近年におけるデジタル化やDXの普及に伴い、マーケティングに必要なデータの種類や量が増大してきています。データ分析が複雑化していくなか、ひと際注目されるのが「DMP」です。
本記事では、DMPの概要や種類、導入ステップなど、初心者向けに分かりやすく解説します。
DMPとは?
DMP(Data Management Platform)とは、オンラインやオフラインに散らばったデータを一元管理できるプラットフォームのことです。おもに、マーケティングの精度を高めたり、顧客関係管理の質を向上させたりする目的で利用します。
DMPで管理できるデータには、以下のようなものがあります。
- Web上の行動履歴・購買履歴
- 属性データ
- 広告配信データ
- POSデータ
- アンケートデータ など
DMPの種類
DMPには、大きく分けて「パブリックDMP(オープンDMP)」と「プライベートDMP」の2種類があります。以下で、それぞれの詳細を解説します。
パブリックDMP(オープンDMP)
パブリックDMP(オープンDMP)は、自社だけでなく他社サイトやSNSでの閲覧・行動履歴など、外部のデータも収集できるDMPのことです。この、第三者が提供するデータのことを「サードパーティーデータ」と呼びます。
サードパーティーデータには以下のようなものがあり、これらや自社のデータを統合してマーケティングのアプローチ方法を最適化します。
- 国や自治体が公表するデータ(国勢調査など)
- 広告事業者が収集したユーザーデータ
- SNSが収集したユーザーデータ
パブリックDMPは、自社と接点がないユーザーのデータを多く集められるため、新規顧客の開拓に活かしやすいのが特徴です。
プライベートDMP
プライベートDMPは、自社で追跡できる行動履歴や購買履歴などのデータを蓄積・管理するDMPのことです。顧客データを蓄積するプラットフォーム「CDP(Customer Data Platform)」とほぼ同じ意味です。
この、自社と顧客が直接関わるデータのことを「ファーストパーティ―データ」と呼びます。プライベートDMPで収集するデータは、以下のようなものです。
- 自社Webサイト内での行動データ(訪問・クリック・購買など)
- 自社Webサイトに訪問したユーザーの属性情報(性別・地域・年齢など)
- POSデータ
- アンケートデータ
プライベートDMPは、自社と接点があるデータのみを収集するため、既存顧客の分析に活かしやすいのが特徴です。
DMPの導入メリット
DMPを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?以下では、代表的なものを紹介します。
マーケティングの精度を高められる
DMPをうまく活用すれば、マーケティングの精度を高めることが可能です。
たとえば、顧客のWebサイト上での行動・購買履歴とオフラインでの購買履歴を紐づけ、興味のありそうな商品を高い精度で予測できます。
ほかにも、メルマガの開封率や電話での対応履歴、チャットボットでの相談履歴など、さまざまなソースからの情報を統合して蓄積します。また、サードパーティーデータを活用すれば、未開拓顧客の情報を収集し、効果的にアプローチできます。
結果として、アップセル・クロスセルの成功確率が上がったり、最適な広告配信によりCPA(顧客獲得単価)が低減したりするなどの効果が期待できます。
マーケティング業務の効率化・ミス防止につながる
DMPを導入することで、マーケティング担当者の業務削減や、ミスの防止ができます。
通常であれば、マーケティングレポートを作成するために多大な時間を要します。まず、Web上の行動履歴データ、広告配信データ、メルマガデータなど、さまざまな情報を集めて表計算ソフトにまとめ、レポートとして出力する作業を行わなければなりません。
DMPを導入していれば、分析に必要な全てのデータが、ひとつのプラットフォームに蓄積・整理されます。データの集計工数を大幅に削減できるだけでなく、集計時の手作業を減らし、属人的なミスを軽減できるのです。
DMPの導入ステップ
DMPの導入手順は、以下の3つです。
- 導入目的を明確にする
- 社内データの利用状況を確認する
- DMPベンダーを比較する
1. 導入目的を明確にする
DMPを導入する企業ごとに、課題や理想像が異なるため、最初にDMPの導入目的を明確にしましょう。たとえば、以下のような目的が考えられます。
- 新規リードの獲得
- 獲得したリードのナーチャリング
- PV数・コンバージョン数の向上
- アップセル・クロスセルの実施
事前に導入目的を明確にしておかなければ、データ・組織体制の整備や、DMPツールの選定が曖昧なまま進みます。最悪の場合、導入後に誰からも使われないシステムができ上がる恐れがあるため要注意です。
