デジタルマーケティングは複数の広告媒体やチャネルで展開されているため、各顧客接点が実際にどの程度成果を挙げているのか特定することが難しくなっています。そこで重要になってくるのが、各顧客接点の貢献度を明らかにするアトリビューション分析です。
本記事では、アトリビューション分析の概要や手順について解説していきます。
アトリビューションの意味
アトリビューション(Attribution)とは、物事の原因や出所の「帰属」を表す英単語です。
ここから転じて、マーケティングにおいては、ユーザーのコンバージョンを生み出した複数の顧客接点のそれぞれの貢献度を考えることを「アトリビューション」あるいは「アトリビューション分析」と呼んでいます。 また、貢献度をどのように測るかにはいくつかのフレームワークがあり、それぞれのフレームワークを「アトリビューションモデル」と呼びます。
アトリビューションは、ユーザーが自社への問い合わせや購入などのコンバージョンに至るまでの過程において、好ましい影響を与えたのはどの顧客接点か、その詳細を解明することを目的に実施されます。 顧客のコンバージョンにとってより重要なアトリビューションを特定することで、企業はどこに広告費用を配分すべきかなど、マーケティングリソースの最適化を実現できます。
アトリビューションを見るべき理由
アトリビューションを考えるべきおもな理由としては、現在、複数の広告媒体やチャネルでマーケティング戦略が展開されており、顧客の意思決定プロセスも複雑化していることが挙げられます。基本的に従来のマーケティングにおいては、顧客が最後に接触した広告だけを効果があったものとして評価していました。しかし現在は、顧客がバナー広告、リスティング広告、SNS広告などの多様なチャネルを自由に横断して商品やサービスの情報を集め、それぞれのメディアから複雑な影響を受けたのちに最終的なコンバージョンに至るというプロセスが一般化しつつあります。
具体的には、ユーザーが最初にバナー広告をクリックし、次にブログ記事で情報収集した後にSNSでブランドと交流し、最終的にはリスティング広告から企業の販売サイトにアクセスして商品を購入するといった流れがその一例といえるでしょう。 このような場合、最後の顧客接点(リスティング広告)だけを評価する従来の効果測定の仕方では、顧客がコンバージョンに至るまでの導線に存在したほかのマーケティング施策の影響を見落とすことになってしまいます。
そこで重要になってくるのが、複数の顧客接点の効果を俯瞰的に評価可能なアトリビューション分析です。 アトリビューション分析を行うことで、マーケティングチームは、出発点から最終的な購入に至るまで、カスタマージャーニーを俯瞰的に把握することができます。
アトリビューション分析のメリット
アトリビューション分析を効果的に行うことで、企業は多くののメリットを得られます。たとえばアトリビューション分析では、広告媒体の効果を数値で客観的に示すことでマーケティングコストをどのように使うのが最適なのかを明らかにすることができます。
これによって企業は、たとえばSEO施策の貢献度などを測定し、各マーケティング施策やそれぞれに割くコストを適宜調整することも可能です。また、効果的なアトリビューションが判明することで、マーケティング担当者は適切な消費者に、適切なタイミングで、適切なメッセージを届けることができます。
精度の高いマーケティング施策を実施することで、コンバージョン数の増加とマーケティングROIの向上も期待できるでしょう。
アトリビューション分析に向いているケースは?
アトリビューション分析を行う際は、どのような場合に役立つのか理解したうえで実施する必要があります。先述のように、アトリビューション分析はカスタマージャーニーにおいて顧客が関与したあらゆる顧客接点の効果を測定することを目的にしています。逆にいえば、カスタマージャーニーが極めてシンプルに完結するような場合は、アトリビューション分析には向いていません。
たとえば、3足1,000円の靴下を買う場合と自動車を買う場合を比較すると、靴下を買う場合は万が一買い物で失敗したとしてもデメリットは少ないため、長期間の検討を要することなく購入できるでしょう。しかし、自動車の場合は高額な買い物なので、長い時間をかけてどの車がよいか比較検討し、さまざまな媒体から情報収集して購入に至ります。
つまり、靴下に比べて自動車の方がより多くの媒体の影響を受けやすく、アトリビューション分析をする価値のある商材であるといえるのです。この例からも分かるように、アトリビューション分析が大きな効果を発揮するのは、「コンバージョン経路が複雑なケース」「検討期間の長い商品」「高額の商品」「間接効果の高い媒体を知りたい場合」などです。
反対に、コンバージョン経路が単純なケースや気軽に購入できるような安い商品の場合は、アトリビューション分析の対象には向いていない可能性が高いといえます。
おもなアトリビューション分析モデル

また、後述するように、ラストクリックモデルとファーストクリックモデルにおいては、単一の顧客接点のみを評価しますが、線形モデルなどほかの分析モデルでは、複数の顧客接点の効果を複合的に評価することができます。
1. ラストクリックモデル(終点モデル)
ラストクリックモデルはその名の通り、リードがコンバージョンする直前の顧客接点に100%の貢献度を与えるものです。Google広告など多くの広告プラットフォームでは、このモデルがデフォルト設定で採用されています。
ラストクリックモデルの長所は、実装が単純で、分析の正確さを確保しやすいことです。
今日の顧客は複数のデバイスやブラウザを使用したりすることがあるため、正確にカスタマージャーニーの全行程を追跡することは困難です。 しかし、コンバージョン直前の顧客接点ならば、常に確認することができます。 逆にこのモデルの欠点は、最後以外の顧客接点の効果をすべて無視してしまうことです。
