広告におけるAI活用~運用最適化編~

公開日:2023-03-28 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

AIによる広告運用サービスが近年普及してきています。AI広告運用は、人の経験値・感覚からの脱却自動最適化などを実現する一方、初期設計などは人間が行わなければなりません。この記事では、AI広告運用のメリットや注意点、現在提供されている具体的なサービスを紹介します。

AIによる広告運用最適化

人の手によるWeb広告の運用は、時間的負担や労力がかかります。AIによる広告運用最適化を導入すれば、AIがクリエイティブや広告メニューを横断した予算配分の最適化を自動的に行ってくれます。

AIによる広告運用最適化のメリットは以下のとおりです。

人の経験値・感覚からの脱却

Web広告運用は、配信結果をもとにきめ細かな調整を継続する必要があります。担当者の経験値がないと成果が出しにくく、「属人性の強い業務」と言われてきました。担当者の判断基準にばらつきが生じやすいうえ、成功や失敗の要因を特定するのも困難です。

AIの活用で、過去のデータに基づいて運用を行えるようになり、担当者の経験値や勘に左右されることなく安定したパフォーマンスを生み出せるようになりました。

24時間365日の自動最適化

土日や深夜などにも広告運用が必要な場合には、担当者への負荷が過大になりがちです。AIを活用することで、24時間365日の運用最適化が可能となります。

出稿媒体を横断した最適化が可能

GoogleやYahoo!など複数の媒体に広告出稿を行う際は、それぞれの媒体ごとに予算配分を行わなければなりません。AIを活用すれば媒体ごとのパフォーマンスを分析し、媒体を横断して予算の最適化をすることも可能です。

それでは、AIによる広告運用最適化の代表的なサービスを以下で紹介していきます。

AI-ad

AI-adの運用イメージ

(画像出典:トッパンデジタル『AI(機械学習エンジン)による完全自動運用で、運用型Web広告の負荷軽減と効率最適化を支援』)

「AI-ad」はトッパンデジタルが提供するAI広告運用サービスです。出稿媒体、広告クリエイティブ、キーワード、入札単価、曜日、時間帯、ユーザーの性別・年齢・エリア・デバイスなどが成果に対してどのように影響しているかをAIが学習し、自動で最適化します。

AI-adの最適化の仕組み

AI-adの運用最適化の仕組みは以下のとおりです。

  1. 各媒体での費消を最大化する。
  2. どのような入札単価を設定すれば、CV率とクリック単価が最適になるかを検証する
  3. 曜日・エリア・性別・年齢などの情報を掛け合わせて分析し、細かなチューニングを行う

活用事例

ある食品通販会社では、リスティング広告での新規見込み客の獲得件数が、AI-ad導入により約5倍増となりました。流通小売会社においても導入により、インプレッション、クリック数とも、従来手法を前提としたシミュレーション値の約5倍増となっています。

OPTMYZR

optmyzrのイメージ

(画像出典:adflex MARKETING COLUMN『リスティング広告で競合他社の上をいく!アドフレックス×Optmyzrが実現する成果最大化』)

「OPTMYZR」は、GoogleやYahoo! JAPANなど複数媒体のデジタル広告を一つのプラットフォームで管理できるシステムです。入札と予算配分をAIが24時間365日管理し、最適化することで、広告運用の最適化を図ります。85か国8万社の導入実績があります。

OPTMYZRの特徴

OPTMYZRの特徴は以下の3点です。

  • キャンペーンを常時モニターし、異常を逐次知らせるため、突然の変化にも迅速に対応できる
  • 業界のベストプラクティスと独自のアルゴリズムに基づいた最適化を、適切なタイミングで実行できる
  • AI分析の目的や粒度、参照データなどの条件を指定できるため、結果に信頼感が持てる

活用事例

あるカードローン企業では、Google広告での獲得単価(CPA)を約31%改善しながら約10%の獲得件数(CV)の増加に成功しました。これは「OPTMYZR」のアラート機能を活用することにより、人力ですべての変化を確認することなく、効率的かつ適切な調整を行うことができたとのことです。

ROBOMA AI

「ROBOMA AI」は、RoboMarketer社が提供する、AIによるSNS広告運用ツールです。Facebook・Instagram自動運用機能と、Twitter自動運用機能の2つの機能を持っています。

Facebook・Instagram自動運用機能

Facebook・Instagram自動運用機能には、以下3つの特徴があります。

自動予算配分

実績に応じて予算を自動配分します。月予算を設定でき、複数のコンバージョンを合算して最適化することが可能です。

自動予算ブースト

効果の上がる時間帯を狙って予算を集中させることで、より高い成果が上げられます。

自動広告ON/OFF

効果が悪化したクリエイティブを自動停止し、新規クリエイティブをランダムにテストします。

Twitter自動運用機能

Twitter自動運用機能は、以下の3つの特徴があります。

予算自動配分

指定したキャンペーン間で、効果に応じて予算を自動配分します。個別の予算設定は不要です。

自動キーワード追加

指定した広告グループに最大1,000個まで、キーワードを定期的に追加します。トレンドワードか関連ワードから選択可能です。

自動ハンドル追加

指定した広告グループに、フォロワーが似ているアカウントを最大100個まで定期的に追加します。

AIアナリストAD

「AIアナリストAD」は、WACUL社の広告運用支援サービスです。Webサイトのデータ分析から改善ポイントの提案、施策の管理、成果の検証を、AIを用いて行います。3万6,000サイト以上を分析した改善ノウハウがAIに学習されています。

