顧客獲得にとって重要な役割を果たすのが「見込み客」です。見込み客を獲得し育成することが、顧客へと育てることが、顧客獲得につながります。見込み客と似た概念として「潜在顧客」が挙げられます。この2つの概念にはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、成約率や売り上げアップのために見込み客を優良顧客へと育成する方法について解説します。
見込み客とは
見込み客とは、現段階では自社商品を利用したことがないものの、将来的に自社の商品やサービスを購入する見込みのある人を指します。つまり現段階では顧客ではないが、将来顧客になり得る可能性を持つ人のことです。マーケティング用語では「リード(Lead)」とも言います。
具体的には、自社サイトを通じて問い合わせや資料請求をした人、メルマガに登録した人などは見込み客と呼べるでしょう。またBtoBの場合、展示会で自社のブースに訪問した人や名刺を交換した人が見込み客に相当するといえます。
見込み客と潜在顧客との違い
見込み客と似た概念に「潜在顧客」があります。
潜在顧客とは、自社の製品やサービスの存在を知らない、あるいはそれらへのニーズに気づいていない人のことです。一方、見込み客は既に自社の製品やサービスを認知している人のことを指します。
潜在顧客は、見込み客よりもさらに前の段階にあるといえます。自社の商品に対する関心が薄く、購入意欲もありません。一方、見込み客はその商品に既に関心を持っており、購入しようかどうか迷っている段階にあります。
マーケティング活動や営業活動においては、潜在顧客を見込み客へ、見込み客を顧客へと育成することが大切です。
見込み顧客を優良顧客に育成する
マーケティング活動で成果を上げるには、見込み客を優良顧客に育成することを意識しなければなりません。優良顧客とは、自社の製品やサービスを単発で購入する人ではなく、継続的に利用し続ける人を指します。優良顧客は、リピート購入や追加購入を行い長期的な収益源となることに加え、口コミによる新規顧客の獲得も期待できます。
なかなか購入に踏み切れない見込み客を優良顧客に育成するためには、見込み客のニーズや課題、関心事を的確に把握し、適切な情報提供やコミュニケーションを行うことが必要です。これにより、見込み客の購入意欲を高め、優良顧客へと導くことができるでしょう。
具体的な方法については、次の章で詳しく解説します。
見込み客を優良顧客に変える具体的な方法
では、どうすれば見込み客を獲得できるのでしょうか。獲得手段としては、アウトバウンド型とインバウンド型の2種類に大別されます。
アウトバウンド型
アウトバウンドは、和訳すると「内から外への流れ」という意味の用語です。そこから転じて、自社から顧客に対して発信していくマーケティング手法を指すのがアウトバウンド型です。新聞やチラシといった従来型の紙媒体の広告もアウトバウンド型に属しますが、インターネットの普及によりコンテンツを提供する手段やその形態も刻々と変化しています。
アウトバウンド型のマーケティングとして、以下の手法が挙げられます。
展示会
製品やサービスなどを見込み客である企業に対して紹介する場が展示会です。目的として見込み客や顧客からの受注獲得などが挙げられます。
展示会のメリットは、一度に多くの見込み客と接触できる点です。会話やアンケートなどを通じて見込み客の属性を把握でき、見込み客リストの作成が可能です。また展示会に際してダイレクトメール(DM)やメルマガなどを見込み客に送信することで、顧客育成にも役立ちます。
広告宣伝
従来の新聞広告や雑誌広告、テレビ広告を活用した宣伝に、近年ではインターネットを活用した広告が加わりました。インターネット広告には、特定のキーワード検索で上位表示可能な「検索連動型(リスティング)広告」や、サイト内の所定の位置に表示させる「ディスプレイ広告」、YouTubeなどの「動画広告」があります。
広告宣伝の目的は、自社の商品やサービスを幅広い層に認知させることです。若年層から高齢者まで幅広い層にリーチできるのが従来型の主要4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告の特徴であり、いち早く情報をリーチできるのがインターネット広告の特徴といえます。また、アドテクノロジーにより顧客の行動を計測できるため、マーケティングの改善にも役立てられます。
プレスリリース
企業が自社の製品やサービス、イベントなどの情報を、新聞やテレビ、雑誌、オンラインメディアなどのマスメディアに向けて発表するための文章をプレスリリースと言います。
マスメディアなどを通じて自社の情報を広げることで、ブランド認知度の向上につながります。著名なメディアに取り上げられると、見込み客の多くはブランドに対して信頼できる企業というイメージを強く持つことにもなるでしょう。メディアを通じて、購入意欲の喚起や価値訴求などもできるため、プレスリリースは見込み顧客の獲得と優良顧客の育成に役立ちます。
インバウンド型
インバウンドは、和訳すると「外から内への流れ」という意味の用語です。そこから転じて、顧客が自社にやってくるマーケティング手法を指すのがインバウンド型です。
