企業が顧客ロイヤリティを向上させ、ビジネスを成長させるための重要な指標の一つ、Net Promoter Score(NPS)。
この指標は、顧客が企業やサービス、商品を他人に推奨する確率を測定するものであり、企業のパフォーマンスを評価するための強力なツールとなります。
しかし、NPSがなぜ重要なのか、その効果的な活用方法については、意外と知られていないかもしれません。
本記事では、NPS調査の具体的な方法と調査を行うメリット、効果的な調査を行うためのポイントについてわかりやすく紹介していきます。
NPSとは?
NPSとは、Net Promoter Score®の略で、顧客ロイヤルティーを数値化したものです。
「顧客ロイヤルティー」とは、一般的にお客様がある企業や製品・サービスに対して、愛着や信頼を持っている状態のことを言います。
NPSは、自社の商品やサービスを購入した顧客が「商品やサービスにどれくらい好意や信頼を持っているか?」を数値で示します。NPSが高ければリピート率や業績との関連性が高いといえるため、企業にとって非常に重要な指標です。
NPSと顧客満足度の違い
NPSと顧客満足度は共に顧客の感情を測る指標ですが、異なる点があります。大きな違いは、「長期的な評価か、短期的な評価か」「収益性と連動するかどうか」という点です。
NPSは、顧客の長期的なロイヤルティーとエンゲージメントを示す指標です。顧客が商品やサービスをほかの人にどのくらい推奨したいか、という観点から算出されます。これはリピーターになる可能性が高く、それによって収益性に大きく影響します。
一方、顧客満足度は一回の購入や接触に対する顧客の短期的な反応を示します。これは「現時点でどのくらい満足しているか?」を反映するため、顧客の直近の経験や感情によって左右されやすくなります。
NPSの調査方法
NPSを測定するためには、「この商品やサービスを友人・同僚にどれぐらい勧めたいですか?」という質問に対して、顧客に0~10の11段階で回答してもらいます。
顧客の回答は以下の3つのカテゴリに分けられます。
9~10点:「推奨者」
ロイヤルティーの高い顧客で、商品やサービスをほかの人に薦めてくれます。推奨者は企業の売上アップに直結します。
7~8点:「中立者」
商品やサービスにある程度は満足していますが、推奨者ほどのロイヤルティーはありません。このため、他社に流れる可能性もあります。
0~6点:「批判者」
商品やサービスに不満を持っている顧客で、悪い口コミを広める可能性もあります。批判者が増えると企業にはダメージとなります。
NPSの計算方法
NPSは、「推奨者の割合(%)」-「批判者の割合(%)」で求めます。
たとえば、100人の回答者がいたとして、以下のようにカテゴリが分かれたとします。
中立者:30人
批判者:10人
この場合、推奨者と批判者の割合は以下の通りです。
推奨者:60/100 = 60%
批判者:10/100 = 10%
NPSスコアは「推奨者の割合-批判者の割合」で求めますので、以下の計算式で求められます。
60% (推奨者) - 10% (批判者) = 50
この結果から、この企業のNPSスコアは50となります。この数値が高いほど、顧客ロイヤルティーが高いと評価されます。
NPS調査の質問項目
NPS調査では、基本的に「この商品やサービスを友人・同僚にどれぐらい勧めたいですか?」という一つの質問に対し、0から10のスケールで評価することでスコアを算出します。
しかし、このスコアだけでは具体的にどのような顧客体験や属性が顧客満足度に影響を及ぼしたのか、どのようなポイントを改善すれば満足度を上げられるのかがわかりません。
より深掘りをするために、0から10の評価のほかにNPSに影響を与えた要因がわかるアンケートを組み合わせることがあります。
例えば、以下のような項目が挙げられます。
- 属性:性別、年齢、居住地など
- 来店前:店舗へのアクセスのしやすさ、商品を知ったきっかけ(テレビ、ネット、口コミ)など
- 商品の選択:購入した理由(商品のクオリティー、価格、CMなどの企業イメージ)など
- 購入時:店舗での接客、商品の品揃えなど
- 購入後:商品使用後の満足度、返品・交換対応、アフターフォローの満足度など
NPS調査をする際のポイント
NPSを有効に導入・活用するためには、以下の3つの点に注意が必要です。
- 社内でNPSのメリットを共有する
- 業界内の競合と比較する
- 調査結果を自社の課題解決に活用する
それぞれ詳しく解説します。
社内でNPSのメリットを共有する
担当者がNPSの概要や重要性を理解することはもちろん、その価値を経営層や従業員など社内全体で共有することが重要です。次に述べるようなNPSのメリットを認識することが、その第一歩になるでしょう。
