AIでデジタル広告を最適化するThe Trade Deskとは?

公開日:2021-12-10 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

AI(人工知能)は、今やデジタル広告の世界においても不可欠なテクノロジーとなっています。最近では、広告の出稿者(バイサイド)と広告媒体(サプライサイド)がそれぞれプラットフォームを持ち、対等な立場で広告枠を自動で売買する手法が広まりつつあり、これを可能にしているのがAIです。この記事では、バイサイドに特化したテクノロジーを提供するThe Trade Desk社と、その背景にあるAIの仕組みや導入事例を解説します。

The Trade Desk社とは

まず、The Trade Desk社の概要と、同社の主要製品であるSolimarについてご紹介します。

The Trade Desk社について

(画像出典:The Trade Desk社 Webサイト

The Trade Desk社は、2009年に創業した米国カリフォルニア州を拠点とするデジタル広告配信プラットフォーム企業です。2011年からは主に広告代理店に対して、広告のバイサイドにフォーカスしたDSPプラットフォームを提供しています。DSPは「Demand-Side Platform(デマンドサイドプラットフォーム)」の略で、広告出稿の効果を高めるため、より安く効率的に広告枠を仕入れるための仕組みです。

The Trade Desk社は、2021年第2四半期において前年の約2倍となる2億8,000万ドル(約307億8,000万円)の収益を達成しており、デジタル広告市場の拡大を背景に、今後も大きな成長が見込まれています。2014年には日本市場にも参入し、日本法人のThe Trade Desk Japan株式会社がサービスの提供を開始しました。

最新プラットフォームSolimarとは

Discover Solimar from The Trade Desk


 

The Trade Desk社は2021年7月、最新の広告配信プラットフォーム「Solimar」を発表しました。設定した目標に応じて、インターネットに接続されたテレビ「コネクテッドTV」を含むデジタル広告を最適化するためのソリューションです。

Solimarの特徴のひとつは、プライバシーを考慮し、企業が収集した自社の顧客やWebサイトの訪問者に関する「ファーストパーティデータ」を活用して、精度の高い広告配信ができることです。広告配信用の識別子としては、これまで一般的に「Cookie」が使われてきましたが、プライバシー保護の観点から利用規制が強化されています。そこでThe Trade Desk社は、新たな識別子「Unified ID 2.0」を開発し、新しい方法での広告ターゲティングを可能にしました。

The Trade DeskのAI「Koa」とは

The Trade Desk社の製品に活用されているAI技術は「Koa」と呼ばれます。KoaはSolimarの前身である「Next Wave」から導入され、広告の分析や最適化における重要なエンジンとして機能しています。

デジタル広告の配信においては、配信手法を最適化するまでに試験的な運用期間が必要となりますが、KoaはThe Trade Desk社のデータを活用して、配信手法の改善に向けたレコメンデーションを提示します。これにより、最初から精度の高いデータを活用することで、試験運用期間を短縮することが可能になります。

Koaの背景にあるAIの仕組み

次に、Koaに活用されているAIの仕組みについて紹介します。

AIの定義はさまざまですが、一般的には「人間のような高い知能を持ったコンピューター」のことを指し、以下のような特徴を持っています。

  • 自律性(誰かの指示がなくても自動的に作業をする)
  • 適応性(経験や学習を積むことによってパフォーマンスが向上する)

AIを実現する技術には、反復学習によって膨大なデータからパターンを抽出する「機械学習」や、自動的に学習し続けて精度を高める「ディープラーニング」などがあります。

デジタル広告の配信では、これまで手動で広告のパフォーマンスを確認しながら、オークション形式で出稿していく手法が一般的でしたが、AIの活用によってこれらの負荷を軽減し、成果を高める手法が広まりつつあります。

広告のバイサイドにおいては、決められた広告予算内で売上を最大化するため、過去の広告出稿実績の分析、出稿先の選定、必要なコストなどの算出にAIが使われています。また、広告のサプライサイドでは、広告収益の最大化を目的として広告枠の情報を一括管理し、収益性の高い広告をAIが判断して自動配信する仕組みなどが提供されています。このように24時間365日行われる広告枠の取引の中で、AIを活用した広告運用の自動化が進んでいるのです。

The Trade Deskの活用事例

The Trade Deskのソリューションを活用する企業の事例をご紹介しましょう。

OMG Germany:ドイツのマクドナルドでモバイルゲーマーへの認知度を拡大

(画像出典:ドイツマクドナルド Webサイト

OMG Germanyは、世界展開している広告代理店「オムニコム・メディア・グループ」のドイツ法人です。コロナ禍におけるソーシャルディスタンスの要請によって、人々が家で過ごす時間が増えたことから、OMG Germanyとドイツのマクドナルドは2020年、オンライン動画配信サービスや、XboxやPlayStationなどのゲーム関連サービスへの広告配信を強化しました。

その結果、広告の完全視聴回数は300万回以上、視聴完了率も93%となり、広告視聴完了1回あたりの費用が0.02ユーロ(約2.6円)という効率的なキャンペーンにつながりました。

Xaxisとトリンプ:東南アジアの市場でオンライン広告による実店舗への誘導施策を実施

(画像出典:トリンプシンガポール Webサイト

ランジェリー小売企業のトリンプは、台湾、シンガポール、マレーシアの市場でキャンペーンを実施するにあたり、オンライン広告が実店舗への来店に与える影響を検証しました。

KoaのAIエンジンによってオンライン広告を最適化し、位置情報を利用したSNS「Foursquare」も組み合わせて測定したところ、来店者数1人あたりの広告コスト(Cost per footfall)をキャンペーン前の80%減である0.65米ドル(約71円)に削減することができました。

まとめ

AIを使ったソリューションがデジタル広告の世界でも広まる中、The Trade DeskのAIサービスも大きな成長を遂げています。デジタル広告の市場拡大とともに、今後最も注目すべき企業のひとつであるといえるでしょう。

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