Web上に公開されたオウンドメディアや動画などのコンテンツを訪れたり、ソーシャルメディア(SNS)に拡散したりすることで、見込み客の獲得を目指します。現代の消費者の能動的な行動様式と合致した新しいマーケティング手法といえます。
特にBtoB事業においては、商品やサービスを購入する前に企業が情報収集を十分に行うケースが多いです。そのためBtoC事業にせよBtoB事業にせよ、インバウンド型での見込み客獲得が重要になってきます。
インバウンド型マーケティングとしては、次のような手法が考えられます。
オウンドメディア
オウンドメディアとは企業が運営するメディア全般を指します。たとえば、Webサイトやメルマガ、YouTubeチャンネルなどが該当します。ユーザーが求める情報を提供し自社の商品やサービスに関心を持ってもらうことで、見込み客の獲得へとつなげられます。
オウンドメディアを運営する際は、SEOを意識したコンテンツ作りが大切です。検索結果での上位表示ができれば、多くの集客が期待できるでしょう。
オウンドメディアは一度コンテンツを作成すれば継続的に見込み客を獲得できるため、コスト面でも優れています。従来の広告宣伝と比べても、コストのかからないマーケティング手法といえるでしょう。
ソーシャルメディア
オウンドメディアに情報を掲載しただけでは、潜在的な顧客がコンテンツを発見できません。そこでTwitterやInstagramなどのソーシャルメディア(SNS)を通じて、潜在的な顧客が発見できる経路を増やすことが見込み客獲得の有効な手段となります。
メリットとしては、興味を持ってくれた見込み客が拡散することで、見込み客として想定していなかった層へアピールできることが挙げられます。
ソーシャルメディア(SNS)は多岐にわたり、世界最大のSNSサービスであるFacebookやビジネスに特化したLinkedInなど、ユーザーの年齢層や使用目的もサービスごとに異なるため、状況に応じた使い分けが必要です。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーとは、自社の製品やサービスに関する専門的な情報を提供する資料です。一般的に、見込み客にダウンロードしてもらえるようにオウンドメディア内に設置します。
ホワイトペーパーでは、見込み客の抱える課題やニーズに対して、自社の製品やサービスがどのように役立つかを具体的に説明します。見込み客に自社の専門性と問題解決能力をアピールし、信頼を獲得するために効果的です。
加えて、ホワイトペーパーをダウンロードする見込み客の情報を取得できるため、より適切なフォローアップが可能になります。見込み客の関心を引き、自社の製品やサービスについて適切な順序で理解を深めてもらうことで、購入意欲を高め、優良顧客へと導くことができるでしょう。
アウトバウンド型とインバウンド型の組み合わせがベスト
見込み客を効率的に獲得し優良顧客に育成するために、アウトバウンド型とインバウンド型のマーケティング手法を組み合わせましょう。アウトバウンド型は広告宣伝などで不特定多数にアプローチできるため認知度向上に役立ちますが、あまり効率的とはいえません。インバウンド型は現代人の行動様式に合致しており、効率的かつ低コストですが、顧客化までに時間がかかる点が課題です。
たとえば、展示会などのアウトバウンド型アプローチで見込み客にプッシュします。そこで、連絡先を把握した後は、インバウンド型で継続的に情報提供することが重要です。この組み合わせにより、効率的な見込み客の獲得と育成が可能となり、売り上げ向上が見込めるでしょう。
見込み客を顧客に変えるリードナーチャリング
リードナーチャリングとは、見込み客との継続的なコミュニケーションを通じて、信頼関係を構築し、購入意欲を高めていくマーケティング手法です。見込み客を顧客へと導くことが目的で、最終的な目標は商品やサービスの販売です。
ここでは、売り上げ向上に直結するリードナーチャリングの具体的な手法や成功ポイントについて解説します。
見込み客のフォローアップ
一言で見込み客といっても、関心度合いには幅があります。たとえば、展示会などのアウトバウンド型のアプローチで顧客に転じる人もいれば、商品購入に至らない場合もあるでしょう。
しかし、少しでも自社の商品やサービスに関心を持っている人は、顧客へと育成できる可能性があります。
見込み客のフォローアップには、メルマガやダイレクトメール(DM)、オウンドメディアでの有益な情報提供、リターゲティング広告などを活用し、定期的に接点を保つことが重要です。関係を維持し段階に応じた適切なアプローチを行うことで、顧客への育成が可能になります。
フォローアップの効率化を図る方法
見込み客の状況により顧客へと育てるプロセスも異なるため、個別に手動で対応するのは非効率です。こうした見込み客のフォローアップを効率的に行えるのが、マーケティングオートメーション(MA)ツールです。セグメント毎にシナリオを設定し、メルマガやDM、関連商品の案内など、あらかじめ文面や送信のタイミングを設定することで、見込み客のフォローアップを自動化できます。代表的なMAツールとして、CRM(顧客管理)やMA、CMS(コンテンツマネジメントシステム)を一挙に取り扱える「HubSpot」が挙げられます。HubSpotの場合、「ワークフロー」と呼ばれる機能によって、Eメールの送信など個々の客に合わせたアクションを実施し、顧客の育成をパーソナライズ可能です。