2. ファーストクリックモデル(起点モデル)
ファーストクリックモデルは、ラストクリックモデルと同様に、1回のクリックに100%の貢献度を与えるというものです。ただしファーストクリックモデルは、コンバージョンのすべての貢献度を、最初の顧客接点に割り当てるもので、広告媒体が顧客へ与える第一印象の重要さを表しているといえます。
ファーストクリックモデルの長所と欠点は、ラストクリックモデルと同様です。
ファーストクリックモデルは、シンプルにアトリビューションを評価できる一方で、最初の顧客接点以外の貢献度は見落とされてしまいます。そのため、ラストクリックモデルとファーストクリックモデルは、顧客接点があまり多くない場合に有効といえるでしょう。
3. 線形モデル
線形モデルは、カスタマージャーニーにおいて顧客が触れてきたすべての顧客接点に、コンバージョンの貢献度を均等に分配する方法です。
先のラストクリックモデルやファーストクリックモデルでは、単一の顧客接点に対してのみ価値を認めていました。しかし線形モデルでは、マーケティング戦略全体をバランスよく見ることができます。 ただし、線形モデルではすべての顧客接点に対して同等の重要性を単純に割り当てるため、どの顧客接点がもっとも効果的なのか把握することが困難です。
4. 減衰モデル
減衰モデルは、線形モデルと同様に、複数の顧客接点にコンバージョンの貢献度を分散させるものです。
しかし線形モデルとは異なり、減衰モデルではそれぞれの顧客接点がいつ発生したのかも考慮します。 具体的には、減衰モデルではコンバージョンに近い顧客接点により多くの価値が帰属します。最初の顧客接点はあまり評価されず、逆に最後の顧客接点が最も評価されるのです。それゆえ、ラストクリックを重視しつつ、ほかの顧客接点の影響度も加味したい場合に減衰モデルは有効といえるでしょう。
5. 接点ベースモデル
接点ベースモデルは、最初と最後の顧客接点にそれぞれ40%ずつの貢献度を割り振る考えです。
他の顧客接点には残りの20%が割り振られることになります。
貢献度が「U」に似た形で割り振られることから、「U字型モデル」とも呼ばれています。 接点ベースモデルは、コンバージョンまでに複数の顧客接点を持つビジネスモデルにとって有効です。商品やサービスを知ったきっかけと、コンバージョンに至るまでの最終接点を重要視したい場合に役立ちます。
アトリビューション分析のステップ
続いて、アトリビューション分析を実施するための手順について解説していきます。自社のビジネスモデルをもとに仮説を立てる
アトリビューション分析のファーストステップは、自社のビジネスモデルに基づいて、顧客のカスタマージャーニーかどのように進行するか仮説を立てることです。 この段階においては、自社の顧客がどこで自社の商品やサービスを知り、購入を検討し、最終的にどのような経路でコンバージョンに至るか考えていきます。コンバージョンを計測して仮説を検証する
続いて、仮説検証をするためにコンバージョンを計測します。 ここでは、自社が展開している全ての広告媒体やチャネルについて、それぞれのインプレッション数やコンバージョン数、コンバージョン率の推移を追い、コンバージョンに結び付いている広告媒体が何かを特定していきます。改善する
上記の検証結果に基づいて、効果が出ているチャネルの広告費を増やすなどの施策を行い、自社のマーケティングモデルを最適化します。 また、改善策実施後は実際に数値が改善したかを再び検証し、PDCAサイクルを継続的に回していきます。Googleアナリティクスでのアトリビューション分析
Googleアナリティクスには、無料でアトリビューション分析を行える機能が搭載されています。
この分析機能では、Google 広告以外のチャネルや自然検索も分析可能です。
アトリビューションは、Googleの管理画面で確認できます。操作手順としては、「コンバージョン」→「マルチチャネル」→「モデル比較ツール」を選ぶと、7種類のアトリビューションモデルを選び、それぞれの分析モデルに基づいて各顧客接点の貢献度を可視化できます。
>>Googleアナリティクス(GA)の使い方と活用法についてはこちら
アトリビューション分析成功のポイント
アトリビューション分析を成功させるためには、どのようなポイントに注意すればいいのでしょうか。
第一に重要なのは、素早く改善のサイクルを回していくことです。
アトリビューション分析では、マーケティング効果を細部に至るまで詳細に分析することができます。しかし、分析の目的はあくまでもマーケティング施策の実際の効果を向上させることであり、分析そのものではありません。
それゆえ、細部の分析にいつまでもこだわるよりも、大まかな傾向を掴んだらまずは改善策を実施し、PDCAサイクルを回しながらマーケティング施策の精度を上げていく方が重要です。
第二に重要なのは、コンバージョンした後の顧客行動履歴を最後まで追っていくことです。
アトリビューション分析を実施することで、マーケティングの費用対効果は高まるでしょう。しかし、そこで満足してはいけません。
ユーザーが生涯を通じて企業にもたらす利益「顧客生涯価値」まで含めて広告効果を計測することで、さらに長期的な利益向上が見込めます。
最後に
アトリビューション分析を活用することで、マーケティングチームはそれぞれの広告施策が実際にどの程度コンバージョンに貢献しているのか、多角的な観点から明らかにすることができます。
これによってマーケティングチームは広告施策の効果を可視化し、それぞれの広告に投入するリソースの最適化が可能になります。
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