導入事例インタビューでは、「導入前に抱えていた課題」「商品・サービスを選んだ理由」「導入後の成果」「今後の目標」の4つを軸に質問します。この4つを具体的なエピソードと検証できる数値で引き出せると、読者が自社に当てはめて判断できる事例になります。
BtoBの製品・サービス選定では、導入事例は比較検討を支える判断材料の一つです。HubSpot Japanが2026年6月に国内のBtoB購買関与者1,573人を対象に実施した調査では、57.0%が「提供会社・販売会社の導入事例」を信頼できる情報として挙げました。
(出典:HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」)
なお、SEデザインが2022年6月に111人を対象に実施したオンライン調査でも、導入事例を参考にすると回答した人は64.0%でした。ただし2つの調査は設問も対象者も異なるため、数値の増減を比べることはできません。それぞれ「いつ・誰に・何を聞いた結果か」を確認したうえで参照してください。
今回は、導入事例インタビューで聞くべき4つの質問軸と質問例、取材前の準備、当日の進め方、録音や生成AIによる文字起こしを使うときの同意の取り方、成果の数値を記事に載せるときの確認事項を解説します。
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この記事の要点 ・導入事例インタビューの質問は「導入前の課題」「選定した理由」「導入後の成果」「今後の目標」の4軸で組み立てる。各軸は「最初に聞く質問」「深掘りする項目」「記事化するときの確認事項」の3点セットで用意する ・成果の数値は、導入前の基準値・測定期間・対象範囲・計算方法・データの出所・導入以外の要因まで確認する。実測できないものは「担当者の体感では約3割」のように推定値と分かる書き方にする ・録音、文字起こし、生成AIへのデータ送信、記事への掲載は別々の同意として確認する。個人を識別できる音声は個人情報に該当し得る ・「良かった点」だけを聞かない。導入時に難しかった点や期待どおりでなかった点も中立的に尋ねたほうが、検討者にとって判断材料になる |
導入事例インタビューで得られるもの
導入事例インタビューでは、商品・サービスを実際に利用した顧客の課題、選定理由、活用方法、導入後の変化を具体的に伝えられます。機能や特徴を説明するだけでは伝わりにくい、導入時の判断や運用の実態を示せる点が大きな価値です。
導入事例は、販売者による説明を、利用者の経験と成果で補強する情報として活用できます。具体的には、次のようなものが得られます。
- 顧客の具体的な経験を通じて、商品・サービスへの信頼を補強できる
- 導入前の課題や選定理由、導入後の成果を示し、検討者が自社での活用をイメージしやすくなる
- 費用対効果や導入条件を示すことで、比較検討や社内稟議の材料として使ってもらえる
- インタビューを通じて、提供側が認識していなかった強みや活用方法を発見できる
- Webサイトだけでなく、提案書、営業資料、メール、セミナー、動画などへ展開できる
- AI検索やAIを使った比較・要約で参照され得る、独自の一次情報を公開できる
特にBtoBの購買では、利用部門だけでなく、決裁者、経理、情報システム、法務など複数の関係者が判断に加わります。顧客の感想だけでなく、「どのような企業が」「どのような条件で導入し」「どの程度の期間で」「どのような成果を得たか」を示すことで、担当者が社内へ説明しやすい事例になります。
なお、導入事例を掲載すれば検索順位や成約率が自動的に上がるわけではありません。成果だけを強調せず、前提条件、導入過程、注意点、顧客自身の言葉を組み合わせて、検討者が判断に使える内容にすることが重要です。
取材先にとってのメリットをつくる
「インタビューを受けるだけでは相手にメリットがない」と一律に考える必要はありません。取材先にとっては、自社の取り組みを対外的に紹介できる機会でもあり、広報、採用、認知の面で価値が生まれることがあります。
依頼するときは、取材の目的や所要時間といった負担の説明とあわせて、公開によって取材先が得られるものを具体的に伝えます。たとえば、取材先の事業や採用メッセージを記事内で紹介する、完成した記事を取材先の広報やSNSでも使えるようにする、といった形です。
