シンギュラリティは2045年に訪れるのか。懸念や社会への影響を考える

公開日:2022-08-11 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

近年、AI(人工知能)の能力が飛躍的に向上し、AIは人類の知能を超える可能性を秘めています。こうした技術進化の先に待っているのが「シンギュラリティ」です。

本記事では、シンギュラリティの意味や社会への影響、起こり得る時期について詳しく解説します。

シンギュラリティとは?

シンギュラリティとは、 「AI(人工知能)が人間の知能を超える転換点」を指す言葉です。もとは、数学や物理学の世界で「特異点」を意味する専門用語として使われていました。現在は「技術的特異点」を指すことが多く、「技術進化が進んだ先に訪れる、今までの社会とは常識が一変する転換点」の意味で使われています

シンギュラリティの概念は、アメリカの発明家で人工知能研究の世界的権威レイ・カーツワイル氏が2005年に提唱しました。カーツワイル氏は、シンギュラリティを「人工知能が人間の知能と融合する時点」と定義しています。つまりAIが、人間より賢い知能を自ら生み出すことが可能になる時点を指します。

国内では、2016年にソフトバンクの孫正義氏が「シンギュラリティは人類史上最大の革命である」と発言し、認知が広がりました。孫氏は「シンギュラリティによってすべての産業が再定義される」と主張しています。

シンギュラリティはいつ起こるのか。2045年問題とは?

レイ・カーツワイル氏の著書「The Singularity is Near」(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)によると、シンギュラリティは「2029年にAIが人間並みの知能を備え、2045年に技術的特異点が来る」と記されています。

カーツワイル氏は2045年に訪れる技術的特異点によって、AIが人類の脳を超えることで「AI自身がより優れたAIを生み出せるようになる」と見解を示しています。これがいわゆる「2045年問題」です。2045年問題の根拠となっているのが「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」の存在です。この2つの法則を見ていきましょう。

ムーアの法則とは?

ムーアの法則とは、コンピューターのCPU等に使われる「半導体のトランジスタ集積率が18ヶ月で2倍になる」という経験則に基づいた法則です。インテル社の創業者であるゴードン・ムーア氏が、1965年に自身の論文内で発表しました。この法則が有効である前提で考えると、近い将来に「コンピューターが人類を超越する時代」がやって来ると予測できます。

しかし近年は、このムーアの法則に限界説が唱えられていました。その理由として、現在の半導体製造には「ナノテクノロジー」という技術が利用されているからです。ナノテクノロジーを使うと、半導体は原子サイズまで微細化します。原子サイズまで小さくなった半導体はこれ以上の微細化が難しいため、「この先にムーアの法則に従うのは物理的に難しいのではないか」と、一部の有識者から指摘されたのです。

その後、ムーアの法則の継承者といえる新たな法則が生み出されました。それが、シンギュラリティ概念の第一人者であるレイ・カーツワイル氏が唱えた「収穫加速の法則」です。

収穫加速の法則とは?

収穫加速の法則とは、「技術の発展や進歩は、その性能が直線的ではなく指数関数的に向上する」という法則です。一度、新しい技術が発明されると、その技術が次の進歩までの期間を短縮させます。そのため、次世代の技術革新までの間隔が短くなり、ますますイノベーションが加速するという概念です。

イノベーションの収穫加速の先に、シンギュラリティが実現するといわれています。このムーアの法則と収穫加速の法則に基づき計算を行うと、2029年にAIが人間の思考能力を上回り「2045年にシンギュラリティが起こる」と提唱されているのです。

シンギュラリティが社会に与える影響

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では、シンギュラリティが到来すると、社会にはどのような影響があるのでしょうか。「雇用」「社会制度」「身体・健康」の3つの観点から、シンギュラリティの影響を紹介します。

(1)雇用:一部の仕事や職業がAIに置き換わる

シンギュラリティにより、仕事や職業の一部がAIに置き換わると予想されています。2014年、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン氏らが発表した論文「雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」では、20年後に今ある仕事の47%はなくなるという結論が導き出されました。

なくなる職業として「飲食店の従業員」「販売員」「事務員」「倉庫管理者」「工場の組み立て作業者」「電話の窓口対応」「スポーツの審判員」「気象予報士」「派遣員の単純作業」などが挙げられています。一定の基準で判断可能な仕事や単純作業の仕事は、AIに代替され、その仕事がなくなるだろうと論じられています。

一方で、「教師」「医者」「看護師」「保育士」「介護士」「心理学者」「画家」「漫画家」「ミュージシャン」「カメラマン」「エンジニア」などは、今後も残る職業とされています。クリエイティブな仕事や、人体に影響を及ぼす仕事は人間が行う必要があり、AIへの代替が難しい職業とされています。

