AI(ChatGPT)活用で人事業務の未来を拓く!効率化・コスト削減から戦略的人事への実践集
更新日:2025-08-01 公開日:2025-08-01 by SEデザイン編集部
人事担当者の皆様、日々の多忙な業務に追われていませんか? 書類作成、採用プロセス管理、評価調整、労務管理など、人事部門の業務は多岐にわたり、時に煩雑で多くの時間を要します。厚生労働省の働き方改革推進の中でも、企業の管理部門における業務効率化は重要な課題として位置づけられており、特にリソースが限られがちな中小企業においては、コア業務への注力が難しく、戦略的な人事施策の実行が後回しになりがちです。
こうした中、AIが人事業務に革新をもたらす可能性に大きな注目が集まっています。AIを活用することで、反復的な管理業務を自動化し、データに基づいた客観的な意思決定を支援することで、業務効率の大幅な向上とコスト削減が期待できるのです。
本記事では、人事業務におけるAI活用の全体像から具体的な導入ステップまでを体系的に解説します。AI導入によって人事業務がどのように変化し、企業全体の生産性や従業員エンゲージメント向上にどう貢献するのか、そして導入をどのように進めるべきか。本記事を通じて、皆さんの疑問解消の一助となれば幸いです。
AI導入の背景と現状分析
人事業務の現状と課題
近年、人事部門を取り巻く環境は、少子高齢化による労働力不足、多様化する働き方への対応(リモートワーク、副業・兼業など)、働き方改革の推進、従業員のエンゲージメント向上やリスキリングの必要性などにより、ますます複雑化しています。人事担当者が対応すべき課題は質・量ともに増加しています。
特に中小企業では、限られた人員で多様な業務をこなす必要があり、以下のような課題が経営にも直接的な影響を与えかねません。
- 膨大な書類作成・管理に伴う時間的負担: 契約書、申請書、労務関連書類など、ペーパーワークやデータ入力に多くの時間が割かれ、コア業務への集中を妨げます。
- 長期化・非効率化しがちな採用活動: 候補者探しから選考、内定、入社手続きまで、採用プロセス全体のリードタイムが長引くと、優秀な人材を競合に奪われるリスクが高まります。
- 公平かつ効果的な評価システムの構築・運用: 評価基準の曖昧さや評価者の主観によるばらつきは、従業員の不満やモチベーション低下につながります。納得感のある評価制度の運用は、エンゲージメントと生産性に直結します。
- 従業員の能力開発・キャリア支援: 個々の従業員に合った育成プランの提供が難しく、スキルギャップの発生や将来の幹部候補育成の遅れを招く可能性があります。
- 複雑化する労務管理と法令遵守: 頻繁な法改正への対応や、多様な雇用形態における勤怠・給与計算の複雑化は、コンプライアンスリスクを高め、企業の信頼を損なう恐れがあります。
例えば、ある中小製造業では、毎月の勤怠データ集計と給与計算に担当者が数日を費やしており、その間、採用戦略や従業員面談といったより重要な業務が滞っていました。
勤怠データ集計と
給与計算に数日
採用戦略や
従業員面談が滞る
AI活用による
業務効率化
このような状況下で、AI技術を活用した業務効率化と、データに基づいた戦略的意思決定支援への期待が高まっているのです。
AI技術の進化と人事への影響
AI技術、とりわけ自然言語処理(NLP)や機械学習(ML)の急速な発展は、人事業務における応用の可能性を大きく広げました。初期のAIは定型業務の自動化が中心でしたが、現在では、より高度な分析、予測、個別最適化が可能になっています。具体的な事例は多岐にわたります。
採用
AIによる履歴書スクリーニングは、応募書類の中から自社の要件に合致する候補者を短時間で特定し、採用担当者の作業時間を大幅に削減します。AIチャットボットが一次面接や候補者からの問い合わせに対応するケースも増えています。
例をあげると、厚生労働省は2024年9月、ハローワークの求人・求職マッチングサービスにChatGPTを手掛けるOpenAI Japan合同会社をアドバイザーに起用し、生成AI導入を発表しました。企業と求職者のマッチングの精度や効率を高め、人手不足解消にもつなげることを目的としています。
参照元:「ハローワークにおけるAIの活用について検討するための省内プロジェクトチームを設置します」
人材育成