謝礼や値引きを設定する場合は、好意的な回答を条件にしないようにします。また、取材先との関係や対価が読者の判断に影響し得る場合は、記事内で関係性を分かりやすく示すことを検討してください。謝礼の有無や内容は、自社と取材先の双方の社内規程に沿って決めます。
(参考:消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」)
インタビュイーの選び方
取材候補は「有名企業かどうか」ではなく、記事の目的と想定読者から逆算して選びます。想定読者に業種・企業規模・課題が近く、導入前後の変化を具体的に説明できる顧客が適しています。
選定時には、次の点を確認しておくと、取材後の確認や修正が進めやすくなります。
- 導入前の課題と、導入後の変化を数値または具体的な状況で説明できるか
- 実際に製品・サービスを使っている部門の担当者が参加できるか
- 社名、氏名、役職、写真、成果数値のうち、どこまで公開できるか
- 広報や法務など、公開承認に必要な部署がどこか
導入事例インタビュー準備の流れ【4STEP】
導入事例インタビューでは、質問を用意するだけでなく、記事の目的、取材対象者、根拠資料、掲載条件、当日の進行まで整理しておくことが大切です。準備の流れは次の4ステップです。
- 同業他社の導入事例ページをチェックする
- 企画を作成する
- 取材の依頼・交渉をする
- 事前に質問内容をインタビュイーに送る
STEP1:同業他社の導入事例ページをチェックする
まずは同業他社や類似サービスの導入事例を調査します。ただし、検索結果の上位に表示されていることだけでは、その企業がWeb集客に成功しているとは判断できません。検索順位は所在地や言語、デバイスなど複数の要素にも左右されるため、順位は事例を見つける入口として使いましょう。
(参考:Google検索セントラル「Google検索の仕組み」)
各事例では、次の項目を確認します。
- 想定している読者と、導入企業の属性
- 導入前の課題と、その深刻さを示す情報
- 選定理由と、比較した選択肢
- 導入プロセスや苦労した点
- 成果を示す数値と、その測定条件
- 写真、画面、図表、動画などの一次素材
- 記事末尾の問い合わせや資料請求への導線
競合の事例をそのまま踏襲するのではなく、自社の営業商談、顧客からの質問、サポート履歴も参照し、見込み客が判断に迷いやすい点を洗い出します。
STEP2:企画を作成する
調査結果をもとに、「誰に」「何を伝え」「読後にどのような行動につなげるか」を決めます。そのうえで、想定読者に近く、導入前後の変化を具体的に説明できる顧客を取材候補として選びます。
記事に盛り込む内容の例は次のとおりです。
- 企業、事業、担当者の役割
- 導入前の業務や課題、当時の数値
- 比較した選択肢と選定基準
- 導入時の体制、期間、苦労した点
- 実際の利用方法
- 定量的・定性的な変化
- 現時点で残っている課題
- 今後の取り組み
数値を掲載する場合は、指標名だけでなく、導入前の基準値、測定期間、対象部署、計算方法、データの出所も確認します。サービスの効果だけでは説明できない要因がある場合は、その点も取材で確認しておくと、過度な因果関係の表現を避けやすくなります。
STEP3:取材の依頼・交渉をする
取材依頼は、顧客との関係を把握している営業担当者やカスタマーサクセス担当者と連携して行うとスムーズです。依頼の段階で、次の項目を取材先と合意しておきます。
| 確認項目 | 事前に合意する内容 |
|---|---|
| 取材条件 | 所要時間、形式、参加者、撮影の有無 |
| 掲載情報 | 会社名、ロゴ、氏名、役職、顔写真、発言、数値 |
| 公開範囲 | 自社サイト、営業資料、広告、SNS、動画など |
| データ利用 | 録音・録画、文字起こし、生成AIや外部サービスの利用 |
| 承認フロー | 本人、上司、広報、法務などの確認者と期限 |
| 公開後の扱い | 公開期間、更新、役職変更時の修正、非公開相談の窓口 |
| 謝礼・特典 | 内容、社内規程への適合、記事上での説明の要否 |
識別できる音声や顔画像は個人情報に該当し得るため、利用目的と公開範囲を説明したうえで、本人および取材先企業の承認を文書で残します。
