【2025年人事関連法改正】中小企業が今から取り組むべき5つの重要事項

更新日:2025-02-04 公開日:2025-02-04 by SEデザイン編集部

目次

2025年は人事・労務に関する重要な法改正の施行が多数控えています。本記事では、2025年施行の人事・労務に関連する法改正の全体像を俯瞰し、特に重要な改正内容とその対応策について解説します。

法改正の全体像、重要法改正の詳細を解説し、最後に中小企業の人事担当者や経営者の方々が今から準備すべきポイント5つを詳しく紹介していきます。

I would like it to include the words Personnelrelated Law Amendments 2025

2025年に施行される人事・労務関連の法改正の概要

主要な法改正

2025年に施行される人事・労務関連の主要な法改正としては、以下の3つが挙げられます。

施行時期 主な法改正 改正のポイント
2025年1月1日 労働安全衛生規則改正(第1弾) ・労働者死傷病報告の電子申請の義務化
・労働安全衛生法令関連の電子申請の義務化
2025年4月1日 労働安全衛生規則改正(第2弾) ・危険作業に関する規定の見直し
・一人親方等への周知義務化
2025年4月1日 育児・介護休業法改正(第1弾) ・残業免除制度の対象の拡大
・子どもの看護休暇制度の拡充
・育児休業取得率の公表義務の範囲拡大
・介護離職防止措置の強化
2025年4月1日 雇用保険法改正(第1弾) ・育児休業給付の保険料率の引き上げ
・基本手当の給付制限期間の見直し
・出生後休業支援給付の創設
・育児時短就業給付の創設
・高年齢雇用継続給付の支給率変更
2025年10月1日 育児・介護休業法改正(第2弾) ・柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
・仕事と育児の両立に関する意向聴取
・記録の義務化
2025年10月1日 雇用保険法改正(第2弾) ・教育訓練休暇給付金の創設
・給付金申請手続きの体制整備要件化

法改正の背景と企業への影響

これらの法改正の背景には、日本社会が直面する以下のような課題があります。

・少子高齢化の進行による労働力人口の減少
・育児・介護と仕事の両立支援ニーズの高まり
・デジタル化の推進による行政手続きの効率化
・多様な働き方を求める社会的要請

特に中小企業への影響が大きいものとして、以下の法改正を確認しておきましょう。

改正される法律

改正に伴い対応が必要となる点

対応の優先度

準備開始の推奨時期

育児・介護休業法

・就業規則の改定
・制度設計の見直し

★★★

即時

労働安全衛生規則

・システム対応要
・業務フローの変更

★★

2024年前半

雇用保険法

・保険料率の変更の適用
・給付金制度の理解

★★

2024年後半

 

重要な法改正の内容とその対応策

育児・介護休業法の改正内容とその対応策

育児・介護休業法は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、働く人が育児や介護を行いながら仕事を続けられるようにすることを目的とした法律です。2025年の改正は、4月1日と10月1日の2段階で施行され、以下の重要な変更が行われます。

■2025年4月1日施行の主な改正点

1.残業免除制度の対象拡大
【現行】3歳未満の子どもを養育する労働者のみ
【改正後】小学校就学前の子どもを養育する労働者も対象とする


この改正により、就学前の子育て期間全般において、より柔軟な働き方が可能となります。
企業は、対象者の拡大に伴う業務分担の見直しや、代替要員の確保などの体制整備が必要となります。

2.子どもの看護休暇制度の拡充
【対象年齢の拡大】
【現行】子どもの就学前まで
【改正後】子どもの小学校3年生修了時まで

【取得事由の追加】
・現行:子どもの病気・けがに伴う通院など
・改正後:学校行事(入学式・運動会など)への参加も対象に

【除外規定の廃止】
勤続6ヶ月未満の労働者を除外する仕組みが廃止され、より広い従業員層が制度を利用できるようになります。

これらの改正により、まだ小さい子どもの子育て中でもより柔軟な働き方が可能となります。企業は、対象者の拡大に伴う業務分担の見直しや、代替要員の確保などの体制整備が必要となります。

