ABテストとは、Webマーケティングにおいて2つの対象を比較・検証するテストのことです。マーケティング施策の最適化やコンバージョン率向上をおもな目的とします。
今回はABテストとは何か、やり方や注意点、メリットなどを詳しく解説していきます。
2パターンの比較で効果測定をするABテストとは
ABテストは、AパターンとBパターンのどちらが優れているかを検証するものです。
たとえば、Webサイトやバナーなどに現在表示されている情報をAパターン、情報に変更を加えたものをBパターンとし、各成果を比較することでより効果的なパターンを見つけ出します。ちなみに、ABテストはWebサイトだけでなく、チラシやキャッチコピーなどでも実施されます。
よく使われるABテストの3パターン
ABテストにはおもに以下の3パターンがあります。
1.同一URL内のABテスト
最も基本的なABテストは、URLを変更したり新しいページを作ったりすることなく、同一URL内で行うものです。
たとえば、ページ内の文章を変更して反応の違いを確認するといったものが該当します。準備や実行が容易な点や、URLの変更が伴わないのでドメインパワーの減少のような影響を気にせずに行える点が特徴といえるでしょう。
2.別ページへリダイレクトさせるABテスト
ABテストの対象ページを訪問したユーザーを別のURLにリダイレクトするパターンです。リダイレクトとは、Webサイトやサイト内のページにアクセスしたユーザーを自動的に別のURLに転送することをいいます。
同一URL内のABテストと異なり、このABテストは2つのページ、2つのURLが必要なため、「スプリットURLテスト」とも呼ばれます。
3.さまざまな箇所で同時に行う多変量テスト
「多変量テスト」とは、同一Webページ上または別ページをまたぐ形で複数の箇所を変更し、全ての組み合わせでテストしてベストな組み合わせを見つける手法です。
ABテストは基本的にAパターンとBパターンの2つで行われますが、多変量テストでは複数のパターンを並行して行うことができます。
たとえば、1つの商品について2つのキャッチコピーと2通りの画像があり、どの組み合わせが最適かを知りたい場合、キャッチコピー2パターン、画像2パターンの合計4つの組み合わせでのテストが可能です。
ABテストを行う箇所とやり方
ここでは、ABテストはサイトページ内のどこで行うべきか、またどのような手順で行うべきかについて、弊社ページを例に紹介します。
ページ内でABテストを行う箇所
おもに以下のような箇所でABテストを行うと、テストによる変化が出やすいでしょう。
ファーストビュー領域
ファーストビュー領域とは、ユーザーがサイトを訪れた際に最初に目に入る範囲のことです。ユーザーはファーストビューによって離脱するか、読み進めていくかを判断することも多いため、ABテストの反響が出やすい箇所といえます。
最初に目に入る箇所だからこそ、ABテストを行う優先度は高く設定するとよいでしょう。
メインビジュアル
メインビジュアルはファーストビュー領域における大きな画像のことで、ユーザーに「何のサイトか」を直感的に印象付ける役割があります。文字情報よりも画像のほうが目に入りやすいので、メインビジュアルによってサイトの印象は大きく左右されるといえるでしょう。
メインビジュアルを画像だけにするのか、キャッチコピーのような文字情報も載せるのか、どんな色にするのかといったABテストをすることで、コンバージョン率の最適化につなげられます。
ページタイトルや見出し
ページタイトルは、ユーザーがそのページを訪問するかどうかを判断する際の大きな材料になります。またユーザーがサイトに訪問した後、目次の見出しを見て必要とする情報までジャンプして該当箇所だけ読むといったことも珍しくありません。
ユーザーが興味を示すタイトルはどのようなものか、見出しにはどこまで情報を載せるかといったことをチェックするためにABテストが有効になります。
CTAボタン
CTA( Call To Action)ボタンは、商品の購入やメルマガ購読、会員登録など、Webサイトを訪れたユーザーに行動してもらうためのボタンです。コンバージョンはすべてCTAボタンを通じて行われます。
色や形、位置、キャッチコピー、カーソルを合わせたときに浮き上がるようにするかどうかなどが、CTAボタンにおけるABテスト例です。
離脱導線
自社サイトの別ページや関連ページへのリンク、ランディングページから本サイトへのリンクなどが、行動喚起からユーザーを遠ざける要因になることもあります。そのため、ページ内に不必要なリンクがないかはチェックする必要があるでしょう。
ABテストは、リンクの必要性の有無や離脱率の検証にも役立ちます。
ABテストのやり方