(参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)
可能であれば、取材当日も営業担当に同席してもらうとよいでしょう。インタビュアーが知り得ない部分をフォローしてもらえたり、取材相手の緊張が和らいだりと、円滑な進行が期待できます。
STEP4:事前に質問内容をインタビュイーに送る
取材日時が決まったら、目的、所要時間、参加者、公開予定媒体、質問項目をまとめた取材案内を送ります。質問は当日の会話を固定する台本ではなく、事実確認や社内確認が必要な項目を準備してもらうための資料として位置付けます。
数値については、次の情報も事前に確認しておくと効率的です。
- 指標の名称と定義
- 導入前後の値
- 測定期間と対象範囲
- データの出所と計算方法
- 公開できる数値の粒度
- 導入以外に影響した可能性のある要因
事前回答は任意とし、回答に時間がかかる項目や社内確認が必要な項目だけを依頼します。当日は回答を読み上げてもらうのではなく、「そのとき具体的に何が起きていたか」「誰がどのように判断したか」を掘り下げます。
また、すでに自社サイトに他社のインタビューが掲載されている場合は、あわせて共有しておくと、どのような記事になるのかイメージしてもらいやすくなります。
※関連コンテンツ:導入事例制作をスムーズに!事前準備で使えるテンプレートセット
導入事例インタビューを成功させるコツ
導入事例インタビューでは、質問内容だけでなく、記録方法、公開条件、成果数値の確認方法、原稿の承認工程まで事前に設計しておくと、当日の会話とその後の制作を進めやすくなります。
①事前に質問テーマと公開までの流れを共有する
取材前には、導入前の課題、選定理由、導入時の取り組み、導入後の変化、今後の展望といった質問テーマを共有します。成果を示す数値や社内資料が必要な場合は、準備してほしい項目も伝えておきましょう。
あわせて、掲載予定の媒体、記事で使用する氏名・役職・社名・ロゴ・写真、匿名化の可否、原稿確認の担当者と期限を確認します。質問を台本どおりに読み上げるのではなく、中立的な質問と深掘り質問を用意しておくと、具体的なエピソードを引き出しやすくなります。
②録音・文字起こし・公開利用の了承を分けて確認する
録音や録画を行う場合は、開始前に目的、記録方法、閲覧者、保存期間、外部の文字起こしサービスやAIを利用するかを説明します。記事への掲載許可は録音の了承とは分けて確認し、引用、氏名、写真などの利用範囲を明確にしておくと安心です。
個人を識別できる音声は個人情報に該当し得るため、利用目的を通知または公表し、利用する必要がなくなったデータは社内ルールに沿って削除します。
(参考:個人情報保護委員会「顧客との通話内容と録音」)
③記録手段を事前にテストする
記録機器は、バッテリー残量、空き容量、マイク入力、保存先を確認し、短いテスト録音を再生して音質を確かめます。了承を得た範囲内で、Web会議の録画と別端末の音声録音を併用すると、障害時の備えになります。
スマートフォンを使う場合は、機内モードだけに頼らず、集中モードや通知設定、Wi-Fi通話、Bluetoothマイク、録音アプリの動作を事前にテストしましょう。インタビュアーとは別に記録担当を置き、重要な発言の時刻や追加確認事項をメモしておく方法もあります。
④AIの文字起こしや要約は下書きとして使う
Web会議ツールでは、日本語の文字起こしやAI要約を利用できるものがあります。ただし、対応言語、契約プラン、管理者設定には制限があり、生成された要約に誤りが含まれる可能性もあります。発言の引用、人物名、製品名、数値は、録音や顧客の資料と照合してから原稿に反映します。
顧客の個人データを外部の生成AIサービスに入力する場合は、利用目的の範囲内か、入力データが学習など回答生成以外の目的に使われないかを確認します。
(参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」、経済産業省「AI事業者ガイドライン第1.2版」(2026年3月31日公表))
⑤具体的なエピソードと検証できる数字を聞く
