採用活動の成功は、適切な採用計画の立案から始まります。本記事では、効果的な採用計画の立て方を6つのステップで詳しく解説します。新卒採用と中途採用の違いにも触れ、実践的なテンプレートも掲載しておりますので、人材採用をお考えの人事担当者の方はぜひ参考にしてください。
採用計画とは:その目的とメリット
採用計画とその目的
採用計画とは、企業の経営戦略や事業計画に基づき、将来必要となる人材を、いつ、どのような方法で、何人採用するか、具体的に計画するものです。その目的は、企業の成長と発展に必要な人材を、適切なタイミングで確保することにあります。
採用計画は、単なる採用活動のスケジュール表ではありません。企業にとって、目指す方向性や事業計画と連動して必要な人材を確保することは、事業の運営や企業経営を支える基盤となるものであり、企業の成長・発展に不可欠です。その人材戦略の実現において重要な役割を果たすのが採用計画なのです。
採用計画を立てることのメリット
採用計画を立てることによって、以下のようなメリットが期待できます。
- 適切な人材の確保: 必要となる人材像を明確化し、それに基づいた採用活動を行うことで、企業にとって本当に必要な人材を確保する成功率を高めることができます。
- 採用コストの最適化: 採用予算や人員配置を事前に検討・計画することで、採用コストを最適化し、無駄な支出を抑えることができます。
- 効率的な採用活動の実現: 計画的に採用活動を進めることで、無駄を省きやすくなり、採用活動全体の効率化につながります。
- 採用活動の成功率向上: 計画的な採用活動は、応募者からの企業への印象を良くし、採用活動の成功率向上につながります。
反対に、採用計画なしに場当たり的な採用活動を行うと、時間や労力、費用などコストの無駄遣いが発生しやすくなります。さらに、企業と人材のミスマッチも起こりやすく、せっかく採用しても早期に退職されてしまうといった懸念も。
そうならないよう、あらかじめ採用計画を立て、採用活動を計画的に進めていくことが大切なのです。
採用計画の立て方:6つのステップ
「採用計画の立案」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、以下の6つのステップを順に実施することで、効果的な採用計画を立てることができます。
①事前準備:現状分析
②採用人材の要件定義
③採用人数の決定
④雇用形態の選択
⑤採用手法の選定
⑥採用スケジュールの策定
①事前準備:現状分析
まず、これまでの自社の採用活動や現在の人員配置について、分析を行います。ここで分析する内容が採用計画の土台となりますので、採用活動の成功率を高めるためにもきちんと行いましょう。
- 過去の採用活動:過去の採用活動における成功例や失敗例を分析し、改善点を洗い出します。
- 現在の人員配置:部門別の人員数、年齢構成、スキルレベルなどを把握します。
- 今後の人材ニーズ:経営戦略や事業計画に基づき、これから必要となる人材像や人数を把握します。
以降のステップでは、これらの分析を踏まえて具体的な採用目標を設定し、計画としてまとめていくことになります。目標設定では、「いつまでに」「どのような人材を」「何人採用するか」を明確に定めることが重要です。
②採用人材の要件定義
今回の採用計画において求める人材像を具体的に定義します。
- スキル・経験:必須となるスキルや実務経験年数などを明確化します。
- 人柄・傾向:求める人柄や傾向を、例えば「コミュニケーション能力が高い」「チームワークを重視する」といったように具体的に記述します。
これらの要件を、「MUST」(必須要件)と「WANT」(あれば望ましい要件)に分けて整理すると、採用活動における選考基準が明確になり、選考をスムーズに進めることができます。
③採用人数の決定
今回の採用計画において目標とする採用人数を、以下の内容に留意して検討・決定します。
- 業務量:発生する業務の量を把握したうえで、担当者となる人材の業務遂行能力を想定し、必要となる人数を算出します。
- 財務面:採用活動にはコストがかかり、採用が実現した場合には人件費が増加します。それらの費用が企業の財務状況に与える影響を考慮します。
- 人員計画:企業および採用部門の将来的な人員構成を想定し、長期的な視点で人員配置を検討します。
なお、採用人数は、企業の経営戦略・事業計画や予算と整合性を取る必要があります。
④雇用形態の選択
採用する人材の雇用形態を決定します。その際、以下の内容に留意して、それぞれの雇用形態のメリット・デメリットを比較・検討し、企業のニーズに合った雇用形態を選択しましょう。
