでしょう。より生産的に、より豊かになるためのサービスが次々に生まれることへの期待が高まります。

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