2. 社内データの利用状況を確認する
続いて、社内でデータがどのように利用されているのかを確認します。事前に以下の3つを確認しておくと、ツール選定や導入後の活用で失敗するリスクを抑えられます。
- データの種類
- セキュリティ
- 部署間の連携
データの種類
アクセス履歴や検索履歴、広告データなど、DMPへどのようなデータを蓄積させる必要があるのかを検討しましょう。収集するデータは、多ければ多いほどよいわけではありません。活用目的に合わせて取捨選択することが重要です。
たとえば、BtoB企業が受注増加に向けてリードナーチャリングを強化していく場合、以下のようなデータが必要になります。
- リードの属性情報
- Webサイトの訪問回数・履歴
- 資料のダウンロード履歴
- 担当者との接触履歴(電話・メール・対面・ウェビナーなど)
セキュリティ
DMPで個人情報を取り扱う場合は、社内のセキュリティポリシーやプライバシーポリシーに抵触しないかを確認することが重要です。個人の特定はもちろん、それらのデータを使用して顧客へアプローチすることが禁止されている場合があります。
また、パブリックDMPの活用を検討している企業は、個人情報保護法にも気をつけましょう。この場合、DMP事業者から個人関連情報を受け取るケースがほとんどです。個人関連情報と社内の個人情報を、ユーザーの同意なく紐づけることは法律で禁止されています。
一度、社内規定や法律と照らし合わせてみて、データの取得や活用に問題がないかをよく確認しましょう。
部署間の連携
DMPの導入前は、必要なデータが各部署に散在している場合があります。部署外からアクセスできる体制は整えられるか、DMPと連携をするためのシステム基盤が整えられるかを確認しましょう。
さらに、DMPを活用するための組織体制も整える必要があります。データをもとにして議論をする文化醸成や、部署間での責任所在を明確にするなど、ヒトの面からアプローチすることも大切です。
3. DMPベンダーを比較する
社内でDMPを導入できると判断したら、ベンダー選定の段階へ移ります。自社の目的や必要なデータに合わせて、条件と合致する製品をリストアップしましょう。
DMPの製品を目的別に分けると、「広告配信の最適化」と「顧客関係管理(CRM)の最適化」の2つがあります。ファーストパーティーデータのみ収集の場合と、サードパーティーデータもあわせて収集したい場合とで、選択すべき製品が変わってくるので注意しましょう。
候補製品を絞り込む際は、以下の点を参考にしましょう。
- 操作が簡単か
- 導入実績は豊富か
- 実際の施策に活かせそうか
DMPの運用ケース
ここでは、DMPを実際に運用しているケースを実例を紹介します。DMPの運用概念を理解するうえでの参考にしてみてください。
花王株式会社
大手消費財化学メーカーの花王株式会社は、2013年にプライベートDMPを導入して顧客へ効果的にアプローチする仕組みを整えています。
具体的には、プライベートDMPツールを、一部のブランドを除く全てのブランドサイトに導入しました。サイト訪問者が、花王のサイト全体を通してどのように行動しているのかを把握するためです。
収集したのは、各ブランドサイトのアクセスデータです。分析した結果、親和性の高いサイト同士でバナー広告を張り合い、相互誘導するようにしています。
参考:日経クロストレンド「プライベートDMPの活用始めた花王、ブランド間の親和性分析し広告戦略見直しも」
DMPを導入する際に気をつけるべきこと
DMPは、単にデータを蓄積するための基盤に過ぎないという点に注意しましょう。蓄積したデータの活用方法は、企業自身で決めなければなりません。
せっかくDMPを導入しても、活用方法がわからずに使われることがなかった、といった事態は避けたいものです。そのため、DMPの導入前に、収集したデータをどのような施策として落とし込めそうかを、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。
DMPの活用を社内で検討してみよう
DMPは、マーケティングに必要なデータを一元管理できる便利なツールです。さまざまに散らばったデータ同士を紐づけることで、より高い精度のマーケティングアプローチが期待できます。
ただし、導入までにはセキュリティや部署間連携など、さまざまな壁を乗り越える必要があります。何のために導入するのか、具体的な目的を持ってDMPの導入を進めましょう。
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