- 正社員:長期的な雇用を前提とする雇用形態で、企業の中核を担う人材として育成しようと考える場合などに適しています。
- 契約社員:一定期間の雇用契約を結ぶ雇用形態で、イレギュラーな業務の担当者や特定分野のプロフェッショナル人材を一定期間雇用したい場合などに適しています。
- パート・アルバイト:フルタイムではなくパートタイムで仕事に就いてほしい人材を雇用したい場合などに適しています。

一方、人員の充足が目的、という観点に立てば、派遣社員の登用、業務委託を検討することも一つの案と言えます。
いずれの場合においても、専門的知見を有する、社会保険労務士への相談を強くお勧めします。
人事コンサルタント
⑤採用手法の選定
今回の採用計画において使用する採用手法を選択します。主な採用手法としては、以下のようなものがあります。
- 求人広告:求人サイトや雑誌などに募集情報を掲載し、広く応募者を募ります。
- 人材紹介:人材紹介会社の専門のコンサルタントを通して、自社のニーズに合った人材の紹介・推薦を受けます。
- ダイレクトリクルーティング:企業が自ら候補者を探し、直接アプローチします。
- リファラル採用:自社の社員や社内外の関係者から人材の紹介・推薦を受けます。
それぞれの採用手法の特徴を理解し、求める人材像や予算などを考慮して、最適な手法を選択しましょう。
⑥採用スケジュールの策定
一般的に、採用活動には以下のようなステップがあります。これらの各ステップおよび採用活動全体のスケジュールを策定します。
- STEP1.応募受付
- STEP2.書類選考
- STEP3.面接
- STEP4.内定通知
- STEP5.入社
スケジュール策定においては、各ステップにかかる期間を想定し、余裕を持たせたスケジュールを設定することが重要です。また、新卒採用は大学側の就活スケジュールに合わせて計画する必要があること、中途採用はより柔軟なスケジュール設定が可能となることなどにも留意しましょう。
新卒採用と中途採用の違い
新卒採用と中途採用には次のような目的・留意点があり、採用計画において考慮すべきポイントがそれぞれ異なります。
新卒採用の目的と留意点
【目的】
新卒採用は、企業の将来を担う人材を育成することを目的とします。
【留意点】
・大学側の就活スケジュールに合わせて、採用計画を立てる必要があります。
・学生に「応募したい」と思ってもらえるよう、大学訪問やインターンシップなどを通じて積極的に学生との接点を持ち、自社の魅力をアピールしましょう。
・学生の志望度合いを把握し、内定辞退を防ぐような対策も大切です。
中途採用の目的と留意点
【目的】
中途採用は、即戦力となる人材を確保することを目的とします。
【留意点】
・転職市場の動向を把握し、採用計画に反映させる必要があります。
・優秀な人材は、競合他社も狙っています。人材獲得のためには、魅力的なオファーを提示するという視点が欠かせません。
・入社時期については、採用する人材の現職の退職時期などを考慮し、調整に応じることが求められます。
採用計画のテンプレート
採用計画を立てる際、以下のようなテンプレートを用意すると必要な内容を漏れなく検討・決定しやすくなります。新卒採用の場合と中途採用の場合の記入例も合わせてご参照いただき、自社に使いやすいテンプレートを作成してみましょう。
以下のテンプレートをコピーしてExcelにそのまま貼り付けることができます。ぜひ、ご活用ください。
採用計画のテンプレート例
項目 | 内容 |
---|---|
採用区分 | 新卒採用 / 中途採用 |
採用目標(職・人数) | [ ]職:[ ]名 [ ]職:[ ]名 |
採用目標(総数) | 新卒採用の場合:[ ]年から入社 中途採用の場合:[ ]年[ ]月入社 |
求める人材像 (スキル、経験、人柄など) |
【Must】 【WANT】 |
雇用形態 | 正社員/契約社員/パート/アルバイト その他[ ] |
採用手法 | 求人広告(掲載媒体: ) |
人材紹介(人材紹介会社: ) | |
ダイレクトリクルーティング リファラル採用 その他[ ] |
|
選考フロー | 書類選考(人事担当者/採用部門担当者/採用部門責任者/役員) → 一次面接(人事担当者/採用部門担当者/採用部門責任者/役員) → 二次面接(人事担当者/採用部門担当者/採用部門責任者/役員) → 最終面接(人事担当者/採用部門担当者/採用部門責任者/役員) → 内定 |
採用スケジュール | (新卒採用の場合)会社説明会:[ ]年[ ]月 応募受付:[ ]年[ ]月~[ ]月 選考期:[ ]年[ ]月~[ ]月 内定通知:[ ]年[ ]月~[ ]月 入社:[ ]年[ ]月~[ ]月 |
新卒採用の場合の記入例
項目 | 内容 |
