消費者の商品選択に対する判断基準は年々厳しくなり、企業もさまざまな方法で販売戦略の見直しを行っています。しかし、独自のマーケティング戦略を立てても思うような成果を上げられず、悩んでいる企業も少なくありません。
そこで今回は、「自社サービスの販売網や価値を提供する場を拡大したい」と考える方に向けて、マーケティングチャネルの概要や種類、活用法について解説します。
マーケティングチャネルとは?
チャネルとは、集客を行うための経路や媒体のことです。時間をかけて商品やサービスを開発しても、顧客に届かなければビジネスには結びつきません。顧客にアプローチするためには、流通、販売、コミュニケーションの3つのチャネルにおいて適切なマーケティングを行うことが重要です。
ここでは、3つのマーケティングチャネルの特徴を見ていきましょう。
流通チャネル―販売者から消費者までの経路や手段
「流通チャネル」とは、運送業者や管理業者、卸売業者、小売業者など、商品やサービスの販売者と消費者の間をつなぐ手段や経路を指します。流通チャネルは製品生産者と最終顧客との間に介在する業者の数によって、0段階から3段階に分類されます。
0段階チャネル
生産者が最終顧客に直接販売する形態です。ダイレクトマーケティングである直販をイメージすると分かりやすいでしょう。中間マージンを省けるので、利益率が高いビジネスモデルといえます。テクノロジーの進化に伴い、直販の仕組みはより構築しやすくなってきています。
1段階チャネル
生産者が小売店に販売するチャネルです。小売店が商品を販売するときに発生するマージン、小売店への運送費などを生産者が負担します。卸売業者を挟まないため、商品を低価格で販売できます。
2段階チャネル
1段階チャネルに卸売業者が入ります。マージンが抜かれるので販売者の利益は減ります。
3段階チャネル
2段階チャネルの卸売業者が複数になっているチャネルです。文具業界や海産物、農産物などの販売では採用されていましたが、最近はインターネットの普及により、複数の卸売業者の経由は省略されつつあります。
このように、段階が多くなると複数の業者のマージンが発生するため、販売者の利益は減ってしまいます。
販売チャネル―消費者が商品を購入する場や販売方法
販売チャネルとは、ECサイトや実店舗など、消費者が商品やサービスを購入する場所や販売方法のことです。インターネットの普及により販売チャネルが拡大したように、このチャネルでは「どのように売るか」を重視しています。
消費者はチャネルごとのメリットを理解したうえで購入の場所や方法を決定しているため、販売者も利益が出るようにさまざまな工夫を施す必要があります。
コミュニケーションチャネル―消費者に商品を伝える手段や経路
コミュニケーションチャネルとは、商品やサービスの情報を消費者に知らせる手段や経路のことです。例としては、テレビ、雑誌、新聞、交通などにおける広告が挙げられます。またインターネットの普及によって、近年ホームページやWeb広告、SNSなどのデジタル媒体も重要視されています。
さらに、コミュニケーションチャネルは商品情報を消費者に知らせるためだけでなく、消費者とコミュニケーションをとるための場としても活用されています。
現在活用されているチャネル
次に、現在よく活用されている3つのチャネル「ECサイト」「SNS」「動画コンテンツ」についてより詳しく見ていきましょう。
潜在的な消費者にアプローチできるECサイト(販売チャネル)
Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなど、「販売チャネル」に分類されるECサイトは、広範囲に商圏を拡大したり、潜在顧客にアプローチしたりできる点が特徴です。
総務省「インターネットショッピングの利用状況調査」によれば、ECサイトの利用率は最も低い20代で約67%、最も高い50代では約78%で、全体での利用率は約72%となっています。ECサイトの利用増加は以前から注目されていましたが依然増加傾向にあり、IT技術の進化に伴いECサイトの開設も比較的容易になってきています。まだECサイトを運営していない企業は、マーケティング戦略の一つとして検討してみるとよいでしょう。
消費者との距離が近いSNS(コミュニケーションチャネル)
Facebook、Twitter、Instagram、LINEなどのSNSは、消費者との距離が近いため身近なアプローチが可能です。そのため、企業が自社SNSを活用して一般消費者に商品情報をお知らせすることも珍しくなくなってきています。
ほかにも、ターゲット層に合致する各SNSのインフルエンサーに依頼して、自社の商品やサービスをPRしてもらうことで、ファンの購買意欲を喚起するといった戦略の立案も可能です。
またSNSでは、消費者からの質問や意見、感想などを得られるだけでなく、反応や属性などを分析することもできます。双方向コミュニケーションツールであるSNSは、今後もマーケティングにおいて広く活用されていくでしょう。
ビジュアルで訴求する動画コンテンツ(コミュニケーションチャネル)
YouTubeやTikTokなどの動画コンテンツも有効なマーケティングチャネルの一つです。動画を通じてテキストでは伝えきれない情報を提供できるだけでなく、利用者間で拡散されることもあります。
また、SNS同様にアクセス解析を行うことで、より絞り込んだ層にピンポイントでマーケティングができるというメリットもあります。
複数のチャネルを使ったマーケティング戦略
近年、時代の変化に合わせて複数のチャネルを使ったマーケティング戦略を行う企業が増えています。さまざまなチャネルを通じて顧客との接点を持つことで購入へとつなげるためです。ここでは、複数のチャネルを使ったマーケティング戦略であるマルチチャネル、クロスチャネル、オムニチャネルについて解説します。
各々が独立している「マルチチャネル」
マルチチャネルとは、実店舗とECサイトといったように、集客経路や媒体が複数あることを指します。チャネルごとに独立して情報や商品を提供している状態で、情報の連携や一元化は行われていません。