介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

介護離職防止のための雇用環境整備

介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下①~④のいずれかの措置を講じなければなりません。

① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施

② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供

④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

【介護離職防止のための個別の周知・意向確認等】

  1. 介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、介護休業制度などに関する事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度などの利用の意向確認
  2. 介護に直面する前の早い段階(40歳など)での情報提供

■2025年10月1日施行の主な改正点

1.柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
従業員が柔軟な働き方をとれるよう、企業は以下のなかから最低2つ以上の措置を講じ、働き方の選択肢として従業員に提供する必要があります。

【選択肢一覧】
・短時間勤務制度
・新たな休暇の付与
・テレワーク(月10日以上)
・始業時刻等の変更(フレックスタイム制・始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ)
・保育施設の設置運営

企業にとって重要となるのは、これらの措置を形式的なものではなく、実際に利用可能な制度として整備しなければならないということです。例えばテレワークを導入・実施する場合、必要な機器の準備やセキュリティ対策、業務フローの見直しなども含めた包括的な制度設計が求められます。

2.個別の意向聴取と配慮の義務化
従業員が妊娠・出産を申し出たときや、従業員の子どもが3歳になる前には、企業は従業員の意向を個別に聴取し、育児と仕事の両立に向けた配慮を行うことが義務付けられます。それに際し、企業には以下のような実務対応が必要となります。

【企業に求められる実務対応】
・就業規則の改定(2024年内の着手が望ましい)
・新制度に対応した業務体制の構築
・労務管理システムの更新検討
・管理職を対象とした研修の実施
・運用マニュアルの整備
・育児休業取得率の公表義務の範囲を拡大
・介護離職防止措置を強化

 

雇用保険法の改正内容とその対応策

雇用保険法は、労働者が失業した場合の生活の安定と再就職の促進を図ることを目的とした法律です。2025年の改正は、特に教育訓練支援の強化と、育児関連給付の充実に重点が置かれたものになっています。

■2025年4月1日施行の主な改正点

1.基本手当の給付制限期間の見直し
【現行】自己都合退職の場合、基本手当の支給に際しては、原則2ヶ月の給付制限期間が生じる
【改正後】自己都合退職の場合、1ヶ月に短縮 さらに自ら教育訓練を受けた場合には給付制限解除

この改正の狙いは、労働者の自発的なキャリアアップを支援することにあります。特に、デジタルスキルの習得や資格取得など、今後の就職に有利となる教育訓練を受講する場合に配慮されます。

2.育児休業給付に関する改正

2-1.出生後休業支援給付の創設
子どもの出生直後の一定期間以内(男性は子どもの出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が給付され、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げられます。

2-2.育児時短就業給付の創設
現状、育児のための短時間勤務制度を選択し賃金が低下した労働者に対して給付する制度はありません。そのため、被保険者が2歳未満の子どもを養育するために時短勤務をしている場合の新たな給付として、育児時短就業給付を創設されました。休業よりも時短勤務を、時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する観点から、給付額は時短勤務中に支払われた賃金額の10%となります。

2-3.高年齢雇用継続給付の支給率変更
【対象者】令和7年4月1日以降に60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない場合はその期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた労働者
【支給率】最大給付率が15%→10%に引き下げ

■2025年10月1日施行の主な改正点

教育訓練休暇給付金の創設
【制度の概要】
・対象:在職中の雇用保険被保険者
・支給要件
 ①被保険者期間が5年以上
 ②離職した場合に支給される基本手当の額と同じ
   (給付日数は、被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれか)


本制度は、従業員の長期的なキャリア開発を支援しつつ企業の人件費負担を軽減でき、企業にとって人材育成支援の新たな選択肢となる仕組みとして注目されています。施行に際し企業に求められる主な対応は、以下のとおりです。

 