「業務が効率化した」という回答が出たら、どの業務が、どの期間に、どの程度変化したのかを深掘りします。たとえば「月間○件を処理する業務で、1件当たりの作業時間が平均3時間から30分になった」のように、対象、期間、単位、比較条件を明らかにします。
数値については、算出方法、データの出所、例外条件、ほかに影響した施策も確認します。サービス単独の効果と判断できない場合は、「導入後」「複数の施策とあわせて」など、確認できる範囲で表現するとよいでしょう。
(参考:消費者庁「表示に関するQ&A」)
⑥脱線した話は、掲載可否を確認してから使う
予定外の話題や雑談から、導入の背景や担当者の思いが見えてくることがあります。一方で、オフレコの発言や、取材終了後に録音された会話をそのまま記事に使うのは避けます。
記事に取り入れたい発言があれば、該当箇所と想定する表現を示し、掲載してよいかを確認しましょう。録音を止めた時点も記録しておくと、利用できる範囲を判別しやすくなります。
⑦取材直後に事実と未確認事項を整理する
取材後は、記憶が新しいうちに引用候補、重要なエピソード、数値の根拠、固有名詞、追加確認事項を整理します。AI要約だけで原稿を作らず、録音、担当者のメモ、顧客から提供された資料を突き合わせて構成を作成します。
導入事例インタビューで聞くべき4つの質問軸と質問例
導入事例インタビューでは、「導入前」「選定」「導入後」「今後」の4つを軸に質問します。質問は「はい・いいえ」で終わらない形にし、特定の回答を期待しているように聞こえない表現を選びましょう。
| 質問の軸 | 最初に聞く質問 | 深掘りする項目 | 記事化するときの確認事項 |
|---|---|---|---|
| ①商品・サービス導入前の悩み | 導入前は、どのような業務上の課題がありましたか? | 課題に気づいた時期、対象業務、影響を受けた部門・担当者、従来の対応方法、放置した場合の影響 | 導入前の作業時間、件数、コスト、エラー率などの基準値 |
| ②商品を選んだポイント | どのような候補を、誰と、どのような基準で比較しましたか? | 知ったきっかけ、比較候補、内製や現状維持も含めた選択肢、現場・情シス・購買・経営層の評価、セキュリティ、連携性、費用、サポート | 他社名を掲載してよいか、比較条件が同等か、比較内容を客観的に確認できるか |
| ③商品・サービス導入後の成果 | 導入後、業務や組織にどのような変化がありましたか? | 設定から定着までの期間、教育や支援、利用者数、目標と実績、予想外の効果、難しかった点、期待どおりでなかった点 | 測定期間、対象範囲、データの出所、実測値か概算か、サービス以外の要因 |
| ④お客様の今後の目標 | 今後、事業や業務をどのように発展させたいと考えていますか? | 次に解決したい課題、目標達成までの障害、必要な支援、サービスへの改善要望 | 顧客自身の目標を優先し、自社サービスへの言及を無理に求めない |
取材の冒頭で確認するプロフィール
4つの軸に入る前に、記事の読者が「自社に近い事例かどうか」を判断できるよう、取材先のプロフィールを確認します。公開情報で分かる範囲は事前に調べておき、当日は不足分と、公開してよい範囲の確認にとどめます。
- 御社の事業の概略を教えてください。
- 御社の創業は何年ですか。
- 御社の社員数はどのくらいですか。
- 御社のターゲット層を教えてください。
- 御社と自社に共通点はありますか。
①商品・サービス導入前の悩み
導入する前に抱えていた悩みや課題を具体的に聞き出せると、導入後の効果がより伝わりやすくなります。質問を簡単に終わらせてしまいがちな部分ですが、導入前の様子をインタビュアーがしっかりイメージできるまで聞き込むことが大切です。
- 製品を導入する前の状況を教えてください。
- 製品を導入する前には、どのような弱点がありましたか。
- 製品を導入する前に直面していた問題には、どのようなことがありましたか。
- 自社製品を利用する前に、似た製品を使用していましたか。
- これまで自社製品を購入していなかった理由を教えてください。
あわせて、そのときかかっていたコストや手間を、数値やエピソードで提示してもらいます。「導入前は業務に毎日2時間かかっていた」のような実体験に基づく言葉は、同じ課題を持つ読者の判断材料になります。