---|---|
採用区分 | 新卒採用 |
採用目標(職種・人数) | 営業職:5名 技術職:3名 |
採用目標(時期) | 2025年度入社 |
求める人材像 (スキル、経験、人柄など) | ・コミュニケーション能力が高い人材 ・チームワークを重視する人材 ・チャレンジ精神旺盛な人材 |
雇用形態 | 正社員 |
採用手法 | ダイレクトリクルーティング |
選考フロー | 書類選考→一次面接(人事担当者)→二次面接(採用部門責任者)→最終面接(役員)→内定 |
採用スケジュール | (新卒採用の場合)会社説明会:2024年3月~5月 応募受付:2024年4月~6月 書類選考:2024年6月 面接:2024年7月~8月 内定通知:2024年9月 入社:2025年4月 |
中途採用の場合の記入例
項目 | 内容 |
---|---|
採用区分 | 中途採用 |
採用目標(職種・人数) | Webマーケティング担当者:2名 |
採用目標(時期) | 2024年10月までの入社 |
求める人材像 (スキル、経験、人柄など) | ・Webマーケティングの実務経験3年以上 ・SEO/SEMに関する知識 ・アクセス解析ツール活用経験 |
雇用形態 | 正社員 |
採用手法 | 求人広告(Webサイト、転職エージェント) ダイレクトリクルーティング |
選考フロー | 書類選考→一次面接(人事担当者、採用部門担当者)→二次面接(採用部門責任者)→最終面接(役員)→内定 |
採用スケジュール | 応募受付:2024年4月~6月 書類選考:2024年6月~7月 面接:2024年7月~8月 内定通知:2024年8月~9月 入社:2024年10月 |
採用計画策定後に行うこと
採用計画を策定したら、その計画を社内で共有し、必要な体制を構築して実行に移します。実行後はその結果を踏まえて計画を定期的に見直し、改善していくことが重要です。
社内での共有と体制の構築
人材の採用は人事部門だけではなく、経営層や現場部門と協力して進める必要があります。ですので、策定した採用計画は社内で共有し、全社的な取り組みとして進めるべく、適切な体制を構築しましょう。
- 経営層への説明と承認:採用計画を経営層に説明し、承認を得ます。
- 現場部門との連携:採用人数や求める人材像などについて、現場部門の担当者と意見交換を行い、必要に応じて採用計画を更新します。
- 担当者間の役割分担:採用活動における各担当者の役割分担を明確化します。
- 情報共有体制の構築:採用活動の進捗状況や課題などを共有する体制を構築します。
採用活動の実施とPDCAサイクル
ここまで進めることができたら、いよいよ採用活動を実施することになります。ほかの業務と同様、採用活動もPDCAサイクルを回すことで、より効果的に進めることができます。また、採用市場の変化など、状況に応じて計画を柔軟に見直すことも大切です。
- 採用活動の実施:採用計画で定めたスケジュールや採用手法に基づいて、採用活動を進めます。
- 進捗管理:応募受付、書類選考、面接など、採用活動の各ステップについて、進捗状況を確認・管理します。
- 計画と達成状況の差異分析:採用計画と実際の達成状況に差異が生じた場合は、その原因を分析します。
- 改善策の立案・実行:分析結果を踏まえて改善策を立案し、実行します。
採用ブランディングの強化
採用活動をより効果的なものにするためには、採用ブランディングの取り組みも不可欠です。採用活動と並行して、以下のような施策にも取り組みましょう。
- 自社の特徴に関する発信:企業理念やビジョン、社風、福利厚生など、自社の特徴や魅力をWebサイトやSNSなどを活用して、求職者にアピールします。
- 求職者とのコミュニケーション:会社説明会や面接などを通して、求職者と積極的にコミュニケーションを取り、良好な関係を築く努力を。
- 社員の口コミ活用:社員による口コミは、求職者にとって非常に重要な情報源となります。社員が自社の魅力を適切に発信できるような体制や雰囲気づくりも大切です。
まとめ
本記事では、採用計画の目的や効果的な立て方、新卒採用と中途採用の違い、採用計画策定後に行うことなどについて解説しました。
採用計画の策定は、企業の成長を支える人材を確保するための重要なプロセスです。採用をより効率的・効果的なものにするために肝心なのは、計画を一度策定したらそれでよしとするのではなく、採用活動の状況や環境の変化に合わせて計画を定期的に見直し、改善を繰り返すこと。
適切な採用計画を立て、実行し、改善を繰り返すことで、企業は人材確保の成功率を高めることができます。そうなれば、企業のさらなる成長・発展につながるでしょう。

人事コンサルタント