・就業規則への教育訓練休暇制度の追加
・給付金申請手続きの体制整備
・従業員への制度周知と活用の促進
・人材育成計画との連携の検討

労働安全衛生規則の改正内容とその対応策

労働安全衛生規則は、職場における労働者の安全と健康を確保するための具体的な基準を定めた規則です。2025年の改正は、行政手続きのデジタル化推進と、より実効性の高い安全衛生管理体制の構築を目指したものになっています。

■2025年1月1日施行の主な改正点

労働者死傷病報告等、労働安全衛生関係の一部の手続きの電子申請義務化
以下の手続について、原則として電子申請に一本化されます。これまで認められていた書面による提出は例外的な場合を除き認められなくなります。


労働災害が発生時した場合の報告方法が、原則として電子申請に一本化されます。それに伴い、これまで認められていた書面による提出は例外を除き認められなくなるため、対応の準備が必要です。

【電子申請が必要となる主な報告】
・総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
・定期健康診断結果報告
・心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)結果等報告
・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
・有機溶剤等健康診断結果報告
・じん肺健康管理実施状況報告

 

この変更に対応するため、企業は以下の準備が必要となります。

 

【必要となる主な準備事項】
・電子証明書の取得
・申請システムの利用環境整備

 

書類保管の手間の軽減につながる一方で、データを適切に管理する体制の構築が新たな課題となります。

■2025年4月1日施行の改正点

安全管理体制の強化を図るため、危険作業に関する規定が、より実態に即したものに見直されます。

【見直しのポイント】
・危険箇所等において事業者が行う退避や立入禁止等の措置の対象範囲を、作業場で何らかの作業に従事する全ての者に拡大
・危険箇所等で行う作業の一部を請け負わせる一人親方等に対する周知の義務化


【企業の対応スケジュール例】

時期

実施事項

具体的な取り組み内容

2024年前半

現状分析

現行の申請・報告方法の棚卸し、システム環境の確認

2024年後半

体制整備

電子証明書の取得、必要機器の導入、担当者の選任

2024年末

規程整備

安全衛生管理規程の改定、新基準に基づく作業手順の策定

2025年初頭

運用開始

段階的な電子申請への移行、従業員教育の実施


中小企業がこれらの法改正に対応するにあたっては、以下のようなステップで進めていくといいでしょう。

対応ステップ

実施項目

具体的な取り組み内容

STEP1
現状評価

・安全衛生管理体制の評価
・電子化に向けた課題の洗い出し
・必要な予算の検討

・現行体制の問題点の洗い出し
・現状の業務フローの分析
・概算見積もりの取得

STEP2
システム導入準備

・必要機器の選定
・導入計画の策定
・コスト試算と予算確保

・要件定義と製品比較
・スケジュールの作成
・投資対効果の検討

STEP3
人材育成

・担当者の選定と教育
・従業員への説明会実施
・マニュアルの整備

・責任者・実務担当者の任命
・説明会資料作成と開催
・運用手順書の作成


その他の重要な法改正と対応策

2025年には、そのほかにも複数の重要な法改正が予定されています。
ここでは、特に企業実務に影響の大きい改正について解説します。

■障害者雇用促進法関連の改正

法定雇用率の除外率などの見直し
企業はその規模に応じて、一定割合以上の障害者を従業員として雇用する義務があります(法定雇用率)。しかし、業種によっては障害者の就業が困難であると考えられることから、所定の業種については除外率が設定され、その分法定雇用率(雇用義務)が緩和されることになっていました。しかし今後はより多くの企業で障害者雇用を促進するため、この除外率の段階的引き下げなどが施行されます。

 

【主な改正内容】
・除外率の段階的引き下げ
・障害者雇用調整金の算定単位額の引き上げ・報奨金の支給額減額
 
 調整金 現行:2万9千円 → 改正後:2万3千円
 報奨金 現行:2万1千円→改正後:1万6千円

 

【企業に必要となる主な対応】
・障害者雇用計画の見直し
・職場環境の整備
・支援体制の構築
・採用計画の調整

■次世代育成支援対策推進法の改正

将来の社会を担う子どもたちが健やかに生まれ育つことができるよう、環境を整備するために定められたのが次世代育成支援対策推進法です。企業はこの法律に基づき、従業員の仕事や育児に関する「一般事業主行動計画」を策定・実行することとされています。