次に、どのような手順でABテストを実施すればよいのか、やり方について見ていきましょう。
比較したい対象を選定する
ABテストでは「何についてABテストを実施するのか」比較対象を選定する必要があります。たとえば「CTAボタンは何色がよいかをチェックするためのABテスト」というように、何を調べるためのABテストなのかを明確にしましょう。
一定期間、各パターンを試す
ABテストに限らず、分析のためにはサンプル数が必要です。ある程度のサンプル数を集めるために、一定期間AパターンとBパターンで試します。
ABテストを行ううえでの注意点
簡単に実施できるABテストですが、実施するうえでは大きく分けて3つの注意点があります。
ABテストを行う目的を明確にする
前提となるのは「ABテストを行う目的」の明確化です。目的なしにテストを実行しても意味がありません。もちろんABテストを行う最大の目的は「コンバージョン率を高めること」ですが、それだけでは少々漠然としています。
たとえば、コンバージョン率の向上につなげるためには、「直帰率を下げる」「離脱率を下げる」「平均サイト滞在時間を伸ばす」といった具体的な目的を持つことが重要です。
目的をはっきりとさせることで、テスト結果についての分析もしやすくなります。
必ず仮説を立てたうえで行う
ここでいう仮説とは「このABテストを行うとこのような結果になるだろう」という予測をすることです。
仮説を立てないと、テストの結果だけに左右されて「なぜ成果が上がった(下がった)か」の分析ができません。テスト結果の分析ができなければ、その後行う別の箇所でのABテストに反省を活かしたり失敗を活かして改善したりといったことができず、効率が悪くなるでしょう。
仮説を立てる際のポイントはユーザー目線になることです。どうすればユーザーにとって見やすいサイト、分かりやすいサイトになり、コンバージョンにつながるサイトになるのかをユーザー目線で考えましょう。
きちんとした効果検証のためにABテストは一カ所ずつ行う
ABテストには、さまざまな箇所で同時に検証を行う多変量テストもありますが、ABテストに慣れるまでは一カ所ずつ丁寧にテストを行うことをおすすめします。一度に複数箇所で行うと、何が起因して成果が変わったのかが分かりづらいことがあるからです。
ABテストを行うメリットとリスク
ABテストは多くのメリットが期待できますが、同時にリスクもあります。それぞれをあらかじめ確認しておきましょう。
メリット1:サイトリニューアルと比べると、小さなところから始められる
ABテストは小規模な改善を積み重ねてコンバージョン率の向上を目指すものです。そのため一つひとつのABテストにサイトの大幅なリニューアルは必要なく、一部分の変更で実施できます。作業工数を抑えながらサイトの改善につなげられるのは大きなメリットです。
メリット2:コストと手間をかけずに成果アップが狙える
ABテストを実施していくうちにある程度の成功パターンが見えてきます。テストを実施する前に立てる仮説の精度も、経験を重ねるうちに向上していくので、実施すればするほど効率性も向上していくでしょう。
リスク1:期待した結果が出るとは限らない
サイト内の変更を行うことが必ずしも成果につながるとは限りません。ABテストを実施することで、良いパターンの発見ではなく「ダメなパターン」の発見になることもあります。ABテストを行う際に重要なのは、成果が出たか否かだけにとらわれないことです。
ABテストの実施後は仮説検証のステップが必ずあります。ABテストで変更を加えたBパターンに効果がなくても、検証を行うことで、次はどこをどう直せばよいかといった具体的で現実的な分析ができます。
リスク2:データ数が少ないと正しい検証結果が得られない
ABテストの効果検証を行うためには、ある程度のサンプル数が必要になります。データが少ない状態でそれを分析しても本当に効果があったのか、それとも偶然なのかが判断できません。目安としてはABテストの対象となるページはPV400以上欲しいところです。
まとめ
サイトを最適化するためには、ユーザーニーズを満たすことが重要です。サイトによってユーザーが求めるものは異なるので、他サイトで成功した施策が自サイトでも効果を生むとは限りません。
ABテストは、2つのパターンの検証を積み重ね、最終的にコンバージョン率の最適化を目指すものです。一つひとつの改善による効果は小さく、また、改善がひと段落するまでには長い期間がかかることもあります。しかし、感覚に頼らない実際のデータに基づいたサイト改善は、長い目で見ればきっと花開くものとなることでしょう。
地道な作業ではあるかもしれませんが、最小減のリスクとコストでコツコツとサイト改善の道を描けるABテストを活用することで、多くのメリットが期待できます。ぜひ一度実施してみてください。