AIが従業員のスキルやキャリア志向を分析し、個々に最適化された学習コンテンツや研修プログラムを推奨するLMS/LXP(学習管理システム/学習体験プラットフォーム)が登場しています。
日本リスキリングコンソーシアムは、AI人材育成における現状課題と、その解決策となる具体的かつ再現性のあるAI人材育成方法論を提示した「AI人材育成白書」を発行しました。同白書では、全国のコンソーシアム会員約6,000名を対象にAI学習に関する調査を実施し、AIを活用した個別最適化学習の重要性を提言しています。 (参照:日本リスキリングコンソーシアム 2024年発表)
参照元:日本リスキリングコンソーシアム、 生成AI時代の人材育成モデル「AI人材育成サイクル」を発表 AI学習実態を基に提言をまとめた「AI人材育成白書」を発行
評価・配置
AIが従業員のパフォーマンスデータやスキル、エンゲージメント指標などを分析し、より客観的で公平な評価を支援したり、最適なチーム編成や後継者計画(サクセッションプランニング)の策定に貢献したりします。
防衛省は幹部自衛官約4万人を対象にAIを活用した人事評価システムを導入予定です。民間では、松屋フーズホールディングスが店長昇格試験に対話型AI面接サービス「SHaiN」を導入し、同じ基準で評価を可視化でき、人事部の負担軽減にも繋がったと報告されています。
参照元:採用活動だけではない。昇格試験の課題も解決したSHaiNの価値
エンゲージメント
従業員サーベイのテキスト回答をAIが分析し、組織全体の課題や特定の部署・属性における懸念点を早期に可視化するソリューションも活用されています。
SmartHRは2023年7月、「従業員サーベイ」機能においてAI(大規模言語モデル)を利用した自由記述回答要約機能をテスト版で提供開始しました。収集した自由記述回答をAIが分析し、部署ごとに回答の要約が可能となり、数百~数千名規模の調査でも効率的な分析が可能になりました。
参照元:クラウド人事労務ソフト「SmartHR」が、「従業員サーベイ」機能においてAIを利用した自由記述回答要約機能のテスト版を公開
これらの活用例は、AI技術が単なる業務効率化に留まらず、データに基づいたより客観的で、個別最適化された、戦略的な人材マネジメントを実現するための強力なツールとなり得ることを示唆しています。
中小企業が直面する人事課題とAIによる解決策
中小企業特有の人事課題としては、専門知識を持つ人事担当者の不足、採用におけるブランド力や待遇面での不利、大企業ほどの体系的な研修制度の構築・運用の難しさ、そして限られた予算内での効果的なシステム導入などが挙げられます。
これらの課題に対し、AIは有効な解決策を提供します。
- 定型業務の自動化による工数削減: AI-OCRによる書類のデジタル化、RPAと連携したデータ入力自動化などで、担当者はより戦略的な業務に時間を割けます。
- AIマッチングによる効率的な人材発掘: 膨大な求職者データベースから自社の要件やカルチャーに合う人材を効率的に探し出し、採用競争力を高めます。
- 個別化された研修プログラムの提案: AI搭載の学習プラットフォームを活用すれば、コストを抑えつつ、従業員一人ひとりのニーズに合わせたスキルアップ支援が可能になります。
- コスト効率の高いクラウドベースのAI人事ソリューション: 初期投資が少なく、月額利用料で始められるSaaS型のツールが多く、中小企業でも導入しやすくなっています。必要な機能だけを選んで利用できるサービスもあります。

株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
AI活用による人事業務の具体的手法と導入ステップ
AIツールの選定ポイント
人事業務に適したAIツールを選定する際には、単に機能の多さだけでなく、自社の課題解決に直結するか、費用対効果が見込めるかを慎重に評価する必要があります。
- 機能の網羅性と専門性: 自社の課題(例:採用、評価、労務)に特化した機能が充実しているか。将来的な拡張性も考慮に入れる。
- 操作性(UI/UX): ITに詳しくない担当者でも直感的に操作できるか。 マニュアルやサポートなしでもある程度使えるシンプルさが重要。
- カスタマイズ性と連携: 自社の評価制度や業務フローに合わせて設定変更が可能か。既存の人事システム(給与計算ソフトなど)との連携は可能か。
- セキュリティとコンプライアンス: 個人情報保護法(GDPRなども考慮)や各種労働法規に準拠しているか。データの暗号化、アクセス権限管理などの対策は十分か。