 

これに対して一定の基準を満たす取り組みを実施した企業は、厚生労働大臣の認定を受け、企業イメージの向上や人材採用での優位性につなげることができます。今回の法改定では、この行動計画で定める内容が一部変更されたほか、認定基準がより実態に即したかたちに見直されます。特に注目すべき変更点は以下の通りです。

 

【認定基準の見直し】

・くるみん認定

子育て支援に取り組む企業の基本的な認定制度
育児休業取得率などの基準を満たした企業に付与
認定マークは赤ちゃんをイメージした「くるみん」マーク

・トライくるみん認定
2022年に新設された認定制度
くるみん認定の初級認定版
男性の育休取得率などが通常のくるみんより低い基準となっている

 

・プラチナくるみん認定
くるみん認定を既に受けた企業向けの上位認定
より高い水準の両立支援の取り組みを行っている企業に付与
特に優良な「子育てサポート企業」として認定

これらの認定を受けることで、企業イメージの向上や人材採用での優位性につながります。

【企業に必要となる主な対応】
・行動計画の見直しと策定
・数値目標の設定
・社内体制の整備
・実施状況の把握方法の確立

■厚生年金保険法施行規則の改正

3歳未満の子を養育する被保険者の特例申請手続きの簡素化
従来、養育特例を申請する際には戸籍謄本や住民票の提出が求められていましたが、事業主が申出者と子の続柄を確認できれば添付書類を省略できるなど、手続きの簡略化が図られています。

 

高年齢雇用継続給付の給付率引き下げに伴う老齢厚生年金との併給調整見直し
高年齢雇用継続給付の最大給付率が従来の15%から10%へ引き下げられるとともに、老齢厚生年金との併給調整においても支給停止となる割合が6%から4%に変更され、再雇用後の賃金体系の再検討が求められる状況となります。

 

今回の厚生年金保険法施行規則改正は、法改正そのものの意義として、煩雑な手続きの簡素化と、定年後の高年齢雇用継続給付における給付率・併給調整の見直しが中心となっています。これにより、企業は手続き負担の軽減だけでなく、定年後の賃金制度の見直しなど包括的な対応が求められる状況です。

 

上記のチェックリストを活用し、社内で改正内容の理解を深め、必要な手続き準備、規程改定、従業員への周知を計画的に進めることが重要です。

中小企業が今から取り組むべき5つの重要事項

このように、2025年は法改正が目白押し。そのため、企業に求められる対応は多岐にわたります。そうした状況で、中小企業が限られたリソースで適切に対応するためには、以下の5つの重要事項に焦点を当てて準備を進めていきましょう。

重要事項①:法改正の影響度分析と優先順位付け

法改正への対応を成功させる鍵は、自社への影響を適切に評価し、限られた経営資源を効果的に配分することにあります。特にリソースの限られる中小企業では、すべての法改正に同時に対応することは現実的ではなく、自社への影響度に応じて優先順位を付け、順次着手していくことが不可欠です。

 

影響度の評価は、影響する従業員の範囲、必要なコスト、準備期間、システム改修の必要性などの要素を総合的に検討します。例えば、育児・介護休業法の改正は、代替要員の確保や業務分担の見直しが必要となることから、多くの中小企業にとって「影響度:高」に分類されるでしょう。そのように評価を進め、その評価に基づいて対応の優先順位を付けていきます。

【影響度評価マトリクスの例】

評価項目

高影響

中影響

低影響

影響する従業員の範囲

全従業員が対象

一部従業員が対象

限定的

必要なコスト

500万円超

100-〜500万円

100万円未満

準備期間

1年以上

6ヶ月〜1年

6ヶ月未満

システム改修の必要性

大規模改修が必要

一部改修が必要

改修不要


労働安全衛生規則の電子申請対応など、システム投資が必要となるものは、準備期間を十分に確保する必要がある点に留意します。一方、就業規則の改定などについては、比較的少ない投資で対応可能ですが、必要に応じて専門家の助言を得ながら段階的に進めることも想定し、実行スケジュールを策定しましょう。