②商品を選んだポイント
選定の決め手は、単独で聞くよりも「何と比較したか」とセットで聞くと、記事の説得力が上がります。比較対象には、他社製品だけでなく、内製や現状維持といった選択肢も含めて確認しましょう。
- 自社製品をどのようにして知りましたか。
- 購入を決めた理由を教えてください。
- 比較した他社製品について教えてください。
- 購入を決定した際の判断基準を教えてください。
- どのようなプロセスで製品購入に至りましたか。
他社名を記事に出す場合は、掲載してよいか、比較条件が同等かを必ず確認します。
③商品・サービス導入後の成果
導入後の変化はインタビューの肝となる部分です。「成果が出ましたか」と聞くのではなく、「導入後、何がどのように変わりましたか」と中立的に尋ね、良い結果だけでなく、導入時の障害や期待との差も確認します。
- 御社での製品の使い方を教えてください。
- 製品の使用開始から何年経過していますか。
- 自社製品をどのような人が使用していますか。
- 自社製品をほかの部署でも使用していますか。
- 製品を利用したことで、コスト削減は数字に表れましたか。
- 製品を利用したことで、生産性や時間短縮の面での変化はありましたか。
- 直面していた課題や問題は解決できましたか。
- 製品導入後の成果を、どのように評価されていますか。
- 導入時に難しかった点や、期待どおりではなかった点はありますか。
コスト削減、作業時間の短縮、生産性の向上、売上増加といった変化を語ってもらいます。数値にするのが難しい場合は、「業務にかかる時間は、感覚でこれまでの何割ぐらいになったと思われますか?」のように答えやすい形で聞いてもかまいませんが、この回答は担当者の体感・概算であり実測値ではありません。記事にする際は、その旨が分かる書き方にします。
④お客様の今後の目標
インタビューの最後に、今後ビジネスで取り組んでいきたいことや目標を聞いて記事に盛り込みます。ここは顧客自身の言葉を優先し、自社の商品・サービスへの言及を無理に求めないようにします。
- 今後、事業や業務をどのように発展させたいと考えていますか。
- 導入した製品に関して、改善してほしい点はありますか。
- 製品において要望や提案したいことはありますか。
- 製品で気に入っている点を教えてください。
- カスタマーサポートに関する意見や感想を聞かせてください。
成果の数値を記事に載せるときの確認事項
成果を数字で紹介する場合は、導入前後で同じ条件を比較しているかを確認します。次の6点が揃っていれば、読者が自社に当てはめて検討しやすくなります。
- 導入前の基準値(比較の起点になる数値)
- 測定期間(いつからいつまでの値か)
- 対象範囲(対象業務・部署・人数)
- 計算方法(どのように算出したか)
- データの出所(システムのログか、担当者の集計か)
- 実測値か概算か、および導入以外に影響した要因
実測できない場合は、「担当者の体感では約3割」「社内での概算」といった形で、推定値であることが分かる表現にします。個別企業の体験を、すべての利用者に共通する効果として一般化しないことも大切です。
録音・写真・AI文字起こしの同意とデータの扱い
取材で扱う音声、写真、発言は、取材先にとっては社外に出る情報です。次の4つは、まとめてではなく別々の同意として確認します。
| 同意を分ける対象 | 取材前に確認すること |
|---|---|
| 録音・録画 | 目的、記録方法、閲覧できる人の範囲、保存期間、不要になったときの削除方法 |
| 文字起こし・AI要約 | 外部サービスや生成AIを使うか、データの送信先、保存や学習利用の扱い、アクセス権 |
| 記事への掲載 | 会社名、氏名、役職、ロゴ、写真、発言の引用範囲、匿名化の可否 |
| 二次利用 | 営業資料、広告、SNS、動画など、記事以外での利用範囲と期間 |
特定の個人を識別できる通話内容や顔画像は、個人情報に該当し得ます。利用目的を通知または公表し、利用する必要がなくなったデータは社内ルールに沿って削除します。生成AIサービスに個人データを入力する場合は、利用目的の範囲内かどうか、入力したデータが回答生成以外の目的に使われないかを確認してください。
