オウンドメディアは自社が所有するメディアを意味しており、具体的にはホームページやブログ、SNSアカウントなどを指します。自社が独自に発信するコンテンツを増やしていくことはファンを増やすことにつながり、SEO対策としても有効な手段です。継続的に取り組めば、他社にはない強みや実績をアピールすることができます。オウンドメディアの特徴やメリット、注目企業の事例などを解説します。
オウンドメディアとは?注目される理由
オウンドメディアはさまざまな業種で多くの企業が取り組んでいます。本来の目的を踏まえたうえで、なぜ注目されるのかを解説します。
オウンドメディアの定義
オウンドメディア(Owned Media)は、自社が所有するメディアのことを指します。企業自らが発信するコンテンツはすべて当てはまり、ホームページやブログ、SNSアカウントなどが挙げられます。
日本では企業が運営するWebマガジンのことを指す場合もありますが、自社が発信するメディアをオウンドメディアと捉えて問題ありません。オンライン、オフラインを問わずさまざまな形で情報発信を行うのが特徴です。
オウンドメディアの目的
多くの企業がオウンドメディアの構築と運営に取り組むのは、自社にとってのファンを獲得したいという目的があるからです。自社の製品やサービスを広く認知してもらい、顧客との接点を得る機会を積極的に作る狙いがあります。
顧客の目線で役立つ情報を提供し続けることで、製品・サービスの購入やブランディングにつながります。すぐに成果が現れるものではなく、中長期的な取り組みになるため、戦略を立てて継続していくことが重要です。
注目されている理由
オウンドメディアが注目されるようになったのは、消費者行動の変化が関係しているといえます。以前よりも広告効果が感じられなくなり、製品やサービスの購入にあたり、ほかの消費者のリアルな声を重視する傾向が見られます。
そのため、企業がFacebookやTwitterといったSNSの運用に取り組み始め、消費者と接触する機会を増やしていったといえます。さらに、自社のホームページやブログ、動画などを通じて消費者に役立つ情報を提供していく流れができました。
現在、企業自らがコンテンツを制作し、継続して取り組んでいくことで中長期的な視点でファンを獲得していく動きが出てきています。自社独自のオウンドメディアは、SEO対策や競合他社との差別化を図る手段として活用されているのです。
オウンドメディアの位置づけ
オウンドメディアはメディアの一種ですが、その特徴をおさえておく必要があります。ほかのマーケティング手法との違いも含めて解説します。
オウンドメディアはトリプルメディアの一つ
オウンドメディアは、「トリプルメディア」の一つです。トリプルメディアとは、企業が見込み顧客に対してメッセージを発信するときの以下3つの分類を指します。
- オウンドメディア(Owned Media):
自社で構築し、見込み顧客に向けた情報提供をメインに行うための媒体 - ペイドメディア(Paid Media):
他社が運用する媒体に費用を払って広告出稿するためのメディア - アーンドメディア(Earned Media):
SNSやブログなど、企業ではなく一般ユーザーが中心に情報発信を行うメディア
従来は広告を中心としたペイドメディアが主流でしたが、近年ではオウンドメディアやアーンドメディアを組み合わせて展開していくことが重視されています。
各メディアにはそれぞれ強みと課題があり、相互補完的に組み合わせることでメディアとしての効果を高めていくことが大事です。
トリプルメディアについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
≫トリプルメディアとは?各メディアの特徴や運用のポイントを紹介
ほかのマーケティング手法との関係性
オウンドメディアについて理解するうえで、「コンテンツマーケティング」と「インバウンドマーケティング」についてもおさえておきましょう。コンテンツマーケティングは見込み顧客に対して価値のある情報を提供し、製品やサービスの購入につなげたり、リピーターになってもらったりすることを目的としています。
オウンドメディアはWebマーケティング施策の一環として取り組むことが多いですが、コンテンツマーケティングではコンテンツそのものに軸足を置いています。
インバウンドマーケティングは、プル型のマーケティング展開に軸足を置いているのが特徴です。自社でブログを運営し、自然流入やSNSでの拡散を狙う手法であり、オウンドメディアで行う施策と重なる部分も多いといえます。