橋本朋美
法改正への影響度分析とは、自社にとってどの法改正が特に重要で、どのくらいの準備期間やコストが必要になるのかを見極める作業のことです。特に「準備期間」については、改正日から逆算してタスクを整理する必要があります。後段にあります、就業規則・社内規程の改正を含む場合は、その決裁フローも踏まえて、スケジューリングすることがポイントです。
橋本 朋美
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント

重要事項②:就業規則・社内規程の見直し

就業規則の改定は、一連の法改正対応の中核となる重要な取り組みです。特に今回の改正では、育児・介護に関する制度や安全衛生管理に関する規定など、広範な見直しが必要となります。

 

改定作業は、現行規程の棚卸しから始め、改定が必要となる箇所の特定、改定案の作成、従業員代表との協議、そして労働基準監督署への届け出まで、計画的に進める必要があります。

そこで重要となるのは、単なる法令遵守にとどまらず、自社の実態に即した実効性のある規程とすることです。

 

例えば、育児・介護休業規程の対応では、法定の制度に加えて、自社独自の両立支援策を検討するのも有効です。ある中小企業では、法改正を機に在宅勤務制度を導入し、育児・介護中の従業員の柔軟な働き方を支援する取り組みを始めました。このように、法改正への対応を、働きやすい職場づくりの契機として活用することも視野に入れて進めることで、企業の基盤をより強固なものにすることが可能になります。

重要事項③:従業員への周知

法改正への対応を成功させるためには、担当部門が制度を整備するだけでなく、従業員の理解と協力を得ることが欠かせません。特に育児・介護休業法の改正は、従業員の権利に直接関わる重要な変更となりますので、確実に周知していく必要があります。

 

効果的に周知・教育を行うのためには、管理職向け、一般従業員向け、個別の対象者向けといったように、段階的にアプローチする方法が有効です。その実施例を以下にまとめましたので、参考にしてください。

対象者

実施内容

実施時期

重点ポイント

管理職

・法および制度の改正趣旨の説明

・制度運用上の留意点の説明

施行3ヶ月前

・制度の運用方法について理解を得る

・説明を受けた管理職が、部下から相談された際に対応が可能となるよう、理解を深めることを目指す

一般従業員(全員)

・制度の改正内容の説明

・新しい制度の利用方法の具体的な説明

施行2ヶ月前

一般従業員が制度について適切に理解し、必要な申請などの手続きを行えるようにする

一般従業員(対象者のみ)

相談会

施行1ヶ月前

個別具体的なケースに応じた利用の相談ができるような構成にする


特に中小企業では、従業員一人一人の状況を把握しやすいという特徴を活かし、きめ細やかな対応に努めることが重要です。例えば、育児中の従業員に対しては、残業免除制度や子どもの看護休暇制度の改定について重点的に説明を行うなど、対象者のニーズに応じた情報提供を心がけましょう。

重要事項④:システム対応と業務フローの見直し

2025年の法改正では、特に労働安全衛生規則の電子申請義務化への対応が、システム面での大きな課題となります。この対応は、特に中小企業にとっては負荷が高くなりがちですがしかし、この機会を「企業の安全衛生管理体制全体の向上」や「電子化による業務効率化の促進」の契機として捉とらえることで、単なる法令遵守にとどまらず、業務改善などを通じてより効果的な対応が可能となります。

 

企業としての力を高めることも可能になります。投資の負担については補助金や助成金の活用といった選択肢も検討しながら、計画的に導入を進めていくことが大切です。

 

【業務改善の具体例】
・労働災害報告のペーパーレス化
・安全衛生教育の記録管理のデータベース化
・作業手順書の電子化と共有システムの構築

 

【業務改善の具体例】
・労働災害報告のペーパーレス化
・安全衛生教育の記録管理のデータベース化
・作業手順書の電子化と共有システムの構築

 

