「SaaS企業に入社したが、営業方法がいまいちよくわからない」「他業界からSaaS企業へ転職してきたものの、一般的な営業と異なる点が多く戸惑っている」という営業職やマーケティング職の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
SaaS営業は営業プロセスが細かく分割されており、他業種の営業とは異なる特徴があります。そこで、今回はSaaS営業について知っておきたい基本知識を詳しく解説します。
SaaS営業の基礎知識
最初に、SaaS営業の基本知識について確認しましょう。
SaaS営業とは
まずSaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由でユーザーに提供されるITサービスのビジネスモデルです。
従来型の端末にインストールして利用するオンプレミス型のソフトウェアとは異なり、ユーザー側で物理的な機器や設備は必要ありません。そのため、初期費用を抑えつつ最新の機能を利用できる、というメリットがある製品・サービスです。
一方で、以下の点がデメリットとして挙げられます。
- インターネット環境に依存している
- 多くのサービスは買い切りでなくサブスクリプションで提供されているため、ランニングコストがかかる
SaaS営業とは、このようなSaaSの製品やサービスの特徴を顧客に理解してもらうための営業活動です。
SaaSは物理的な製品ではないことから、その価値を視覚的に捉えることは困難です。そのため、製品・サービスを理解してもらうまでに、より丁寧な営業活動が必要になります。
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SaaS営業と一般的な営業との違い
SaaS営業と一般的な営業では、主に以下の4つの点が異なります。
- 営業プロセスごとに職種が分割
- 単発の売り上げよりも継続利用を重視
- 顧客ロイヤルティを重視
- LTVが重要な指標
SaaS営業では、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといったように、営業プロセスごとに職種が分割されているのが特徴です。
また単発の売り上げを追求するのではなく、顧客との間に長期的な信頼関係を築き、サービスの継続利用を促すことが重視されます。
SaaS営業では、顧客満足度などを高めるだけでなく、顧客が第三者へ積極的にサービスを推薦するような信頼関係を目指していきます。また、新規の顧客数を伸ばし、アップセル・クロスセルにつなげていくことも重要です。
継続的な利用が収益につながるSaaSでは、LTVという指標を重要視して営業活動も行います。LTVについての詳細は後述します。
SaaS営業のメリット・デメリット
SaaSの多くがサブスクリプション型のため売り上げが安定しやすく、売り上げ予測をしやすいのがメリットです。常にサービスを改善し、新しい機能を顧客に提供できるため、顧客満足度の向上が期待できます。
さらに、個人向け・企業向け・無料版・有料版・プレミアム版といったように、顧客ニーズに合ったプランが提供でき、幅広い顧客層へのアプローチが可能です。加えて、オンプレミス型と比較して開発・保守コストが抑えられ、事業拡大についても柔軟に対応できる点も大きなメリットです。
一方で、サブスクリプション型であるが故に資金回収に時間がかかることや、顧客との関係を維持するコストがかかること、顧客サポートの負担が大きいことなどがデメリットとして挙げられます。また、SaaS営業に特化した組織づくりが求められる点もデメリットの一つです。
SaaS営業のプロセスと種類
SaaS営業は、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといったように営業プロセスごとに専門職が分割されているのが特徴です。
こうした営業スタイルは、米セールスフォース・ドットコム社の営業活動における分業体制をまとめた「THE MODEL」という書籍(福田康隆・著/翔泳社)で紹介され、日本でも普及していきました。
この章では、それぞれの部門の特徴を解説します。
参考:SEshop「THE MODEL(MarkeZineBOOKS)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」
インサイドセールス
インサイドセールスは、非対面のコミュニケーションの中から顧客のニーズや課題を抽出し商談へつなげる部門です。
マーケティング部門によって獲得した見込み顧客に対して、電話やメールといった手法を通じて自社製品・サービスに関する情報を提供します。
フィールドセールス
フィールドセールスは、インサイドセールスで育成された見込み客に対して、対面やオンラインで商談を行い、契約の締結を担当する部門です。
見込み客の細かなニーズをヒアリングし、適切な提案を行って成約数を増やすことが期待されます。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、契約を獲得した顧客に対して、製品・サービスに関する導入・活用支援を行い、顧客満足度向上と契約継続率向上を目指す部門です。
受け身になりがちですが、問題が発生した場合だけでなく、対策を考えて防止策を講じる能動的な支援も求められます。
SaaS営業のKPIと評価指標
SaaS営業では、以下のようなKPIと評価指標が用いられます。
- CVR
- MRR・ARR
- LTV
- CAC
それぞれ順に解説します。
CVR
CVRとは、コンバージョン率(Conversion Rate)の略称です。以下の計算式で算出ができます。
Webサービス・Webアプリに発生した訪問のうち、どの程度コンバージョン(製品・サービスの購入、サブスクリプションの加入、資料請求などのサービスの成果)につながるかを示した割合の指標です。
MRR・ARR
MRRは月次経常収益(Monthly Recurring Revenue)、ARRは年間経常収益(Annual Recurring Revenue)の略称です。以下の計算式で算出ができます(MRRの計算式については基本の計算式)。
ARR=MRR×12
ARRは毎年繰り返し得られる収益の増減を確認する指標、MRRは毎月繰り返し得られる収益の増減を確認する指標です。MRRは、契約期間やサービスの内容によって変動します。
LTV
LTVとは、顧客生涯価値(Life Time Value)の略称です。LTVを算出するには、いくつかの計算式がありますが、以下のような計算式が代表的です。