(参考:個人情報保護委員会「顧客との通話内容と録音」、同「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」)
導入事例の代表的な4つの記事構成
インタビューの内容を記事にまとめる方法には、Q&A、対談、一人称、三人称などがあります。ここで紹介するのは取材の実施方法ではなく、取材後の記事構成です。伝えたい内容、登場人物の数、補足すべき背景情報に応じて選び、複数の構成を組み合わせることもできます。
| 記事構成 | 基本的な見せ方 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Q&A形式 | 質問と回答を交互に掲載する | 担当者の言葉や考えを前面に出したい場合 | 回答が長いと読みにくくなるため、意味を変えない範囲で整理する |
| 対談・座談会形式 | 二者または複数人の会話を掲載する | 部門ごとの役割や、顧客と提供会社の協働過程を伝えたい場合 | 話者を明確にし、提供会社の説明に偏りすぎないよう進行する |
| 一人称形式 | 「私」「当社」を主語に、取材対象者の語りとして再構成する | 担当者の体験や意思決定の背景を一つの物語として見せたい場合 | 編集者による再構成であることを踏まえ、表現や事実を本人に確認する |
| 三人称・ルポ形式 | 書き手が背景、経緯、結果を説明し、要所に発言を入れる | 複数部門が関わる案件や、時系列・データの補足が必要な場合 | 三人称で書くだけでは客観性は担保されないため、数値や引用を別途検証する |
取材後の流れ(デブリーフ→原稿→書面での公開承認)
記事構成が決まったら、次の順序で進めると手戻りを抑えられます。
- デブリーフ:取材直後に、引用候補、重要なエピソード、数値の根拠、固有名詞、追加確認事項を整理する
- 原稿作成:録音、担当者のメモ、顧客から提供された資料を突き合わせて構成を作る。AI要約だけで原稿を作らない
- 確認依頼:原稿とあわせて、数値・社名・役職などの確認表を送る
- 書面での公開承認:取材先の担当者から書面で承認を得てから公開する
導入事例インタビュー事前準備テンプレート
事前準備のテンプレートには、質問項目だけでなく、次の情報もまとめておくと取材後の確認がスムーズになります。
- 記事の目的、想定読者、採用する記事構成
- 取材対象者の氏名、所属、役職、導入時の役割
- 導入前の課題、比較検討、選定理由、導入・運用体制
- 導入効果の数値、測定期間、比較基準、計算方法、確認資料
- 公開できない社名、製品名、契約情報、セキュリティ情報
- 録音、写真、ロゴ、氏名・役職、引用、二次利用の可否
- 生成AIやクラウド文字起こしを利用する場合の入力範囲、保存・学習利用の扱い
- 初稿の確認者、確認範囲、修正期限、最終承認者
「取材依頼状」と「事前レポート」のすぐに使えるテンプレートセットは、以下からダウンロードできます。
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AI検索から参照される導入事例にするために
導入事例は、検索エンジンだけでなく、生成AIやAI検索を通じて読まれる機会が増えています。前掲のHubSpot Japanの調査でも、41.6%が「生成AIサービスやAI検索が購買判断に与える影響が増えた」と回答しました。
AI経由で参照されるかどうかは、記事が「読み取れる形」で情報を持っているかに左右されます。次の点を押さえておきましょう。
- 一次情報を、クロールできるWeb本文に置く。導入効果、対象企業の属性、利用条件などをPDFや資料ダウンロードの中だけに閉じ込めない
- 数値には条件を添える。測定期間、対象範囲、比較基準がないと、引用しても意味が変わってしまう情報として扱われにくい
- 1つの問いに1つの答えが対応する形にする。見出しと本文の対応が取れていると、該当箇所だけを取り出して参照されやすい
- 顧客自身の言葉を残す。提供側の説明では書けない、実体験に基づく記述が独自の情報になる
(参考:Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)
導入事例インタビューの質問に関するよくある質問
導入事例インタビューのコツは?
