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デジタルシェルフとは?顧客とのタッチポイントを購買機会につなげるマーケティングの新たな概念

DX Insight編集部
2021-05-13

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個人のSNSやECサイトの商品レビュー、またWebサイトに表示される広告など、最近の消費者はインターネットで入手できるあらゆる情報を、自分が求める商品を購入する際の判断材料として利用しています。このように商品を売る側と消費者とのさまざまなタッチポイントを、インターネット上のデジタルの商品棚(シェルフ)に見立てて、「デジタルシェルフ(Digital Shelf)」と呼ぶ考え方が注目を集めています。この記事では、デジタルシェルフの基本的な定義に加えて、こうした考え方が出現した背景、そしてその活用事例についてご紹介します。

デジタルシェルフとは

まず、デジタルシェルフの定義とその背景について簡単に説明します。インターネット上で商品を発見・調査し、購入の意思決定を行うことは、現代の消費者にとってもはや当たり前のこととなっています。キーワードを使って自ら検索する、ECサイトに直接アクセスして購入することはもちろん、SNSの投稿やブログ、情報ポータルに配信されるバナー広告などが、売り手と消費者の接点=タッチポイントとなる場合もあります。

デジタルシェルフとは、消費者がインターネットを介してブランドと関わりを持ち、商品を調査、購入するために使用するタッチポイントや、その概念全般を指します。デジタルシェルフの取り組みにおいては、WebサイトやSNS、スマートフォンのアプリといったさまざまなタッチポイントのどこで消費者とつながり、どのように商品の購入を促すかが最優先の課題となります。そして、ここでは商品の紹介の仕方やユーザーレビューの見せ方なども重要なポイントとなります。

デジタルシェルフが登場した背景

では、なぜデジタルシェルフがこれほど大きな注目を集めるようになったのでしょうか。そこには大きく2つの理由があります。

まず1つめは、この数年でオンラインショッピングの市場規模が加速度的に拡大していることです。従来から小売りの世界では、自社商品が陳列棚のどこに置かれるかを「棚割り」と呼び、この「棚割り」は業績を伸ばす上での重要なポイントでした。オンラインショッピング市場において、この「棚割り」に該当するのがデジタルシェルフです。

2020年12月に総務省が発表した統計「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について」によると、ネットショッピング利用世帯の割合は2020年5月にはじめて50%を超えました。また、一世帯あたりのネットショッピングの支出額についても、2020年10月の平均支出額は17,876円で、前年比で約38%の増加となっています。このような状況から、ネットショッピングの「棚割り」に当たるデジタルシェルフを効果的に設計し、消費者の購買意欲を喚起することが重要なマーケティング課題となっているのです。

もう1つの理由は、プライベートブランド(PB)商品が台頭し、従来のメーカー以外の競合商品が次々と登場していることです。PB商品は小売業者自らが製造から販売まで手掛ける商品のことで、最近ではコンビニやスーパーが加工食品や冷凍食品などを自社のPB商品として市場に送り出すケースが多くなってきています。一貫して自社で開発・販売を行うPB商品は、価格設定の面でメーカーの商品にはないアドバンテージがあり、また自社商品であることから陳列棚の良い場所に置かれるため、シェア獲得にもつながります。

こうしたPB商品に対抗するためには、メーカーは消費者に高度なデジタル体験を提供することで差別化を図らなければなりません。良い口コミや商品の紹介記事など、ネット上で自社のブランドと商品の価値を消費者に知ってもらうことで、デジタルシェルフの「棚割り」で優位な立場を構築し、実店舗での販売も促進することができるのです。

デジタルシェルフシェアとは

デジタルシェルフがマーケティングの手法として普及するにつれて、「デジタルシェルフシェア」という概念も重要になってきています。これは物理的な陳列棚のシェアと同じように、デジタルシェルフでのシェアを示す指標であり、重要経営指標(KPI)として取り入れられるようになってきています。

例えば、世界最大のネットショッピングサイトであるAmazonは、長く実店舗での売り上げを脅かす存在と言われ続けてきました。しかし、一方でAmazonでの売れ筋ランキングに入ったり、口コミで良い評価を獲得したりすることは、商品の高い認知につながることも事実です。また、注文件数が増えると商品の掲載順位が上昇する仕組みになっているため、Amazonで一定以上の売り上げを達成することによって、広告を出さなくても検索順位がアップし、Amazonにおけるデジタルシェルフシェアが上昇します。もちろん、「Amazon◯◯カテゴリで売り上げNo.1」のようなキャッチコピーも実店舗の販売において有効です。