LTV = 平均購買単価 × 購買頻度 × 顧客の平均継続期間
LTVは顧客1人(もしくは1社)が自社と取引を開始してから終了するまでの間に、どれだけの利益を自社にもたらしてくれるかを表した指標です。
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CAC
CACとは、顧客獲得単価(Customer Acquisition Cost)の略称です。算出方法はいくつかありますが、基本的な計算式は以下になります。
CACは顧客を獲得するために要したコストを示した指標で、サブスクリプション型のビジネスでよく利用されマーケティング施策の効果測定に活用されています。
SaaS営業に必要なスキル
SaaS営業では、以下のようなスキルが必要とされます。
- 専門知識
- 論理的思考力
- ヒアリングスキル
- マネジメントスキル
それぞれどのような能力か確認していきましょう。
専門知識
SaaS営業には必要最低限なスキルとして、IT、マーケティング、顧客業界といった3つの専門知識を有している必要があります。
SaaS営業では、自社製品・サービスの強みを競合製品・サービスと比較し、顧客のニーズや課題に合ったソリューションとしてSaaSを売り込んでいきます。そのため、深い業界知識と自社製品・サービスに関しての技術理解が必要不可欠です。
論理的思考力
SaaS営業は、データに基づいた論理的な説明力が求められます。顧客側にランニングコストが発生するサービスであるため、メリットを具体的に数値化・可視化して、根拠を示すことが重要です。
また、前述したKPI指標など自社の収益目標についても意識した戦略的な営業スタイルが求められます。
ヒアリングスキル
SaaS営業では、顧客のニーズや現在抱えている課題を深く理解し、継続的な関係構築を図るためのヒアリングスキルが必要不可欠です。
こうしたスキルは一般的な営業でも身につくスキルですので、法人営業経験は、顧客の課題を的確に捉え、最適な解決法として自社の製品・サービスを提案していくうえで大きな強みとなるでしょう。
マネジメントスキル
SaaS営業は前述の通り「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の複数の専門職がチームを組んで業務を遂行します。また、ほかのプロセスへの影響も考慮した戦略的な営業活動が重要になります。
そのため、チームのメンバーと協業するコミュニケーションスキル、チームをまとめていくマネジメントスキルなども求められるのです。
SaaS営業の今後の展望
SaaS市場は今後も拡大が予想されており、株式会社富士キメラ総研の報告によると、2027年にはSaaS市場規模は2兆990億円になると推計されています。
市場規模の拡大は、今までSaaSに触れてなかった業種・業態にも普及が進むことを意味します。これにより、今まで以上に顧客のニーズや課題が複雑化し、顧客ごとに提供するサービスを最適化するパーソナライゼーションが重要視されてきています。
また、ChatGPTをはじめとした生成AIモデルを活用した機能の開発が進んでおり、カスタマー対応などについてはAIに任せる企業も増えてきています。こうした技術の発展により、現在主流となっているThe Model型の営業組織ではなく、新しい営業プロセスと部門分割への転換・組織の再設計を模索する企業も現れ始めています
これらSaaS業界の今後の展望も、しっかりと視野に入れて営業活動をしていくことが大切になってくるでしょう。
出典元:株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場 2023年版プレスリリース」
SaaS営業にはHubSpotがおすすめ
最後に、SaaS営業に役立つツールとしてHubSpotというサービスを紹介します。
SaaS営業にHubSpotをおすすめする理由
HubSpotは、SaaS営業に不可欠な顧客関係管理を支援する営業ツールです。
オールインワンツールとして人気が高く、世界規模で多くのユーザーがいます。HubSpotは、SaaS営業でおすすめな以下の特徴を備えています。
- CRM(顧客関係管理)、マーケティング、セールス、サービスといった業務を1つのプラットフォームで一元管理できる
- 初心者でも使いやすいインターフェイスに加え、上級者にも対応した高いカスタマイズ性を有する
- 専門のサポートチームにより、日本語で丁寧な支援対応が受けられる
こうした特徴により、営業活動の効率化や顧客との信頼関係の構築が容易になります。
SaaS営業に役立つHubSpotの機能
HubSpotは、主に5つのHub製品が連携することによって顧客情報を一元管理します。5つのHubの構成は、The Model型の分業体制とも相性が良く、SaaS営業に適したツールです。各Hub製品の主な機能は以下のとおりです。
ハブの名称 | 内容 |
Marketing Hub | メールキャンペーンやリードナーチャリングを自動化 など |
Sales Hub | 営業プロセスの管理・サポート など |
Service Hub | チャットボット、チケット管理など顧客満足度向上に関する施策の自動化 など |
Content Hub | CMSの作成・管理 など |
Operations Hub | データの同期 など |
これらの機能により、各営業部門の業務管理が自動化されるので、チームメンバー全員の負担軽減につながります。
弊社でもHubSpotを全社的に活用しており、HubSpot上で全てが完結するため、マーケティングやセールスなど部署間の連携強化にも役立っています。
まとめ:HubSpotを活用してSaaS営業を成功させよう
今回紹介したようにSaaS営業は、さまざまな専門知識・スキルが必要となり、各営業プロセスでの業務効率化が重要なカギとなります。しかし、顧客関係を管理する、SaaS営業チーム全体の業務を管理するツールを自社で開発するには膨大なコストがかかります。
HubSpotはユーザーも多く、使い方に関してもネットから多くの情報を得ることができるツールです。これからSaaS営業に取り組む企業や営業チームにとって、非常に使い勝手の良い魅力的なツールといえるでしょう。私たちSEデザインは、HubSpotの導入支援・活用支援を行っております。どのようなツールか興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽に弊社までご連絡ください。
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