経営層がNPSの価値を理解していれば、それは戦略的な意思決定に役立ちます。一方、従業員は、NPSを日々の業務に活かすことができます。例えば、顧客とのタッチポイントである商品説明、問い合わせ対応などで、顧客ロイヤルティーを意識した対応ができるようになります。
社内の理解があることで、全員が一致団結して顧客ロイヤルティーを高める取り組みを行えるため、しっかりと調査・改善できるでしょう。NPSは市場環境、顧客ニーズ、企業内の変更など、多くの要素が影響するため、定期的なモニタリングが必要です。そのため、継続してPDCAを回せる環境を作ることが大切です。
業界内の競合と比較する
NPSスコアは業界によって異なることを理解する必要があります。
例えば、航空業界のNPSスコアは、金融業界のそれとは異なります。自社のNPSを評価する際には、他業界ではなく、自社が属する業界のNPS平均値を参照し、自社のパフォーマンスを評価することが重要です。
また、競合他社と比較することで、自社の強みと弱み、改善すべきポイントを明確に把握できます。そこから自社のサービスを改善していくことで、他社との差別化を図れるでしょう。
調査結果を自社の課題解決に活用する
NPS調査では、ただ数値を測定するだけでなく、その背後にある意見や理由も重要です。具体的な改善策を見つけるための貴重なツールとなり得ます。
顧客から得られる具体的なフィードバックは、サービスの改善点や新たな商品開発のアイデア、マーケティング戦略の見直しにつながります。定期的に調査を行いPDCAを回すことで、自社の成長を促すことができるでしょう。
NPSのメリットとデメリット
NPSの活用には以下のようなメリットとデメリットがあります。導入前にきちんと把握しておくことで、より効果的な調査を行えるでしょう。
NPSのメリット
ここでは、NPSのメリットを3つ紹介します。
- シンプルで理解しやすい
- サービスの改善に役立つ
- 売上アップや事業成長につながる
シンプルで理解しやすい
NPSは、顧客ロイヤルティーを測定するためのシンプルな指標です。
「この商品やサービスを友人・同僚にどれぐらい勧めたいですか?」という一つの質問に対する回答を評価するだけなので、ほかの複雑なマーケティングツールなどと比べて理解しやすく、導入もしやすいでしょう。
また、共通の質問を用いて測定するため、競合他社との比較も容易であるといえます。他社と比較することで、自社のパフォーマンスを相対的に評価することができます。
サービスの改善に役立つ
NPSは顧客が企業に対してどの程度満足しているかを明らかにしますが、それだけではなく、不満を抱いている点も明確になります。
これにより、企業はサービスや製品の具体的な改善点を把握し、施策を考えることができます。
また、NPSスコアを競合他社と比較することで、自社が業界のなかでどの程度競争力があるのか、どの点を改善する必要があるのかを理解することができます。これは、マーケティング戦略を練るうえで重要な情報です。
売上アップや事業成長につながる
自社の商品やサービスに満足している「推奨者」は、友人や知人に積極的に推奨します。これは、自然な口コミマーケティングの効果をもたらし、新たな顧客を引き付け、結果的には売上アップにつながります。
このことにより、広告に頼らなくても新規顧客を獲得することが可能となり、マーケティングコストを大幅に削減することもできます。
継続的に購入してくれる「推奨者」は、安定した事業の成長に不可欠な存在だといえるでしょう。
NPSのデメリット
一方で、NPSには「日本ではNPSスコアが低くなりやすい」というデメリットもあります。
日本人の傾向として、アンケートをとると「中間点」に回答が集まりやすいといわれています。
NPSの中間点である「5」は批判者に分類されるため、海外に比べてスコアが低く、マイナスになりやすくなってしまいます。そのため、海外の企業との比較に用いるには不向きでしょう。
ただ、マイナスになっても過度に心配する必要はなく、定期的に測定し、施策が狙った効果を生み出しているかを見ていくことが重要です。
まとめ
NPSは企業にとって重要な顧客満足度の指標であり、適切に活用することで長期的なビジネスの成長を支えることができます。
NPSの調査方法は非常にシンプルなため、調査の導入や理解が容易です。さらに、NPS調査の結果から得られるフィードバックは、サービス改善、製品開発、そしてマーケティング戦略への役立てられます。
定期的に行い顧客の声に耳を傾けることで、持続的な成長と顧客満足度の向上を実現し、企業としての競争力を向上させることが可能となります。本記事を参考に、ぜひNPSを活用してみてください。
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