WACUL社では、広告運用で成果を上げるためには、サイト改善やメールマガジン最適化などをともに行う必要があると考えています。AIアナリストADの導入で、広告運用の部分最適に陥ることなく、企業のデジタルマーケティング全般の全体最適化が可能になるそうです。

Zalster

「Zalster(ザルスター)」は、AIによるFacebook・Instagram広告の運用自動最適化プラットフォームです。Facebook・Instagram広告の最適化と予算配分の組み合わせを、AIが24時間365日分析・調整することで、費用対効果の最大化を図れます。

セブン銀行の訪日・在日外国人を対象としたFacebook広告でのキャンペーンで、Zalsterが導入されました。前年度の実績と比較し、クリック率7.5倍、エンゲージメント率(広告に対する「いいね!」やコメントなどのアクションの割合)は12.7倍に改善されたそうです。

この間、Zalsterは、最適なクリエイティブローテーション(クリエイティブの選択)、予算の集中と再配分、入札戦略の変更などを、24時間自動的に行いました。また、最終CVR(ランディングページから最終目的ページへの遷移)も、順調に向上したそうです。

Ai×Ad

AI広告運用サービスAi×Ad(エーアイアド)は、リスティング広告、SNS広告、動画広告のそれぞれに対してAIによる運用サービスを行います。美容サロン、飲食店、弁護士・税理士、資格スクール、住宅設備、ファッション、メディア、金融・保険、不動産会社、ECサイトなど、これまで多くの業種で導入されています。

リスティング広告の運用

Google広告、Yahoo!広告などのリスティング広告については、ビジネス全体の課題を明確化して目標設定を行ったうえで、最適な広告運用を実施します。

SNS広告の運用

Instagram、Facebook、Twitter、LINEなどのSNS広告については、ターゲット層に的確に露出して認知度を高めることで、売り上げ・集客につなげるそうです。

動画広告の運用

YouTube広告、TikTok広告などの動画広告は、画像による広告より訴求力が高くなります。また、視聴されたときのみ広告費用が発生するため、費用対効果が高いことも特徴です。

広告運用最適化でAIを活用する際の注意点

AIによる広告運用最適化で、より成果を高めるための注意点を解説します。

人間が行う初期設計が重要

広告を効果的に運用するには、以下のような初期設計が重要です。

  • キーワードの選定
  • ターゲットの選定
  • 伝えるべきメッセージの内容
  • キャンペーンの構成
  • 広告文面の内容

これらは事業・サービスを熟知する人間が行う必要があります。AIが行うのは、初期設計を効果的・効率的に運用することです。

初期設計を行う際には、AIに学習させるデータの質を高めることを意識する必要があります。質の低い、たとえばターゲットの選定を誤っているデータをもとに学習させれば、AIの判断も誤ったものになってしまうからです。

まずは精度を求めずインプットに徹する

AIは一定のデータ量がないと十分な精度が出せません。そのため、AIによる広告運用においては最初から精度を求めず、まずはAIへのデータ蓄積に徹することが大切です。また、一定以上の広告出稿がある場合でないと、AIは有効に機能しません。

運用にも人間の力が必要

実際の広告運用でAIが得意とするのは、入札と予算配分の自動化です。しかし、運用の成果を見ながら新規の広告クリエイティブやキーワードを追加するなどのアクションを行うのは、AIによる自動化はまだ難しいといわれています。自動化できない部分については、引き続き人間が行わなければなりません。

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運用の成果を見ながら何らかのアクションを起こすためには、成果に変化があった場合、その変化の原因を人間が分析する必要があります。AIに任せきりにするのではなく、AIの挙動を人間が常に観察し、判断していく必要があることに注意しましょう。

まとめ

AIによる広告運用最適化は近年本格的に普及しており、多くのサービスが提供されはじめています。AI広告運用サービスを利用することで、24時間365日の自動最適化や出稿媒体を横断した最適化などが可能です。

近年、AIによる広告運用最適化が普及してきたため、「運用担当者は仕事を奪われるのではないか」と危惧する声も上がっています。しかし、自動化できる部分はAIに任せたうえで、人間は人間にしかできない部分へシフトしていく必要があるのではないでしょうか。


AI技術はこれからさらに発展していくと予測されているので、早い段階で基本的な活用方法を取り入れておくことが大切です。SEデザインでは、IT分野におけるBtoBマーケティング&セールス支援を行っており、30年以上の実績がございます。業務の効率化や顧客へのアプローチでお困りの際は、お気軽にSEデザインへご相談ください。

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