- コスト(TCO): 初期費用、月額利用料に加え、導入支援やカスタマイズ、保守にかかる費用も含めた総所有コスト(TCO)で比較検討する。
- サポート体制と導入実績: 日本語でのサポートが受けられるか。 同業種や同規模の企業での導入実績はあるか。
市場には様々なAI搭載HRツールが存在します。 例えば、採用管理システム(ATS)にはAIによる候補者マッチングや動画面接分析機能、タレントマネジメントシステムにはAIによるスキル分析やキャリアパス提案、エンゲージメントサーベイツールにはAIによるテキスト分析機能などが搭載されています。自社の優先課題に合わせて、適切なカテゴリのツールを選定しましょう。
ツールカテゴリ例 |
AI活用機能例 |
選定時のポイント例 |
AI搭載ATS |
候補者レコメンド、書類自動評価、チャットボット |
連携可能な求人媒体、既存システムとの連携、マッチング精度 |
AIタレントマネジメント |
スキル分析、最適配置提案、後継者計画支援 |
分析の粒度、評価制度との連携、従業員へのフィードバック機能 |
AIエンゲージメント分析 |
サーベイ自由記述分析、離職リスク予測 |
分析レポートの分かりやすさ、匿名性の担保、アクション提案機能 |
AI労務管理支援 |
勤怠データ異常検知、法改正アラート、書類作成補助 |
対応可能な勤怠管理システム、給与計算ソフトとの連携 |
特に中小企業においては、初期投資を抑えられ、導入が比較的容易で、事業規模の変化にも対応しやすいAI機能が搭載されたSaaS型のソリューションが有力な選択肢となるでしょう。無料トライアルやデモを積極的に活用し、実際の画面や機能を試すことが重要です。
導入プロセスのステップバイステップガイド
AI導入を成功させるためには、技術的な側面だけでなく、組織的な変革(チェンジマネジメント)も視野に入れた計画的な推進が不可欠です。
目標設定
ROI試算
体制構築
巻き込み
評価・調整
継続的改善
Step 1: 現状分析と目標設定(As-Is / To-Be)
まず、現在の業務フロー(As-Is)を詳細に分析し、ボトルネックとなっている箇所や、AIで解決したい課題を特定します。その上で、**「採用コストを〇%削減」「従業員エンゲージメントスコアを〇ポイント向上」といった、具体的で測定可能な目標(To-Be)**を設定します。
たとえば従業員 2,500 名の製造業 A 社を想定します。まず As-Is 分析として、過去 12 か月分の採用プロセスをログから抜き出すと――
-
応募〜内定までの平均リードタイムが 62 日、うち面接官の稼働は 9.5 時間/人材
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採用コスト(求人媒体・エージェント手数料・工数換算)は 1 名あたり 63 万円
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内定辞退率 18 %、早期離職(1年以内)率 14 %
-
従業員エンゲージメント調査の eNPS※ が +4
ここで面接官稼働とコストが突出しており、辞退率・離職率の高さが後段のエンゲージメント低迷にも連鎖していることがボトルネックだと分かります。
※従業員が自社の職場を友人や家族に勧めたいと思う度合いを数値化したもの
続いてTo-Beを設定します。
To-Be 目標の具体値
指標 | As-Is | To-Be(12 か月後) | 算定根拠 |
---|---|---|---|
採用コスト/名 | 63 万円 | 45 万円(▲28 %) | 自動スクリーニングで面接官稼働▲7.5 h × ¥4,000/h + 媒体費最適化 |
平均リードタイム | 62 日 | 35 日(▲44 %) | 面接工程短縮+チャットボットで日程調整即時化 |
内定辞退率 | 18 % | 10 %(▲8 pt) | 候補者コミュニケーション即応性向上 |
eNPS | +4 | +15(+11 pt) | FAQ 待ち時間減とパーソナライズド学習環境 |
早期離職率 | 14 % | 10 %(▲4 pt) | Attrition モデルによるフォロー施策 |