質問内容だけでなく、記録方法、公開条件、成果数値の確認方法、原稿の承認工程まで事前に設計しておくことがコツです。当日は台本を読み上げるのではなく、「そのとき具体的に何が起きていたか」「誰がどのように判断したか」を掘り下げると、記事に使えるエピソードが集まります。
導入事例インタビューでは何を質問すればよいですか?
「導入前の課題」「選定した理由」「導入後の成果」「今後の目標」の4つを軸に質問します。各軸で、最初に聞く質問、深掘りする項目、記事化するときに確認する項目をあらかじめ用意しておくと、当日の会話に集中できます。
質問はいくつ用意すればよいですか?
数を決めるより、4つの軸それぞれに「最初に聞く質問」と「深掘りの項目」が用意されているかで判断します。事前に送る質問は、事実確認や社内確認が必要なものに絞り、当日に深掘りする分は手元に置いておく形が進めやすいでしょう。
成果の数値が出せない場合はどうすればよいですか?
数値化が難しい場合は、体感や概算であることが分かる形で記載します。あわせて、業務の進め方がどう変わったか、誰の負担が減ったか、といった定性的な変化を具体的に書くと、読者が自社に当てはめて考えやすくなります。
取材の録音に生成AIの文字起こしを使ってもよいですか?
使う場合は、取材前に取材先へ説明して同意を得ます。データの送信先、保存期間、学習に利用されるかどうかを確認し、生成された文字起こしや要約は録音・資料と照合してから原稿に反映してください。
まとめ
導入事例インタビューでは、「導入前に抱えていた課題」「商品・サービスを選んだ理由」「導入後の成果」「今後の目標」の4点を、具体的なエピソードや数値とともに引き出すことが重要です。成果の数値を掲載する場合は、測定期間や対象範囲、比較基準もあわせて確認しておくと、読者が自社への導入効果を検討しやすくなります。
取材前には、記事の目的や想定読者、質問項目、公開媒体、確認スケジュールを取材先と共有しましょう。録音・文字起こしや生成AIによる要約を利用する場合は、その目的、データの保存・共有範囲、利用するサービスの取り扱い方針を確認し、取材先の同意を得たうえで実施します。公開前には、社名・氏名・写真・ロゴ、発言内容、成果数値について取材先の確認を受けることも大切です。
完成した導入事例は、Web記事、PDF、動画、営業資料、メール、セミナー後のフォローなどに展開できます。AI検索を含む情報探索でも参照しやすいよう、顧客の一次体験や導入効果をクロール可能なWeb本文に明記し、公開後はCTAクリックや資料ダウンロード、問い合わせ、商談での利用状況を確認しながら改善していきましょう。
自社だけで継続的な制作体制を整えることが難しい場合は、外部の制作会社へ企画、取材、執筆、デザイン、公開支援を依頼する方法もあります。SEデザインは1985年の創業以来、外資系IT企業のブランドローカライズをはじめ、日系・外資を問わず多くのテクノロジー企業のマーケティングを支援してきました。IT業界で積み上げた知見をもとに、一次情報を活かすBtoBマーケティングの設計から実装までを支援します。