(2)社会制度:ベーシックインカム導入

シンギュラリティの到来により、「ベーシックインカム制度」の導入が進むと考えられてます。ベーシックインカムとは、最低限の所得を保障する仕組みです。ベーシックインカムは政府が国民に対し、最低限の生活を送るために必要な現金を定期的に支給する政策です。

AIに仕事を奪われたことで、生活保護を求める人が増加する可能性があります。また、貧困格差が一層広がる可能性も指摘されています。そうなると、政府は生活保護を求める人に一定の金額を支給し、貧困格差拡大を防ぐ施策を進めると考えられます。

(3)身体・健康:脳や臓器を人工化し、代替可能に

AIやテクノロジーによって人体の一部を「人工化」することが可能になるといわれています。人類の脳が「デジタル解析できるコンピュータ」と同じようなものになります。

さらに、人工化が進むことで、人間の意識をデータ化し脳の外部にデータ保存できるようになるともいわれています。データ化した脳のデータをAIにコピーしたり、消去したり、インストールしたりすることが実現できるかもしれません。

また、医療現場では、従来では考えられなかった治療ができる可能性もあります。例えば、今までの技術では代替不可能であった臓器も、代替可能になるといわれています。その結果、人類は大きく寿命が延びたり、不老不死を手に入れたりする可能性も秘めているのです。

2030年に起きるプレシンギュラリティは

2045年の到来が予測されるシンギュラリティの前に、「プレシンギュラリティ」と呼ばれる社会変動が起こると言われています。プレシンギュラリティとは、AIが人類知能を完全に上回る前の「社会生活の大きな変化が生じる時期」を指します。

プレシンギュラリティの可能性は、スーパーコンピュータ開発者で次世代の汎用人工知能の研究者である齊藤元章氏が提唱しました。齊藤氏は、プレシンギュラリティの到来時期を「2030年頃」と見解を示しています。

プレシンギュラリティによる社会の影響として「貨幣がなくなる」「人間が働かなくてよくなる」「戦争が起きなくなる」「エネルギー問題が解決され、無料で生活必需品が提供される」などが考えられています。

シンギュラリティは来ない? 否定派、反対派の意見

シンギュラリティの到来については、実は専門家の間でも「来る派」と「来ない派」に主張が分かれています。著名な学者の中でも「来ない」と主張する、反対派も存在するのです。ここで「シンギュラリティが来ない」と主張する反対意見を見ていきましょう。

スタンフォード大学教授 ジェリー・カプラン氏の主張

人工知能の権威であるスタンフォード大学教授のジェリー・カプラン氏は、「人工知能は人間ではないから、人間と同じように思考はできない」と述べています。人工知能と人間を、同一視する考え方を否定しているのです。

また、人々がAIに対して危機感を感じているのは「映画やドラマ作品の影響や根拠のないメディア報道、AI研究者たちの過激なアピールが原因」と指摘しています。「AIはあくまで明るい未来のための技術であり、脅えるものでない。人類のための活用方法を考えるべき」と主張しているのです。

ドイツ哲学者 マルクス・ガブリエル氏の主張

ドイツの哲学者であるマルクス・ガブリエル氏も、シンギュラリティ到来を否定する一人です。マルクス・ガブリエル氏は「知性は人間の非生物的、感覚的な部分であることから、人工知能とは異なる」と論じました。シンギュラリティは、ナンセンスな理論だと主張しています。

AIが人間のように「意識」や「自我」を持つことができる・できないの議論は、現時点では科学的な証明ができません。そのため、シンギュラリティ到来に関しても「到来する・しない」の考え方と、「悲観的・楽観的」の双方の意見が存在しているのです。

AIが進歩し、将来的に人間の仕事を代替する可能性は十分にあります。しかし、シンギュラリティで予想される「AIが自我を持って新たなAIを開発する」などの領域に達することは、難しいと考える人たちも多いのです。

まとめ

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これまでAI技術の発展により、私たちの生活は豊かになり、社会や働き方が大きく変化してきました。今後、人間の知能を遥かに超えるAIが誕生した場合、AIを制御し、人類の発展のため「AIをいかに活用していくか」の議論が活発化するでしょう。

シンギュラリティについては、「到来する・しない」の双方の意見があるのは紹介した通りです。もし、本当に到来するのであれば、来たる2045年に備えて知識を蓄え、人々は「時代に適応できる生き方」や「AIと共存した社会」を模索する必要があるでしょう。


AIをはじめとする技術はこれからさらに発展していくと予測されているので、早い段階で基本的な活用方法を取り入れておくことが大切です。SEデザインでは、IT分野におけるBtoBマーケティング&セールス支援を行っており、30年以上の実績がございます。業務の効率化や顧客へのアプローチでお困りの際は、お気軽にSEデザインへご相談ください。

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