こうして 「採用コストを 28 % 削減」「eNPSを 11 ポイント向上」 など、データに裏づけられた数値目標を掲げると、経営層への説得力が増し、後続ステップ(ツール選定・ROI 試算・PoC 計画)が一本のストーリーで接続できます。
Step 2: 適切なAIツールの選定とROI試算
前述の選定ポイントに基づき、複数のツールを比較検討します。機能要件だけでなく、費用対効果(ROI)を試算し、経営層への説明責任を果たせるように準備します。
Step2 では、①候補リストを作成し、②小さく試し、③ROI を計算する──この三段階で進めます。まず採用や社員対応で時間や費用がかさんでいる業務を洗い出し、連携のしやすさ・操作性・セキュリティを基準に AI ツールを 3〜5 社選びます。次に 6〜8 週間のトライアルで実際に回し、導入前後の工数や問い合わせ件数を比べて「どれだけ楽になったか」を数字で確認します。最後に削減できた費用(=浮いた工数 × 社内平均時給)をツール費用で割り、ROI を算出して経営層へ提示すると、投資判断がしやすくなります。代表的な例を下表にまとめました。
用途 | ツール例 | 年間効果(概算) | ROI 例* |
---|---|---|---|
書類選考自動化 | HireVue | 工数 ▲9,000 h | 約5倍 |
FAQ チャット | MeBeBot | 問い合わせ ▲60 % | 約3倍 |
離職リスク予測 | IBM watsonx | 採用費 ▲500 万円 | 約4倍 |
Step 3: 導入計画と体制構築
段階的な導入(スモールスタート)のスケジュールを作成し、必要な予算、人員を確保します。導入プロジェクトの責任者と担当者を明確にし、関係部署(情報システム部、法務部など)との連携体制を構築します。
フェーズ | 期間 | 主要タスク | 責任者 | 関係部署 | 想定予算 | 必要人員 |
---|---|---|---|---|---|---|
PoC(概念実証) | 例:6〜8 週間 | ・現状フロー計測 ・PoC 実施範囲決定 |
人事責任者 | IT 部、情報システム部 | ¥〇〇万 | PM×1、HR×1、IT×1 |
Pilot(部門展開) | 例:3 か月 | ・KPI 監視 ・教育コンテンツ作成 |
プロダクトオーナー | 法務部、労務部 | ¥〇〇万 | PO×1、HRBP×2、IT×1 |
全社展開 | 例:6 か月 | ・ユーザーサポート ・システム安定化 |
導入プロジェクト責任者 | 全事業部門 | ¥〇〇万 | HR×3、IT×2、CS×1 |
運用・改善 | 継続 | ・KPI レビュー ・モデル再学習 |
HR テック担当 | データガバナンス室 | 年間 ¥〇〇万 | データサイエンティスト×1 HRBP×1 |
Step 4: 従業員への説明・教育と巻き込み
「なぜ導入するのか」「導入によって何が変わるのか(メリット)」「従業員への影響は何か」を丁寧に説明し、不安を取り除きます。ツールの使い方だけでなく、AIの基本的な仕組みやデータプライバシーに関する研修も実施し、従業員を導入プロセスに巻き込むことで、受容性を高めます。
Step 5: テスト運用(PoC/Pilot)と評価・調整
特定の部署や業務範囲で概念実証(PoC)やパイロット運用を行い、技術的な問題点や業務フロー上の課題を洗い出します。事前に設定した評価指標に基づき効果を測定し、フィードバックを収集してシステムの調整や運用ルールの見直しを行います。
Step 6: 本格運用と継続的改善(CI)
テスト運用の結果を踏まえ、全社展開または対象範囲を拡大します。導入後も、定期的に効果測定(KPIモニタリング)とフィードバック収集を行い、継続的な改善(Continuous Improvement)のサイクルを回します。AIモデルの精度維持のための再学習や、新たなニーズに対応するための機能アップデートも計画的に行います。
導入後の運用と効果測定
AIシステム導入の効果を最大化し、投資対効果を証明し、継続的に改善していくためには、以下の点が重要になります。
KPI の設定と効果測定の徹底
導入前に「いつ」「誰が」「何を」測るかを決めておくと、後の議論がブレません。採用コストや工数削減時間などの“効率系”、残業代や求人媒体費の“コスト系”、定着率や eNPS(従業員ネット・プロモーター・スコア)の“質系”を最低1項目ずつ選び、月次と四半期の2段階で追跡します。計測値は BI ダッシュボードで部門ごとに自動更新し、「進捗が目標を外れたら赤色でアラートが出る」仕組みにしておくと、担当者が数字を見逃さずにすみます。
