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「キャラクター価値AI」にみるAIとマーケティングの融合

SEデザイン編集部
2022-02-10
2022-02-10
目次

124790266_lパッケージデザイン開発とマーケティング・リサーチを手がける株式会社プラグは2021年11月、キャラクター名を入力するだけで消費者の購入意向率を予測できる「キャラクター価値AI」のβ版の提供を開始しました。今回は、この「キャラクター価値AI」にみるAIのマーケティング活用について解説します。

キャラクター価値AIとは?

2014年にデザイン会社とリサーチ会社が合併して設立された株式会社プラグ(以下、プラグ)は、パッケージデザイン開発、マーケティング・リサーチ、AI(人工知能)を活用した新たなサービスの開発に取り組んでいます。2019年には、920万人分のデータを使ってAIがパッケージデザインを評価・生成する「パッケージデザインAI」を発表。今回リリースされた「キャラクター価値AI」は、同社のAIサービスの第2弾となるものです。

「キャラクター価値AI」は、東北大学乾研究室が作成した70万語の「日本語Wikipediaエンティティベクトル」(後述)と、プラグが独自に実施したキャラクター調査のデータを活用したAIです。ある商品カテゴリーに対して特定のキャラクターを使用した場合の消費者の購入意向率(何%の人が買ってみたいと思うか)を、AIが30秒ほどで算出します。

結果は、購入意向率の予測値が数値とグラフで示されるとともに、A~Dのランク付けも行われます。現時点ではβ版のため、提供元のプラグのサイトから会員登録をすれば無料で利用することができます。

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(画像出典:株式会社プラグ『キャラクター価値AI』)

「キャラクター価値AI」で期待できる効果

キャラクターを使用するビジネスの市場規模は、動画配信から生まれた新しいキャラクター(IP:Intellectual Property)の活躍などによって成長軌道にあると言われています。ここでは商品とキャラクターをうまく組み合わせることにより、商品の売上増加につながるとともに、キャラクターの認知を高める効果も期待できます。

しかし、どの商品にどのキャラクターを使用すれば売上が向上するかについては、これまで明確な評価基準はありませんでした。こうした判断は主に業界の経験値に基づいて行われ、キャラクター使用料の基準もあいまいだったといいます。

「キャラクター価値AI」は、こうしたさまざまな問題を解決してくれます。キャラクターの的確な選定や投資効率の予測に加えて、キャラクターを提供する側にとっても提供先の効果的な選定が可能になります。

「キャラクター価値AI」の仕組み

ここからは「キャラクター価値AI」の仕組みを見ていくことにします。プラグは自社の公式サイトで、この仕組みについて以下のような説明しています。
「キャラクターの持つイメージと商品カテゴリーの持つイメージの類似性に着目し、プラグで実施している消費者調査結果を参考にして、購入意向率に変換する仕組みです」(引用:株式会社プラグ『キャラクター価値AI』)

これは、AIによる機械学習を人間が日常的に用いる言語を分析する自然言語処理に応用した例の1つといえます。

近年の自然言語処理では、単語同士の類似性や関係性を判定できるようになっています。ただし、そのためには多くの単語をコンピュータで分析できる数値へと変換しなければなりません。そこで用いられるのがエンティティベクトル(単語分散表現)です。

エンティティベクトルとは

111(画像出典:NLP with gensim (word2vec)

上の図は、エンティティベクトルの一例です。この図にあるとおり、「man」と「woman」、「dog」と「cat」、「Paris」と「London」など類似性が高い単語は、ベクトル空間上の近い位置に表現されます。また、「Paris」と「France」、「London」と「England」など「首都と国名」という観点で関係性が同じ単語は、その間の距離や角度が同じものとして表現されます。

この「類似性」と「関係性」は、文中における単語の位置関係からAIが導き出します。

例えば、以下のような2文があったとします。

「私は小田急線の新百合ヶ丘駅付近に住んでいます」
「登戸駅では小田急線とJR南武線が交差しています」

ここから「新百合ヶ丘駅」と「登戸駅」は、「類似性が高い」「小田急線に対して同じ関係にある」とみなすことができます。このように、単語同士の類似性と関係性を文中の位置関係によって分析するのが、エンティティベクトルの基本的な考え方です。

実際の運用では、AIが膨大な数の文を学習することで、単語同士の類似性と関係性を見つけ出します。

日本語Wikipedia70万語のエンティティベクトル

冒頭でふれた東北大学乾研究室が作成した「日本語Wikipediaエンティティベクトル」は、70万語もの日本語をAIに学習させたものです。このエンティティベクトルでは、70万語すべての単語について互いの類似性と関係性が表現されています。

たとえば、楽器メーカー「ヤマハ」と類似度の高い単語を検索すると、以下のような結果が得られます。この図で答の右にある数値は、類似度の確率を示しています。

1111 (画像出典:東北大学乾研究室『日本語Wikpediaエンティティベクトル』)

また、「札幌市に対する北海道と同じ関係性を持つものは、沖縄県では何か?」(県庁所在地と都道府県の関係性であるため、正解は那覇市)という検索に対する結果を見ると、正解である「那覇市」が、最高確率として回答されています。

11111(画像出典:東北大学乾研究室『日本語Wikpediaエンティティベクトル』)

エンティティベクトルの応用

エンティティベクトルはレコメンドやレビュー分析、機械翻訳の下処理、質疑応答システム、感情分析などへ応用されています。

たとえば、明治大学理学部で行われている「Word2Vecを用いた顔文字の感情分類」という研究では、ツイッターのツイートから顔文字および感情表現の単語をAIに学習させ、エンティティベクトルの類似性を調べることで、顔文字のそれぞれに対応する感情を分析しています。

同様にキャラクターと商品カテゴリーの類似性についても、消費者調査の結果から得たキャラクターのイメージをエンティティベクトルで表現し、それを日本語Wikipedia内の商品カテゴリーを示す単語のエンティティベクトルと比較することで、類似性を明らかにします。

マーケティング領域における、その他のAI活用事例

マーケティング領域におけるAI活用の事例としては、この他にも以下のようなものがあります。

需要予測

大手ホームセンターは、AIを活用した需要予測により、仕入れの最適化を実現。過去5年分の販売データと、売上に影響がある天気情報から需要を予測した結果、平均在庫はマイナス16%に、売上は前年比124%になりました。

ダイレクトメール成果向上

大手流通系クレジットカード会社はダイレクトメール(DM)成果向上のため、AIを活用して会員リストから見込み度の高い顧客を抽出。300万人を対象として予測キャッシングリボ利用率を算出し、上位者にターゲティングDMを送付したところ、反応率は2倍になりました。

ホテルレビューによる他社分析

米国を拠点とする大手ホテルグループは中国へ進出する際、競合他社のホテルレビューやディスカッション、顧客のフィードバックなどをAIにより分析。顧客の購入要因や競合他社間の違いを可視化した結果、競合他社の特性を十分把握し、効果的な差別化の方法を策定しました。

まとめ

「キャラクター価値AI」は、これまで業界の経験に頼ってきたキャラクターの採用を、明確な基準に基づいて判断できるため、キャラクターの的確な選択、およびキャラクター提供先の効果的な選定が可能になると考えられます。コンピュータ機器・技術の進化が著しい現在、AIはマーケティングの分野で今後ますます活用されていくのではないでしょうか。

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