生成AIがITに与えるインパクト(1) 「つながる時代」から「使う時代」に ―ITで起こったイノベーション
更新日:2024-07-11 公開日:2024-07-11 by SEデザイン編集部
本コンテンツは、株式会社アイティアイの大和敏彦氏をお招きし、「生成AIがITに与えるインパクト」と題したセミナーを記事化したものです。
セミナーでは、大和氏の豊富な知見と経験に基 づいて、インターネットの登場からAIブームの歴史に加え、最新のテクノロジーなどが語られました。本コンテンツでは、セミナーの内容を3回に分けてお届けします。第1回となる本記事では、インターネットの登場からモバイル、ビッグデータ、クラウド、5Gまで、ITの進化がもたらしたイノベーションの軌跡を大和氏の講演内容とともに振り返ります。
大和敏彦(やまと・としひこ)
ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒業後、日本NCRでメインフレームOSの通信モジュール開発を担当。日本IBMでThinkPadの開発と戦略コンサルタントを務める。その後、シスコシステムズに入社し、CTOとしてインターネットビデオやIP電話、新幹線内のWi-Fiなど、インターネットの新しい活用分野の開拓を主導。大手企業とのアライアンスや共同開発も推進。
ブロードバンドタワー社長、ZTEジャパン副社長兼CTOを経て、2013年にITiを設立。大手製造業向けに事業戦略や新規事業戦略策定のコンサルティングを手がける一方、ベンチャーや外国企業のビジネス展開も支援。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、各省委員会の委員、日本クラウド産業協会常務理事などを歴任。現在は日本クラウドセキュリティアライアンス副会長を務めている。IT業界における豊富な経験と経歴を持つ。
インフラの進化が生んだデジタル変革:「つながる」時代から「使う」時代へ
インターネットの登場は、社会に大きなインパクトをもたらしました。それまでアナログで行われていたコミュニケーションや情報処理が、デジタルへと移行していったのです。
情報へのアクセスが容易になり、人と人とのつながりが加速し、新しいサービスやビジネスモデルが生まれました。インターネットは、まさに社会を根底から変えたイノベーションだったのです。
Webの時代:人と情報を結びつける時代
インターネットの普及により、まず訪れたのがWebの時代です。世界中の多くの情報がネットワークでつながりました。企業や個人がホームページを開設し、情報発信するようになり、誰もが情報の受け手であると同時に、発信者にもなれる時代が到来したといえるでしょう。Webは人と情報を結びつける革新的なプラットフォームとなったのです。
この変化は、ビジネスや生活のあらゆる場面に影響を与えました。情報へのアクセスが容易になり、新しいサービスやビジネスモデルが生まれるなど、インターネットは社会を根底から変えたイノベーションだったとい えます。
Socialの時代:人と人がつながる時代
Webの次に到来したのがSocialの時代です。ブログやSNS、クチコミサイトなどのソーシャルメディアの登場により、人と人とのつながりが加速しました。たとえば 、FacebookやXでは、リアルタイムで場所の制限を受けることなくコミュニケーションを取れます。企業もソーシャルメディアを活用し、顧客とのエンゲージメントを高められる ようになりました。
かつて は、情報発信といえばマスメディアが中心でしたが、ソーシャルメディアの登場により、個人も情報発信者になれる時代が到来した のです。一方の企業は、顧客の声に耳を傾け、双方向のコミュニケーションを図ることが求められるようになるなど、社会に大きなインパクトをもたらしました。
モバイルの時代:いつでも、どこでも使える時代
スマートフォンの登場により、モバイルの時代に突入します。高速なモバイルネットワークと高性能な端末の普及により、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境が整いました。
情報へのアクセスや人とのコミュニケーションが、さらに身近で手軽になったのです。また、モバイル端末に最適化されたサービスやアプリケーションが次々と登場し、新しいユーザー体験が生まれました。
たとえば、地図アプリを使えば、迷うことなく目的地に到着できますし、音楽やビデオを楽しむこともできます。スマートフォンは、まさに社会に大きなインパクトをもたらしたのです。