以下はイメージです。スプレッドシートなどで管理することを推奨します。
KPI カテゴリ | 指標名 | 現状値 (Baseline) |
目標値 (Target) |
測定頻度 | データソース | アラート閾値 |
---|---|---|---|---|---|---|
効率系 | 書類選考所要時間 | 62 日 | 35 日 | 月次 | ATS ログ | 40 日超で赤表示 |
効率系 | 面接官工数/人材 | 9.5 h | 2.0 h | 四半期 | 面接スケジューラ | 5 h超で赤表示 |
コスト系 | 採用コスト/名 | 63 万円 | 45 万円 | 四半期 | 会計システム | 50 万円超で赤表示 |
コスト系 | 残業代(月次) | 180 万円 | 144 万円 | 月次 | 給与システム | 160 万円超で赤表示 |
質系 | eNPS | +4 | +15 | 四半期 | エンゲージメント調査 | ±0 付近で黄表示 |
質系 | 早期離職率(1年以内) | 14 % | 10 % | 四半期 | HRIS | 12 %超で赤表示 |
データ分析とインサイト抽出
ダッシュボードが示す数字は“症状”にすぎません。たとえば「面接リードタイムが伸びた」と判明したら、曜日別・面接官別・工程別にドリルダウンし、「水曜午後に面接官が不足している」などの原因を特定します。こうして分かった課題を「面接官シフトの再配置」など具体策へ落とし込み、次回のレビュー会議で実施可否と担当を即決すると、改善サイクルが回ります。
従業員からのフィードバック活用
AI ツールは利用者の声で磨かれます。月1回の短いパルスサーベイに「AI の判断は納得できたか」「操作で戸惑った点は?」といった設問を入れ、自由記述欄を必ず設けてください。寄せられた意見はタグ付けして優先度を付け、次期リリースで反映すると「声が届いている」という実感が生まれ、利用率が上がります。
継続的な学習とスキルアップ
AI は半年単位で機能が進化します。リリースノートを日本語で要約し、Notionなどを活用し、社内 Wiki に「3分で読める新機能紹介」を載せると、現場が自発的にキャッチアップできます。加えて、四半期ごとにハンズオン勉強会を開き、“実データを使って新しい分析を試す”場を用意すると、担当者のスキルが自然に底上げされます。
ChatGPTを活用した人事業務改善のTips
ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、文章生成、要約、翻訳、アイデア出しなど、多様な能力を活かして人事業務の様々な場面で効率化と質の向上に貢献します。プロンプト(指示文)を工夫することで、より精度の高いアウトプットが期待できます。
求人票・スカウトメール作成支援
ターゲットとする候補者像(ペルソナ)や、訴求したい企業文化を具体的に指示することで、より響く文章案を作成できます。例:「当社の『挑戦を歓迎する文化』を強調し、[ターゲット層]に響くような[職種]の求人票のキャッチコピーと職務内容を作成してください。」 生成された文章は、自社の言葉で修正し、誇張表現や誤解を招く表現がないか確認します。
以下のようなプロンプトを入力・チューニングし、実際にChatGPTに入れてみましょう。
面接質問・評価基準作成支援
コンピテンシー(行動特性)に基づいた質問例や、評価基準の具体的な記述案を作成させることができます。例:「『チームワーク』のコンピテンシーを評価するための行動面接(STARメソッド)の質問例を5つ、レベル別の評価基準(期待以上、期待通り、期待未満)とともに提案してください。」 生成された内容は、自社の評価制度や法的要件に照らして吟味し、面接官トレーニングにも活用できます。
研修資料・eラーニングコンテンツ作成支援
研修テーマに関する概要、アジェンダ、各セクションの解説文、確認クイズなどを効率的に作成できます。例:「新人向け『ビジネスマナー研修』の1時間プログラムのアジェンダと、各項目の簡単な解説、理解度チェックの小テスト5問を作成してください。」 生成されたコンテンツは、専門家による監修や、図解・事例の追加によって質を高めることが重要です。
パフォーマンスレビュー・フィードバック作成支援