このようにデジタルシェルフシェアは、すでにネットショッピングのためだけのKPIではなくなっています。実店舗を中心に販売する商品においても、デジタルシェルフシェアが重要な指標となる時代が来ているのです。

デジタルシェルフの活用事例

では、実際にデジタルシェルフを活用して成果を上げているいくつかの事例を紹介しましょう。

ボタニスト:デジタルシェルフでの実績をもとに、実店舗へ進出

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(画像出典:ボタニスト Webサイト

シャンプーやスキンケアなどの自然派トイレタリー製品を扱うボタニストは、ネットショップで売り上げに火が付き、実店舗でも広く取り扱われるようになった代表的な成功例です。発売当初は東急ハンズやLoftのような一部のバラエティショップでは販売されていましたが、高価格帯の商品のため一般のドラッグストアで扱われることはありませんでした。

そこで同社はネット上での販売に力を入れ、楽天市場での販売実績を分析し、改善を繰り返しながら成果を高めていきました。同時にインスタグラムやフェイスブックなどのSNSサイトで、インフルエンサーに商品を紹介してもらうことで認知を高めることにも成功しました。この方法が功を奏し、マス広告に頼らずにネット上の商品ページやSNSなどのデジタルシェルフのシェアを高めたことで、ドラッグストアなどの小売店にも販路を拡大することができたのです。

ベイクルーズ:ネットショッピングと実店舗の壁を払拭

image2-3(画像出典:ベイクルーズ Webサイト

アパレル大手のベイクルーズは、自社のECサイトと実店舗の顧客体験をつなげることで成果を上げています。ECサイトと実店舗の在庫を一元化し、販売チャネル間の価格差をなくしたり、ポイントプログラムを統一したりすることで、どちらで商品を買っても同じサービスが受けられることを目指しました。

ECサイトと実店舗でのサービスにばらつきがあると、顧客はどちらで商品を購入すれば良いのか判断がつかず、購入を見送ってしまうことがあります。サービスを均一化することで、顧客は悩むことなく安心してベイクルーズの商品を購入できるようになるのです。

実際、ベイクルーズではECサイトと実店舗の両方で買い物をする「クロスユース」での売り上げが伸びており、顧客数ベースで2割、金額ベースでは5割がクロスユースの売り上げとなっています。ECサイト上で店頭在庫を表示したり、実店舗が発信するブログをECサイト内に統合したりすることで、ブログ経由で実店舗に送客される割合も増加しました。これはデジタルシェルフの充実が実店舗にも良い効果を与えている一例と言えます。

サントリー:動画マーケティングなどでデジタルシェルフを強化

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(画像出典:サントリー Webページ

サントリーもデジタルシェルフの充実で売り上げを伸ばしている企業です。従来、消費者の購買データは小売業が持っていて、メーカーは顧客の購買行動を直接知ることができませんでした。しかし、サントリーは「ザ・プレミアム・モルツ」のブランド戦略において、店頭での購買行動と個別ユーザーを紐づけることに成功しました。

また、店頭での購買と飲食店での飲用を紐づけることにも成功し、飲食店で飲用したユーザーに対してデジタルプロモーションをかけることで、「飲用体験➔ デジタルプロモーション➔店頭購買➔検証」という流れに活かしています。

さらに、サントリーは動画サイトも効果的に活用しています。最近では動画サイトも重要なデジタルシェルフの1つとなっています。特に飲料では「テキスト+静止画」よりも、五感を刺激し、味覚に訴えかける動画の効果が高いことがわかっています。

同社は「黒烏龍茶」や「クラフトボス」など人気のCM動画をはじめ、2020年12月時点で約1,200本の動画をYouTubeで公開しています。チャンネル登録者数は25万人を超えており、人気タレントが出演するCMなどは再生回数が1,000万回を超える人気チャンネルとなっています。

従来、動画はテレビCMが中心でしたが、Z世代と呼ばれる10~20代はデジタル広告だけでも十分な認知が得られるという分析結果もあり、動画というタッチポイントがますます重要なデジタルシェルフとなっていることは間違いありません。

ネットショッピングのみならず、実店舗での販売にも有効なデジタルシェルフの手法は、もはやマーケティング活動において必須のノウハウです。小売りビジネスの継続的な成長のためにも、デジタルシェルフの新たな活用方法は今後も要注目です。

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