マルチチャネルのメリットとしては、顧客との接点や販売の機会が増えるといった点が挙げられます。一方で、それぞれのチャネルが独立して機能しているため、在庫管理や送客が困難であるという弱点もあります。それを解消するために、次項のクロスチャネルが誕生しました。
各チャネルを連携させた「クロスチャネル」
独立した複数チャネルの状態(マルチチャネル)から、チャネル同士を連携させたものがクロスチャネルです。たとえば、実店舗とECサイトで顧客情報を一元化することで、チャネルを問わず顧客の購入履歴を管理・確認でき、実店舗の在庫からECサイトへ顧客に商品を案内することもできるようになります。
また、チャネル同士を連携させることで顧客との接点を増やせるだけでなく、顧客一人ひとりに合わせた複数のチャネルを提供できるようになります。
あらゆるチャネルでユーザーと接点をつくる「オムニチャネル」
マルチチャネルの進化系であるオムニチャネルは、オンライン・オフラインを問わずあらゆるメディアを活用することで顧客との接触を図り、購入経路を意識させずに販売促進につなげるマーケティング戦略のことです。
アパレルの実店舗で洋服のサイズが合わないときにECサイトでぴったりのサイズを注文する、といったケースがその一例で、ネットとリアルの境界線を融解した購買体験を提供します。スマートフォンやSNSの普及により、注目度が高まっている戦略といえるでしょう。
オムニチャネルは、個々のチャネルごとにデータが独立している「マルチチャネル」とは異なり、すべての販売ルートで商品管理や顧客管理、物流などを統合しています。また、オンラインのチャネルからオフラインのチャネルへと顧客を誘導する「O2O(Online to Offline)」とも間違いやすいので注意が必要です。
オムニチャネルの事例として、シューズメーカーのA社では、実店舗に在庫がなくても倉庫に在庫がある場合、Web上で会計を済ませれば後日商品を配送してもらえます。ほかにも、コンビニエンスストアのF社では、アプリで注文した商品を顧客が指定したコンビニで受け取れるサービスが展開されています。
マーケティングチャネルをうまく活用するためのポイントは?
マーケティング戦略が機能すれば、顧客に広く認知され、自然な購入の流れを作ることができます。そのためには、複数のマーケティングチャネルを活用しながら顧客とコミュニケーションをとることが重要です。ここでは、マーケティングチャネルを上手に活用するためのポイントを解説します。
ターゲットを決める
ターゲットとなる顧客層を設定する「ターゲティング」は、マーケティングチャネルの活用に欠かせません。ターゲットとなる顧客層を明確にしたうえで、最適なマーケティングチャネルを選択する必要があります。
たとえば20代の若者がターゲットであればTwitterやInstagramなどのSNS活用を優先し、ネットをあまり利用しない高齢者層がメインターゲットであれば、高齢者が多く観る時間帯や番組へのテレビCMを中心にチャネル選択を行います。
ちなみにBtoBの場合、ターゲットは法人です。個人顧客と同じ感覚でチャネル選択を行うと失敗する危険性があるため、注意が必要です。
販売者と消費者をつなぐチャネルを選択する
マーケティングチャネルを活用する際は、顧客にストレスを与えないよう、ターゲットとなる顧客層に適したチャネルを選択することが大事です。
消費者に商品情報が届いても、販売者につながるチャネルでなければ、消費者はそこから先へは進めません。チャネルは種類ごとにそれぞれ役割がありますが、どれも販売者と消費者をつなぐ大切な働きがあります。
ターゲットに届かないチャネルを選んでしまうと認知されず、商品の購入につながらないため、適切なチャネルを選択しましょう。
SFAやCRMを活用してチャネルを分析する
選択したチャネルが機能しているかを詳しく分析するために、SFAやCRMシステムを活用することも効果的です。
SFA
顧客情報や商談情報、企業情報など営業活動で取得したさまざまなデータを可視化して分析し、効率的な営業活動に役立てるものです。
CRM
顧客の個人情報や購入履歴、問い合わせ履歴などから顧客をセグメントし、顧客に応じたきめ細やかな対応を行うことで良好な関係を長期的に築き、顧客満足度を向上させるためのシステムです。
これらを利用することで、チャネルごとの売上レポートや、見込み客(リード)の商談進捗、成約予測などがリアルタイムに把握できます。また、蓄積されたデータから問題点も可視化されるので、PDCAサイクルも回しやすくなるでしょう。
このように、データ管理・分析ツールを利用して顧客を把握することで、問題点の抽出や次の施策の立案・実行をより迅速に行えます。
MAを活用して見込み客を育成する
すでに獲得している既存顧客との良好な関係を築くことは重要ですが、同時に新規顧客獲得も事業拡大のためには重要な活動です。
そこで、リードの獲得や育成を自動化できるMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用することで、新規顧客のターゲティングリストの作成や、リードへのキャンペーン情報配信を行うことができます。また、前述のSFAやCRMと連携できるものもあるので、より効率的にリード育成を行うことが可能です。
まとめ
マーケティングチャネルを適切に活用することは、消費者との接点創出や新規顧客の獲得、売り上げ拡大につながります。また、複数の購入手段が提供されることで顧客満足度も向上し、顧客との良好な関係が築けるでしょう。
代表的なMAツールである「HubSpot Marketing Hub」は、ナーチャリングやタスクの自動化、パーソナライズといった機能のほか、ブログやLP作成、リード管理、広告管理などの機能もあります。CRMも連携しており部門間でのシームレスな連携も実現できるため、ナーチャリングの体制づくりも容易です。
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