もちろんステップメールなどのメール配信ツールでも、簡単に自動化を実現できますが、きめ細かな顧客の育成の点ではHubSpotのようなMAツールには及びません。
「リードナーチャリング」に関する記事
リードナーチャリングの成功ポイント
リードナーチャリングを成功させるために必要なポイントは以下の5つです。
- 見込み客のニーズや興味を的確に把握し、適切なコンテンツを提供する
- 見込み客の購買検討段階に合わせて、最適なタイミングでパーソナライズされたコミュニケーションを取る
- メール、SNS、オウンドメディア、広告など複数のチャネルを通じ、一貫したメッセージを発信する
- コンバージョン率、リードのスコアリング、顧客獲得コストなど適切なKPIを設定し、定期的に評価・改善を行う
- マーケティングと営業が連携し、情報を一元管理・共有する
ポイントを押さえて実践し、PDCAサイクルを回すことでリードナーチャリングは成功へと近づきます。
見込み客獲得の成功例
見込み客を獲得し育成するための手法は多岐にわたります。具体的な取り組み方を知りたいと考えている担当者の方もいるでしょう。
ここでは、実際に見込み客の獲得に成功した事例を3つ解説します。
株式会社エイトレッド:カスタマージャーニーの活用
株式会社エイトレッドはワークフローシステムを提供している会社です。
見込み客を獲得するために、「カスタマージャーニー」を作成しています。カスタマージャーニーとは顧客が商品やサービスを認知して購入に至るまでの一連のプロセスを可視化したものです。
カスタマージャーニーを活用することで、顧客ごとのシステム導入までの道のりが明確になり、各段階に応じたアプローチが実施できるようになりました。
ワークフローの課題を認識している顕在顧客層だけでなく、ワークフローを認知していない潜在顧客層にも響く多様なコンテンツを提供することで、幅広い層の見込み客獲得を実現しています。
カスタマージャーニーの作成により、段階に応じたアプローチを実施することで、見込み客獲得へとつながった事例です。
ちきゅう株式会社:SEO対策
株式会社ジーニーはBtoB向けの顧客管理ツールを提供している会社です。オウンドメディアを運営していましたが、見込み客の流入は広告のみで、検索流入がほとんどないという課題を抱えていました。
そこで、SEO対策として、キーワードの洗い出しやコンテンツの改善を行いました。特に、ユーザーに役立つ情報を提供するために、取材に基づくインタビュー記事に力を入れ、独自性の高い記事の作成に注力しています。
その結果、自然検索流入が約40倍増加し、新規顧客の獲得に成功しました。オウンドメディア運営において、SEO対策と独自性の高いコンテンツに注力した結果、見込み客の獲得へとつながった事例です。
株式会社ネオキャリア:コンテンツの見直しとSFAの導入
株式会社ネオキャリアは、採用支援や就労支援など、人材サービス事業を展開している企業です。HR Techサービス「jinjer」の集客基盤として立ち上げたオウンドメディア「HR NOTE」を運営していました。
しかし、当時はHR Techサービスの市場認知度も低く、なかなか見込み客を獲得できないという課題を抱えていました。「HR NOTE」では認知度を高めるために、ターゲットとなる人事担当者の課題解決に焦点を当てたコンテンツを毎日更新しました。その結果、自然検索からの流入が増加し、1年後には月間100件のリードを獲得するメディアへと成長しました。
2年目には「HR NOTE』で培ったスキルをjinjer以外のサービスにも活用し、月間400件の見込み客を獲得しています。同時に、営業部門との連携も強化しました。営業支援システム(SFA)を導入して、見込み客の育成状況を可視化したのです。
こうした取り組みの結果、5年後には年間数万件の法人見込み客を獲得できるようになりました。この事例は、適切なコンテンツ施策や営業部門との連携が見込み客獲得の増加につながることを示しています。
まとめ:顧客獲得にはインバウンドマーケティングを活用しよう
インターネットの登場により消費者の行動が能動的に変化し、それに伴いマーケティング手法も洗練されました。現在では、インバウンド型マーケティングが見込み客の獲得の鍵になっています。インバウンドマーケティングにより広告宣伝の割合を低減させることでコスト削減につながるだけでなく、PDCAサイクルによる改善やMAツールの活用で効率よく見込み客の獲得や顧客への育成が可能になるでしょう。
「インバウンドマーケティング入門ガイド」には顧客獲得のためのインバウンドマーケティングの手法が詳しく書かれています。資料をご希望の方は、下記のページからお取り寄せください。
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