“NO MUSIC, NO LIFE.”
このフレーズをご存じですか?
そう、レコードショップ「タワーレコード」が掲げるコーポレート・ボイス(スローガンのようなものか)です。
パッと見てなんとなく意味が伝わりますし、かっこいいですね。
英語のタイトルや見出しには、このように簡潔な表現がよく使われます。しかし、そのまま日本語にするとちょっと苦しい…
今回は、英文のビジネス文書でよく使われる、少ない語数で作られたタイトル/小見出しについて取り上げます。
ぎりぎりまで主語や冠詞、be動詞を省略した英語の見出しは、ワード数は非常に少ないですが、「おっ?」と思わせる単語で注意を惹きつけます。
翻訳の正解は1つではありませんが、直訳を超えたアレンジ、リライトが必須です。日本語にする際に、かなり内容を補わなくてはなりません。
フレーズを組み合わせてリズム感を持たせたパターン
Smooth Implementation, Improved Visibility
ほぼ直訳して、「スムーズな導入、強化された可視性」でよいと思う人もいるでしょう。しかし、自然なビジネス表現を目指すなら、「円滑な導入と可視性の向上」でいかがでしょうか。
Many Lessons, Many Benefits
「多くのレッスン、多くの利益」…はありえませんね。この文章は、ある企業のソフトウェア導入事例の小見出しだったので、その内容を参考に
「困難を乗り越えて多くのメリットを獲得」としてみました。
日本語で使われる「体言止め」同様の表現
Investment for the Future
これは素直に「将来に向けた投資」などでよいかと思います。ただし、“Future”などの単語が商品名やサービス名とひっかけて使ってある場合などもありますので、本文との関連を確認しましょう。
Looking Ahead
このような極端に短いフレーズは特に難しいです。直訳はまず意味を成さないので、「今後の展望」くらいでしょうか。ただし、前後の文脈によって解釈が違ってきます。
コロン(:)を使って主題をまず出し、その後に内容が続くもの
Challenges: Integration and Faster Billing
「課題:統合と迅速な請求」…まあ、不正解ではありませんが、内容を知るには不十分です。このとき採用されたのは「システム統合による請求処理の迅速化」でした。
主題は日本語にする際にまとめてしまってかまいません。また、“and” で繋いであっても、意味を関連付けたほうがこの場合は自然でした。
まとめ
英文の簡潔な見出し表現を直訳しても、限界があります。元の単語にこだわってメッセージが曖昧にならないように、本文を読んで補うことが必要です。
一方、有名な慣用句をもじってあるなど「原文の洒落っ気を活かしたい」というときには、ターゲット読者に合わせて、なるべく雰囲気を伝えることも考えましょう。