企業がオウンドメディアに取り組む3つのメリット
企業はオウンドメディアの構築に取り組むことで、多くのメリットを得られます。ここでは、おもに3つのメリットを紹介します。
広告宣伝費の削減につながる
オウンドメディアでは制作したコンテンツは蓄積されていくので、ストック効果が見込めます。ある程度コンテンツを作った段階で更新を止めたとしても、中長期にわたってアクセスが維持されるため、コストをほとんどかけずに集客できます。
一方広告媒体は、出稿した時点では一定のアクセスがあったとしても、広告を止めた途端にアクセスが止まってしまうことも珍しくありません。オウンドメディアと広告の特性をうまく組み合わせることで、結果的に広告宣伝費の削減につなげていけるでしょう。
自社のブランドイメージを高められる
オウンドメディアは自社で情報発信を行うため、継続して取り組んでいくことでブランドイメージを高められます。専門性の高いコンテンツを配信していけば、顧客から特定分野における専門家として認知されやすくなるでしょう。
「顧客が自社に対して何を求めているのか」といった顧客インサイトが深く理解できるようになり、新しい製品やサービスの開発にも役立つはずです。競合他社との差別化を図る一つの手段となり得ます。
顧客とのつながりがより強固になる
オウンドメディアを構築することで、顧客とのつながりがより緊密なものとなります。既存顧客だけでなく、新規顧客との関係を構築する手法として活用でき、新たなニーズを見つけるきっかけにもなるでしょう。
Webを通じて情報発信を行うことで、幅広い地域を対象として顧客とのつながりを持てます。顧客が特定の製品やサービス、ブランドに対して抱く信頼や愛着のことを「顧客ロイヤリティ」と言いますが、オウンドメディアはまさに顧客ロイヤリティを高める手法として役立つのです。
【BtoB】オウンドメディアの活用事例
オウンドメディアの企画を検討する際、最も有効なのは実際の人気メディアを参考にすることです。まずは、BtoB向けサービスを展開している企業のオウンドメディアが、どのように活用されているか見ていきましょう。
LISKUL(SO Technologies株式会社)
SO Technologies株式会社が運営する「LISKUL」では、中小企業向けにWebマーケティングに関する知識やノウハウを積極的に公開しています。「リスティング広告」などのWebマーケティングに関連するキーワードを獲得しつつ、ユーザーにとって有益なコンテンツを配信し続けることでSEOの評価を高めています。
LISKULは月間平均で約80万PV(2021年3月時点)を集め、問い合わせ件数は月200件にまで増加させる流れを作りました。自社のノウハウを公開するという一見不利に見える方法でCVの獲得につなげています。
merucan(株式会社メルカリ)
株式会社メルカリが運営する「merucan」(メルカン)では、自社の採用活動につなげるためにメルカリ社内の情報を継続して発信しています。転職希望者とのミスマッチを減らすことを目的としており、現在働いている社員の活動を伝えているのが特徴です。
メルカリに転職をした社員の生の声を届けることによって、転職希望者に具体的なイメージを伝えていく取り組みを続けています。月間平均で3万PVを獲得しており、人事系のブログとして多くの人たちに閲覧されているのです。
サイボウズ式(サイボウズ株式会社)
サイボウズ株式会社は、組織運営や生産性向上のためのノウハウやヒントを提供するオウンドメディア「サイボウズ式」を運営しています。確かな成果を収めてきたサイボウズがどのようなマネジメントを自社で採用しているのか、どんな働き方改革を進めてきたのかという知見を、社員の声などから知ることができる、有用性の高いメディアです。
サイボウズという会社が持つ優位性の紹介や有識者のインタビューを通じて、「kintone」をはじめとする自社サービスへの認知拡大や、問い合わせ向上を狙うという仕組みが見て取れます。
【BtoC】オウンドメディアの活用事例
続いて、BtoC企業のオウンドメディア活用事例を紹介します。消費者向けのメディア運営とはどのようなものがベターなのか、ということがよくわかるはずです。
THE BAKE MAGAZINE(株式会社BAKE)
株式会社BAKEでは、オウンドメディアである「THE BAKE MAGAZINE」を発行しています。商品であるお菓子から一歩踏み出して、BAKEという企業そのものに興味を持ってもらえるようにブランディングに力を入れているといえます。