従業員の具体的な行動や成果に基づき、建設的で成長を促すフィードバックコメントの草案を作成できます。例:「[従業員名]の[具体的な成果]を称賛しつつ、[改善が期待される行動]について、具体的なアドバイスを含むフィードバックコメント案を作成してください。」 生成された文章は、個々の状況や人間関係性を考慮し、必ず上司自身の言葉で、対話を通じて伝えることが前提です。
社内規定・FAQ作成支援
就業規則や福利厚生に関する規定の分かりやすい説明文案や、従業員からよくある質問とその回答(FAQ)の草案を作成できます。例:「当社のリモートワーク規定について、従業員が理解しやすいように、重要なポイントを箇条書きで要約し、想定される質問と回答を3つ作成してください。」 法的な正確性は専門家(社労士など)に確認し、常に最新の情報に更新する必要があります。
ChatGPT(LLM)を活用する際の注意点
LLMは非常に強力ですが、その利用には十分な注意と理解が必要です。
- 機密情報・個人情報の厳格な管理: 絶対に機密情報や個人を特定できる情報をプロンプトに入力しないでください。入力したデータがモデルの学習に使われるリスクがあります(利用するサービスのプライバシーポリシーを確認)。
- ファクトチェックと専門家の監修: LLMは時に誤った情報や不正確な情報を生成します(ハルシネーション)。 生成された内容は必ず人間が事実確認を行い、特に法的・専門的な内容については専門家(弁護士、社労士など)のレビューを受けてください。
- バイアスへの認識と対応: LLMは学習データに含まれるバイアスを反映する可能性があります。生成された文章に性別、年齢、国籍などに関する偏見が含まれていないか注意深く確認し、意図的に修正する必要があります。
- 著作権・オリジナリティへの配慮: 生成された文章が既存の著作物と酷似していないか注意が必要です。社外公開する文書などは、オリジナリティを持たせるための加筆修正が推奨されます。
- 「思考の補助輪」としての活用: LLMはあくまでアイデア出し、草稿作成、要約などの補助ツールです。最終的な判断、責任、そして人間的な配慮や創造性は、人事担当者自身が担うべき役割です。
入力したデータがモデルの学習に使われるリスクをおさえるには学習させないようにしましょう。
ChatGPTを例にすると以下のように学習を回避できます。
ChatGPTなどのLLMを、これらの注意点を理解した上で賢く活用することで、人事担当者はより創造的で戦略的な業務に集中できるようになります。
まとめ
人事業務におけるAI活用は、単なる効率化やコスト削減に留まらず、データに基づいた客観的な意思決定を可能にし、より戦略的な人材マネジメントを実現するための不可欠な要素となりつつあります。本記事でご紹介した具体的な活用法、導入ステップ、運用上の留意点を参考に、ぜひ自社の状況と目的に合わせたAI導入をご検討ください。
ただし、AIは魔法の杖ではありません。その能力と限界を正しく理解し、倫理的な配慮を怠らず、あくまで人間の判断を支援するツールとして活用することが肝要です。人事業務の本質は、人と組織の持続的な成長を支援し、従業員一人ひとりが活躍できる環境を創り出すことにあります。AIという強力なテクノロジーを駆使しつつも、人間中心の視点、共感力、そして対話を大切にする姿勢が、これからの人事部門には一層求められます。
AI導入を成功に導き、その効果を最大化するためには、特に以下の点が重要になります:
- 明確な戦略と目標設定: AIで何を達成したいのか、経営戦略と連動した具体的な目標を設定する。
- スモールスタートとアジャイルな改善: 小さく始めて効果を検証し、フィードバックを反映しながら柔軟に改善・拡張していく。
- 従業員のエンパワーメントとチェンジマネジメント: AI導入を「自分たちの仕事を変革する機会」と捉えられるよう、丁寧な説明、教育、そして導入プロセスへの参加を促す。
- データ活用の文化醸成とガバナンス: データに基づいた意思決定を奨励するとともに、データの品質、セキュリティ、プライバシー保護に関するルールを徹底する。
- 倫理的配慮と継続的な学習: AIの公平性や透明性に常に注意を払い、最新技術や法規制に関する学習を継続する。
AI技術は、私たちの働き方や組織のあり方を根本から変える可能性を秘めています。

株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント