ユーザーの心をつかむマーケティング手法として有効な方法が「ナラティブマーケティング」です。具体的な手法や注目される理由、実際に行う際に注意すべき点などをご紹介します。マーケティング手法でお悩みの方やマーケティング担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。
ユーザーの心をつかむナラティブマーケティングとは
まずは、そもそもナラティブマーケティングとは何なのか、他のマーケティング手法とはどう違うのかなどをご紹介していきます。
ユーザーに自分事として興味を持たせるマーケティング手法
ナラティブマーケティングは、ユーザー自身が自ら自分ごと化して興味をもって語り出すように働きかけるアプローチ手法です。
ナラティブとは日本語で「物語」「語り」を意味する言葉です。文学理論の用語として使われてきた言葉で、読み手が主体となる物語を表します。映画やドラマ、テレビなどで使われる「ナレーション」もナラティブから広がった言葉です。
ナラティブマーケティングの特徴は、企業の商品・サービスに対して、ユーザー自身が興味や意見をもつことで高い愛着をもち、周囲に働きかけることです。企業ではなく、ユーザー主体で商品やサービスに興味をもってもらい、ひいては企業やサービスの根強いファンになってもらえます。
従来のストーリーマーケティングとの違い
似た言葉として、ストーリーマーケティングがあります。ストーリーも「物語」を意味する言葉ですがこの2つは異なるものです。ストーリーマーケティングの場合、商品やサービスを販売している企業側から単方向の発信です。
主役は顧客ではなくあくまで企業や商品などとなっています。一方、ナラティブマーケティングはユーザーと企業の双方向のコミュニケーションであり、主役はあくまでユーザーです。この2つの言葉の大きな違いは、ユーザーと企業・商品のどちらが主役であるかという点です。
ナラティブマーケティングが注目される背景
ナラティブマーケティングが注目される理由としては、以下のようなものがあります。
- SNSの影響力が大きくなっている
- 消費者ニーズが高度かつ多様化した
それぞれの理由について詳しく解説していきます。
SNSの影響力が大きくなっている
SNSの普及率が上がり、情報収集の手段として検索エンジンよりもSNSを使う人が増えてきています。SNSの情報量の増加や影響力が大きくなっていることから、企業側がマスメディアを通じて単方向に打ち出すストーリーでは、ユーザーの心を動かすことが難しい傾向にあります。
しかし、ユーザー自身がSNSなどを使って発信できるようになったことで、企業とユーザーとの関係がフラットになってきました。現代では、消費者が主体的に選択したり、企業と双方向で共有したりするナラティブマーケティングが有効といえるでしょう。企業とユーザーのコミュニケーションの場として、SNSは非常に重要な位置づけです。
消費者ニーズが高度かつ多様化した
SNSをはじめさまざまな方法で情報を得られるようになり、ユーザーが商品やサービスを選択する手段は多様化しました。
たとえば、ユーザーが企業の社会に対するビジョンに共感した場合、自分の購買行動ひとつが社会に影響を与えると感じるでしょう。
このことから、SDGsやESGなどへの取り組みをPRの一環として行っている企業が少しずつ増えてきました。企業のファンになってもらい、多様な消費者ニーズに対応するためにも、ユーザーひとりひとりを意識したマーケティング施策が一層重要になります。
ナラティブマーケティングのメリット
ナラティブマーケティングには、以下のようなメリットがあります。
- 主役となるユーザーからの信頼を獲得できる
- 商品やサービスの本質をつかめる
それぞれ解説していきます。
主役となるユーザーからの信頼を獲得できる
顧客自身が主役となって商品やサービスに関わるので、より信頼や愛着を感じてもらいやすくなります。つまりユーザーに対して、自分を主役としたストーリーの中に商品やサービスを組み込むことでどんな生活が待っているのかをイメージさせることができます。
ただ商品の魅力をアピールするのではなく、ユーザーの生活の中で商品を使ったらどうなるのかをイメージさせることで、支持を得ることが可能です。
商品やサービスの本質をつかめる
ナラティブマーケティングは、商品やサービスがユーザーにとってどのような価値を生むものなのかを調査し、考え抜くことが大切です。その過程で、商品やサービスの付加価値を理解し、ユーザーに伝わるように工夫して届けることができます。そのため、企業の担当者自身が、商品やサービスについてより理解を深められます。ナラティブマーケティングを取り入れた成功事例
ここでは、実際の企業の実名を出して、成功事例をご紹介します。紹介する企業は以下の3社です。
- アウトドア用品メーカーのパタゴニア
- シャンプーメーカーのパンテーン
- 自動車メーカーのSUBARU
各社の実例を紹介していきます。
自然保護の活動をする「パタゴニア」
アウトドアメーカーのパタゴニア社は、「地球を守ろう」というメッセージを掲げて顧客が主役の物語を発信している企業です。2017年に、当時のアメリカのトランプ政権がアメリカのユタ州にあるナショナル・モニュメント(国定記念物)指定保護地域の大幅縮小を発表しました。
この発表後に、パタゴニアの創始者は、ホームページトップに「The President Stole Your Land(直訳:大統領があなたの土地を盗んだ)」というメッセージを掲載し、非難の意思を示しました。この行動は、多くの国民がメディアに取り上げ、多くのユーザーがパタゴニアの価値観に共感し、ファンになるきっかけにつながりました。
SNSで頭髪の多様性について問題提起した「パンテーン」
P&G社のヘアケアブランド「パンテーン」は、学生の頭髪の多様性に関して問題提起をして話題になりました。これは、元の髪色が黒ではない学生が校則に従い髪を黒く染めるように指導され、「学生らしい髪型」にする指摘に対して、それが本当に正しいのかとSNSを通じて社会に訴えかけたものです。
この影響により、頭髪のルールに疑問をもつ人、現在または過去に学校で指導された経験のある消費者に自分自身のストーリーとの関連性を印象付け、商品に関心をもたせるきっかけとなったことで当時はSNSで話題になりました。
視聴者の共感を呼ぶCMを展開する「SUBARU」
自動車メーカーのSUBARUでは、「Your story with」という視聴者が共感しやすいストーリー性の高いCMを展開しています。
リアリティのある設定の家族と車に関する物語、そして”あなたと車にはどのような物語がありますか”という語りをCMに入れることで、視聴者に自分の車に関する物語をイメージしてもらうものとなっています。多くのユーザーを感動させたCMは、ノベライズ化を果たすほどSUBARUのブランドに影響を与えました。非常に視聴者が共感し、物語を連想してもらいやすい戦略です。
ナラティブマーケティングを実践するためのポイント
ナラティブマーケティングを実際に行う際に押さえておくべきポイントをご紹介します。
- 対話の場を作る
- じっくり時間をかけて行う
- SNSの活用がカギになる
各項目の詳細を解説していきます。
対話の場を作る
対話ができる場所を作ることは非常に重要です。企業とユーザーのコミュニケーションの場をもつことが、ナラティブマーケティング実践のヒントになるためです。
事例にあった問題提起のほか、TwitterやInstagramをはじめとするSNS、体験型のイベントを行うことはユーザーの声を引き出しやすい手段となっています。
じっくり時間をかけて行う
ナラティブマーケティングを行うためには、商品やサービスのパーパス(目的)を掘り下げ、整理する必要があります。その上で、自社に合った方法やブランド価値を数年かけて定着させる必要があります。SNSの活用がカギになる
事例で紹介した企業もSNSを効果的に活用していました。SNSは、今や企業にとってユーザーとコミュニケーションを取るのに欠かせないツールです。
それぞれのSNSの特徴を知って使い分け、企業や商品・サービスにとって効果的なナラティブアプローチを心がけてみてください。
まとめ
ナラティブマーケティングとは何か、具体的な手法やメリットについてご紹介しました。
ユーザー主体の物語性を持たせるマーケティング手法であるため、SNSや多様化した消費者ニーズを満たすために非常に有効といえます。ユーザーとのコミュニケーションやブランド認知の統一化に向けて、ナラティブマーケティングを活用してみてはいかがでしょうか。
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