競合他社の商品を紹介したり、SEOへの取り組みやアクセス状況も公開したりするなど、BAKEのファンを増やしていくことに力を入れているのが特徴です。THE BAKE MAGAZINEは月間約3万PVの閲覧があり、多くのファンの獲得に結び付いています。
北欧、暮らしの道具店(株式会社クラシコム)
株式会社クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」は、北欧家具や雑貨を多数取り扱う、ECショップ兼オウンドメディアです。サイト内では担当スタッフによる充実のミニコラムが掲載されており、商品一つ一つの丁寧な解説やアピールポイントの紹介が行われ、思わず欲しくなってしまう質の高いコンテンツが魅力といえます。
スタッフによるレビューや着用イメージの紹介が親近感を抱かせ、多くのファンを獲得しているメディアです。
Shall We Lotte(株式会社ロッテホールディングス)
お菓子メーカーの株式会社ロッテホールディングスが手掛ける「Shall We Lotte」は、読むと少しばかりの幸福感が得られるというコンセプトに基づいて運営されているオウンドメディアです。
まるでお菓子を一つ口に入れたような、ささやかな幸福感をコンテンツで届けることをイメージして運営され、ロッテ商品へのポジティブなブランド認知向上に貢献しています。
オウンドメディアの作り方
オウンドメディア作りや運営は、一般的に下記の手順で進めていきます。
- オウンドメディアの目的を決める
- 読み手となるターゲットを決める
- ターゲットの動きを予測する
- Webサイトを構築する
- コンテンツを制作する
- 一般公開し、効果測定と改善を繰り返す
まず、どんなオウンドメディアを作るのか、どんな目標を達成したいのかを具体的に固め、メディアの方向性を定めましょう。それからどんな読者をターゲットとするのかを決めて、コンテンツ制作やWebデザインの際の軸としていきます。
Webサイト制作を進めながら、実際に公開するコンテンツを制作します。コンテンツ制作は社内で担当を決めて制作に取り組んだり、外部ライターやエディターに委託したりするケースが一般的です。
メディア公開後も継続的にコンテンツを発信しましょう。また、月間のビュー数や読まれているコンテンツの分析など、効果測定を行います。課題点を適宜洗い出し、改善策を踏まえた施策を投下していきましょう。
オウンドメディア運用の注意点
オウンドメディアは魅力的な自社媒体となってくれますが、運営に当たっては以下の3つのポイントをおさえておく必要があるでしょう。
中長期的な運用を心がける
まず、オウンドメディアは短期間で成果を上げるための施策ではなく、半年間、あるいは数年にわたって運営を続けることで効果が現れてくるものです。短期間で成果が出なくても、気長に続けていくことを心がけましょう。
KGI・KPIを設定し効果測定と改善を怠らない
気長な運営がコツとはいえ、漠然と運営していたのでは成果につながりません。まず達成したいKGIやKPIといった数値目標と期間を設定し、達成に向けて運営を進めていくとよいでしょう。
段階的に目標を立てておくことで、運営のモチベーション維持や効果的な改善策の投下につながります。
自社の強みをアピールできる質の高いコンテンツを用意する
オウンドメディア運営において最も重要なのは、質の高いコンテンツです。自社がどんな強みを提供できるのか、どんな情報を伝えられるのかによって、オウンドメディアの集客力は大きく左右されます。
そのため、オウンドメディア運営を検討している場合は、自社の強みがどんなところにあるのか、どんなところを評価してもらうのが適切なのかよく考えておきましょう。また、質の高いコンテンツを制作できる人材や、委託先を確保しておくことも大切です。
まとめ:自社のオウンドメディアを立ち上げてみよう!
オウンドメディアは自社で所有して、情報発信を行っていくメディアです。ホームページやブログ、SNSなどを通じて顧客との接点を増やし、ファン化することを狙いとしています。
一定の成果を得るまでには継続的な取り組みが必要となるので、社内の運用体制をしっかりと整えておきましょう。顧客目線に立った情報発信を行うことで競合他社との差別化を図り、集客やブランディングにつなげてみてください。
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