ビッグデータの時代:データが価値を生む時代
そうこうしているうちに訪れたのが、ビッグデータの時代です。インターネットの利用が広がり、スマートフォンやIoTデバイスが普及したことで、デジタルデータが爆発的に増加しました。
かつては、経験や勘に頼ることが多かったビジネスの意思決定が、データに基づいて行われるようになりました。ビッグデータを分析し、新たな価値を見出すことが、ビジネスの重要な課題となったのです。
データドリブンな意思決定や、パーソナライズされたサービスの提供など、ビッグデータを活用した新しいビジネスモデルも生まれました。データが価値を生む時代が到来し、企業はデータをいかに活用するかが競争力の源泉になったのです。
クラウドはイノベーションを加速するプラットフォーム
ビッグデータの登場により、データをどのように管理し、活用するかが重要な課題となりました。解決策の一つ として登場したのが、クラウドコンピューティング(以下、クラウド)です。クラウドにより、膨大なデータを効率的に管理し、必要な時に必要な分だけ利用できるようになったのです。
クラウドにはさまざま なメリットがあります。企業は自前でITインフラを構築・運用する必要がなくなり、コストを大幅に削減できるようになりました。また、クラウドサービスは柔軟にスケールアップ・ダウンできるため、ビジネスの変化に素早く対応することが可能です。
さらに、クラウドには、PaaS(Platform as a Service)やSaaS(Software as a Service)といったサービスがあり、企業は最新の技術を迅速に導入できるようになりました。これにより、イノベーションのスピードが加速しました。
クラウドは、デジタル時代のイノベーションを支えるプラットフォームです。スタートアップ企業にとっては、初期投資を抑えつつ、スケーラビリティを確保できるメリットがあります。大企業にとっても、レガシーシステムからの脱却や、新しい技術の導入を促進できるでしょう。
たとえば、AWS(Amazon Web Services)では、コンピューティング、ストレージ、データベース、分析、機械学習、IoT、セキュリティなど、多岐にわたる サービスを提供しています。これらのサービスを組み合わせることで、企業は自社のビジネスに最適なソリューションを構築することが可能です。
クラウドは、まさに ビジネスの可能性を大きく広げる基盤となっているのです。
5Gの登場は新たなイノベーションの幕開け
現在、次世代の移動通信システムである5Gの普及が世界的に進んでいます。しかし、日本では5Gの本来の性能を実感できるユーザーは多くはありません 。5Gの特徴である高速・大容量、低遅延、多数同時接続を活かした新しいアプリケーションやサービスの登場が待たれる状況だといえるでしょう。
5Gの進化の歴史を振り返ると、1Gのアナログ通信から始まり、2Gでデジタル化、3Gで国際的な標準規格の採用、4Gではデータ通信の高速化が実現されました。そして5Gでは、さらなる高速・大容量化に加え、多数のデバイスの同時接続が可能になり、IoTの活用が大きく広がることが期待されています。
5Gの応用が特に期待されている分野は製造業です。製造工場内の機器をつなぐスマートファクトリー化が進むことが期待されています。自動車業界ではすでに、自動運転の高度化に5Gが活用されています。都市インフラでは、スマートシティの実現に向けて、5Gが重要な役割を果たすことになるでしょう。
一方で、5Gの普及には課題もあります。5Gの性能を十分に引き出すためには、アプリケーションの開発やユースケースの作成が不可欠です。また、5Gの高速・大容量を活かすためには、クラウドとの連携やネットワーク全体の設計も重要になります。加えて、5Gインフラの整備には多額の投資が必要であり、採算性の問題もクリアしなければなりません。
中国では5Gの基地局整備が急ピッチで進められており製造業や工業、医療などのさまざまな分野で5Gの活用が進んでいます。移動通信関連の業界団体GSMAは、中国は2025年中に10億の5G接続を達成すると予測しています。日本としても、中国の動向を参考にしつつ、官民一体となった取り組みが不可欠です。5Gの登場は、新たなデジタル社会に向けた大きな一歩となるでしょう。
ITの進化によってもたらされたデジタル変革は、仕事や生活に大きな変化をもたらしました。企業や社会のしかし、デジタル技術の進化はとどまることを知りません。次回は、これまで4度にわたって起こったAIブームの変遷について、詳しく解説します。