【システム対応の手順例】
①現行の業務フローを可視化し、電子化によって改善可能な部分を特定
②必要なシステムを選定(単なる申請業務の電子化だけでなく、日常の労務管理や安全衛生管理にも活用できるシステムを選定し、投資効果の最大化を図る)

 

中小企業では、初期投資の負担が課題となりますが、補助金や助成金の活用も検討しながら、計画的な導入を進めることが重要です。

重要事項⑤:中長期的な人事戦略への反映

2025年の法改正対応は、業務効率化促進の契機となり得るばかりでなく、単なる法令遵守にとどまらず、企業の持続的な成長につながる人事戦略の見直しや人事施策実施の好機としても捉とらえることが重要でできます。

例えば、ある製造業の中小企業では、法改正を機に以下のような取り組みを計画しています。

・育児中の従業員向けに、在宅勤務とオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドワークを導入
・教育訓練休暇制度を活用した計画的なスキルアップの支援
・高齢者の豊富な経験を活かした若手育成プログラムの整備


一連の法改正のなかでも、育児・介護との両立支援の強化や、教育訓練制度の充実は、人材の確保・定着に直結する重要な内容です。中小企業では、大企業に比べて福利厚生面での競争力に課題を感じることも少なくありませんが、今回の法改正を契機に、自社の強みを活かした独自の人事戦略やそれに基づく施策の策定についても合わせて検討してみましょう。

【人事戦略分野別の施策例】

戦略テーマ

具体的な施策例

期待される効果

両立支援

フレックスタイム制とテレワークの導入・併用

優秀な人材の確保・定着

人材育成

教育訓練休暇制度の戦略的活用

従業員のスキル向上

高齢者活用

段階的な業務移行制度の導入

技能伝承の促進

 

まとめ

2025年の人事・労務に関する法改正は、中小企業にとって大きな変革の機会となり得るものです。最後に解説した5つの重要事項を中心に、以下のような段階的なアプローチで取り組むことをおすすめします。

第1段階(2024年前半)
影響度分析と優先順位付けを行い、自社にとって重要な改正項目と必要な対応を特定します。
第2段階(2024年後半)
就業規則の改定やシステム対応の準備を進めます。この際、専門家への相談も積極的に活用しましょう。
第3段階(2025年初頭)
従業員への周知を実施し、円滑な制度移行を図ります。


法改正への対応は企業にとって少なからず負担がありますが、法令遵守のための義務としてのみとらえるのではなく、企業価値を高める機会としてとらえ、働きやすい職場環境の整備と企業の持続的な成長の両立を目指して戦略的に取り組んでいくことが重要です。

橋本朋美
監修者プロフィール
橋本 朋美(はしもと ともみ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
監修者からのメッセージ
2025年の人事法改正は、中小企業にとって負担が大きいと感じられるかもしれませんが、同時に組織の労務管理や職場環境を見直す良い機会です。法改正への対応では、就業規則や社内規程の改定、システム対応、従業員への周知が重要なポイントとなります。特に育児・介護休業法改正では、制度を整えるだけでなく、実際に従業員が利用しやすい運用体制の構築が求められます。また、電子申請の義務化などデジタル化が進む中で、業務フローの効率化を図ることも必要です。社会保険労務士としては、法改正を遵守するだけでなく、自社の強みを活かした施策の展開をお勧めします。専門家の助言を活用しながら、計画的に準備を進めましょう。

 

この記事をシェアする

  • note
  • メール
  • リンクをコピー
hashimoto
監修者
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
2009年お茶の水女子大学大学院卒業後、株式会社HALZ入社。2020年より代表取締役社長就任。大手アパレル業界、IT業界、医療法人など、100名から3000名規模の様々な業界・規模の人事制度設計、業務改善コンサルティング等を担当。人事基幹システム会社への常駐を経て、人事システム導入支援、システムリプレイスコンサルティングも得意とする。HR基幹システムに精通したITに強い人事実務家集団を強みにお客様の業務効率化に貢献するサービスをご提供。